日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 010

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秋津州湾

さて、新島「秋津州」が発見されてほぼ一ヶ月ほどの時が経ったころのことだ。

秋津州暦日で言うところの八月九日になって、日米英等の政府広報からあるアナウンスが流れた。

それによると、「秋津州は以前より港湾の開削工事を準備して来ており、その工事の進捗によっては危険レベルが高まる見込みがあるとして、秋津州政府からその領海領空への進入の禁止が改めて発令された。殊に八月二十日から二十一日にかけては大規模な工事を予定しており、領海内では激甚な海底の崩落をも想定している。」と言うのである。

現地においても同日、工事施工に伴う危険性を理由に、内陸内水ともに南西部の工事現場付近への立ち入り制限と、船舶と航空機の領海領空への進入禁止を発令し、その期間はおおむね八月一杯とされた。

また、駐在する外国人に対しては、二十日から二十一日の二日間は国外へ避難するか、さもなければ宿舎からの外出を控え、大振動に備えるよう特に強い警告までなされたのだ。

同時に神宮前の「東太平洋問題準備室」では、京子と国土交通省出向組との間で、飛行情報区に関してのすり合わせ作業が行われた。

なお、現段階では秋津州近海の上空は東京飛行情報区分のままであり、今次の港湾工事では大量の航空機の使用が見込まれることから、その飛行空域をあくまで秋津州領空に限定する旨の申し合わせを要したのである。

しかし、日本国の防空識別圏とは重複が無く、特段の打ち合わせの必要は無い。


筆者註:飛行情報区(Flight Information Region)とは、各国の航空交通業務担当区域区分のことであり、ICAO(International Civil Aviation Organization:国際民間航空機関)において決定されるが、通常、自国領空に隣接する公海の上空をも含み、日本は東京FIRと那覇FIRとを担当することとされている。(二千四年現在)


また、各国の測量その他の情報収集作業も一段落したものと見えて、上空を飛び交う航空機や周辺海域に満ち溢れていた艦船もようやくその姿を見かけなくなってきており、とりあえず秋津州の領空領海は全くの静寂を取り戻したかに思えた。

そしてその八月九日の夜、星明りの中をあの「SS六」が雲霞の如く天空から舞い降りてきたのである。

内陸にいたメディアクルーが初め黒い雲かと思ったものが、まぎれも無く無数の「SS六」であることが、やがてカメラの望遠レンズを通して確認されて行くことになる。

降下してきた円盤型航空機は、低空で例の空飛ぶ兵士を大量に吐き出しては次々と飛び去って行く。

兵士たちは半袖、膝上のウェットスーツのようなものを身につけ、腰のベルトには何かしら小型のツールを着装し、湖面すれすれで降下速度を緩め、そのまま次々に水中へ消えて行くのである。

クルーたちの目には、外洋にもその数倍もの人影が舞い降りて行く姿が映り、その途方も無い膨大さに驚きながらもひたすらカメラを回し続けるほかは無い。

一部は水中に入らず、内陸部の岸辺付近に大きく展開すると共に、外郭堰堤の上部や切り立った岩壁面にも数多くの兵士が取り付いた。

そしてその殆どがツールを手に取り、その先からは閃光が煌めいている。

星明りの中に大砂塵が舞い上がっているところを見ると、どうやら岩盤を穿っているようだ。

切り立った壁面に取り付いて作業中の兵士たちは、足場も組まず命綱も付けず軽々と動作しており、水中からも淡い光が漏れてくるところを見ると、やはり同様のことが進行しているのだろう。

かくして堰堤部はみるみるうちに細かく破砕され、作業開始二時間ほどで早くも湖水と外海とが見事に繋がってしまった。

あたかもその部分だけが、最初から破砕しやすいような素材で作られていたかのようでさえある。

夜明けを迎えるころには、この驚くべき開削工事の実態が世界に報じられ、工業先進国の間には微妙な緊迫感が走ったことも確かであったろう。

「湾内」では巨大な基礎工事が進み、桟橋や突堤用の枠組みがいくつも運ばれて来て、その組み立て作業が続いているうちに、またまた不思議な形状のものが静々と上空から舞い降りてきた。

それはそれで膨大な数なのである。

のちにそれが「SD」と呼ばれるもので、積載物の種類によって多様なタイプが存在することも分かってくるのだが、とにかく巨大なドラム缶のような形状をして、直径こそ「SS六」並みであったが、その高さは直径の一倍半はあろうかという不恰好な姿だ。

内陸部の危険地帯ぎりぎりにまで進出してカメラを回していたクルー達が予想した通り、それは組み上がった枠組みの傍らに停止し、その中に生コンらしいものを繰り返し注ぎ込み始め、それとともに兵士たちが長大な機材を枠の中に差し込みどうやら盛んに攪拌しているようだ。

とにかく巨大な型枠が次々と組まれていき、膨大な数の「SD」が次々と飛来して来ると同時に「SD」や兵士たちが、多数の資材を伴って周囲の外海の中にも静々と入って行く。

既に大規模な桟橋や突堤などが複数姿を現しつつあり、また、大型船舶の修復用と思われる複数の乾船渠の建設と、それに続く運河の掘削も圧倒的なスピードで進捗しているのである。

そのうち内陸部の真新しい設備を望遠レンズ越しに観察していた中で、土木関係に詳しい一人が妙な事を言い出した。

セメントを用いた生コンクリートだと思っていたものがどうも違うようだと言うのだ。

秋津州側に取材して見ると、やはり別種の素材であり、その名も「ベイトン」だと言う。

特に強度や耐久性に優れ、施工の際の手軽なことはセメントとは格段の違いであり、施工時にその内部の気泡発生を自律的に排除する機能を持ち、また、岩盤の上にこれを流し一定以上の圧力を加えることで、岩盤と融合して強力な接着効果を発揮しながら融合同一化してしまう性質がある。

特筆すべきは、特殊な素材の組み合わせにより、海水と真水の使い分けが可能で、凝固に要する時間も手軽に調整出来る事だと言う。

ようするに、またまた新しい素材と技術の出現であり、ここに堂々たるサンプルまであって、秋津州商事の取り扱い品目にも俄然加わることになりそうだ。

さて、それからも数日の間、秋津州南西部では昼夜を分かたず眩い発光が観測され、その地鳴り振動は全島に及び、外海の水中にもさまざまの資材の搬入が続き、二十日の日暮から二十一日の夜明け前にかけて、大音響と大振動を無数に繰り返したのである。

また、この二十一日の午後から、湾口近くの領海に中国籍の艦船が多数姿を現し、なにやら作業中であると言うニュースが流れ、これは主に日本のメディアが盛んに報道することになった。

曰く、新しい湾口の測量作業であろう。

いや、わざわざこの大工事のさなかに危険を冒してまで慌てる必要もあるまいから、また、何かしらの事故が発生したための救援行動ではあるまいか、などと言う。

最も多かったのは、海中の潜水艦の事故だろうと言うものであって、恐らく、秋津州の大陸棚に近づき過ぎた結果、海中であの大規模工事の影響をもろに受けてしまったのではなかろうか。

この時期に接近すれば、非常に危険であると言うあの警告を世界中が知っていた筈なのに、無謀にもそれを無視した結果だろうと言う。

まあ常識的には、海上にある艦船ならいざ知らず、潜水艦が潜水したまま他国の領海に進入して行けば何が起きても不思議は無いし、何にも起きないほうがかえって不思議なくらいなものだと言う意見が噴出した。

しかし、関係各国政府の公式コメントは一切出ないまま、当の中国艦船は無遠慮に、湾口付近にまで近づいてうろうろしていたが、しばらくして全く姿を消した。

また、NBSクルーの証言によると、工事開始直後の十二日には相当大きな地鳴り振動を伴いながら陸地全体がかなり浮き上がったと言う。

内陸部に数ヶ所設置された定点カメラの映像を分析しても、陸地がゆっくりと上昇し二十二日までその位置を保ったあと、またゆっくりと下降し始めたとしか思えないと言うのである。

そしてその沈降の速度は徐々に落ちて来てはいるものの、不気味な地鳴りを伴いながら未だにゆっくりと続いており、挙句新島の周囲には大量の気泡が凄まじく吹き上がって来ていた。

この映像を配信された各メディアでもいろいろな論調が氾濫したが、この時浮き上がった高度についての分析では十五メートルから二十メートルほどだとも言い、しばらくの間大きな話題を提供することになった。

また、定点カメラの映像でも、その期間は湾内の水位が二十メートルは下がり、浅瀬の一部が水底を見せてしまっているところから見ても、この陸地が二十メートルほど浮上したことだけは確かだろう。

その間も凄まじい勢いで工事が進み、次々と資材が搬入され続け、さまざまの重機や、別の場所で造られたとしか思えない建物までが、そっくりそのままの姿で上空から運ばれて来たりもした。

港湾設備の一部らしき建物ですら据え付け工事が進み、車両通行用のレーンと大型のゲートなども整備され、港湾と一般の地域との境界は長大なフェンスを以て整然と区切られていった。

しかし、少なくともこれ等の地鳴り振動と吹き上がる気泡は、この二十二日を境にして徐々に静まって行ったことは確かだ。

舞い上がる砂塵も収まり、辺りの景色が見通せるようになったころ、どうやら新しい湾口の幅は五千メートルにも達していることが視認されるに至り、岩盤を開削した真新しい切断面は、まるで鋭利な刃物で切り割られたもののようである。

また、その後の調査では、この湾口は水深百五十メートル超の部分だけでもその幅員が四千メートルを超え、超大型船の出入りに際しても何の不自由もない規模であることも確認されていった。

本来なら海上部分の開削だけでも相当な大工事である上、まして海面下においてはその数十倍の規模が想像され、いかに大掛かりな準備がなされていたにせよ、またまた各国の驚きを呼んだことも確かであった。

のちになって提出されることになる新たな大縮尺海図においても、この新しい湾口の大きさが短期間に造られた人工のものとしては、とんでもない規模であることが確認され、同時にこの新たな港湾の名が秋津州湾と記載されていたと言う。

さて、いよいよ王の拘束から解き放たれた秋津州の大地は、いまや重力の命ずるがままに微かな沈降を続け、周囲には僅かに吹き上がる気泡が続いている。

海面下で封入されたであろう膨大な「ベイトン」が上下の岩盤と融合し、これまで不安定であった新島が海嶺の頭頂部と渾然として一体化しつつあり、王の壮大な作業の根幹が完成しようとしていることは間違いない。

八月も末近くになると、体感し得る沈降はとうに無く、吹き上がる気泡も収まり、時折り続いていた地鳴り振動も静まった。

外海の海中からは膨大な資材が浮上して来て、これまた膨大な兵士たちの手によって、次々と上空へ運ばれて行きやがて見えなくなった。

 港湾工事後の秋津州湾の概観

simamoto1koji.gif


予定された通りの八月の末に至り、工事の大掛かりな部分の終了宣言が発せられ、国王の兵士たちは全てその衛戍地へと帰還して行ったらしく、秋津州には再び平静な生活が戻りつつある。

たまたまアテネオリンピックも閉幕し、メディアにおけるソースとしても秋津州に関する話題は自然トップランク扱いとなって行く。

開削工事の映像が繰り返し報道され、またその際に出現した膨大な円盤型航空機と飛行する兵士たちの映像は多くの視聴者の耳目を引き付け、その謎めいた存在について俄か仕込みの軍事評論家たちが口角泡を飛ばすこととなった。

当然、工事に投入された膨大な物量が問題である。

とにかく数えきれないほどの量であり、少なくみても「SS六」が十万機、一機当たりの兵士が千人として、それだけでもう一億の大兵力となる計算だ。

いや、「SS六」はその十倍以上だと言う見解もあり、そうするとその兵力は十億以上と言うことになってしまう。

普通どんなに無理をしても、十億の常備兵力を持つ為には、少なくともその地域の人口が百億以上でないとならぬだろう。

地球の全人口がおよそ六十五億でしかないのに、どう考えても理屈に合わないことは小学生にでも判ることだ。

そのうち、記録映像の連続画面などを熱心に観察していた者の間から、「SS六」の数はとてもとてもそんなものでは無く、一千万機以上だと言う意見まで出てきた。

そうなると、もう兵士の数は百億だと言い騒いでいる。

尤も、近代戦においては脆弱な装備の陸兵など例え百億配備したとしても、ごく短時間の内に殲滅し得る兵器などいくらでもあり、決してその数だけが問題なのではない。

本当の意味で問題視されるべきは、その大軍団を建設し維持するための、とてつもない負担に耐え得るほどの強大な国力の存在にこそあるだろう。

同時に、それだけ膨大な兵士を短時間で目的地に移動展開させ、意義有る作戦行動をとらせ、またそこから短時間で撤収させ得る、いわゆる機動力と兵站補給機能こそが重要であり、なおかつ大軍団を組織的に連携させ、統制ある作戦行動をとらせるためにも、高度の通信技術が必要不可欠なのだが、この点では以前秋津州商事も公表した特殊な通信技術の存在がそれを暗示していよう。

その際、秋津州商事は主要各国に対し既にこの特殊な通信技術情報を開示済みであり、合わせていずれからもクレームが出ていないことをも主張していた筈だ。

この件においても各メディアは、挙って各国政府筋に取材に走ったが、判ったのは既存の通信技術に対する障害は一切発生していないと言うことだけであって、具体的な技術内容については何一つ出て来てはいないのである。

その結果、そのような通信技術の存在そのものを懐疑的に見るメディアも少なくないのだが、現実に報道画面の映像は、大軍団と優れて組織的な運用能力の存在を大声で主張し続けており、そのことが何よりもこの通信技術の存在を裏付けていると言う者も多い。

もう一つの謎は、軍隊の衛戍地についてであると言う。

そこは、これほどの大軍団を収容し、訓練を含め組織的な団体行動をとらせることの出来る場所であり、当然その生活が全て担保される場所でなければならない。

いずれにしても、その場所こそが前から噂されている「王の荘園」に違いない。

そこには、これほどの大軍の編成を可能とする巨大な文明がその背景として必要になってくるが、その巨大な「荘園」こそが種々の物産の産出元であり、秋津州の財政を豊かに支えている源なのだから、全ての謎はその「王の荘園」にあると言うことになる。

とにかく、その「王の荘園」の手掛かりを掴むことこそが、何にもまして最優先の課題であると言う。

そして残りの問題は、その高度な文明水準にあるだろう。

「SS六」や「飛行する兵士」の動力や、飛行中に音も無く自在に停止し得る技術こそが問題なのであり、殊に兵士たちの持つ怪力や飛行能力については、現代科学の常識をはるかに超えている。

然るに、一度として戦闘場面を見ることが無いため、その戦闘能力についてのデータも無く、とにかく無い無いづくしで一言で言えば謎ばかりだ。

全ての議論はそこで行き止まりになってしまい、あとは堂々巡りを繰り返すばかりで、一部のメディアに至っては「秋津州は世界の脅威」論まで叫び始めたようだが、大多数のメディアにおいては未ださほどのことはなかった。

一つにはこのころ、NBSが流した報道の一部に実にほほ笑ましいものがあったほどだ。

それは、王とマーベラが揃いの浴衣を着て、団扇を片手に縁台で夕涼みをしている映像で、マーベラの着ている浴衣一式は無論王からのプレゼントであると言う。

そこには秋津州の子供たちの姿もあり、愛らしい浴衣姿の三歳ほどの女の子が、国王の背後からぶら下がるようにして甘えかけており、もう一人二歳ほどの男の子は金太郎の腹掛け一つで、可愛いおちんちんを見せたままマーベラの膝で遊んでいた。

NBSは、その仲むつまじい姿を、米秋両国の輝ける未来像にオーバーラップさせながら積極的に報道したのだ。

国王については、墜落した米軍ヘリの救助の際にも、岸辺で甘える幼童たちとのごく自然なふれあいなども報じられており、米国大衆の人気はもともと高かったのだが、今回更に米国市民であるマーベラが一枚加わることによって、その人気にさらに拍車がかかったようであった。

その強力なリーダーシップと父性愛を強調する余り、「秋津州のジョン・ウェイン」と呼ぶメディアまであったほどで、大衆との垣根の無い普段の生活ぶりと、ひ弱な子供たちをいとおしみ庇護するその父性については殊に好評だ。

以前にも触れた通り、NBSは秋津州から無償の特別処遇を受けて活動しており、また取材を重ねるうち、純朴な暮らし向きの住民たちに接する機会が増えるにつれ、まるで古代のような「村社会」に対して、熱狂的なシンパシーを感じる者まで出てきている。

とにかくNBSから見た秋津州の風景は、今回の大規模な工事を除けば、まことに「のどか」そのもので、秋津州に対する懐疑的な見方など一向に出てこない。

さらには、国王と個人的にも親密な筈のアメリカ市民マーベラの情報からでさえ、「危険な秋津州」はその片鱗さえ漏れては来ないのである。


八月三十一日十時三十分 王とマザーと京子の通信。

王と京子の現在位置はマザーの船内である。

マザー「お申し付けの専用機タイプ一機と『RC-M』の用意、整いましてございます。」

王「うむ。」

マザー「無条件供与でございましたわね?」

王「うん、手土産だ。」

先日来米国からの招待状が山積みになっており、近日予定の米国訪問の土産に国王専用機タイプ一機と付属の兵士二体を無償で供与する予定なのだ。

今、相手が一番欲しがっているものでもあり、これはかなり大きなカードになるに違いない。

マザー「ワシントンの造り笑顔の理由でございますわね。」

王「・・・。」

京子「そのつくり笑顔も、少し引きつっているようでございますが。」

王「それほど、甘い相手でもなかろう。」

マザー「背後で剣を研いでおりましょう。」

王「当然だろう。ヤツらの銃は全弾装填済みだ。」

それこそがあの国の普段の姿である以上、少なくとも若者は、ごく普通の外交を行う心算のようだ。

言い換えれば、普通の外交を行い得る環境がようやく整いつつあると言うことなのだろう。

王の予測した通り、ワシントンは秋津州の海底の秘密を公表しない道を選択したのだ。

そして、公表すべき機会を明らかに失いつつある。

太平洋上にぽっかりと浮かんでいた巨大なピザ、その「浮かんでいた」痕跡そのものが消滅しつつあるのだ。

このまま、あと数日もすれば、海嶺の岩盤と融合し同一化が完結する。

マザー「村上優子の最新データでございます。」

マザーから若者に向けて、女性工作員に関するさまざまなデータが送られてくる。

王「・・・。」

マザー「NBSの内部の協力者は、一名だけ確認済みでございます。」

マザー「三ヶ月以上遡りましても異性との肉体交渉は無く、検査の結果、重大な感染症の恐れはございません。」

マザー「八月末日から九月十日までの期間、懐胎の確率ゼロパーセント。」

王「懐胎の確率とは何のことだ?」

マザー「言葉通りの意味でございます。」

王「・・・。」

京子「陛下のご体験学修の実施期間でございます。」

王「相手は生身の女性だ。向こうにも都合と言うものがあろう。」

京子「あちらさまは、大歓迎でございましょう。それこそが作戦の第一段階でもございますから。」

王「勝手に決めるな。」

京子「申し訳ございません。」

王「・・・。」

マザー「お言葉ですが、マーベラさまの手も握れない状態では、これも必要なことでございましょう。」

若者の並々ならぬ好意に配慮してわざわざ敬称がついたようだが、それにしても、マーベラとは未だにプラトニックな関係のままのようで、マザーと京子はその点をこそ問題視しているのである。

マザー「いずれに致しましてもきちんとご学修頂かねば、のちのち悪しき結果に繋がる恐れが高うございます。」

京子「陛下、それではあちらさま次第ということに致しておきましょう。」

王「それより、今のうちにマーベラを国に帰して置きたいものだが・・・。」

マーベラの身の安全を計るために帰国させたいが、本人を納得させる方法が無い。

「王の想い人」としてのマーベラは、敵側からすれば格好の標的になり得る事を話せば、納得はするだろうが、言えば言ったで当然洩れるであろう。

或いは、マーベラがそれを洩らさないほどの思い入れを若者に対して抱いていれば、危険回避のために我が身ひとつで帰国するとも思えない。

いざと言う場合、王の特殊な能力によって、瞬時に空間移動させてしまうのが一番手っ取り早いのだが、その方法も採れないこともあり得る。

何故なら、王とマーベラの間には特別な通信回路などは存在せず、なおかつマーベラの所在が不明な場合、さすがにどうしてやりようも無いのである。

ごく普通に例の「G四」をマーベラの周囲に配置して置きさえすれば、たいていの場合瞬時に対応出来るのだが、これも若者の意思により実行出来ないでいる。

もし実行すれば、彼女のプライバシーを完全に無視してしまうことに繋がり、発覚すれば彼女の心を失ってしまうことを強く恐れるからであろう。

マザー「潜入中の人数も、二十六人に増えておりますわ。」

王「相変わらず協力者が食糧などを運んでおる。」

マザー「あんなぼろ舟で、よく来れるものですわね。」

王「この前は一隻転覆していたな。」

秋津州外周の岸壁に激突して、引っくり返った船もあった。

それでも、夜陰にまぎれて三十メートルものロッククライミングを敢行して入って来る。

マザー「今後は、湾口からも来るでしょうね。」

王「うむ。」

マザー「装備も変わりましたわ。」

苦労して重機関銃まで持ち込み、その兵装装備においても格段に本格化している。

王「うむ。」

マザー「作戦目的は、未だ情報収集の段階からは進んでないようでございますが。」

王「誰の血も流さずに処理したいものだ。」

マザー「このたびの村上優子の入国で、情報量は一気に増えましょう。」

王「・・・。」

京子「それも、陛下次第でございます。」

王「わかっておる。」

女性工作員に対する特別な接遇は、情報収集のための王としての責務であるとまで言っていることになる。

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  1. 2005/10/12(水) 15:54:36|
  2. 妄想小説 主権国家|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:2
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コメント

毎日楽しみに呼んでます。

毎日、楽しみにして読ましてもらっています。毎日、一編づつ創作していくのは、大変ではないでしょうか。物理的時間も含めて、ストーリー展開の構想はいつ考えているのですか。歴史、国際情勢、地政学、超科学、環境問題、永久エネルギー、ヤタガラスの意味、真のODA,教育の意味、指導者のリーダーシップなど著者の博学とその絶妙な組み合わせによリ、小説という形をとりあるべき主権国家というものの警笛を今の日本に訴っえている。下手な評論家の本より核心を突いて痛快です。友人に会うことにブログという新しいメディアを使って面白い小説書いている人いるよ推奨しております。私のブログにリンクさせてもらいました。今後もご期待しております。
  1. 2005/10/13(木) 00:20:36 |
  2. URL |
  3. ツインムーン #-
  4. [ 編集]

コメント御礼

>ツインムーンさま

コメントまことにありがたく御礼申し上げます。
なによりの励みになっております。

実は、最近MSDNの新しいディスクが入荷致した関係上、若干忙しい日々を送っておりまして、多少アップが遅れてしまうことを苦慮しておる次第です。

そこへもってきて、頭の中のイメージがなかなか文章になりにくく、若い頃にもう少し勉強しておけば良かったと今頃になって悔やむ毎日です。

誤字脱字等ご指摘くださるようお願い申し上げます。
  1. 2005/10/14(金) 00:17:07 |
  2. URL |
  3. あんくるじいじ #-
  4. [ 編集]

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