日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 079

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国家とは

この頃、秋津州の財団研究所から大気に関する直近のデータが公開され、それがかなり詳細にわたっていたこともあり、その驚くべき内容が大きな反響を呼んでいた。

何と大気中の二酸化炭素やフロン、メタン等が劇的に減少し、二酸化炭素濃度に到っては、実に産業革命以前の280ppmを下回る数値まで得られたと言うのだ。

少なくとも、工業先進国の全てが瞠目した。

これは、どう望んでも決して得られることのない奇跡的な数値と言って良いほどのものであり、事実とすれば、人類は産業革命以前の清浄無垢な大気を取り戻したことになるからだ。

かつて極地の天空に広がっていた巨大なオゾンホールも劇的に縮小して来ており、その他さまざまの汚染物質に関しても、全ての数値があり得ないほどの改善を見たとされ、秋津州財団の手になる大気の浄化作業は、ここにおいて一旦終了する旨の発表がなされたのである。

程なく発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)のコメントは、秋津州の功績に対し最大級の評価を下した上、次はいよいよ海洋汚染対策に関してもその成果を期待したいと結んだ。

無論、各国政府も限り無い賞賛と感謝のメッセージを発し、メディアにしても揃って激賞したのも当然だが、当局筋よりもなお一層踏み込んだスタンスをとる論説が目だっていた。

確かに地球の大気は奇跡的な回復を遂げることを得たが、現代の汚染の進捗状況は、二世紀前のそれとは比較にならないほどその速度を早めてしまっており、秋津州がこの作業から手を引けば、大気中の二酸化炭素濃度などは、ほんの十数年で400ppmに達してしまうだろうとするものが多い。

現実には、各地で森林破壊や砂漠化が猛スピードで進行している上、猛烈な勢いで化石燃料を燃やし続けることによって、信じ難いほどに汚染の歩みを速めてしまっており、このままではあのアマゾンの大密林ですら、ほんの数十年でほとんどが砂漠化してしまうと主張する論説が目立つのだ。

また、IPCCなどは海洋汚染対策について、いかにも軽々とした表現をしているが、ことはそう簡単な話では無いと言う。

殊に中国の場合などは一段と汚染が甚だしいとされ、沿岸部に限らず内陸部からも膨大な廃水が未処理のまま排水され続けており、それが途方も無く河川を汚し、清らかな流れはまったく姿を消してしまっていると力説していた。

そこにはひどく汚染された汚泥が堆積し、その悲惨さは一世紀半前のロンドンのテムズ川や半世紀前の多摩川の惨状をはるかに上回り、最早絶望的とする論調さえ見かけるほどだ。

無論、汚泥にまみれた河川は今後更に付近の海を汚し続けるに相違無く、事ほど左様に中国の環境問題には深刻なものがあり、そこから齎される海洋汚染もまた特筆されてしかるべきだと言うのである。


一方の日本国内では、政権の座にある連立与党の混迷振りがさまざまに取り沙汰され、一段と激しい政情不安を招いてしまっていた。

殊に現内閣が、対馬の危機的状況に際して無為無策であり続けた事がメディアの格好の餌食となり、その政治的不作為を非難する声が巷に溢れたのである。

多くのメディアがまるで鬼の首でもとったようにして連日連夜報道し、無論それは多くの国民の知る所となった。

その政治的不作為がこうまであらわになってしまった以上、政権の求心力は大きく損なわれ、今後の政権運営にとっても巨大な障碍となって行くに違いない。

連立政権内の弱小政党が共倒れを恐れるあまり、いっときも早く離脱しようと考えるのも当然といえば当然で、その動きが表面化してしまうのもそう遠いことでは無いと見る者が多い。

やがて連立政権の支持率が急降下するに従い、メディアの論調も益々激しさを加えつつあるさなか、さらに絶好のソースとして新党「秋桜」の党綱領案なるものが「出現」し、一段と世上を賑わせることとなった。

例によってその出所については明かされることはなく、いわゆる典型的怪文書の一つではあったにせよ、その内容たるや、いかにももっともらしい文言で溢れていたことは確かである。

曰く、日本がごく普通の国家となるために、自主憲法を制定し正規に国防軍を持ち、新たに日米不戦条約を結んだ上で日米安保条約を破棄すべしとしているところなどは、直前の衆参同時選挙にあたり、民自党敗北の最大の原因となったスローガンそのものなのだ。

その他の重要な政策として、核燃料を自給出来ない以上原発は全てPME駆動方式のものに切り替え、核関連施設はその廃棄物をも含め完全に「消滅」させることを謳っているとされ、これなぞは民生党のスローガンの良いとこ取りだと言われても仕方が無い。

一言で言えば、平和利用も含め核を全否定した上で、一層確かな自主国家の建設を目指すと主張していることになり、強烈な民族主義的色あいを帯びているとして否定的に論ずる者も少なく無い。

それに対しても無論反論があり、自主国家であろうとする以上、国防政策にしても当然主体的なものであらねばならないのは当然だが、かと言って、何も全て一国だけで事にあたるべきだと主張しているわけではないとして肯定的に論ずる者もいる。

その解釈によれば、可能な限り友好国を多く持つことに努め、国際的重要案件については、友邦との間でその都度是々非々で議を尽くすべしとしていると言うのだ。

尤も、個々の国際的重要案件などと言ってみたところで、それぞれが断ち切り難い連環の中に存在し、別個の案件として扱うことは困難なものばかりであり、だからこそそれを処理するにあたっては、いわゆる高度の「政治判断」が求められることになる。

まして、個別の政策判断に対しては、それぞれ常に喜ぶ人とそうでない人がおり、万人が挙って喜ぶ政策など滅多に存在しないのだ。

この意味では、来たるべき高齢化社会を下支えすべき税制のあり方についてなどは、さほど掘り下げられているとは言えず、そのことに対する批判的な声も少なからず存在し、メディアは寄ると触るとこの党綱領なるものの話題で持ち切りとなり、賛否あいまって如何にもかしましい。

殊に、「可能な限り友好国を多く持つことに努め、国際的重要案件については、友邦との間でその都度是々非々で議を尽くすべし」と言う点などは、従来なら日本の国力や現実の国際環境に照らし、机上の空論として一笑に付されかねない論であったが、今は違うと言う声が強まっており、一言で言って、こと日秋連合体制とでも言うべき現下の情勢から言えば、この是々非々の議論も充分可能になったと言うのである。

詰まり、国際的な重要案件について以前であれば全く通らなかった日本の意向も、今後においては通せることが増えるだろうと観測していることになる。

一部にあった秋津州に於ける海自の合同訓練に対する批判的な声などは、皮肉にも全く影を潜めてしまった。

とにもかくにも、新党秋桜の党綱領と呼ばれるものがメディアに齎したところのものは途方も無く大きい。

そうこうする内に、在留外国人の犯罪率が急上昇していることが大々的に報じられたことも逆風となり、民生党主体の連立内閣の支持率が一桁にまで落ち込み、代わって国井内閣待望論が澎湃として沸き起こって来ていると報じるメディアが増えた。

国井の放つ民族主義的光芒を肯定的に捉える論調が目立ち、ここでもメディアの報道姿勢が大転換していたことが、見事に浮き彫りになったと言って良い。

都道府県ごとに外国人の犯罪データを徹底取材して報道するケースまで出て来ており、それによれば、現実に大量の不逞外国人が流入して治安が急速に乱れ始めているとされ、それに対する現内閣の取り組みを不徹底と見る論調が激増したのである。

前内閣が採った強硬な外国人対策を非人道的だとして盛んに攻撃していた筈のメディアまでが、一転してそれを大きく評価するまでになった。

もっとも、全てメディアが勝手に言っていることではあるが、とにもかくにも次期首相候補の人気投票の如きに至っては、国井義人が断然他を圧していると言い、その支持率は最低でも七十パーセントを誇り、あり得べきか、中には九十パーセントなどと言う数値まで報じられるまでになったのである。

無論その論調に於ては国井義人が既に新党秋桜の党首に擬せられており、その重厚な政治経歴と政治手腕がことさら声高に喧伝され、秋津州国王との緊密な人間関係ともあいまって、一部の政治評論家にいたっては最早救国の英雄とまで持ち上げ始めたが、肝心の国井本人は周囲の喧騒をよそに黙して語らない。

もともと国井と同心円上にあると目される政治家は多数を数えていた上に、その驚異的な支持率を見るにつけ、新たにその側近を以て自ら任じる者が激増しつつあるのも自然の成り行きではあっただろう。

近頃では、このような自称側近の身辺にさえ相当数の番記者が張り付くまでになって来ており、そのあたりからはさまざまなコメントが収集されてはいたが、ことの本質を表すようなものは一向に見えて来てはいないのである。


また、朝鮮半島では過日行われた統一大統領選挙の結果、親日秋と目される現職大統領による統一政権が発足し、荒れ果てた旧韓国領の復興事業も、秋津州軍の強力な支援体制のもとで極めて順調に進められていた。

朝鮮共和国は秋津州の翼下に今も歴然と抱かれており、そのことによって得ている対外信用が極めて効果的に作用し、即ちそのことがその国の復興を強力に後押ししていることは明らかだ。

政権が親日秋的な政治路線を選択した理由が実際にそこにあったにせよ、その選択そのものが一国の政権が行う「高度な」政治判断であることを、今更大声で叫んで見せる必要も無かった筈だ。

わざわざ口に出して言わなくとも、それは誰の目にも明らかだったからだ。

だが、現実に政府の政治姿勢、とりわけ竹島の放棄政策には飽き足らない想いを抱く手合いが少なくなかったことも事実で、そう言う手合いの間では、何よりもその復興資金の出どころが問題視され、そのことに反発する声も決して小さなものでは無い。

それは言うまでも無く秋津州から拠出されたものばかりであり、従来と異なりその事実があまねく報じられてしまっているため、今更否定することも出来ない。

その特殊な視界の中では、その秋津州人こそが、本来唾棄すべきあの日本人の成れの果てそのものであり、そのような者の支援によって復興したと見られることには、断じて我慢がならないと言う。

理屈はどうあれ、彼等の感情がそれを許さないのである。

更にその上に、竹島騒動のこともあり、半島に駐屯する秋津州軍に対する反感にしても自然大きいものがある。

しかし、現実には半島南部においてさえ、さまざまな社会的インフラの整備が急速に進みつつあり、PME駆動方式の発電所の建設に関しても概ね目鼻がつき、既に豊富な電力が供給可能になって来ている上、それらのほとんどが秋津州の恩沢に依拠するものばかりなのだ。

全ては、現政権の選択した政治路線の延長線上に展開する事象であり、何よりも、その政権を選出したのはその国の国民自身であった筈なのだが、多くの外資メディアの報じるところによれば、不穏な動きを見せる者がその勢力を増しているのだと言う。

喉もと過ぎれば何とやらと言う言葉もあるが、やがて性懲りも無く、反日秋、竹島奪還を叫ぶ者が又しても勢いを示し始めていると言うのだ。

一方、軍部に於ても政府の指し示す軍事予算を不当に過小と見る者が増大し、そのことに対する不満が鬱積していたこともある。

殊に再雇用された旧韓国軍の将領たちの認識の中では、他国との戦争を体験した訳でもなく、当然ながら敗戦の屈辱を味わったわけでもなかった。

単に、いつの間にか陸海空の全軍がその組織と装備を失い、気がつけば、旧韓国軍は実質的に滅んでしまっていただけの話なのである。

実に奇妙な現実であり、現役軍人としてはそれを納得出来るわけも無かったろう。

挙句に政府は、国土復興を優先するあまり、国軍の予算を徹底して削って来る。

何せ認められたのはほとんど陸軍予算だけであり、それも軽武装の歩兵部隊ばかりに重点を置くものなのだ。

その国の正規軍の手にはミサイルや戦車どころかロケットランチャーすら存在せず、さりとて米国人顧問団が勧める兵器を発注したくとも、その予算がまったくつかない。

空軍に航空機が無く、海軍に軍艦が無い。

ただ在るのは極度に鬱積した不平不満ばかりだ。

しかし事情はどうあれ、現実に国家が滅んでしまった以上、政府のこの政策方針は当たり前過ぎるほど当たり前の事であった筈なのだが、不幸なことにその国ではそれが判らない手合いが多過ぎたのである。

加えてその国の正規軍は一時的な失業対策と言う側面をも併せ持ち、軍属を含めれば既に三百万を数えるまでに膨れ上がってしまっており、それはそれで国内最大の政治勢力と変じていたこともあっただろう。

鬱積した不平不満は膨張を続け、やがて軍部によるクーデターが発生し、反日、反秋津州と見なされる軍事政権が樹立されるに至った。

その地には従来と違って国連旗を掲げた米軍もおらず、その上秋津州駐屯軍の介入も見られなかったために、あっけないほど短期間の内に武力革命が成功してしまったのである。

事前に情報を得ていたワシントンですら打つ手は無かった。

完璧にキャッチ出来ていた筈の秋津州軍からしてが、まったく反応を示さなかったことは確かであり、そうである以上、ワシントンだけが勝手に動くわけには行かなかったこともある。

せっかく正当な選挙で選出された筈の大統領も生死不明とされ、又してもその国の治安はその国の民自身の手によって失われてしまった。

常の通り相当の流血騒ぎが諸方に頻発し、現地の外国系メディアにしてもひどく錯綜した事態の中にあってなお、少なくとも現実に武力革命が起こり、朴俊植と言う古参中将が青瓦台に居座ったことだけは世界に発信することを得た。

だが、続いて金昇輝大佐と言う実力者が多くの若手を率いて決起し、朴俊植中将を逮捕したことから事態は更に混乱したが、少なくとも軍部が首都圏を制圧し、新たな軍事政権が発足したことを各国駐在公館に公告してきたことだけは確かだ。

その公告によれば新大統領は季郭淳中将とされたが、実権は金昇輝大佐にあり、季郭淳中将は神輿に乗っているだけだとの説もある。

一方の日本はその国との国交が無く表向き蚊帳の外であり、仲介しようとする国も無い以上、金昇輝大佐が行ったとされる獨島(竹島)の領有宣言も公式に聞くことは無い。

その後、金昇輝大佐が発動した獨島奪還作戦は、小船や漁船を動員して繰り返し行われたと言うが、目的地に到達する前に全て押し戻され、只の一人も上陸出来たものはいないと報じられ、大佐の日本非難声明ばかりが益々エスカレートして行った。

竹島騒動の全てを日本の悪辣な侵略行為と決め付け、口角泡を飛ばして抗議声明を発し続けているのである。

だが、いまのところ、直接秋津州に非難を浴びせるような公式発言は無いと言う。

合衆国を初めとする多数の国々の公館は当然その首都に存在しており、それらの外交使節団は専らシンジケートを組んで新たな軍事政権に対した。

混乱の中、米国公館に集結した彼等は早速外交官会議を開き、ほどなく衆議は一決した模様だ。

彼等とその本国政府が望んだのは偏に秋津州軍の駐屯の継続であり、当然それは半島の治安維持を望んでのことであったのだが、過去に於て毎月滞りなく発せられて来た駐屯継続の請願書は、その後発せられることの無いままに既定の十五日が来てしまった。

慣行によれば、その公文書は在北京の日本大使館に届けられる筈のものであったが、遂に届くことは無く、無論一言の挨拶も無かったのである。

経緯から見て、その国の意思は明白であった。

秋津州時の十五日を経過するや、半島の秋津州軍は世界の度肝を抜く鮮やかさで撤収するに至り、あまりに迅速な撤収劇に接した各メディアは、自然秋津州の真意をさまざまに忖度したが、秋津州側は駐屯を継続する根拠が失われた以上当然の措置だと言うばかりだ。

全て、もっとも至極のことなのである。

少なくとも撤退に当たって、当の秋津州側からは一切の疑義が出なかったことだけは事実であり、一部メディアの憶測記事によれば、朝鮮半島と言う重荷を降ろせることになった秋津州軍は大喜びで撤収したに違いないと言う。

何しろ、秋津州軍は膨大なコストを負担しながら駐屯していたのであり、そのコストが重荷で無い筈はない。

そして、秋津州軍が一兵も残さず去ったあとには巨大な集合住宅が無数に残されたが、既にそこには生活用水の供給手段が断ち切られてしまっていたのである。

その任務(生活用水の供給)一つとっても、全て膨大なSDによって担われていた以上、これも当然と言えば当然のことで、給排水能力を失った集合住宅などほとんどものの役には立たないことは明らかだ。

事の経緯から言って、当然今後は秋津州からの支援など論外の話であり、この現実に出会った先進世界は悉く戸惑い、その国の先行きには揃って不安を感じ取った筈だ。

無論、各国当局はその国の治安が保たれるようそれぞれの外交ルートを以て申し入れ、同時にその領域に滞在する自国民に対しては早期の出国を促さざるを得ない。

殊に合衆国の反応には殊更微妙なものがあり、さまざまな顧問団の半ばを引き上げて静観の構えを取り、重大な関心を以て秋津州の反応を見据えてはいるが、肝心の秋津州側は冷徹な沈黙を守り続けている。

喧騒の中、国王は無論のこと、外事部も新田源一もそのことには触れようともしないのである。

海都に在る朝鮮共和国の代表部も沈黙し、秋津州の外事部に対してさえ自国の革命政権樹立に関しては一言の挨拶も無いままで、挙句、さんざんに世話になってきた秋津州に対し感謝の一言すら無い以上、その国は、明らかに自らの意思を以て秋津州の衛星圏外に去ってしまったことになる。

半島では自然世上不安が拡大し、ほとんどの外資も撤退を考慮していると囁かれており、又しても経済危機を危惧する論調ばかりがメディアを賑わせ始めた。

安保理は勿論、秋津州ビルで開かれた五カ国(米英仏独日)協議に於いても主要な議題となってはいたが、独立国の内部で行われた政権交代である以上、結局のところ事態の推移を見守るほかになすすべは無い。

その国では、金昇輝大佐の手による粛清の嵐が吹き荒れ、親日秋派と目される者たちの多くが犠牲となり、辛うじて難を逃れた者も沈黙を守る中で、新大統領とされていた季郭淳中将が隠退を強要され、血煙の舞い立つ中で金昇輝大佐の国家元首就任が伝えられた。

彼の持つ強烈な排外的自尊精神が一部の反日集団から熱狂的な支持を集めているとされ、独裁政権は先鋭的な姿勢をいよいよ露にしつつ全土を制圧し、改めて国家建設のための民族の団結と言う旗印を掲げていると言う。

さらには、大佐は第二の「漢江の奇跡」を目指すとぶち上げ、部分的な計画経済を実行しようとしているとされるが、前回とは全く状況が異なっていることから、先進世界の冷ややかな視線を浴びることは避けられない。

国境を接する中露二カ国は、それぞれ厳重に国境を固めた上で新田の判断を待っているとされたが、難民の流出は既に始まってしまっており、その領域は、再びアジアの不安定要因の最大の発信源と化してしまったのである。


この件ではとりわけ利害の絡む国はやはり合衆国であり、タイラーの受ける訓令にも深刻なものが無いわけではなく、早速秋元雅と言う助け舟に連絡を取ったところ、珍しくもタイラーのオフィスにまで自ら出向いて来てくれると言う。

最近のこの娘は、各国外交筋から引っ張りだこになるほど絶大な人気を誇るまでになっており、どうやら、同じく秋津州ビルにオフィスを構える他国の代表部のいずれかを訪れていたものらしく、待つほども無く小気味良くヒールを響かせながら颯爽とやって来た。

タイラーにとってのその姿はいつ見ても好もしいものであり、近頃では若いながら一見して敏腕の外交官を思わせることすらあるほどだ。

例のイノシシの肉を調達出来ないことだけがいささか無念ではあったが、女性スタッフに上等のケーキを用意させた上で、精一杯ご機嫌を取り結ぶことにしたのである。

「最近は、なかなかの民間外交振りですな。」

「それほどのことでもございませんけれど、最近は何ですか、やけにご招待が増えたことは確かですわ。」

実は、つい今しがたも、同一フロアにある英国の代表部を訪れていたところであり、その用件にしても、少なくともロンドンの側にとっては決して軽いものでは無かった筈だ。

「あね上さまも相変わらずご多忙のご様子ですな。」

あね上さまとは無論長姉の京子のことであり、諸国の当局筋からは秋津州の筆頭政治顧問として見られることが多く、中には秋津州の女帝とまで呼ぶ者まで出て来ている。

「はい、貧乏暇無しだと申しておりました。」

「例の朝鮮半島問題がありますからなあ。」

さりげなく水を向けてみた。

「あ、その件でしたら逆に手が省けたと申しておりましたわ。」

日本人秋元京子と言う一個人がそう言ったと言うのだ。

「手が省けた・・・とは?」

「ですから、今後は気を遣う必要が無くなったと言う意味かと存じますが。」

「ほほう、では、今後はどう泣き付いて来ようとも一切応じないと?」

「・・・。」

女神さまは無言でケーキを味わっている。

「どうせ、又泣き付いて来るんでしょうが、しかし今度ばかりはどう言う顔していいか、さぞかし困るでしょうなあ。」

「・・・・。」

「尤も、その原因を作ったのは先方のほうですからなあ。」

革命政権が秋津州軍の駐屯を忌避したことは明らかで、それは取りも直さず秋津州の翼下を離れることに通じる。

「いずれに致しましても、さき様は立派な独立国でございますから。」

親切の押し売りをして見たところで、所詮恨まれてしまうだけの話なのだ。

「なるほど、それはそうですな。しかし、それであの国の財政が立ち行くでしょうかねえ。」

「それは、あちら様のやりよう次第かと存じますわ。」

どのような国造りをするかは、あくまでその国の人々が決めるべきことなのだ。

「身の程もわきまえず、大きなお世話だ、ほっといてくれと言ってるようなもんだからなあ。」

「・・・。」

タイラーとしては盛んに水を向けて見るのだが、女神さまはほんのりと微笑むばかりだ。

「我が国のビジネスマンも大分苦労している気配もありますし・・・。」

「納入した軍需物資の未払いがおありなのでしょう?」

合衆国企業は既に軍用車両だけでも三千両以上、銃と弾薬も膨大なものを納入済みで、その代金の過半が未払いになっている以上、ワシントンにとっても大問題であり、いかに民間レベルの取引きとは言いながら、購入者はれっきとした一国の政府なのである。

如何なる政府といえども、他国の政府によって自国民の利益が害されることは極力防ぐ義務を持つ。

ワシントンにしても重大な関心を払わざるを得ないのだろう。

「うん、このままデフォルト宣言でもやられた日には目もあてられん。」

結局、その国の財政が破綻すれば、主として米国の企業が損害を受けることになるのだ。

「おほほほ、ビジネスには常にリスクが伴いますものね。」

「そりゃそうだ。しかし今度ばかりは大分見通しが狂ったよ。もう少し親秋津州政権が続くとみていたんだがねえ。」

ワシントンにして見れば、秋津州軍がその国の武力革命を容認するとは夢にも思わなかったのである。

その結果誕生するのは、明らかに反日、反秋津州の色あいを帯びた政権であることは目に見えていたからだ。

秋津州の真意をさまざまに忖度する者は増えるばかりだ。

「・・・。」

「ところで、あの国の大統領閣下から我が国へ出兵要請があった場合、陛下のお許しがいただけましょうか?」

今や、生死不明とされている大統領だが、その身柄が現地の米国大使館にあることは秋津州のネットワークが軽々とキャッチしてしまっている。

「あら、大統領閣下が支援を求めてらっしゃったのは、秋津州陛下に対してだと伺っておりましたが。」

事実である。

ただ、秋津州側が応諾しなかったまでのことだ。

応諾すると言うことは、秋津州の武力を以てその国の軍事政権を駆逐することを意味し、無論新たに膨大な流血を覚悟する必要があるだろう。

「いや、ですから、その要請がワシントンに向けて行われた場合にです。」

これこそが、タイラーの負わされた最大の命題だったのである。

「あら、とても一民間人にお尋ねになるようなことではございませんわね。」

女神さまの口からオーケーのサインは出てこない。

ワシントンの願いは、容れられそうもないことが「確定」したのである。

「ふむ、やはりそうですか。」

「結局は今度も、親切が反って仇になったかも知れませんわね。」

その国の政府にフリーハンドを与え、一方的に経済支援を続けたことが裏目に出たことだけは確かだが、その国では過去においても同様のことが無数に行われてきたことは事実であり、その経緯を眺めてみれば今更驚くほどのことでは無い。

何せ、過去百数十年もの間、日本などはその国に幾たびも膨大な支援を送ったが、裏切られなかったことは一度も無いのである。

その国は、必ず恩を仇で返して来たことになる。

「陛下も、さぞお怒りのことでしょうな。」

「いえ、この前までは、お預かりしているお子たちのお里帰りに熱中してらして、それどころでは無かったようなご様子でしたわ。」

「ニュースでも大分取り上げられておりましたが、孤児たちにふるさとの景色を忘れさせないようにとのご配慮だとか。」

「はい、秋津州での日々も出来るだけ母国語を話させるよう、積極的に環境造りをなさっておられましたから、お里帰りの節も、不自由なく母国の方と会話が成り立っていたようですわ。」

「孤児たちが一人歩きするようになったら、母国に帰りたがるかも知れないからなあ。」

「はい、子等が母国で暮らす道を選択した場合にも困らないようにとのご配慮でございます。」

「そう言う陛下のお考えは、我が国の民間でもまことに好評です。」

「それに、近頃は財団の研究員の方とお出かけになることも度々のようでございますから、今度の朝鮮共和国のことには、あまり興味をお示しにはならないみたいですわ。」

詰まり、あの魔王は半島にどのような政権が誕生しようと、今更興味が無いと言うことになる。

「ほう、例のケンタウルスの件ですか。」

アルファ・ケンタウルス星団のことである。

この星団は我々の太陽系に最も近接した星団として知られており、三つの恒星と、未確認ではあるがそれらの惑星群から成っていると推測されている。

掻い摘んで言えば、太陽系から見て概ね四.二から四.四光年ほどの距離にあって、三つの恒星が互いに引き付けあいながら運行する「三重連星」を構成している星団なのだ。

星団の内で主たる恒星は、我々の太陽とほとんど同等の質量を持つリギル(リジル)・ケンタウルスA、次星はそれより若干小さめのB星であり、三番目の恒星はプロキシマ・ケンタウリと呼ばれる格段に小さいものだ。

「太陽系から見て概ね四.二から四.四光年ほどの距離にあって」と言うことは、現在の地球人が見ている星団の姿(光)は、地球暦で言って、四.二から四.四年ほど昔のものと言うことになる。

「はい、何ですか、松川先生と何度かお出かけになられたようでございます。」

松川徳治氏は、秋津洲財団の常任研究員の一人だが、実は先ごろあるデータを専門誌に発表して一部で話題になったのだ。

なんと彼は魔王の協力を得て、数回にわたってその星団の近くにまで移動し、直近の姿を観測して来たのだと言う。

「その方の持ち帰ったデータでは、確か、ケンタウルスの巨星二つが衝突して融合していると言うお話でしたな。」

「太陽とほぼ同等の恒星二つが融合したそうですわね。」

「しかし、大気圏外の観測衛星からも未だ見えないそうですな。」

その現象が未だ見えないと言う。

「おほほほ、だって太陽系から見えているのは四年以上過去の姿ですもの。」

その星団の現在の姿なぞ見える道理が無いのである。

「これはこれは、バカなことを言ってしまいましたな。しかし門外漢の我々にはぴんと来ないのだが、その結果この地球に大異変をもたらす可能性があるという話でしたが。」

「松川先生の説によりますと、その確率は二十パーセントから九十パーセントと非常に曖昧なものでございましたわ。」

「あはは、ほんとに曖昧ですなあ。」

「結局、データが揃わないからなのでしょうが。」

「あ、それで大規模な調査団を結成されたというわけですか。」

「何ですか、財団の研究室の方から各国の専門家の方々に、直接お話が行ったように伺っておりますが。」

「ところで、その大異変をもたらす現象・・・、えーと、何て言いましたっけ?」

「ガンマ線バーストのことでしょうか。」

「あ、それです。確かガンマ線が光速で飛んできて、地球のオゾン層を破壊してしまうと言う話でしたな。」

ガンマ線バーストとは、いずれかの宇宙空間から強力なガンマ線が放出され、ほぼ光速で飛んで来て地球に衝突する現象のことである。

この現象は今も日常的に多数起きているものなのだが、通常、放出基点が途方も無く遠方であることから、地球に届くころには、もはや甚だしく拡散放逸され、ほとんど実害の無いレベルにまで微弱なものとなってから到達することになる。

何せ、それらの放出基点は数億光年以上も離れた遠方のものばかりだ。

詰まり、日常的に起きているものの一般の人には特別に意識されることが無い。

ところが万一近距離の宇宙でこれが発生すれば、強力な勢力を保ったまま地球にまで到達することになり、程度の差こそあれ上空のオゾン層を大規模に破壊してしまう。

ちなみに、現今よく話題になるオゾンホールなどは、そのホール(穴)と言う名称からオゾン層に大穴が開いてしまったかのように思ってしまうが、実際には穴が開いたわけではなく、その領域のオゾン層の厚みが幾分薄くなっているに過ぎない。

オゾン層が少々薄くなっただけですら、生物にとってさまざまな害があると言われているくらいであり、ひるがえってこのオゾン層が全て消滅してしまえば、それは紫外線の中でもUVC波長のものを遮ってくれるものが失われてしまうことを意味し、その結果それが直接地表に届いてしまうことになる。

実は、太陽光線の中には、UVA、UVB、UVCなどさまざまな波長の紫外線が含まれており、中でもこのUVCは通常オゾン層で遮られ地表にまで達することは無い。

だが、実際にはこのUVCと言うやつが一番の曲者なのだ。

何しろ強力な殺菌作用を持ち、生体に対する破壊力がことのほか凄まじい。

地上や海洋域の植物や動物の細胞を破壊する力が強烈で、これをまともに浴びて生き延びることの出来る生物は存在しないと言われるほどだ。

耕地の作物どころか樹木や草は勿論、象であろうがライオンであろうが、生き物と言う生き物を全て死滅させてしまうほどの威力を持つ。

くどいようだが、オゾン層等、地表の上層に存在する大気が大幅にダメージを受けた場合、このUVC紫外線が情け容赦なく地表を直撃し、その状態が数年規模の長さで継続すると言われており、少なくとも大自然の食物連鎖の繋がりが断たれてしまうことは確実だ。

松川研究員の論によれば、ケンタウルス星団において『既に起きてしまった巨星融合』と言う自然現象が、大量のガンマ線をジェット状に噴出させたと言い、それが我々の太陽系に向かって光速並みのスピードで進んで来ているとされている。

「いえ、その可能性があると仰ってるだけですわ。」

ただ、この時点では専門誌は別として、一般のメディアは現実味のある話柄としては全く取り上げてはいない。

何せ、若者に随従して行かない限り、如何なる専門家といえども、ほんの数ヶ月前に起こったと言うこの巨大な自然現象を観測することさえ出来ないのである。

尤も、それを地球上から観測出来るようになったときは、ほぼ同時に例のガンマ線も到達してしまっている筈なのだ。

詰まり、現時点では全く現実感の無い話であって、自然、専門外の人々にとっては、未だ興味を引く話題にはなっていないのである。

「近々、大規模な調査団を送るご予定があるとお聞きしましたが?」

「そのようですわ。」

「わざわざ、観測用の特別仕立ての船もご用意なさったとか?」

宇宙に滞在してさまざまな観測を行うためには、それなりのハード面が充実されていなければならない。

言うまでも無くそこは無重力空間であり、そこに長時間滞在するだけでも、体力の無い人間の場合などは体調を崩すばかりか、深刻な疾病を誘発してしまう恐れすらある。

「はい、そのように伺っております。」

「しかし、万一それが本当のことであったら、ちょっと怖い話ですなあ。」

「まあ、地表の大気が破壊されてしまえば、生物の中でも殊のほかひ弱だとされる人類はこの地球には住めなくなることは確かでしょうね。」

女神さまは、本来極めて深刻な話柄に触れている筈なのだが、タイラーにおいてはそうではない。

「そうなれば、陛下のお慈悲に縋って荘園にでも移住させていただきますか。」

タイラーからすれば、現実感のある話柄とは思えなかったに過ぎない。

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  1. 2007/08/03(金) 21:53:26|
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