日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 005

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NBS側としても、俄然秋津州軍の取材に励む。

さすがに航空機内の取材に関してだけは、許された時間が限られてはいたが、おおよそのことは明らかになった。

今回投入された全兵力は一個小隊、兵員千人、これは通常の兵制上の小隊単位に比べ圧倒的に多い。

降りてきたのは「SS六-一」と呼ぶ兵員輸送機であり、一個小隊の兵員の他に乗員は二十名とされた。

又、小隊単位の兵装として取材を許されたものの一つに「D二」と呼ばれるものがあった。

椎の実型の形状を持つその「兵器」は、薄い暗褐色を呈し、直径三センチ、長さ六センチほどの大きさのもので、一個小隊あたり十万機が配備されていると言う。

ほかに「G四」と呼ばれる超小型のものが一千万機備わり、形状だけは「D二」と相似形であったが、サイズが極めて小さく直径一ミリ長さ二ミリほどでしかない。

驚くべきことに、この「D二」「G四」は、ともに自律的な飛行が可能であると言う。

上空で待機していた他の一機は兵站補給専用の意味合いを持ち、名称は「SS六-二」、諸々の設備機材を搭載し乗員は二百名、この二機編成の「小隊」が秋津州軍の最小単位なのだ。

主として機外で活動する戦闘員が千人、機内に残って兵站援護にあたる兵力が二百二十人、それに十万の「D二」、一千万の「G四」と言う陣容であり、ほかに重火器類の装備などは一切見当たらない。

これを機会に国王専用機でさえ取材を許されたが、やはり円盤型の形状を持ち、その径八メートル、高さは三メートルほどで比較的ずんぐりとしており、その搭乗定員数は十二名ほどだとされ、挙句全機種とも滑走路を必要とせず垂直離発着を常とし、かつ水中での運行まで可能にしていると言う。

なお、航続距離、高高度上昇能力、最高速度、旋回能力、動力源、「D二」「G四」以外の搭載兵器、通信技術等のデータまではさすがに公開されることはなかった。

尤も、何れの国家といえども、これ等のデータについて全ての真実を開示するような例は無く、これとてもメディア側に特段のストレスを与えるほどのものでは無かったであろう。

それどころか、その後も秋津州は極めて親和的な姿勢を示し、これ等ハイレベルの軍事機密を除いては、撮影禁止場所などというものは一切存在せず、遂には国王自身の居室にまでカメラが入るまでになったのだ。

住民個々のプライバシーさえ尊重すれば、いずれの場所も立ち入り可能であり、加えて食事についても、殆ど違和感の無い食材の入手が可能なことが明らかになるに及んで、メディア側はそれまで全くの無償であった種々の費用についても負担することを申し出た。

彼らにしても、いよいよ永続的に新島に滞在して支局を運営する方針を固めたものであろう。

当然、通貨の交換レート問題が大きく浮上することになったが、これも又国民議会の「金融・通貨制度」に関する論議に俟つほかはなかったのである。


一方で、秋津州側が矢継ぎ早にカードをめくってくる為に、大統領のマシーンの間では「秋津州脅威論」が高まり、より有効な戦略が論議され始めていた。

幸い相手側に米国に対する警戒感や嫌悪感は一切見当たらず、唯一滞在を許されているメディアにしても米国系のNBSである。

加えて、その扱いには好意すら感じるほどであり、ワシントンとしても積極的にそのルートを活かすべきであろう。

また、そのためにも秋津州国王を公式に招待すべしとの声があがり、早速その打診をすることとなった。

ワシントンは実効的な動きを見せ始めたのである。

とにもかくにも、かの国には、高度の軍事機密を除けば、国内事情について秘匿しようとする意図が、全くと言って良いほど感じられないのだ。

さまざまに無償のサポートを享受しながら、独占的な取材を許されたかたちのメディアは、当然この国に対しては好感を抱かざるを得ず、ある意味バイアスの掛かった情報を発信していくことになるのも無理からぬことであった。

その結果、少なくとも一般大衆の好感度ばかりは依然として高まって行くに違いない。

何しろ、今回出現した怪力無双の空飛ぶ兵士とまるでUFOのような航空機の与えたインパクトには凄まじいものがあり、各国の当局筋は当然深刻に受け止めたのだが、それに引き替え一般大衆の反応はまったく対照的で、単にその好奇心を煽ろうとするかのような報道にも誘導され、警戒心を持つどころか、かえって支持層を広げてしまったかのようであった。

特に米国においては、大衆レベルの圧倒的な親秋津州論とは大きく食い違い、大統領のマシーンの描く戦略絵図が大幅な変更を余儀なくされるに至り、そのための判断材料や影響力の不足があせりと苛立ちを生んで、その空気の中からは、秋津州に対する否定的な議論が数多く行われるまでになって来ていた。

しかし、現地メディアにとっての行動規範はまた別モノであり、クルーは勇躍して取材を続けることになる。

そのクルーにしても、最近では、日本文化に対する理解度や日本語の会話能力を基準として選抜・構成されるようになって来ており、その興味も自然秋津州文化の特殊性に向かって行った。

まず、秋津州には警察、裁判所、監獄が無い。

何故無いのか。

無くても問題は無いのか。

取材を進めるにつれ、その疑問を解く鍵として、「若衆宿(わかしゅやど)」と呼ばれる独特の制度に突き当たったのである。

それは、ある一定の年限や規範によって、全ての男子が参加する組織或いは制度とでも言うべきものであるらしい。

まず三個村のそれぞれが個別にこれを持つ。

各村では男子は六歳になると、すべからくこの組織の言わば幼年部に参加し、十二歳で少年部、十六歳で青年部へと進む。

幼年部のものは、少年部の指揮指導を受け、少年部は青年部の指揮指導を受ける。

少年部(十二歳)に参加した時点で、最早幼童としての扱いは受けられず、例外なく夜間は若衆宿と呼ばれる共同の場所で過ごすことになる。

村毎に複数ある若衆宿は、村役と呼ばれる長老たちが無償でその施設を提供する決まりだが、その役割も長老たちの持ち回りになることが多いという。

若衆宿は、それぞれの「宿」単位で徹底した団体行動を基本とし、その内部での序列はそれぞれその構成員の互選で決まると言うのだが、権力闘争なぞは先ず起こらず、幼年期からの不断の団体活動の中でそれぞれの役回りが自然に固まって行くと言う。

そして年長者が順々に「宿」を卒業して行くたびに、これまたごくごく自然な形で新たな指導者たるべき者が推戴されていく。

先達(せんだつ)から連綿として受け継がれてきた若衆宿の理念や徳目が、彼等の厳然たる行動規範となる自然の「慣習法」を形成し、そのことが、民意の収斂していくさまをそのまま物語っているように思えてまことに興味深いと言う。

稀れにこの徳目から逸脱するものが現れた場合、その者を裁く時も又若衆宿の合議による。

万一、「慣習法に背いた犯罪人」と認定されて裁かれた場合、その身柄は、その家族や親族が預かることになるのだと言う。

その上、家族や親族までが村内で人交わりの制限を受け、物心両面に亘って影響を受けることとなり、過去においては、そのために一家心中に及ぶ事例まであったと言う。

また、限られた村社会の中では、見知らぬよそ者の存在など有り得ぬことで、ときに不審なものが村内をうろつき回れば、すぐさま若衆宿が自警団に早変わりする。

若衆宿を卒業したあとの者や一般の女性の行為を、「犯罪行為」と認定したり裁いたりするのは村役であり、この場合においても「罪有り」とされれば若衆宿で裁かれた場合と同様の処置を受ける。

このような風土の中では、警察や裁判所、或は監獄などと言うものは必要とされないのであろう。

また、子供たちは幼年期からの団体行動の中で早くから自立心の成育が促され、自らの属する若衆宿の公共性を自然に自覚するようになる。

幼い者が「個」としての我意を通したい場合に、いや応無く「宿」の都合との釣り合いを考えるようになるのだと言う。

「個」としての我意と「公」の利益と、どの辺で折り合いをつけるべきかを考え、思慮に余れば先達に相談する。

自侭(じまま)な行いは自然に抑制されるようになり、優先すべきは所属する「公」としての若衆宿と村の利益であることが、重要な行動規範としてそれぞれの「個」の内部に醸成されてくる。

幼い頃から郷党に守られ育まれ、長じては年少のものを保護教導し、時には郷党の運命を左右するほどの決断を迫られることですら起こり得るのである。

やがてそのことが、一人一人の心の中に強固な郷党意識と、「公」に対する痛烈なまでの誇りと責任感を形成して行く。

その結果、「公」の名誉と利益を損なってまで、「個」としての我意を通そうとする者なぞ先ずいないのだと言う。

ごくまれに、年長者がどう導いても「宿」という社会に調和出来ない者も出るが、その者は一種の「犯罪人」、若しくは「重度の精神性疾患」とみなされ、社会から隔離してしまうことも出てくる。

一人前の人間とはみなされず、その発言には誰もまともには耳をかさないことは当然だが、当人或いは親族の家の中に座敷牢を作り、「村」と言う「公」から許されるまでその中で暮らすことになると言う。

つまり、「犯罪人」に関わる物心両面のコストは、その家族や近い親族が負担することになるのだ。

尤も座敷牢などと言っても、実際に鍵をかけて物理的に閉じ込めることは少ないようだが、本人にしても家族や親族に迷惑をかけてまで脱走することは無いし、また、脱走して見たところで、狭い村社会ではほかに行くところなぞ無いのである。

一旦、村同士で何らかの紛争が起きれば、それぞれの村の村役同士が話し合って解決していくことになるのだが、稀に紛争がこじれて難しい局面になると、国王が間に入ることによって、今まで意地を張り合っていた者同士が自然に譲歩するようになる。

ほとんどの場合、王はにこにこ笑っているだけでけりが付いてしまうと言う。

それと言うのも、王自身に全く私心が無いことが誰の目にも明らかで、また、王は双方の内実事情を知り尽くしているため、当事者同士が恥ずかしくなってしまうことが多いようだ。

また、この国の特徴を、「恥」と言う概念を特別重いものとするところにおいて、古来の日本文化をそのまま引き継いでいると評するクルーも多い。

折りも折り、「公」の受けた恥を最も重しとしていることを鮮やかに象徴するような出来事があったのだ。

NBSのあるクルーが現地取材の最中に、たかだか十二歳の村民に殴打された事件である。

無論NBSはその経緯に付いても詳しく報じたが、結局被害者たる記者が少年の村の批評をするにあたって、著しく配慮を欠いた言動があったことが明らかになり、後日NBS側が公式に謝罪するに及びけりがついたと言う。

その記者は、無意識だったとは言いながら、その少年の村を辱めるような行為を働いてしまっていたことが判明したのである。

後追い報道によれば、少年はことが大きく報道されるに及び、「宿」に迷惑をかけたことを恥じ自ら座敷牢に入って謹慎していたものが、やがて自村の受けた「辱め」をその場で雪いだものとされ、当人の属する若衆宿においてはこれを不問に付したばかりか、非公式とは言いながら、かえって称揚さえしたらしい。

何はともあれ、十二歳の少年が自ら恥じ入り、自ら謹慎したと言うのだ。

まして、この国の村落では互いに見知らぬ人間は存在しない。

全員が顔見知りなのである。

顔見知りどころか、それぞれが産声を上げたころからの付き合いだ。

それほど濃密な人間関係に基づく村社会では、名誉にしても恥にしても、その情報は社会全体が共有することになりがちで、ほとんど隠しようが無い。

常にみんなが知ってしまうのである。

そのためもあって、「恥」はなおさら重いものとなってしまう。

この出来事が、NBSにとっても良い戒めとなったことは確かなのである。

秋津州とは、こういう村々を以て構成される邦だ。


このような邦の中で、少年は各地の若衆宿を転々として経巡って行く。

滞在先での朝は早く、中央から届くわずかな書類に目を通し署名する。

まれに中央の執務室に戻ることもあるようだが、大体において昼は村人と共に汗をかき、夜はその地の若衆宿で同世代の者たちと過ごすことになる。

いずれにしても、全ての村にとって王は頼りがいのある身近で親しい存在であり、村民との強固な紐帯は長い年月に亘る若衆宿での共同生活が基盤となっていることも確かだろう。

また最近は、若者の成長に伴い「王の伴侶」に関しても、如何にもの動きが見られると言う。

もともと、王は老若男女に圧倒的な人気を持つことで知られているが、年頃の娘達にとってのそれはまた格別のもののようである。

自薦他薦を問わず、多くの娘たちが「王の伴侶」としての暗黙の候補者となることに誇りと喜びを感じる風潮が強く、ある村に至っては自村の娘の中で特に見目良きものを選んで、ことさらに王に近づけようとする動きが有り、他村から批難を浴びたようだが、結局はほかの村も同様の行為を始めるに及んで、今では全村の競争のようになってしまっているようだ。

だが、肝心の国王はいまだ酒ばかりを好み、特定のお相手なるものは出現してはいないようではある。

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  1. 2005/06/18(土) 21:07:33|
  2. 妄想小説 主権国家|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:2
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コメント

ぬりかべ~

http://jump.sagasu.in/goto/blog-ranking/を見ていたら、リンクしてあったので、見にきました。又見にきまーす!
  1. 2006/02/25(土) 21:26:37 |
  2. URL |
  3. ぬりかべ #-
  4. [ 編集]

コメント御礼

>ぬりかべさま

いらっしゃいませ。
またのお越しを。^^
  1. 2006/02/26(日) 13:45:58 |
  2. URL |
  3. あんくるじいじ #-
  4. [ 編集]

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