日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 156

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ふと思いついて大塚少尉に尋ねて見た。

「この市(いち)についてはお聞き及びであろうか。」

「多少のことは心得おり申す。」

少尉がわざわざ馬首を並べて来ての返答だ。

「ほほう、やはり貴公のお仲間たちの仕事かね。」

「弥左衛(やさえい)さまのお手配かと存ずる。」

しかし、不思議なことに彼等の衣装も外貌も全てローマ人そのものなのだ。

「相当な人数が出張ってるようだが。」

「恐らく二個小隊にござりましょう。」

「と言うことは、二千人以上と言うことになるが。」

「左様にござる。」

「買い取った畜類は例の乗り物に載せて運んで行くように見えるが。」

無論空を飛翔して行くのだ。

「カラヤニス卿のご領内に、牧場(まきば)を設けたとのことにござる。」

一旦そこに収容して置いて、適宜に丹波まで運んでしまう手筈なのだが、若者にそこまでの想像力は働く筈も無い。

「ふうむ、そうすると相当広い牧場(まきば)にござろうな。」

「柵造りに二個中隊を出動させたようでござる。」

「ほう、二個中隊・・・。」

「概ね二十六万と言うところでござろうか。」

二十六万もの男どもが一斉に杭打ちをしている図が目に浮かんだが、その資材にしてもどうせあっと言う間に揃ってしまう筈だから、その作業もあっと言う間に終えてしまったに違いない。

「驚いたな。」

「近々、王家のお直(じ)き領(直轄領)の中にも重ねて設ける手筈にござる。」

無論王家は最大の所領を誇っており、本来それこそが王家の力と富の源泉でもあるのだが、その多くは既にスフランツェスに横領されてしまっている感が深い。

「お直き領には、スフランツェスの手の者が全て代官として居座ってる筈だが。」

「さりながら、最早代官どもに手向かいするほどの気力はござるまい。」

「ふうむ。」

確かに、十万、二十万と言う大軍勢を見れば、それだけで雲を霞と逃げ散ってしまうに違いない。

「いずれにせよ、かなりの牧場(まきば)が幾つも出来上がることになりましょう。」

「されど、それほどのものが必要であろうか。」

「何せ近頃では、数百頭の羊を売りたいと申す者までござるによって、こちらから引き取りに出向く場面まで出始めておるのでござるよ。」

「そこまでなさるのか。」

「不動産以外、彼等の資産価値を須(すべか)らく保全すべしとの御諚にござるゆえ。」

「価値・・・ でござるか。」

「左様、可能な限り減価せずに換金せよとの仰せにござる。」

「なるほど・・・。」

それで、破格の値で買い取っているわけか。

「秋津州通貨であれば、大抵の場所で通用致しますゆえ。」

「秋津州通貨とは、そこまで流通性が高いのか。」

「左様、殊に丹波などでは、いずれの国へ旅しようと支障無く通用してしまうほどでござる。」

「なるほどなあ。」

「とにかく、混乱を最小限に抑えよとのことにござる。」

不動産が無価値となりつつある今、そのことがローマ人に齎しつつある混乱が途方も無いものである上、放置すれば家畜類に関しても同じ運命を辿ることになりかねないのである。

当然、膨大な家畜類が換金される流れであることに違いは無い。

「そうか、そのために牧場も余分に・・・。」

「如何にも。」

「されば、あの者どもの場合はどうか。」

今しも目の前を奴隷らしき少女を連れて通り掛かるものがあり、現にその方向には奴隷ばかり重点的に買い取ろうとする一団が待ち構えているのだ。

その奴隷らしき女の子は未だ幼く精々十歳ほどのようだが、どうやら足に傷を負っているらしく、血の滲んだ足を引きずりながら懸命に主の後を追って行くところだ。

「奴隷のことにござりましょうか。」

「左様。」

「これも又、保全すべき資産価値の一つにござりましょう。」

だからこそ、買い付けを行っていると言いたいのだろう。

「いや、その行き先のことを尋ねておる。」

「そのことでございましたら、概ね海上の船と承っており申す。」

例の改造捕鯨船の一部が既に悠然と沖合いに浮かんでいるのだが、無論若者には想像することも出来ない。

「ほう、海上に・・・。」

尤も、海上などと言ったところで、実際には琵琶湖の十数倍の広さでしか無いのである。

「如何にも、船内には何不自由無く暮らせる設えが整っている上、一艘で一万もの収容が可能と伺っており申す。」

「一万・・・・。」

「左様にござる。」

「ふうむ・・・。」

自分の知り得る限り、我が国の船などどんなに大型であっても五十人乗りが精々であるだけに、実に想像を絶するほどの巨船ではあるまいか。

「それを三艘ほど用意する手筈と承っており申す。」

「果たして、それほどのものが必要になるであろうか。」

それが事実なら、単純に言って、三万を超える収容を考慮していることになる。

「あり得ないことではござるまい。」

「確かに、見掛けた分だけでも既に百人を超えておるからな。」

眼前で、その「商品」が幾つもの列を成して並んでいるのである。

「殊に病(やまい)持ちの場合などは、足手纏いになると見て換金しようとする者が殺到しており申す。」

なるほど、先ほど足を引きずっていた少女などは、買い取ってくれるものが無ければ、早晩主に置き捨てられて荒野をさ迷った挙句行き倒れになるよりほかはあるまい。

「やはりそうか。」

ちなみに現実の国王はこの者たちに食と医療と情報を与え、しかも教育まで施そうと企図しているのだが、何せ相手は識字率数パーセントと言う手合いなのである。

その教育係にはローマ人を充てるよう命ぜられている今、ヤサウェがその処置に窮するのも当然のことであり、ヤサウェ自身さまざまな企図を抱きつつあるにしても、少なくとも数年単位の対応だけは覚悟しておくべきだろう。

「昨日などは、不埒にも腰の立たない老母を奴隷と偽って売りに参った者がござってな。」

悲惨極まりない話柄であるにもかかわらず、大塚少尉の口振りは相変わらず冷静そのものなのだ。

「なんと、実母をか。」

「さようにござる。尤も、直ぐにひっとらえられた挙句、カラヤニス卿のお指図で笞打ちの刑に処されたようでござるが。」

「老母が口を割ったのであろうか。」

「いえ、老母自身は息子をかばって頑として奴隷であると言い張ったと聞いており申す。」

「それで、よく偽りだと見抜けたものだ。」

「弥左衛さまがローマ人の動静を殆ど掴んでおられますゆえ、奴隷かそうでないかなど一目瞭然にござる。」

「なんと・・・。」

「オヤカタサマのご存念が全員の救出におありになるだけに、ローマ人の動静を悉く押さえて置くことこそ最大の勘所(かんどころ)にござるゆえ。」

「悉くと申されたか。」

「左様にございます。」

「悉くと仰せではあっても、まさか我が領内のことまではご存知あるまい。」

その地では、敵方による虐殺と略奪が既に血煙を上げて進行してしまっているのではあるまいか。

じいの消息とともに、いま最も心を悩ませていることなのである。

「あらかたのことは承知しており申す。」

「ほほう・・・。」

「ご懸念のほどお察し申し上げるが、今のところさしたることはなかろうかと存ずる。」

「なんと、そこまでお判りになるのか。」

「如何にも。」

「しからばお尋ね申すが、目下の我が領内の動静や如何に。」

「概して平穏にござる。」

「概して・・とは。」

「一部を除けばと言う意味にござる。」

「ほほう、一部とは・・・。」

「マカリオス・マエケナス殿が、館(やかた)に篭城して必戦のお覚悟のようにお見受け仕る。」

マカリオス・マエケナスはじいの一人息子の名であり、館とは我が父祖伝来の居館であって、小なりと言えど堀を穿ち堅固に城壁をめぐらせてある。

「ならば、父が討たれたことは伝わっているわけか。」

「お父上が亡くなられて二日の後にはお耳に届いてござる。」

「そこまで判るのか。」

「ついでに申せば、お母君のご実家のこともござりましょう。」

母の実家はカンタクゼノス家と言い、我が知行地から離れること五十キロほどの地にある。

「うむ。」

「ご実家の方々も、概ね篭城のお覚悟のように見てとり申した。」

やはり今回の変事が伝わった結果、我が父に連座して城地召し上げになることを恐れてのことに違いない。

「やはりな。」

「寄り親どのも落命されたことになっておるようにござる。」

「なんと、私まで死んだことになっておるのか。」

「左様にござる。」

カンタクゼノス家としても、それではとりあえず篭城して様子を見るよりほかに手はあるまい。

「何とか、知らせてやる手立てはないものか。」

無論、自分が新政権の軍団長の一人となって立派に生きていることをだ。

確実にそれが伝われば、彼等の行動にとって重要な指針となり得るのである。

「簡単なことにござる。」

「やはり、ポッドに乗って空を飛んで参るのか。」

「左様、ものの三十分もあれば着き申そう。」

「三十分・・・。」

一瞬絶句してしまったが、何せカンタクゼノス家の館までは、地上を旅する場合、東回りで百四十キロ、西回りなら百六十キロ以上もの行程なのである。

「文(ふみ)だけでござれば五分も掛からずに届き申そう。」

「しかし、文(ふみ)だけでは、かえって先方に疑念を生じさせる恐れがあろう。」

危急存亡のときを迎えているだけに、カンタクゼノス家でもその去就に関して家中一統紛糾せざるを得まい。

スフランツェス方の謀略に付いてもなおのこと神経質にならざるを得ず、唐突に手紙だけが届けば疑心暗鬼の虜となってしまうに違いない。

かと言ってルキアノスやミルトスでは先方に馴染みも薄く、彼等を使者として送っても結果は大同小異だろうが、ここにじいがいてくれれば俄然話が違って来るのである。

何せじいの場合、筆頭重臣として母の輿入れの折りも迎えの使者に立ってるくらいで、それ以来幾たびも往来して先方に知り合いも少なくないだけに、じいが出向けば如何なる疑団も瞬時に氷解してしまう筈なのだ。

「ならば、おん自らお出向きになられましょうや。」

無論自分が自ら出向いて行ければ理想だが、場合が場合であるだけに到着後直ぐに引き返して来るわけにも行かないだろう。

どんなに急いでも、行って帰って半日は見ておかねばならず、場合によっては数日にわたって留守にすることになってしまうのである。

「しかし、公辺への聞こえは如何であろうか。」

「ご裁可を仰ぐ必要だけはあろうかと存ずる。」

現に、カラヤニス卿から「動くな。」と申し渡されているのだ。

「矢張り無断と言うわけには行くまいな。」

「然らば、早速に申し出られませ。」

簡単に言ってくれるが、些かの功労があるどころか、謀反を事としたとされてしまっても仕方の無いいきさつを持つだけに、そのような自侭な願いなど口にするのも憚られる現実がある。

「・・・。」

一瞬、言葉に詰まってしまったのである。

「お察し申す。」

「うむ。」

「ご領内の仕置きのこともござりましょう。」

無論自領を始末するに当たって、家臣たちの成敗(せいばい:賞罰の判定)一つとっても捨て置くわけには行かないのである。

「されば、我が館の様子はどうか。」

「ただいま、ご領内の荒らし子を十人がほども駆り催し、盛んに兵糧を運び入れておられるようでござる。」

荒らし子とは、百姓どもの中でも特に元気盛んな連中のことを指しているのだろうが、兵糧を運び入れていると言うからには、マカリオスは累代の主人の居館に籠もって、敵わぬまでも弔い合戦を試みるつもりでいるに違いない。

「やはりそうか。」

「されど、兵糧の必要はなかろうかと存ずる。」

意外なことに兵糧の必要は無いと言う。

「そりゃ何ゆえか。」

「敵方には、城地召し上げの使者を出すゆとりなどござらぬゆえ。」

相手の抵抗が予想される以上、この場合の使者にはそれなりの兵力の具えが欠かせない筈なのだ。

「まことか。」

「政庁の守りを固めるだけで四苦八苦にござるゆえ、地方に向けて征討軍を出すなど最早夢の又夢にござろう。」

「それほどまでに難渋(なんじゅう)致しおるか。」

「今朝ほどアルセニオス・カラヤニス殿の軍勢が目の前を行軍して見せた折りも、門を閉ざし、ひたすら息を潜めていたほどでござるゆえ、兵どもの動揺いよいよただならず、今宵あたりは闇に紛れて相当数の脱走がある筈でござる。」

カラヤニス卿のご子息は、ヤニ殿を率い全てポッドに乗って飛翔して行かれたと聞いており、それと知っていれば当然従軍を願うところだったのだが、目覚めたときには既に出立された後だったのである。

「それでは、首都付近を通過する折りに、わざわざ地上を行軍して見せたのか。」

ヤニ殿の一個小隊が加わっている以上少なくとも千を越す大軍であり、それだけの大軍が足音もとどろに近くを行軍して行ったとなれば、敵兵どももさぞ肝を潰したことだろう。

「如何にも。しかも別に十三万ほどの軍勢が舞い降りて鯨波(げいは:ときの声)まで上げて通過して行ったと承っており申す。」

「なんと・・・。」

一千でも大軍であるところに持って来て、あろうことか新たに十三万だと言うのだ。

その行軍の足音は天地に轟き、しかも鯨波まで上げたと言うのだから、政庁に籠もる敵兵どもの顔が目に見えるようだ。

「それもこれも、陽動作戦と言うものにござりましょう。」

「されば、ウェルギリウス領入りも陽動作戦だと・・・。」

カラヤニス軍の主たる作戦目的は、ウェルギリウス領の奪還にあると聞いていたのだ。

「如何にも。」

「ふうむ。」

「現に、我が軍容を見ただけでウェルギリウス城の敵勢は一戦も交える事無く逃げ散ってしまい、入れ代わりにアンドレアス殿が今しがた堂々の入城を終えたとのことにござる。」

皆殺しにあった一族の命は二度と戻らないにせよ、ウェルギリウス家の蒙った恥辱だけは見事に雪がれたことにはなるのだろう。

居住区全体が滅びてしまう今、今更領地など取り返して見ても無意味だとは言うものの、それもこれも武門の意地と言うほかは無いのである。

「ほほう、無血入城にござるか。」

「左様にござる。」

「立ち向かう者は一人もおらなんだか。」

「如何にも。」

「いや、驚いたな。」

「ところで、今一つのご懸念はキュリアコス・マエケナス殿の身の上にござりましょうな。」

「さよう、なにかお聞き及びでござろうか。」

「ご無事にござるよ。」

当然のことながら、後ろで聞き耳を立てていた二人が途端に大騒ぎを始めてしまっている。

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  1. 2008/12/03(水) 13:14:14|
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自立国家の建設 157

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「まことか。」

「しかも、直ぐ近くまで来ておいでにござる。」

「なんと。」

「しばし、お待ちあれ。」

虚空を睨んでるところを見ると、話に聞く「通信」とやらをしているのだろう。

「何とした。」

「マエケナス殿の身に危難が迫っており申す。」

「なにっ。」

「急場にござれば、先ずは先駆(さきが)け仕る。ご免そうらえ。」

言うや否や、人馬諸共ふわりと空中に浮かび上がり、南を指して風のように飛んで行く。

それに気付いた者がそちこちで指を指して騒いでいるが、それこそ天馬の本領発揮だと言う他は無いのである。

ことがことだからこっちも遅れじと鞭を入れたが、代え馬を引く二人の方は一歩も二歩も遅れざるを得ないだろう。

既に大塚少尉の姿は視界からは全く消えてしまっていて、前方の空中には漆黒の円盤が飛来して騎馬武者を放出し始めており、やがて左側には高札が立ち、ここでもかなりの人だかりがありはしたが、それを目端(めはし)に掛けながらなおも駆けると、急に道幅が狭まって、しかも下り坂に差し掛かるところだ。

幅七・八メートルほどのその坂道を、だらだらと一キロほども下れば直接街中(まちなか)に出てしまう筈なのだが、幸い人通りが途絶えていて、無辜(むこ)の民を蹄に掛ける恐れは無いとみて、一鞭くれて坂道に差し掛かると眼下はるかに豁然(かつぜん)と眺望が開け、今しも坂の途中に人だかりが出来ているのが見えており、かなりの人数が足止めを食わされているようだ。

いずれにしても、何やら変事が起こっていることだけは確かであり、胸騒ぎを覚えながら駆け下って人垣の中に乗り入れると、予感は見事なほどに的中してしまった。

路上には十人以上の追っ手の姿があり、道の右端には棒切れを構えてそれに対峙している男がいて、よくよく見れば薄汚れた装束の無腰のじいであり、しかもこれほどの危機にありながら、背中に負った剣を抜こうともしていないのだ。

既に少尉のほかにも五騎の騎馬武者が盾になってくれており、無論こっちも夢中でそれに倣ったが、全員徒歩立ちの敵勢の方は弓弦(ゆづる)の切れた弓を手にするやら、鍔本(つばもと)から折れ飛んだ剣を持つやらで、ほとんど茫然たる様子を見せており、幸い一人として打ち掛かってくる気配が無い。

何せ、まともな剣を手にしている者など一人もいないのである。

「じい、大事無いかっ。」

馬上剣を抜き放ち、前面の追っ手を睨み据えながら大声で叫んだが、その多くは顔見知りの連中ばかりだ。

「あっ、若っ。」

背後でじいが叫んでいる。

よほど動転していたのだろうが、己れの主(あるじ)にようやく気付いてくれたようだ。

「何故、剣を抜かぬっ。」

「殿の、殿のお形見っ。」

一瞬で悟った。

父の剣だったのだ。

使うに忍びなかったと言うのだろう。

「許す。直ちにそれを用いよ。」

「心得申したっ。」

主(あるじ)の下知を受けて元気一杯の返答が返って来て、そのくたびれきった身なりから察するに、己れの剣は逃避行の最中に手放してしまったのだろうが、相も変わらず愚直を絵に描いたような為様(しざま)なのである。

見上げるまでも無く頭上間近に巨大円盤が舞い降りて来ており、徒歩立ちの軍兵が背後の木立の中に次々と降り立ち始める中、ルキアノスとミルトスが大声を上げながら駆け入って来るや、すかさず代え馬の一頭にじいを乗せた気配だ。

「お下知を賜りたあし。」

馬首を並べた少尉が前方を見据えたまま大声で言う。

攻撃命令を待っているのだ。

「暫く後詰めを頼む。」

有り余る戦闘力を持つ武官に対して後陣にまわるよう命じたのだ。

「心得申した。」

苦情が出るかと思いきや、かなり冷静な返答が返って来て、少尉の軍が背後の木立の中に一斉に折り敷く気配を感じながら、初めて前面の敵方に声を掛ける余裕が生じたのである。

「最早、無益な争いは無用に致さぬか。」

「・・・。」

口を開く余裕すら失ってしまっているのだろう、追っ手の面々は、いずれも顔を引きつらせながらじりじりと後ずさりしはしたが、誰一人応えようとはしない。

「それがしの敵はスフランツェスであって、断じて各々方ではござらぬぞ。」

「・・・。」

「手出しは控えるゆえ、今日のところは清く引き取られるがよろしかろう。」

わざわざ剣を鞘(さや)に収めて見せながら、我ながら冷静な声音で説いたつもりだったのだが、考えてみれば追っ手たちも哀れだ。

清く帰陣して行くにしても、そこに待っている相手が相手なのだ、事実を報告するわけにも行くまい。

皆が皆、進退窮まったと言う素振りで顔を見合わせているのである。

「おおい、いま行くぞおお。」

今度は、デニス殿の大声だ。

今しも坂下から駆け上がって来る気配であり、しかもその方向の空中には、千余の軍兵が真っ黒になって飛行して来る姿まで見えているのだから、もうひとたまりも無かったろう。

追っ手どもは揃って背後の木立の中に脱兎の如く飛び込んで行ってしまったが、それを目端に掛けるようにして騎乗のデニス殿が猛然と飛び込んで来て叫んだ。

「大事ござらぬかっ。」

「おかげをもちまして無事にござる。」

「十人以上おったようだが。」

「いえ、敵兵どもは悉く得物(えもの:武器)を失ってござったゆえ。」

「ほほう・・・。」

見れば、路上に十数本もの剣が折れ飛んでいるのである。

「それがしにも、わけのわからぬ仕儀にござる。」

「若っ。」

背後でじいが叫んでいる。

「どうした。」

「あやつらに囲まれようとした折り、連中の弓弦も剣もあっと言う間に・・・。」

結局、大塚少尉の仕業であることだけは確かなのだ。


さて一夜明けて翌日のことだ。

俄かに大号令が発せられ、元老院議官や行政官、そして大勢の神職の者が居並ぶ中、新装成った大聖堂において新帝戴冠の儀と先帝の葬礼がいたって簡素に執り行われた。

女官団を引き連れて玉座に着いた皇女は目出度くセオドラ一世となり、その直後に発せられた勅令が、今後一年間に限って全ての徴税を停止(ちょうじ:禁止)する旨を高らかに宣言していた上に、スフランツェスの罷免ばかりか総主教猊下の執政就任をも謳い上げており、主立った行政官が支障無く親任を受けたことが、この劇的な一大政変をなおのこと鮮明なものにしたと言って良い。

しかも残り十ヶ月に及ぶ今年度(七千五百十一年度)の予算額を一億円と見積もった上に、皇帝から執政官にその全額が交付される運びだと言うのだから、その決算報告に関しても、執政官は一意に皇帝に奉る責めを負うことになるのである。

ゼノビオスもデニスと共に凛然と警衛の任に就いており、その式典の一部始終を目の当たりにすることによって、既往の秩序が完全に崩壊し去ったことを今更ながら確信させられたほどだ。

現に、多くが革まった。

一例を挙げれば、老カラヤニスなどは最高位尊厳侯の称号を得た上に、新帝から改めて二億円の俸禄を賜り、この場にいないアンドレアスに至っては僅か十四歳の身で一億円もの高禄を食むことになったほか、本来陪臣の身でありながらステファノプロスが五百万円、ネリッサが二百万円、ヤニとデニスが百万円、トニアとアウラでさえ五十万円と言う破格の扱いを受けて、直臣の身分を兼ねることを承認された上、主家カラヤニス家からも別途に俸禄を頂戴することとなる。

それらの人事案件は、老カラヤニスと総主教の描いた原案に沿ったものばかりだったのだが、例外的に新帝が老人達の意向に背いてまで押し通した案件も無いではない。

何しろ、原案では無給となっていたものを強引に覆してしまったのだ。

それは新帝にとって従姉妹にあたるマリレナに対するものだったのだが、三百万もの賄い料を支給すると言い出して、しかも堂々と実行してしまったのである。

十五歳の少女が皇帝としての専制権を初めて行使して見せたことになるが、ことが内廷の話だけに大勢(たいせい)には影響が無いと見て、老カラヤニスも苦笑して口を閉ざすほかに無かったのだろうが、とにもかくにも皇帝の勅裁人事であったことは確かだ。

ちなみに、この場合の「賄い料」と「俸禄」とでは画然と異なるものがあると言って良い。

この「俸禄」の場合、永続的な「家禄」と言う側面を強く含んだ表現なのだが、「賄い料」にはその色あいが無いに等しく、言わば個人へのお小遣いのような意味合いを持つことから、その継続性においても保障の限りではないのである。

とは言え、俸禄と言い、賄い料と言い、カネに変わりは無い。

皇帝となった少女は、近しい従姉妹にお小遣いを進呈したいと思ったに過ぎないのだが、一つにはその従姉妹には、専任の侍女が二人もついていることに拘った結果でもあったろう。

尤も、その二人の侍女は共にステファノプロスの娘であり、ステファノプロスがカラヤニス家の家宰身分である以上、その娘たちにしてもマリレナにとっては生まれながらの臣下だと言って良いが、マリレナにして見れば、自分の侍女たちには自ら報いたいと思うのが人情だ。

現行では、カラヤニス家の姫の召使いに対しては、カラヤニス家からそれなりの俸給が出ている筈なのだが、皇帝はそれをマリレナ自身の財布から直接支出し得るよう配慮を加えたまでであり、執政にしてもその幼いこだわりに対しては微笑みを以て報いた筈だ。

さて、この件に関してはもう一言触れておかねばなるまい。

殊に俸禄に対する考え方であるが、それが主君から頂戴するものである以上、頂戴する側にもそれなりの義務が発生することをである。

義務の中でも最大のものは無論軍役であり、それは当然俸禄の高に比例し、この政権では俸禄五十万円あたり一人の戦士を伴って参軍すべく規定しており、その規定に照らせばカラヤニス家は四百人の戦士を引き連れて参軍する責めを負い、ウェルギリウス家の場合はその半分の二百人と言うことになる。

一方で百万円の俸禄を頂戴することになったカラマンリス家の場合などは、少なくとも二人の戦士を伴って戦場に立つことを求められるが、翻って五十万未満の禄高の場合は、当主かその代理の者が一人で参軍すれば事足りることになるのだ。

尤も、女官たちの場合は如何なる高禄を頂戴しても軍役の義務を負わないとされており、いきおい戦士としての家臣団も必要とせず、同様の俸禄を受ける武官に比せば格段に裕福だと言って良い内情があり、この意味ではネリッサの場合の二百万は、武官の場合の五百万にも匹敵するほどの厚遇だとも言えるのである。

いずれにせよ、事前にヤサウェから齎されていた諸情報にも鑑み、最高位尊厳侯と執政の間で周到に練られた人事案件は、その全てが陽の目を見ることとなった。

やがて論功行賞(ろんこうこうしよう)はカラヤニス城に入った客将たちの身の上にも及び、それぞれに然るべき禄が宛て行われて直臣たる身分が確定し、そのほかにも、反スフランツェスの旗幟を鮮明にしたことを以て格別の評価を受けた例が少なからずあり、カンタクゼノス家も又、そのことによって五十万円の禄と共に直臣の身分を得ている。

なお、のちになって丹波世界で報じられた内容に照らせば、例の黄金入りの皮袋は一袋で二十キロもの重量があったことになる上、当時のヤサウェの手許にあったそれは都合十トンにも及んだとされ、しかもその多くが惜し気も無く新帝の手許に流れ、その恩恵にあずかった者もまた多数に上った上に、例の野天の市でヤサウェの配下の手から直接支払われたものまで含めれば、どう少なく見積もっても五トンに迫る純金が、ごく短期間の内に市場に放出されたことになるとされ、それがその後のローマ人たちの消費活動に少なからぬ勢いをつけた事にはなるのだろう。

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  1. 2008/12/10(水) 12:12:58|
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自立国家の建設 158

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さて式典を終えた少女は、一挙に二十人もの側近を引き連れて磐座(いわくら)に入ったのだが、ヤサウェの部屋は既に充分に拡張され、長椅子が左右対称に整然と並んで全員が楽々と座れるほどの体裁(ていさい)を整えており、煌々と灯りが灯り、床も壁も磨き上げられてほこり一つ見ることは無い。

入り口から入って中央の通路を進むと、正面には見慣れた石造りのベッドがあって、ヤサウェが一人黙然(もくねん)と腰を下ろして相対(あいたい)してくれてるが、少女から見れば、近頃起きた運命の大転換の全てがこのヤサウェを通じたオヤカタサマのお導きによるのである。

当然少女は無事に家督を相続したことを報告し、それが偏(ひとえ)にオヤカタサマのご尽力の賜物であるとして心からの謝意を表したが、あとに続く老カラヤニスにしても想いは同じであり、拝領の懐中電灯を後生大事に首から提げた姿で礼の言葉を言い重ねて已まない。

尤も、耳を傾けてくれる相手はヤサウェ一人であり、オヤカタサマの姿に接することは終(つい)に叶わず、代わりに強力な示唆を受けることになったが、それが移住地の選定に関するものであるだけに異存などあろう筈も無い。

ヤサウェは、新秩序が樹立された以上、候補地の検分にあたる者を早々に選抜すべしと言っていることになるが、ことは一刻を争う場合だけに凡そのところは既に目鼻をつけてしまっており、また、旧王宮などに残る美術品の保全に関して、その意義あることを強く示唆されたことにより、新帝が自ら陣頭に立つことが宣せられて、疾風迅雷の軍事行動が開始されるに至った。

何しろ、その対象となるべき品々のリストまで示されたばかりか、その全てがローマ人のネメシス移住後に齎されたもので、しかもその蒐集はオヤカタサマの手になるものだと言われてしまったのだから一刻の猶予もならないのである。

言ってみれば、全てオヤカタサマのコレクションに等しいことになるだけに、老カラヤニスなどは、耳にした瞬間血相を変えてしまったほどであり、新帝にとって初の征旅は老カラヤニスはもとより、デニスやゼノビオスを従えて空路颯爽と進発した。

真っ先に定められた標的は無論首都圏だが、敵勢の多くは既に逃げ散ってしまっており、上空に馬酔木の龍(あしびのりゅう)ばかりか数十万の部隊まで展開させて鯨波を浴びせると、残り僅かな敵勢も一戦も交えること無く悉く逃げ散ってしまうのである。

何しろ体長二千メートルにも及ぶ怪物が空を覆わんばかりであり、事前に知らされていなければ、寄せ手の方ですら浮き足立ってしまったろう。

現に、スフランツェス親子ですら逃亡し、その逃げっぷりは最早一目散と言うに相応しいが、ヤサウェの示唆に従って全て逃げるに任せ、追っ手など掛ける気配も無く、ただ、無数の巨龍がその頭上から火を吐くような眼光を放ち続けるばかりだ。

その際多少の出火騒ぎがありはしたが、それも舞い降りた秋津州軍の手によって瞬時に消しとめることを得て、新帝は緋色のマントを翻して馬上堂々の入城を果たし、数千点に及ぶ美術品を保全してその作戦目的を全うすることを得た。

宝石や貴金属の類(たぐい)とはこと違い、落ち行く敗兵にとって、絵画や彫刻などには何の魅力も感じられなかったのだろうが、その殆どが手付かずに残されていたのである。

その後王宮に本陣を布いて見せた新帝のもとには、改めて臣従を誓うものが陸続と馳せ参じたことは言うまでも無いが、この軍事作戦はほんの一時間ほどで完遂してしまっており、次の日には王家の直轄領はおろかスフランツェス領へも例に違わず龍を伴う侵攻を行って、その全てが一滴の流血も見る事無く終結し、事前に示されていたリストの中身に関しては、悉く保全することを得てのちにヤサウェの手許に引き取られる運びとなるのだ。

征旅はその後も順調に運び、押さえた拠点にはそれぞれ一個小隊を残しつつ、少女の軍旅は次第に巡察の色あいを深めながら進められ、金地に双頭の黒鷲を象った大旆(たいはい)の翻るところ、あらゆる局面で大量の服属者を得たが、中でもカラマンリス領やカンタクゼノス領に入った時などは、一軍の将として参軍するゼノビオスの面目も又一層躍如たるものがあったに違いない。

また、その巡察行に伴い各地に皇帝の名を以て高札が立てられ、居住区滅亡の見通しが改めて公式のものとなったのだが、無論その対策として一旦丹波へ避難することが大きく謳われており、移動の際に神域の果たす役割についても明確に触れられていたことから、草莽の民が一層殺到する結果を招くだろう。

混乱に備え高札付近には駆け込み相談所のような施設を設け、それぞれに一個小隊を配備した上、ローマ人女性の風貌を持たせた相談係を置いて万全を期し、やがてそれは数百箇所もの多くを数え全土に及ぶことになるのである。

従って時勢が鮮やかに変転してしまったことが一般庶民にもいよいよ明らかとなり、巷間スフランツェス親子は行方不明とされているものの、少なくともヤサウェの索敵網から逃れ出ることは不可能であり、親子にして見れば、如何に野に臥し山に隠れようとも周囲は敵ばかりと言う体たらくで、その運命もとうに窮まれりと言うほかは無い。

既に双頭の鷲の旗印に歯向かうものは存在せず、一年間の徴税停止(ちょうじ)令のこともあり、皇帝の征くところ歓呼の声を以て迎えられるに至ったのだが、その平定事業は盛んに空路を用いたこともあって只の三日で完了してしまい、果たすべき課題は次に移ったことになるが、無論それは移住先の決定と言う大仕事であり、主立つローマ人はその後の三日間を専らそのことに費やすこととなった。

先ずは移住先の地勢概要を見極める必要があるが、それが一箇所や二箇所では無い上それぞれ広大な面積を対象としており、自然その作業も大規模なものとならざるを得ず、常に千人単位のローマ人がSS六で瞬時に移動して行く。

その行き先はネメシスと地球を皮切りにその後荘園の全てに及び、丹波の胆沢城にしても最初の避難場所とされているだけに、上空間近に存分に見ることを得た上に、その模様を記録した映像は窓の月で繰り返し拝観することが可能であり、その上それぞれに関して多くの補足情報が齎される実態がある。

その情報を齎してくれる者がヤサウェである以上、判断材料に事欠くことは無い筈であり、ローマ人たちはネメシスは勿論地球と佐渡の環境が己れの棲息条件に合致し得ないことを認識した上で検討に入ったが、ヤサウェはひたすら質問に応じるだけで議論には加わろうともせず、オヤカタサマが領地を下さる相手は臣下たる新帝だけだと言うばかりだ。

結局セオドラ以外には一坪も譲る気は無いと言うことになるのだろうが、とにもかくにもその現地検分はまるまる三日間続いたのであり、しかもその間新帝と側近の者がオヤカタサマの座乗艦で過ごしたことが小さくない。

殊に、新帝が供御(くご)の役目を果たすべく懸命の姿勢を採り続け、迫水(さこみず)と名乗る秘書官の巧みな誘導もあって、最後の三日目を迎えるころには、オヤカタサマとの間に充分打ち解けた人間関係を構築出来ていたのだ。

少なくとも二人の間に横たわっていた垣根が格段に低くなったことだけは確かであり、少女は何かに付けて良く笑い、良く話し、対するにオヤカタサマの方も隔意の無い反応を示すまでになっており、自然仲睦まじい場面に頻繁に遭遇するに至り、老カラヤニスやネリッサが帝国の明日(あす)に想いを馳せながら、密かに安堵の胸を撫で下ろしていたほどなのである。

何にせよ、明らかに少女が変わったのであり、殊にそれまで抱いていた畏れの感覚が大幅に薄れてしまったらしく、オヤカタサマに対して大いに甘えることを覚え、俄かに大胆な言動が目に立つまでになったのだ。

その実例を挙げればきりが無いほどだが、最後に丹波の宮島と言うところで起きたことなどは、ある意味象徴的な出来事だったに違いない。

ちなみにこの少女は既に専用の窓の月を与えられており、その画面でさまざまな映像に接する機会を得ているが、その中には、かつて磐余(いわれ)の池の湖上で行われたと言う変わったセレモニーの映像も含まれていたのだ。

早い話が、船上の乙女が艶(あで)やかに舞いつつ巨龍を呼び寄せた儀式のことであり、かねて少女は剣舞を舞った乙女の装束に執着していたらしく、たまたまその現地入りを果たした機会に乗じ、同様の装束を纏ってみたいと言い出したと言う。

無論、願った相手はオヤカタサマであり、そばに控えるネリッサなどは肝を冷やした気配も無いではないが、案に相違してオヤカタサマは女性秘書官に命じて即座にそれを実行させてくれたのである。

その結果十五歳の乙女は、望み通りの装束に身を包んで供御のお役目を果たしたばかりか、あまつさえ黄金(こがね)造りの太刀を振るって剣舞まで舞って見せ、秘書官から御感(ぎょかん)斜めならずと伝えられるに至るのだ。

オヤカタサマにお喜びいただけたことになるのだから単純な少女は得意満面であり、しかもその席には、問題の式典に参加したと思わせる三人が当時の装束で現れ、流暢なギリシャ語を駆使して舞の手ほどきまでしてくれており、それもこれもオヤカタサマの意に沿うものと見るや、遂にはその三人を己れの身辺に侍らせるべく願い出て、オヤカタサマに承知させてしまう始末だ。

その結果、三人のかんなぎは当人の意思の如何を問わず、あっさりと皇帝の侍女にされてしまったことになるが、中世以来の封建身分制の中に生きている者にとっては違和感などある筈も無く、少女とオヤカタサマの織り成す人間模様が文字通り君臣相和し恩愛の情に満ちたものと映ったに過ぎまい。

少なくともこの間のオヤカタサマはこの上無く優しげな庇護者であり続け、最早その善意を懐疑的に見る者などいる筈も無く、果てはこの期間を「珠玉の三日間」と呼ぶ者さえ出るに至った。

中でも総主教などは命の瀬戸際から救われている身でもあり、もともと悪意の抱きようが無いところにもって来て、カラヤニスの一統やゼノビオスに至ってはとうに心酔し切ってしまっており、甚だしきは、オヤカタサマを伝説のプレスター・ジョン王になぞらえて奉る者まで出始め、その呼び名はのちに少女の身辺においてすら頻繁に用いられるまでになるのだ。

いずれにせよ、彼等にとってこの大旅行が大成功の内に幕を閉じたことだけは確かであり、さまざまな候補地の検分を果たした今、中でも丹後、但馬、若狭だけは領有と言う概念を以てオヤカタサマに対抗する者がなく、御意一つで如何なる大陸であれ頂戴することが可能ではあるものの、現実には指定された場所があることを知ったのだ。

三つの惑星の中にそれぞれ一箇所づつ指定領域が示され、それぞれの面積は概ね二百万平方キロほどだったのだが、それがかつての日本国の五倍を超える面積である以上、今のローマ人にとっては有り余る大地だ。

しかも、これ等の指定領域は駐屯軍以外全くの無人であり、移住すればその地が即座に皇帝の所有に帰すと言う話なのだが、丹波の場合だけは大いに事情が異なっており、その陸地の八割ほどが秋津州の主権の及ばぬ「外国」だと言い、方やオヤカタサマの領土には既に十億を越える人間が棲み暮らしていて、オヤカタサマの手も縛られる場合があるとされたのである。

尤も、オヤカタサマの領内には、馬酔木の山斎(あしびのしま)なる無人の大島(だいとう)があるとは言うが、それにはそれなりの理由があり、要は別途の使用目的がありそうなのだ。

一方一時的な避難場所に指定された胆沢城にしても、二の丸と称する外輪部まで合わせれば、既に数十万の秋津州人が棲み暮らしていると言うのだから、オヤカタサマの手が縛られると言う点では大同小異と言って良いが、この神域だけは全て城内に移設され、その中の王家の里以南は全て皇帝に下賜され、その中に限り皇帝の許しさえあれば全ローマ人が滞在する事を得ると言う。

無論、その領域は神域の全てでは無い。

要は結界内部の全領域から磐座を中心とする北部一帯を除外した場所のことであり、王家の里以南と言う以上、王家の里を含みそこから神門に至るまでの領域のことを意味しており、言って見れば東西二千メートル、南北二千七百メートルの範囲に過ぎず、少女の私邸としては余りあるだろうが、十万を超えるローマ人が過ごすには充分な面積とは言えまい。

まして滞在期間が長引けば不足を言う者も出るに違いないとして、その場合、ローマ人の多くが海上において船上生活を余儀無くされるだろうとされており、その意味でも益々最終移住地の決定が急がれるのだが、詰まるところ、最終移住地が、丹後、但馬、若狭の指定地の何れかに定まりさえすれば、その瞬間に余りあるほどの大地が皇帝の自由になると言う話なのだ。

目下のローマ帝国には、曲がりなりにも元老院と称する諮問機関が存在しており、そこでの議論も一気に白熱することになるが、老カラヤニスと総主教の間でも、相当数の参加者を交えて懸命の検討会が持たれ、のちにさまざな外的要因が加わることによって、国中を巻き込む論争に発展して行くのである。

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  1. 2008/12/17(水) 13:44:10|
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自立国家の建設 159

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さて、十一月の十三日(秋津島暦日)と言う日は、ローマ人にとっては特別な一日になったかも知れない。

津々浦々にまで立てられた高札によって、遂に脱出の実行日が明らかにされたからだ。

その高札は皇帝の名において全国民の一斉退去を高々と謳い、退去時の集合場所を例の神域に限定して見せた上で、その決行日を十一月三十日としており、余すところ僅か十七日しか無いのだから、現地に設けた相談所などはたちまちの内に大賑わいで、自然ヤサウェの繁忙振りも尋常なものではない。

何せ、その日の内に全員が一斉に退去することを宣言しているのである。

誰にしても、うかうかすれば置き去りにされてしまいかねず、神域に近い地域ならまだしも、遠距離の地域にあっては大混乱を招くと見て、空飛ぶポッドを直行便となし、前日までに相談所に集まりさえすれば間に合うことを伝えさせることにしてあるが、そうは言ってもそれだけのことで全ての混乱が収まってくれる筈も無い。

現に、出産を間近に控えた妊婦や重篤の病人の問題もあり、早期収容を期して医療用ポッドの配備まで予定しているが、各領主がどこまで積極性を示せるかも重要な課題の一つなのだ。

実際ゼノビオスなどは、百所帯七百人ほどの領民の避難にあたって、一世帯当たり百円と言う一時金の支給まで企図しており、ことが長引けば自身が破産してしまう恐れすらある有様なのだから、王家はもとより、カラヤニス家やウェルギリウス家の出費などは、それこそ途方も無いものになってしまう。

まして、今次の政変で論功行賞の果実にありつけなかった者の中には、領民のことどころではないと言って嘆く者も少なくないのである。

莫大な予算を手にしている執政にしてもそのことを重く見て、各豪族たちにそれなりの支援金を支給すべく検討に入ったと伝えられる今、既に神域には三万を超えるローマ人が居住し、昼間人口に限れば四万に迫る勢いなのだから、多目的店舗は言うに及ばず、神の馬場から神門に至る目抜き通りなどは大賑わいだ。

域外の地でも例の市が相も変わらず盛っているところにもって来て、この日を境に家畜や奴隷などの売却の動きが一層激化すると予想されるだけに、弥左衛にしてみれば手許から出て行く財貨も尋常なものではないのである。

尤も、それもオヤカタサマの財政規模から見ればさほどのことでは無いのだが、かと言っておふくろさまから齎される指示に照らしても、好ましいこととはされていないのだから、現地指揮官の身としては緻密な財政運営を求められていることに変わりは無い。

一方で主(あるじ)は席の暖まる暇も無いほどに駆け回り、今も各荘園から丹波や月に、ありとあらゆる資源を搬入し続けており、丹波の宙空に浮かぶ基地などはとうに満杯だとされ、大々的な拡張工事に入っているほどだと言う。

それは、各荘園で備蓄させていた資源を全て丹波付近に集中させてしまうほどの勢いであり、主の側近を通して届くデータから見ても、その異様なほどの物量には何らかの意図を察するべきなのだろう。

しかも、主が集めつつある資源には理解に苦しむようなものも少なくないと言う。

一例を挙げれば、複数の巨岩が丹波の天空の基地付近で新たな小衛星になっていると言い、中でも佐渡から運ばれて来たと言うものなどは、映像で見る限りまるで鯛焼きのような形状をしており、詰まりは、壮大な鯛焼きが宇宙空間にただただ漂っている構図なのである。

何せ、頭から尻尾の先までの長さが五百キロもある上、胴体の厚みが三百キロにも及ぼうかと言う代物であり、遅かれ早かれ何らかの意図を以て手を加えることにはなるのだろうが、おふくろさまも未だにその下知には接してはいないらしく、専ら「佐渡の鯛焼き」と呼び習わしているのだと言う。

かと言って、おふくろさまが暇だと言う話では決してない。

暇どころか全力を挙げて任務を遂行しているのだから、各地の現地指揮官たちもそれなりの負担を強いられることになり、かく言う自分も磐座に座しながらさまざまな下知を受けており、その多くは迫水秘書官を経て齎される場合が殆どだが、殊にオヤカタサマには伏せた状態で伝えられる事例が問題なのだ。

しかもその内密の指令が女性を対象とするものばかりで、中には格別の留意を求められる事例もあって、第一のそれはセオドラの保護と誘導に関するものなのだが、その次に位置するものがこれ又さまざまであり、中でも近頃はマリレナに関する留意点が増えている上、先の皇后アナスタシアに関するものも無視出来ない状況にある。

陰では専ら妖怪と呼ばれているその女性は、例のキャスティングの序列から言っても、もともと上位を占めていたこともあり、少なくとも最近の動静に付いては逐一掴んでしまっており、一時(いっとき)たりとも目を離すことは無いのだから、現在直ぐ近くの街中(まちなか)に潜伏中であることも当然承知している。

既に数日前から、老臣の親族宅に潜んだまま息を殺して様子を窺っているのである。

従う者は今やその老臣夫婦だけになってしまっているようだが、その隠れ家はと言えば例の野天の市からも程近く、先日ゼノビオスの老臣が既(すんで)の所で救われた地点から見れば精々一キロあるかないかであり、詰まり、あの坂道を下り切ってしまえば直ぐそこだと言って良いほどだ。

主は未だ一度もその者に対面する機会が無く、どう仰せになるかは不明だが、おふくろさまの指示にある「留意点」がオヤカタサマとの接触を計ることを意味するだけに、その対応には窮する事も無いではない。

何せ、その「接触」の中身たるや、出来得る限り濃密であることを以て最も望ましいとされているのだ。

いっそ主の座乗艦かその副艦に移送してしまえば簡単なのだが、主に知れれば全てがぶち壊しになってしまうかも知れず、かと言って独断で神域の内部に匿えば、いずれ新政権の側から無用の非難を浴びることは目に見えている。

いずれにせよ好ましからざる結果に繋がると見て、今の今まで手をつかねていたのだが、今日になって妖怪の老臣が単身神門に至り、国璽を差し出した上で新政権の行政責任者に面会を乞う挙に出たのだ。

無論、主人たる妖怪の指図で動いていると申し述べており、新政権側の出方を見ていたが、やがて新帝の勅裁を受ける形で護衛付きの馬車が出されたようだ。

それは当然迎えの馬車であり、妖怪は卒然として結界に入ったことになるのだが、このいきさつでは新政権側としても、まるっきり無視してしまうわけにも行かなかったのだろう。

結局セオドラの意思を以て新たな王宮に迎え入れた上、ネリッサの息の掛かった女官を三人も付けたと言い、王族としての体面を保たせるためには最低限の措置ではあるのだろうが、一方に政権側がセオドラとの対面を厳しく拒んでいる事実があるだけに、結局体(てい)のいいお目付け役だと言うほかは無い。

尤も、当のご本人は未だに内廷の主宰者たる矜持を捨て去ることは無く、自若(じじゃく)として時を過ごしていると言うのだから、政権側の方にも敵ながら天晴れと見る向きもないわけではないのである。

一方、不遇の主を見捨てる事無く最後まで付き従った老臣夫妻には、その忠心を愛でて例の黄金が二袋も下賜されたこともあり、彼等は誰に遠慮すること無く妖怪殿に仕え続けることを得たものの、今後においては、執政の手許からそれなりの内廷費が支出され、全てが例の女官団の手で切り盛りされる手筈であり、その意味では益々ネリッサのペースでことが進められるものと見て良い。

何せ、今やネリッサの勢威は抜きん出たものとなっているのだ。

しかも新帝自身が終始王家の里に居を据えたままであり、即位の式典以来その王宮には二度と足を踏み入れることはないと囁かれるほどで、その後の様子から見ても、王家の直臣が妖怪から名指しで召された場合でも、公用にかこつけて露骨に避ける例が目立つまでになるのである。

身から出た錆とは言うものの、妖怪の政治的影響力が全く失われ、その立場が新政権のお荷物以外の何ものでも無いことが既に明らかになってしまったのだ。

だが、その妖艶な美貌だけは依然衰えを見せないのだから、おふくろさまの求めるものも決して影を潜めることは無いだろう。

ただ、妖怪はかつて皇后の位に就くことを条件にスフランツェスと婚姻の密約を交わしてしまっており、そのことが世に顕れてしまうことを恐れ、スフランツェスの生存情報を耳にするたびにしきりに気に病む様子がありありと見えているが、この密約の件だけは新政権側に伝える予定は全く無い。

作戦上、百害あって一利も無いからだ。

しかも、皮肉なことに主はスフランツェスの処置方には触れようともなさらず、お尋ねしてもはきとしたご回答に接する事が無い以上、結局、ローマ人のことはローマ人に任せよと言うことになるのだろう。

尤も、主の意向の如何に関わらず一方に予想外のことも起きつつある。

かつて宮島で皇帝の侍女となった三人のかんなぎたちがいたが、そこから思わぬ副産物が生まれつつあったのだ。

彼女達は無論最初からセオドラのお気に入りであり、常にその傍(かたわら)にあって意見を求められることが少なくなかったのだが、それが高じて今ではその情報が格段に珍重されるまでになって来ており、皇帝に対する影響力が既に無視出来ないほどのものに成長しつつある。

それも皇帝本人の求めに沿っている点が「みそ」なのだが、今や王家にとっても貴重な情報源となってしまっており、窓の月と言うツールが存分に活用された結果、丹波の政治経済宗教等に関する基礎情報はおろか、オヤカタサマの周辺事情までが、皇帝とその側近たちに急速に認知され始めたのだ。

ヤマトサロンの主宰者たる女性などは、王家の内部では、恐るべき権力を有する怪物的存在として既に立派な有名人である。

とにもかくにも、窓の月の齎す動画映像の威力には凄まじいものがあったらしく、殊に人類の現代風俗に関してなどは、皇帝にとっても格別に興味の対象となり始めたことから、求めに応じて現代風の服飾品なども多様なものを献上して見た結果、彼女たちがその多くを試着するまでになって来ているほどだ。

しかも、老カラヤニスまでが同調しているほどなのだから、いきおいその他の側近たちにもその輪を広げ始めており、少なくとも皇帝の周辺では和装洋装ともにその着心地を知らぬ者は無いと言うほどの状況に立ち至り、遂には画面のオヤカタサマが用いる日本語にまで興味を示し、皇帝や側近たちが積極的に学び始める始末なのである。

この分では、少なくとも年若の者に限れば、片言の日本語を話し始めるのにさほどの時間は要すまいと思わせるほどだ。

だが、全てが順調だと言っているわけではない。

現に、最大の難関が別のところに生まれてしまっており、それが彼等に対して種々の予防接種を施すことを意味するだけに、その説得には苦慮するところが少なく無い上に、主の意図する目標自体が異常に高過ぎるのだ。

何せ、接種率の下限を五割となし、九割の実施を目指せと仰せになるのだから、その点強制的な実施まで想定して掛かる必要があり、相手が相手だけに一歩間違えれば大暴動に発展してしまうだろう。

尤も、かつて総主教が点滴治療によって短期間に非常な回復振りを見せたと言う実績があり、そのことが唯一の光明ではあるのだが、情け無いことにそれもこれも例のかんなぎたちの弁舌に頼るほかは無い状況なのである。

また、ここ数日のうちに実行予定の工事の一件もある。

その概要は言ってみれば神域における上下水道管の埋設工事のことなのだが、仰せの趣によれば胆沢城に移動したあとの恒常的な使用を慮ってのことのようだ。

遅かれ早かれ彼等は他の荘園に居を構えることになる筈なのだから、そこまでの準備が必要になるとも思えないのだが、主の構想の中では、彼等が移住地に関して結論を下すまでには一年は掛かることになっているらしく、断じて行えと厳命されてしまっている。

聞けば、胆沢城の方ではこれとの接続を前提とした工事が既に始まっているとのことで、結局否も応も無いことになるから、これについても早速準備に掛からなければならないのである。


そして問題の当日を迎えいよいよ待望の避難作業が行われたが、潜伏していたスフランツェス親子が自ら命を断ったのはその前日のこととされ、その知らせは妖怪殿を一人狂喜させたろうが、G四によってローマ人の全てが確実に捕捉され続けて来ているだけに、一人の置き去りもなかったことだけは確かなのである。

とにもかくにも、多数のローマ人を収容した神域は文字通り瞬時に移動させられ、胆沢城の受け入れ態勢にしても言うまでも無く完璧だ。

着地予定の領域には神域がすっぽりと収まるだけの大穴が掘られており、磐座の基部が収まる部分などは五百メートルに迫る深さであったために、湧き出す水も相当なものがありはしたが、ベイトンを用いた据付工事は瞬く間に完了してしまい、周囲の結界付近に僅かに開いた間隙にしても完全に埋め戻され、しかも領域の内外ともに大規模な植林作業まで開始され、避難民がそれぞれの部屋から出られるまでにものの五分と掛からなかった筈だ。

しかも、到着の数時間後には殆どの振動が収まってしまい、合図と共に全戸一斉に水道の蛇口を捻り、しばらく水を出しっ放しにするよう達せられており、その後各所で女性指導員が駆け回って無事に確認作業を終えたことにより、例の上下水道管の接続にしても殆ど瞬時になされてしまったことになるのである。

設置の概要を点描すればきりが無いが、方角に関して言えば、磐座の方角が真北に、神門が真南を向いており、その神門から直線で十キロほど南下したところが内堀の海岸に当たり、その海岸に沿って例の巨大プールが多数完成しているのだが、その中の十箇所ほどには既に悠然と先客が浮かんでいる。

監獄用の一棟にしても今度は神門の内側に設置されていて、神門の直ぐ外には新たな屯所が設けられ、既に多数の守備兵が姿を見せているが、その直ぐ南側はサッカーが出来るほどの草原であり、ローマ人たちが市を開くにしても何の不足も無いだろう。

結界の周囲一帯には相も変わらず膨大な軍兵がびっしりと配備され、域内への出入りを厳然と拒んでおり、その出入りに当たっては神門以外に方法が無いことを告げているが、外部からの攻撃はあり得ない今、その軍事目的は以前とは明らかに異なると言って良い。

また、王家の里に並び立つ建物の屋上に立ってはるかに北方を望めば、磐座の裏側の木立越しに二千メートル級の山が聳え立ち、その頂上付近などは既に白雪に覆われており、その豊かな保水能力が充分な生活用水を齎してくれる筈なのだが、無論その山には重大な秘密がある。

何せ主は、その中腹をくり抜いて巨大な地下施設を構築してしまっており、その施設は数十万の人間の暮らしに耐え得るほどの規模と同時に近代的な機能をも併せ持ち、一旦その中に入ってのち更に階層深く降って行けば、遂にはおふくろさまの分身に出会うことすら出来てしまう。

その施設の本来の使用目的に付いては定かでは無いものの、今も多数の軍兵が常駐して維持管理に当たっているところから見れば、いざとなれば即座にその威力を発揮し得る筈なのだ。

そもそもこの胆沢城と言うものは、本丸だけを取り上げても、地球時代の福岡県に劣らぬほどの面積を持つ堂々たる大地であり、しかも二の丸や内水をも含めた全体像として捉えるならば、例のピザ島に比べてもはるかに広大だと言って良い。

加えて、五割程度の山地率を保ちながら相当な農地がかなりの収穫高を誇っている上に、漁港らしきものまで散見され、多数の農家はもとより文教施設や浄水場や下水処理場があり、近代建造物を具えたポッドの発着所らしきものまで見えているだけに、トランジットキャンプとしての使用が長期化すると予測してらっしゃる主にとっては、既に全てが整ったと言うべきなのであろう。

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  1. 2008/12/24(水) 09:39:14|
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