日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 122

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なお、この頃の新田は、「秋桜」建国の望みを自ら取り下げるに至っており、秋桜資金を日本国の財政に投入するにあたって、その精神的自由まで得てしまっていたのである。

無論、若者の快諾を受けてのことではあったのだが、これを以て新垣島(秋桜)の管理責任を免れることを得た上、莫大な秋桜資金だけを手中にしたことになり、しかもその資金は今なお女帝の手許で頗る有利に運用されている上、若者からの拠出まで続いており、心苦しいところが無いとは言えない状況だ。

ちなみに、この新垣島(秋桜)では膨大な公共物が日本側の青写真通りに建設済みであり、それも全て秋津州の無償の工事によったものばかりであった。

無論当時は、その地を以って新たな日本国とする計画だったからに他ならないのだが、それにしても多数の地方都市はおろか、空港や港湾の数々を具え高速鉄道でさえ縦横に走っており、大和商事系の施設や原住民の住居の類(たぐい)を除けば全て日本側の設計である以上、その大地の殆どに日本流の先進インフラが完成していると言って良い上に、都心と目されるあたりには御所と称して広大な皇居まで造営してしまっているのである。

然るにその政治状況が一変し、六十万平方キロに及ぶ大地の殆どが官有地のままである以上、全土にわたって大々的な造作が加えられるのは必至であり、「御所」なども早速大改装が始まったと聞く。

現に、かつて日本軍用と目されていた基地なども大幅に拡張され、施設面においても面目を一新する勢いを見せている上、民需用としか思えない建造物まで多数お目見えする模様であり、異邦人の消費規模が原住民のそれを既に凌駕してしまっているとされる今、その地がどのように変貌して行くものか、新田にして見れば楽しみでないことも無いのである。

また、日本国内に目を転ずれば、(伊勢)神宮の再興に際し若者が巨額の寄進を行ったと報じられ、その後同様の寄進を求める宗教団体が銀座の財団支部に殺到しているのだと言う。

直接対応しているのは現地の吉川嬢とその一統なのだが、近頃では神社に限らず、堂塔伽藍のケースに対してもかなりの寄進を始めているらしく、その総額も既に十数兆円(日本円)に達したとする報道まである。

しかも、直近の報道によると、日本の名城百選を再建しようとする動きにまで積極的な姿勢を示しているとされ、現にあの琉球島などでは首里城や護国神社の再建事業が真っ先に開始されたと言う。

やはり沖縄には格別の思い入れがあるらしく、思い起こせば、かつての若者は、沖縄戦に関して太田少将の例の電文に接し、多少虫食い状態ではあっても、その全文をわざわざ秋津州の教科書に掲載させたと言う経緯がある。

ちなみにそれは、昭和二十年六月六日に発信されたものなのだが、当時の日本は既に南方の足掛かりを全て喪失し、米軍の無差別爆撃によって東京も関西もとうに壊滅的な痛手を蒙ってしまっていた。

まして、当時の沖縄現地軍は、圧倒的な米軍との間で壮絶な地上戦を闘って全兵力の八割を失ってしまっており、戦線を分断された司令部は満足な指揮も採れない状況にあってなお、その悲惨な現地から本土の海軍次官に宛てた訣別電報なのだ。

あの凄惨な秋津州戦争を勝ち抜いたばかりの若者が、大切な子供たちに学ばせようとする以上、その意とするところも明らかであったろうが、何せそこには、郷土防衛のために眦を決して奮起した沖縄県民の姿が歴然としているのである。

問題の訣別電報を、謹んで以下に掲げる。

発 沖縄根拠地隊司令官(筆者註:海軍少将太田實、後壕内で自決。)

宛 海軍次官

左ノ電■■次官ニ御通報方取計ヲ得度

沖縄県民ノ実情ニ関シテハ県知事ヨリ報告セラルベキモ県ニハ既ニ通信力ナク三二軍(筆者註:現地陸軍部隊)司令部又通信ノ余力ナシト認メラルルニ付本職(筆者註:現地海軍部隊司令官)県知事ノ依頼ヲ受ケタルニ非ザレドモ現状ヲ看過スルニ忍ビズ之ニ代ツテ緊急御通知申上グ

沖縄島ニ敵攻略ヲ開始以来陸海軍方面防衛戦闘ニ専念シ県民ニ関シテハ殆ド顧ミルニ暇ナカリキ

然レドモ本職ノ知レル範囲ニ於テハ県民ハ青壮年ノ全部ヲ防衛召集ニ捧ゲ残ル老幼婦女子ノミガ相次グ砲爆撃ニ家屋ト家財ノ全部ヲ焼却セラレ僅ニ身ヲ以テ軍ノ作戦ニ差支ナキ場所ノ小防空壕ニ避難尚砲爆撃ノ■ニ中風雨ニ曝サレツツ乏シキ生活ニ甘ンジアリタリ

而モ若キ婦人ハ卒先軍ニ身ヲ捧ゲ看護婦烹炊婦ハ元ヨリ砲弾運ビ挺身切込隊スラ申出ルモノアリ

所詮敵来リナバ老人子供ハ殺サルベク婦女子ハ後方ニ運ビ去ラレテ毒牙ニ供セラルベシトテ親子生別レ娘ヲ軍衛門ニ捨ツル親アリ

看護婦ニ至リテハ軍移動ニ際シ衛生兵既ニ出発シ身寄無キ重傷者ヲ助ケテ■真面目ニシテ一時ノ感情ニ馳セラレタルモノトハ思ハレズ

更ニ軍ニ於テ作戦ノ大転換アルヤ夜中ニ遥ニ遠隔地方ノ住居地区ヲ指定セラレ輸送力皆無ノ者黙々トシテ雨中ヲ移動スルアリ

是ヲ要スルニ陸海軍部隊沖縄ニ進駐以来終止一貫勤労奉仕物資節約ヲ強要セラレツツ(一部ハ兎角ノ悪評ナキニシモアラザルモ)只々日本人トシテノ御奉公ノ護ヲ胸ニ抱キツツ遂ニ■■■■与ヘ■コトナクシテ本戦闘ノ末期ト沖縄島ハ実情形■一木一草焦土ト化セン

糧食六月一杯ヲ支フルノミナリト謂フ

沖縄県民斯ク戦ヘリ

県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ


客観的に見ても、当時の沖縄県民は防衛隊として文字通り根こそぎ動員され、老いも若きも軍と共に対米戦を果敢に闘っていたことは確かだ。

沖縄県民斯ク戦ヘリ

県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ

当時若者が目を潤ませながら語っていたことを今更ながら思い起こすが、よほど感激していたことは確かだろう。

それが証拠に、こと沖縄に関して言えば、銀座の財団支部の対応は充分過ぎるものだと囁かれて来ており、破格の対沖縄観光予算のみならず、首里城や護国神社の再建に対しても相当手厚いものがあったと聞いており、事実とすれば、ここでもまた、若者の私財が日本の経済復興に大きく寄与することになるに違いない。

加えて敷島本土においても、既に姫路城などが広大な用地の手当てを完了し、旧に倍するほどの規模を以て再建を目指しているとされ、その所為もあってか、近頃の日本では殊に巨木の需要が一段と沸騰して来ている上、玉垣の郷の巨大倉庫群には、樹齢五百年を越えるような巨材がふんだんに備蓄されていることが明らかになったのだ。

自然、相当数のバイヤーが足を運ぶことになる。

中には若者に随伴して丹後や但馬にまで巨材の検分に出かけるバイヤーまでいると伝えられ、樹齢一千年もの巨木が現地で伐採の上瞬時に敷島へ搬入されたと言う話まであるくらいなのだ。

したがって木材一つとってもかなりの規模のマーケットが形成されつつあることは確かで、玉垣の郷の港湾がなおさら賑わいを見せて当然だろう。

いずれにせよ、日本では巨額の資金を得て壮大な土木事業がそこここに立ち上がりつつあり、その資金が関係業界はもとより、そこから広大な裾野にまで流れ下ることによってさまざまな相乗効果を齎してくれるに違いない。

事実、新兜町などは秋津州景気で沸騰していると言い、インフレの過熱を恐れる金融当局が、その対応にも苦慮していると囁かれるほどなのである。


月日はめぐり、やがて秋津州の地に建国記念日が到来し、例によって簡素な式典が行われた。

式典に要した時間はほんの僅かなものではあったが、相変わらず戦車もミサイルも一切登場することは無く、国王が、いつもの近衛軍のほかに立見中将とその幕僚まで引き連れて馬上堂々の行進を行って見せてくれた上、上空には大量の馬酔木(あしび)の竜が飛来して式典に花を添えることになった。

幾多の巨龍が、陽の光りを浴びながら大挙して現れてくれたのだ。

しかも、今回は体長二千メートルを超えるようなものまで姿を現した上、昨年より格段にその数を増しており、それは既に大空を埋め尽くさんばかりの勢いなのである。

本をただせばNBS支局長の進言に端を発したこととは言え、龍の登場は既に恒例化しつつあると言って良く、絶好の被写体を前にして居並ぶメディアは無論大喜びだ。

その上、八咫烏を肩に悠然と駒を進める若者の姿を捉え、中国のメディアなどでは「龍王」と表現するケースが目立ち、その地で建設中の壮大な龍王殿の映像とわざわざダブらせながら報ずるものまであったと言うが、一方でこの日には、秋津州軍の撤収式典も又世界各地で整然と行われていたのである。

無論、世界各地の国境警備軍の撤収の話であり、これ以後各国の国境線は、各国それぞれの手によって伸縮する本来の姿に戻ったと言って良いが、中露首脳が密かに危惧していたことだけは杞憂に終わり、内陸地帯の駐屯軍はそれぞれそのままの態勢を採り続けて彼等を安堵させることにはなっただろう。

その後、最大の懸念事項が払拭された中露首脳が来訪し、それぞれ直接「龍王」にお礼を言上する機会を得たが、その直後に新田の元へもわざわざ挨拶に出向いたことが一段と人目を欹(そばだ)てた。

それもこれも、この執政官の権勢が世界に鳴り響いていたからに他ならず、国王陛下の来臨に関する思いが尋常でなかったことの現れでもあっただろうが、両者共にそれを願って已まなかったとされたのである。

両国ともに例の「宮殿」が近々落成することもあり、競争相手にだけそれが許されてしまうことだけは避けたかったのだろうが、それもこれも執政官の手許で全てが調整されることが明らかであるだけに、両国とも担当者たちが、連日のように押しかけて来て哀訴するのだが、一方で、機を見るに敏な台湾共和国も黙ってはいなかった。

台湾側にして見れば国王の訪中を牽制する意味合いもあってか、うるさいほどに訪台を願ってくるのである。

若者自身は、少なくとも国土の委譲を行ってからは中露台の地を踏んだことは一度も無く、そのことを求めて彼等も懸命なのは確かだろう。


また、例年この建国記念日に行われていた有紀子嬢の誕生祝いだけは、その通学の都合で延びたものの、その週末に至って王家の全員が任那の郷で海水浴に興ずる様子が報じられた。

プライベートビーチで遊ぶ「側室」たちの見事な肢体が数多く被写体となり、王家の楽しげな団欒の光景が多くの紙面を飾ったが、中でもキャサリンが子供づれで参加していたことが一際注目を浴びたと言う。

何しろ、過去の活動実績から言ってこのキャサリンこそ最強の論客だと看做されており、ある意味新田にとって頭痛の種のオンナどもがまたしても勢力を増していると言って良い。

とにもかくにも、若者の結界の内側にいる女性陣がやたら数を増していることは確かで、彼女たちは既に立派なサロンを形成してしまっていると評するメディアまである通り、彼女たちにとって国王のリビングは今や完全にロビーと化し、ビルなどの表現を借りれば、「ヤマトサロン」は既に最強の圧力団体だと言うことになろう。

その筆頭格はやはりみどりママのようだが、妻の菜穂子やダイアンはもとより、近頃では鹿島夫人までが頻繁に参集して談論に花を咲かせていると言い、この圧倒的な女性陣に囲まれ、田中盛重などはひたすら身を屈めている始末で、相葉副長官などはただただ苦笑するばかりだ。


その後秋口に入り、新垣島(秋桜)の旧日本軍基地の大改装がいよいよ成ったと言う。

そこには多数の日本人が改めて入所する運びだが、その殆どが以前から訓練名目でその地に駐留していた軍人たちであり、しかもその実質的指揮官の任に就いたのが加納大佐だ。

これもまた官邸のヒット人事だとして喧しいが、陸(おか)に上がるのがよほど寂しかったと見えて、この折角の人事も本人にとっては頗る不本意なものであったらしい。

何しろ、先日夫婦してこの土竜庵に顔を出した折りも、結局酔いつぶれて一泊してしまったほどで、うら若き新妻が恐縮することしきりだったのだ。

尤も、この新妻の場合もとうに国王陛下にお目どおりを済ませ、ヤマトサロンにも積極的に参加している模様であり、その勢力は益々盛んになるばかりなのである。

彼女たちは茶話会と称して始終宴会を催しているらしいが、かなりの猛者(つわもの)が揃っていることでもあり、もうすぐハタチと十八の声を聞く「側室」たちに、変な知恵だけは付けてもらいたくないものだ。

尤も、彼女達二人はこれ等の議論などよりよほど道場通いの方に熱中しているらしく、既にあのローズ嬢でさえ相当の腕だと言う声しきりなのである。

現に、たまたま訪れた岡部にも稽古をつけてもらったようで、その後あの岡部ですら感心していたくらいなのだからこれも事実なのだろう、この私などとうに相手にならないほどの腕だと言う。

岡部とは久々の邂逅のことでもあり、当然すぐさま酒になり、田中盛重が嬉々として話の輪に加わったが、思えば、田中ももう二十七だ。

岡部は田中の両親からも頼まれて来ていると見え、その話も専ら妻帯の勧めにならざるを得ず、岡部が見合い写真まで預かって来ていたくらいだったから田中も閉口したろうが、とにかく当人にその気が無い以上如何ともし難い。

とにもかくにも酒が進むにつれ談論風発し、遠慮無用の話柄の中で田中からさまざな話が出るに連れ、岡部から相も変わらず辛らつな批評を受けるに至ったが、田中は一向にへこたれる様子が無い。

しかも田中は、妻帯の件では「むしろ陛下の方がよほど重大だ。」と言うのだ。

結局、国王に未だに「側室」たちの部屋を訪う気配が無く、かと言ってほかにお目当てがあるでも無く、ヤマトサロンのオンナどもからも散々に責められている今、我々にとっても決して軽い話ではないのだが、如何せんご当人にその気が無い以上、田中の場合と同様に致し方も無いのである。

ただ、田中から対沖縄予算の不均衡性に付いて一言あったときは、岡部の反応に興味を覚え傍観させてもらうことにしたのだが、何せ田中は、「最近の対沖縄予算は、いくらなんでも少し行き過ぎなのでは。」と主張するのだ。

最近のそれは、それほどまでに突出したものとなりつつあり、田中は、「陛下は沖縄に肩入れし過ぎておられる。」とまで主張する。

実際、敷島本土からも同様の声が聞こえてこないわけでは無いのだが、岡部の方は、「未だ未だだろう。」と言う。

「でも、陛下のふところにしたって底無しってわけじゃありませんよ。」

「そりゃ、そうだ。」

岡部は余裕綽々のていで笑っている。

「それに相手は、反日思想が渦巻いてる沖縄なんですよ。」

「そんなのはごく一部だ。」

「それに、沖縄戦で日本軍にひどい目に会わされたって言うヒトが多いでしょ。」

「だが、一方で地元の護国神社に初詣にお参りする県民が二十万人を超えとるわい。沖縄戦を理由に反日思想を叫ぶ者が圧倒的だったらあり得ない話だ。」

「でも、あの沖縄戦で県民が受けた傷はひどいものですよ。」

「確かにな。」

「軍に強制されて集団自決させられたとか。」

「おまえ、それを信じてるのか。」

「だって、手榴弾で自決した住民が大勢いる以上、軍が配布して自決を強制したとしか・・・」

「ちょっと待て、こら、ひょっとして、おまえ防衛隊も知らんのか。」

「え・・・・・。」

「日本軍が現地で動員した沖縄県民のことだよ。」

「あ、それなら聞いてます。」

「最後のときなんか、子供から老人まで、それこそ根こそぎに動員せざるを得なかったんだよ。」

「はい。」

「それで、その防衛隊にもなけなしの手榴弾を配った。無論戦闘用だ。」

「・・・。」

「一部の在郷軍人会を除けば、彼等はみんな昨日まで現地の民間人ばかりだぜ。それに最後の方はもう軍の統制も何もあったもんじゃねえや。」

「あ。」

「だから、手榴弾で自決したからと言って、軍がそれを強制したとは言いきれんだろうが。」

「はい。」

「それとな、犠牲になった県民たちに報いるためにも軍の強制や誘導があったことにしとかんとな。後日そう言う意味の書類を役所に出さんと国家の補償を受けられんだろうが。」

「はい。」

「プロバガンダ小説なんかに振り回されてるとエラい目つくことになるぜえ。」

実際、軍の命令によって県民が多数自決したと書いている市販本は少なくない。

それも、かなり著名な作家までがそう書いているのである。

「・・・。」

「それともおまえ、米軍をヒューマニズムに溢れた解放軍とでも思ってんのか。」

「いえ。」

「実際、大勢の女性が米兵に強姦されたし、みんな恐怖でパニック状態だったことも判ってるよなあ。」

「悲惨ですよねえ。」

「そうだ、戦争はいつだって悲惨なんだよ。」

「はい。」

「それでも、おまえ、陛下のお心がわからんとぬかすのか。」

「いえ。」

田中の声がか細い。

「とにかく、戦争になれば大勢の同胞が犠牲になる。」

「はい。」

「かと言って、戦争には相手がある。一人でやるわけじゃねえしな。」

「そりゃそうです。」

「少なくとも重大な戦略物資の輸入を締め上げられちゃうような状況は避けなければならん。」

「はい。」

「死ぬか生きるかまで締め上げられちゃえば、闘わずに降伏するか立ち上がるか二つに一つだ。」

「はい。」

「ついでにもう一つ言って置くが、当時の軍部大臣現役武官制と言うヤツをおさらいしとけ。」

「当時の陸海軍大臣は現役の将官に限るとする制度のことですよね。」

ちなみに、当時の軍部大臣には、陸軍大臣と海軍大臣と言う二つのポストがあった。

「知ってたか。」

「そのぐらい知ってますよ。要するに軍部から大臣候補者を出さない限り、首相が組閣すら出来ないって言う話ですよね。」

「そうだ、その辺の民間人を連れて来て軍部大臣をやらせるわけにゃいかんかったわけだ。首相が現役の将官を一本釣りしようにも、軍の意に染まぬ場合、あっと言う間にその将軍は予備役編入だ。」

その辺の人事を握っているのは全て軍部であり、無論、予備役は現役ではない。

その結果、将軍本人が就任を承知しても肝心の就任資格を欠いてしまい、首相自身が現役の将官でもない限り兼務することも出来ず、大臣不在の内閣など制度上あり得ないことから、結局、その内閣は成立すらしないことになってしまう。

そのため、内閣は軍部の意向を無視したままでは閣議決定すら出来ないことになり、しかも、軍部大臣が辞表を提出し、その後軍側が代わりの候補者を出さないと一瞬で倒閣に繋がってしまうのである。

当時の制度上、天皇陛下ですらどうすることも出来ない。

岡部は、日本には、当時そう言う制度が存在したことを知るべきだと言っているのだ。

「ところで、戦後制定された憲法には第六十六条の二項があったよな。」

「はい、たしか、『内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。』でしたよね。」

占領軍の脚本だったとは言いながら、あつものに懲りて膾(なます)を吹いてしまった結果なのだ。

「うん、それだ。その規定があったために多くの場合、軍部大臣は軍事のど素人が務めることになる。」

「いくらなんでも、軍部大臣に素人ってのはまずいですよねえ。」

「うん、それこそ危なくってしょうがねえやな。それに閣内に軍事専門家がいねえといざと言うときゃ困ることになる。」

ちなみに、国井内閣が新たに成立させた新憲法と法制度には、当然ながら文民限定などと言う規定は存在しない。

詰まり、軍事に精通したプロの軍人がそれを務めることを少なくとも妨げてはおらず、無論、文民を就任させることも総理の専権事項として充分可能であり、その点でも軍部が介入する余地は無いのである。

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  1. 2008/03/31(月) 21:02:45|
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