日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 002

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秋津州(あきつしま)登場

それから二十四年の歳月が流れてから世間は驚いた。

二千四年七月十日の朝のことだが、なんと、くだんの海域に突如として「新島」が出現したと言うのである。

それも、幾何学的真円に近い形状を持ち、その直径は概ね百キロメートル、そそり立つ外輪部の高さは三十メートルにも及んでいて、まるで巨大なテーブル型氷山を見るかのような景観だと言う。

なお、突如としてと書いたが、およそ現代の情報収集能力から見て、それは全く有り得ないほどの唐突さだと言って良い。

何しろ、これだけの規模の変化ともなれば相当な大音響や振動を伴う筈であり、少なくとも米海軍の水中音響哨戒網がその兆候を捕捉出来ない筈がないのである。

事実、米軍の水中音響哨戒網は確実にその異変を捉えていたのであり、それは、途方もなく巨大な物体が静々と沈降して行くさまを充分に推定し得るものであったとされ、「それ」が沈降していく過程で発生させたであろう大量の気泡が、海面に向けて吹き上がる音は相当なものであったらしい。

ただし、その音もほんの十数分でほとんど途絶えてしまったがために、この時点ではその正体までは不明だったものが、のちに人工衛星や偵察機からの映像によって、ようやく七千九百平方キロほどの一島嶼であることが判明するに至るのだ。

いや、厳密に言えばそれは、「島嶼」と呼んでしまうには余程ふさわしくない規模と実質性を具えており、南西部には二千平方キロにも及ぶ満々たる湖水を持ち、北西部に至っては麓に湖沼を抱いた山岳地帯まで具えていると言う。

何しろ七千九百平方キロと言えば、兵庫県よりは小さいものの山形県を上回るほどの広さがあり、内水部分を除いた陸地面積だけをとっても淡路島の十倍にも匹敵する以上、最早堂々たる陸地であると言って良い。

いずれにせよその島が、五十%ほどの山地率を保って厳然と太平洋上にあることだけは確かだとして、各国も急遽調査活動に入ったとされたが、たまたま全くの別件で、NBS(National Broadcasting System)と言うビッグメディアがヘリ付きの船でこの近海に出張っていたことから、やがてさまざまの意味で望外の幸運を拾うことになるのである。

彼等は、規模と言い内容と言い米国でも際立って一流のメディアとされ、その本来のいきさつから言っても高機能の機材を過不足無く携えていたことから、初期のうちから価値ある映像を存分に我が物に出来た上に、彼等の齎した「大発見」の第一報は衝撃的と言って良いほどのもので、またたくまにトップニュースとなっていった。

なんとこの島には、既に多数の人間が住み暮らしていると言うのである。

無論、未知の人々だと言って良い上に、その他にもさまざまに衝撃的な事実が報道映像となって齎されたのだ。

その映像で見る外輪部には二十を超える望楼が点々と建ち並び、その頭頂部からは一見灯台標識を思わせるものが突出し、挙句あたかも国旗ででもあるかのように旗まで翻っており、しかもこれらの望楼近辺には兵舎を思わせる建物まで付属し、それを守備する兵員にしても一望楼あたり五十人もの多くを数えるに至った。

詰まり、兵員だけで一千もの多くを備えている事になってしまう上に、内陸部にも大小さまざまな建物が点在し、学校らしい施設の屋外部分では小児幼童が群れ遊ぶさままで捉えており、中でも工業生産用を思わせる建造物に至っては、どう見ても近代的なコンクリート造りとしか思えないのである。

その上、群生する古木や牧場を思わせる草原地帯がある一方、ごく狭小ながら農耕地があり、この島が原住民にとって、長い間生活の場となって来ていることを誰しもが否定し得ない景観であったのだ。

新島海域概略図

20050221005933.gif



このような状況から、各メディアに登場する専門家たちの意見もまた、そうとうにかまびすしい。

第一に、この新島が過去いずれの国にも属したことが無い。

これについては全く異論が出てこないと言うが、いずれかの国に属するもなにも、発見されたことすら一度もなく、無論いかなる海図にも記載されているという主張すら無いのである。

第二に、この島には先住民と思しき多数の人間が存在し、その着衣も目に付く範囲ではごくありふれた洋装であり、さらに集団的教育施設まで具えているところから見ても、一定の文明的な秩序ある統治と治安維持がなされていると考えられると言う。

しかし、この「一定の文明的な秩序ある統治と治安維持がなされている」かまでは未確認であるとして、海賊行為なども念頭に置いて、国際社会にとって「脅威」となり得る可能性を示唆する見解も存在し、さらに大衆の興味を引くことになった。

第三に、樹林の中には樹齢一千年をはるかに超えるものまで散見されると言い、そうである以上、この島が上古以来連綿と存在したことになってしまい、それほどの長期間一度も発見されなかったと言う点で謎はいよいよ深まるばかりである。

何しろ、かってこの海域では海底の隆起変動騒動があり、その時にも大量の学術データが収集された筈なのだが、その際ですらこの「島」はそのかけらすら発見されてはいないのだ。

第四に、発電や送電に係わる設備が見当たらず、電力すら持たない低レベルの文明水準が想起されるとしながら、一方に自動車と呼べる車両が見受けられ、道路にしても大規模かつ見事に整備されており、この点に関しては各論相俟って更にかまびすしい。

そもそも自動車を生産し、かつ利用するということは、広範な近代文明をその背景に持って初めて可能になることであって、電力一つ持たない離島での生産など到底不可能だとされ、結局、外部から持ち込まれたと見るほかは無いから、従前から外部との接触があったと考えざるを得ないと言う。

第五には、原住民が、黒い髪、黒い瞳、そして比較的白い肌の持ち主ばかりで、どう見てもアジア系を想わせる民族的特徴を備えていることから、最も近接する日本などでは、このことが民衆の更なる興味をひいて、各局とも挙って特別番組を組み、にわかに専門家と称する人々が数多く登場し、いきおいその民族的分類の考察に及ぶ者が多く、ますます彼等の格好の餌食となって行くのである。

秋津州(あきつしま)概観

20050221150302.gif



そうこうするうちに、第二のニュースが飛び込んできた。

それは、この新島の南西部に広がる広大な湖で起きたと言い、聞けば漁労中の原住民の上を米軍のヘリがかなりの低空で飛行中、一隻の船に接触した挙句、こともあろうに墜落してしまったと言うのだからことはおおごとだ。

一報に接した米国市民の中には、僻地に住まう未開人が不遜にも我が栄光の第七艦隊に牙をむいたと思い込み、犠牲になったであろう同胞の悲運に鑑みて大いに憤慨する者まで出たと言うが、その後の詳報で事実は全く異なるものであることを知るに至るのだ。

NBSの報ずるところによれば、そのヘリは突風に煽られてバランスを崩したのであり、そのあおりで転覆した小船の漁民達は寸前で湖に飛び込んで危うく難を逃れたのち、牙をむくどころかヘリの乗員を悉く助け上げてくれたと言うのである。

しかも、この救助作業にあたって彼等漁民たちに誰一人躊躇する様子が無い。

我が身の危険を顧みようともしなかったと言うのである。

いきおいその献身的な行為の一切が報道されたとき、米国世論は新島の住民に対して満腔の感謝と喝采を送ったのも当然のことであったろう。

たまたま唯一の好機を掴んだNBSの齎す映像は無論ヘリからのものであり、微に入り細にわたって実に余すところが無い。

臨場感溢れるその映像の中では、漁民たちによる献身的な救助作業が続き、そこには長身屈強の若者の姿がひと際凛々と異彩を放っていたとされ、その若者が自らの負傷をものともせず真っ先に救助活動に挺身し、しかも他の漁民たちが、まるで若者の指揮のもとに整然と救助活動を行っているように見えたのだ。

また、ヘリが完全に水没してしまった時に、機内に取り残された最後の一人を、ヘリの中から救出したのもこの若者であって、のちに、この乗員自身の証言により、墜落時の衝撃で起きた内部機材の変形によって体を挟まれ脱出不能となり、なかば絶望しかけたところを、かの若者が水中でその機材を排除の上、危機一髪で救出していたことが判明するのだ。

とにもかくにも、臨場感に満ち満ちた映像が、やがて一部にあった「潜在的脅威論」を見事なまでに払拭してしまい、日米両国の世論を友好ムード一色に染め上げて行くのだが、それは無論後のことであり、当時の米兵達の警戒心まで失われてしまった訳では無いのである。

現地の彼等は、むしろ非常な切迫感すら感じていたと言って良いだろう。

何せ相手が「未開人」とは言いながら、他人の空を勝手気ままに飛び回った挙句、墜落事故を起こしたばかりか、その「未開人」まで巻き添えにしてしまっているのだ。

乗員救出のため、二機のヘリがかなりの緊迫感を持って現場付近の湖畔、それも幼童たちが群れていた辺りを選んで着陸を敢行し、ほかの数機が変事に備えて付近上空に展開待機したが、無論地上部隊を援護するためだ。

現に当時の米兵の中に、例のブラックホーク・ダウンを想起したとする後の証言まであるだけに、彼等にとっての危機は去ったわけではなかったのである。

ところが、このあとの彼等は、それまでの警戒心が、まるで水溜りに張った薄氷が日向(ひなた)にあたって融けて行くような気分を味わうことになるのだ。

それというのも、湖面を滑るように近づいてくる小船の上では、談笑する同僚兵士たちの笑顔さえ見受けられ、しかも漁民たちはみな小さな腰布(のちに六尺という名称と判明)を着けているだけで、近づくにつれ、いずれも身に寸鉄も帯びてないことが歴然としてきたからだ。

右上腕部を負傷した若者が先頭の小船の舳先に立って何やら叫んだときには、湖畔でキャンプファイヤーが勢い良く燃え上がり、程なく全ての小船が岸辺に辿り着き、兵士たちは誰一人助けを借りることも無く、その全員が自力で降り立ったのである。

濡れ鼠の兵士たちを焚き火のそばにいざなうようにして歩いて来る漁民たちのもとへ、今しもわらべたちが倒けつ転びつ駆け寄っていくが、中には、例の若者の足元にまとわりついておんぶをせがむものあり、転んで泣き出すものありで、そのうち若者は中の一人を背負って、ゆったりとした足取りで歩いて来る。

気温二十七度、微風。

湖水に濡れた兵士たちが凍える恐れだけは無いであろう。

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  1. 2005/01/05(水) 18:10:12|
  2. 妄想小説 主権国家|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:3
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コメント

おひさ(*^_^*)

久しぶりに来て乱読しちゃった^^;;
ちゃんと読めって?
あはっ!寝ちゃったらどうするんよ?(ーー゛)
  1. 2006/02/07(火) 15:44:35 |
  2. URL |
  3. ほたる♪ #-
  4. [ 編集]

乱読かい。

うんうん。

睡眠導入剤としての、効き目だけは自信が無くも無い。

むふふっ。^^
  1. 2006/02/07(火) 16:53:48 |
  2. URL |
  3. あんくるじいじ #-
  4. [ 編集]

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  1. 2006/08/14(月) 15:46:43 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集]

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