日本大好きじいさんの落書き帳

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告|
  3. トラックバック(-)|
  4. コメント(-)

自立国家の建設 104

 ◆ 目次ページに戻る

さて、かの白馬王子が言わば腹立ち紛れに興梠律子暗殺指令を発したことは既に述べたが、その意を受けて日本国内で策動していた者たちが、十二月も十九日になってから十数人も検挙された挙句、全員が国外に追放されると言う動きがあった。

退去強制と言う法的措置が即座にとられた事になるが、無論、岡部たちが眦(まなじり)を決して追捕した結果だ。

その後相当数の同類の者が資産を整理して出国して行き、その全てが特別永住権を持つ韓半島系の「外国人」だったとは言うが、彼等もまた「好ましからざる行為」を働いた廉(かど)により、これ以上日本国に住まいすることを拒絶された者たちだ。

日本国政府がその外国人の滞在を日本国の利益に合致しないと判断した結果ではあるが、この場合の「国益」は、その時々の国情によっても千差万別であることから、この判断の基準はいずれの国家といえども厳密に明示することは無いのである。

とにもかくにも、多数の在日コリアンが日本国政府から滞在を拒否され、出国を余儀無くされたことは確かであり、日本政府による異民族に対する迫害行為だとして、一部に抗議行動を起こす者も現れた。

しかし、この日本には現に膨大な朝鮮系日本人(帰化人)が善良に暮らしており、そのような「日本人」が政策的に差別されることが無い以上、ことは民族問題ではなく、国籍、国境問題であることだけは確かだろう。

また同じ頃、意外な人物が意外な形で報道画面に登場して、大きく巷の興味をそそることになる。

何と、人権派で鳴らした増田義男弁護士が逮捕されたと言うのだ。

増田弁護士と言えば、あのテロリストに対する支援を大声で叫び、その後、ろくな根拠も示す事無く秋津州の自治体を露骨に誹謗中傷し、その名誉を一方的に傷付けたばかりか、そのことを以て拘束されることを嫌い、秋津州への再渡航をひたすら避け続けて来た人物でもある。

現在その自治体は、貴重な証人である久我正嘉氏の回復を待っているとされ、テロリストに対する審理は未だ始まってはいないにもかかわらず、この人権派弁護士は、この件に関してはその後全く鳴りを潜めてしまっているのである。

自ら威勢良く宣言した筈の人道上の支援と弁護活動とやらを、実質的に放棄してしまっていることになるであろう。

そこへ持って来ての突然の逮捕劇である。

そもそもその人物は、元来激烈なまでの正義感の持主だった筈が、呆れたことにその容疑は詐欺横領であり、友人の弁護士が破産管財人を務める企業の資産を詐術を以て横領していたことが発覚したのだと言う。

その友人の場合破産管財人とは名ばかりのもので、実際には増田が仕切って来ており、その立場を利用してかなり悪辣な手法で懐を肥やしていたことを見れば、社会正義を大声で唱える身としては、あるまじき行為であることは確かだ。

しかも、報道によると、増田義男と言う名はいわゆる「通名」だったと言い、従来であれば、この程度のことで特別永住権を持ったコリアンの本名まで報じることはあり得ず、この意味でもメディアのスタンスが大きく様変わりしていたと言うべきだろう。

この人物は、今回の逮捕も日本政府による卑劣な迫害行為だと主張し、徹底的に争うと息巻いているとされたが、反面その犯行があまりに歴然としてしまっていることから、せいぜい法廷における引き伸ばし戦術をとるくらいが関の山だろうと言う声がほとんどだ。

この引き伸ばし戦術を想起して税金の無駄遣いだと叫ぶ声も聞かれる中、あろうことか、余罪として、同様の手口を用いて多額の金品を拐帯(かいたい)していた別件まで明るみに出る始末で、少なくとも、「人権派弁護士」の金看板だけは見事に剥げ落ちてしまったことになる。

この人物が、本来最も崇高なものであるべき、「社会正義」や「人道」、そして「人権」などと言う錦の御旗を、不遜にも泥靴で踏みにじったことは確かであり、メディアなどでは、「人権派」ではなくて、「人権屋」だと言う声が多く聞かれるまでになり、少なくとも「人権」を商売のタネにしていた事実だけは覆うべくも無い。

所属する弁護士会は未だ時期尚早だとして処分を行う気は無さそうだったが、メディアにおいては、少なくとも特別永住権の剥奪だけは即刻行われるべきだとする論調が溢れた。

無論、その「素行が善良では無い」からである。

また、そのほかにも各地で摘発が進み、半島系「外国人」が特別永住権を失うケースが多数にのぼり、その全てが即刻出国を強制され、二度と入国を認められることは無い見通しだ。

無論その多くが官邸の対策室の手になるものであり、岡部がこの作戦にこれほどまでの執念を見せるには、当然それなりの理由があった。

実は、昨今白馬王子が新たに重大な密命を下していたことが判明しており、岡部にとっては殊にその内容が大問題だった筈だ。

無論、その情報も全て秋元京子氏から齎されたものであり、それによれば、何と、その独裁者がテロリスト朴清源ばかりか、秋津州国王本人の暗殺まで命じていたのだ。

彼が、かつて公文まで交付して、或いはテレビ画面に自ら登場してまで、そのテロリストが朝鮮共和国籍を持たないことを大声で主張しておきながら、英雄朴清源将軍の身柄奪還を叫ぶ民衆の声に押され、一転してその者が自国の国民であるとして、その身柄の引き渡しを要求するに至り、その結果、立ちはだかる秋津州の壁の前で立ち往生を余儀無くされていると言う構図が一方にある。

海都の朝鮮共和国代表部のものが、本国政府の意を受けて、秋津州の外事部に何度足を運んでも結果は変わらず、哀れにも彼等は、本国からの訓令に追い立てられ、焦りと困惑のあまり哀訴までして見せたのである。

しかし、その後も秋津州側の姿勢に変化の兆しは見られず、「その件は、貴国の公文によって全て解決済みである。」と繰り返すばかりで、しまいには、「判断に窮するほど難解な判断ならいざ知らず、今回のような単純極まりない案件においてすら、貴国の公文は信頼性に欠けるものなのか。」とクソまじめに聞き返される始末だ。

いざ正統な公文ですら信頼出来ないとなれば、今後その国の言い分になど耳を傾ける者は一人もいなくなってしまうだろう。

結果として、秋津州の鉄壁の構えばかりが傲然と聳え立ち、その前で哀れに居竦(いすく)んでしまっている者の姿が、いよいよクローズアップされてしまう。

それもこれも全て白馬王子の身から出た錆だとは言いながら、門前払いに等しい扱いを受け続け、それは誰の目にも国辱としか写らないものである上、その国の民衆だけに限らず、世界の注視まで浴びてしまっていることがひとしお屈辱的な風景で、今や白馬王子は否応無く世界の晒し者になってしまっていると言って良い。

したがって、その男が袋小路に陥ってしまった結果、突破口を求めて又しても狂気を発したと見るほかは無く、いずれにしても、苦し紛れに放った暗殺指令だったことは確かだろう。

とにかく、秋元女史が齎した歴々たる証拠が眼前にある。

岡部たちが検証したその映像情報は、紛れも無く本物の白馬王子とその側近の姿を捉えたものであり、そればかりかその音声まではっきりと聞き取れるほどのもので、ある程度予測していたこととは言いながら、岡部たちを戦慄させるに充分な効果を発揮した。

岡部は、この秋津州一郎と言う友人には一個人としても無論深い友情を感じているが、問題はそれだけにはとどまらないのだ。

例の「大帰化」以来、日本の法制度上も、その親友はれっきとした「日本人」なのである。

その親友の生存を脅かしている相手がれっきとした他国の政府である以上、日本国政府が、その日本人の生命財産を守ろうと努めることは当然過ぎるほど当然だ。

まして、丹波の一件がある以上、今それを失うと言うことは日本国にとっても、国家的損失に繋がってしまうことは明らかで、岡部にとってその陰謀を阻止することは、その職責から言っても最優先課題なのである。

対策室にとっても堂々たる公務だと言って良い。

無論、土竜庵でも重大な関心を以て注視しているが、かと言って、岡部や新田に出来ることは哀しいほどに少ない。

殊に、秋津州国内に関しては全く無いと言って良い。

既に、秋津州軍が鉄壁の構えをとっている筈であり、新田も相葉も、下手に動けばかえって足手纏いになってしまうことが目に見えているからだ。

しかしながら、今回の暗殺指令の件が一旦表沙汰になってしまえば、その結果は国際社会にとっても恐るべきものとなってしまう。

この場合の「表沙汰」とは、朝鮮共和国政府がその事実を公式に認めた場合のことであり、通常ならあり得ないことだが、相手側の狂気の構造から言って、あながちあり得ないことでも無いのである。

とにかく、通常の感覚から言えば、常識外の行動ばかりが目立つ相手なのだ。

今回も、朴清源将軍奪還を望む民意を迎えるために、自暴自棄の行動をとらない保障は無い。

無論、朴清源に対する暗殺指令は伏せられ、秋津州国王に対するものだけが公表されるのだろうが、万一そうなれば、その暗殺指令が相手国政府の正式方針となる以上、秋津州側はいやでも宣戦布告と受け止めざるを得ない。

殊に丹波への移住問題を抱える現今の情勢では、誰しも「戦争」など望んでいる筈が無く、ただただ、異様な緊張感の中で時が過ぎており、このような切り口だけで見れば、如何にも不穏な空気ばかりが目に付いてしまうだろうが、一旦日本の庶民レベルに目を転じれば、その実態は全く異なるものであった。

それも、驚くほどに違っていたのだ。

実はこの頃の日本は時ならぬ好景気で沸き立ってしまっており、その多くは「敷島特会(しきしまとっかい)」に負うところ大だとされていた。

この特別会計は、十一月の初頭、日本が敷島の委譲を受けると同時に臨時国会において全会一致で新設されたもので、これが財政的にいよいよ一本立ちを果たすことになったのである。

国井は、かねてより敷島の諸権利を財源とする「敷島整備計画実施に関する特別会計(略称:敷島特会)」の新設を模索していたが、新領土の正式委譲を機にその正当性を改めて主張したことになる。

かつての財政投融資制度の復活を唱える閣僚もいなかったわけではないが、当時の国井はとうに年金会計にまで両手を突っ込んでしまっており、実質的な財政投融資制度が復活していたも同然だったのだ。

無論、非合法であり、それでもあえて実行したところに並々ならぬ国井の決意があったと言うべきだろうが、実はそのときに出来た年金会計の綻びも今は立派に癒えている。

無論、手品のタネは例の秋桜資金ではあったが、その後敷島の整備が国王の支援によって思いのほかの進捗振りを見せてくれたため、石油を含むさまざまな鉱物の採掘権はおろか、広大な大地の資金化も極めて有利に運び始め、ここに来てようやく敷島特会の金庫を満たしてくれるまでになったのだ。

その特別会計は、敷島の先行性が大きく評価されるに従い益々資金調達力を高め、国井はそれを以て空前の財政出動を行いつつあり、膨大な資金が巷に流れたことにより、さまざまな業界の頂上付近を潤し、やがて広大な裾野を黄金の花で満たすほどの勢いを示している。

最新の指標によれば、既に有効求人倍率も一.二倍を超え、労働分配率にしてもようやく上昇の兆しを見せており、したがって個人消費も頗る堅調に推移すると見込まれるに至っているほどだ。

丹波特需と呼ばれる諸物資の需要が爆発的に拡大し、その生産ラインの増設に関わる設備投資も極めて活発であり、その多くが丹波におけるものではあったにせよ、史上稀に見る好景気が始まろうとしており、早くも一部では丹波景気と呼ばれ始めていたのである。

敷島特会の潜在的資金調達能力についても巷間さまざまな評価試算が行われ、最低でも二千兆円、中には八千兆円だなどと言う話まである上、あろうことか、その数十倍に及ぶ筈だとする意見まで出るに至った。

極端な見解では、持って行きようによっては、今後十年以上にわたって、年々数千兆円もの財源を生み続けるだろうとまで言うが、いずれにせよそれらの論の拠って立つところが、丹波世界における敷島の飛び抜けた先行性の確保にあったことは確かだ。

一方で、独自の調査結果を提示して、丹波における日秋両国の天然資源の優位性を殊更に説こうとする者も少なく無い。

その者たちがこれ見よがしに誇示して見せるデータによれば、丹波における価値ある地下資源の埋蔵量に関し、実に特徴的なことが判明したことになるのである。

これ等の埋蔵量が殊に優れて高い領域が、国王の直轄領と敷島にばかり集中しており、それは既に丹波全体の七十五パーセントにも及ぶと言うのだ。

反面、分母である丹波全域の埋蔵量自体未だ不透明なのだから、分子である日秋両国の埋蔵量だけを論(あげつら)って見たところで、無意味な議論だとする見解も無いではないが、少なくとも、大方探査済みの敷島の埋蔵量が特段に優れた数値を示していることに変わりは無い。

その種類に至っては、人類が地球上で知る限りの地下資源は全て網羅されていると言って良いほどで、この日本は、敷島を領土とすることによって、重大な戦略物資となり得る地下資源は全て自給してあまりあるほどの自然環境を手にしたことになり、既存の日本列島の悲惨なそれと思い合わせれば望外の幸運と言って良い。

又、秋桜のそれなども早くから喧伝されて来ている通り、その埋蔵量も敷島のそれに数倍すると言われる以上、もしその地が、巷間囁かれているように、日本人新田源一氏の所有に帰してしまえば、さまざまな市場に対しても、言い知れぬほどの影響力を及ぼすと主張する者もいる。

さらに加えて、王の直轄領にはその他にも広大な馬酔木の山斎(あしびのしま)を始め、鹿島一佐の仕切る玉垣の郷があり、今まさに建設工事が驀進中の任那の郷もある。

そのそれぞれが、優れた地下資源の宝庫だとされている上、国王にはほかにも荘園と言う存在があり、日秋両国の特殊な関係が続いているこんにち日本の持つ優位性は際限も無い。

近頃では、海外の格付け会社までがまるで手の平を返すように媚態を示し、日本の国債にAAAを付けるまでになって来ており、カントリーリスクに関してなどは、秋津州と並んで断然最高水準にあるとされているほどなのである。

これ等の情勢がさらに有利な観測を生み、そのような情報が今後益々景気を押し上げて行くのも当然だが、その場合、最大の敵は急激なインフレーションの発生であろう。

尤も、現状では地球上の不動産価格が下落傾向を強めていることの方が、かえって問題だとされており、そのことと相俟って物価水準の推移は慎重に見守るべきだと言う声が高い。

ただ、日本人の丹波への移動圧力はいよいよ高まりつつあることは事実で、今や一度に数十万人規模で敷島や秋桜に旅立つケースまで出て来ており、かと言って戻って来るのは精々半分ほどであることから、いよいよ爆発的な移住が始まろうとする気配が濃厚だ。

何せ、王の直轄領を除けば、日本だけが新領土における区画整理を早々と完了し、地方自治体や個人に対する官有地の払い下げに手を染めつつあるのだ。

殊に、敷島特会の威力にも支えられ、八雲の郷に続いて、敷島への不動産投資熱が一気に加速する勢いまでありありと見えているのである。


さて、二千八年の年の瀬もいよいよ押し詰まったが、ワシントンにおいては一段と厳しい時が流れており、大統領のマシーンと呼ばれる者たちは、全員気の休まる暇も無い日々を送っていた。

次々と襲い来る未曾有の国難を前にして、彼等の肩には文字通り国家の存亡が掛かってしまっており、苦悶のあまり体調を崩してしまう者も少なくない。

何せ、今のワシントンの実力ではどうにもならないことばかり頻発してしまっている中で、又しても大きな問題が生じつつあったのだ。

問題の新天地への進出競争において、哀れな合衆国はEUと共に、諸国の後塵を拝する可能性が出て来てしまったのである。

このケースで合衆国に先んじる諸国とは、日本はおろか中台露印蒙やアフリカ諸国、場合によっては、中南米、東南アジア、中東、中央アジアまで含み、詰まりは、北米とEU及び豪州を除く全世界だと言って良いほどで、ワシントンを巡る周辺事態は益々深刻の度を深めていると言って良い。

うかうかすると、彼等自身がかつて「第三世界」と呼んで来た筈の国々にさえ、敗れ去ってしまうかも知れない。

敗れ去ってしまう競争とは、その地における国土建設競争であり、無論そのことに立脚した経済基盤の確立競争を意味しているのだが、合衆国はその重大な競争に致命的な敗北を喫しつつあることが、いよいよ明らかになって来たのだ。

合衆国にとって最も恐るべきシナリオが、恐るべき結末に向かって着々と進行していると嘆く者が増えて来ており、この舞台の幕が下りるころには、合衆国自身が「第三世界」の一員となってしまっているに違いないとまで叫ぶのである。

今や、合衆国が世界に誇って来た圧倒的競争力を持った大資本までが、一斉に八雲島に本拠と資本と技術を移し始めており、世界に冠たる経済基盤の足元を激しく揺さぶってしまっているほどだ。

その八雲島があの魔王の本拠地であることが、なおのこと重大な結果に繋がると囁かれ、合衆国の最大の財産である経済的優位性が風前の灯だと囁かれるまでに追い詰められていたのだ。

その作戦ミスを齎した痛恨の読み違いについては以前にも言及したところだが、要は秋津州軍の動員能力と補給能力とを過小に評価していたことが全てであった。

無論それがそれなりに巨大なものであることは理解していたつもりなのだが、それにしても、まさか、これほどまでとは思わなかったのだ。

いずれにしても、国家として一本化した建設プランを持たない以上、救援要請をしようにも物理的に不可能であり、その他にもさまざまな国内事情があったにせよ、全てにおいて出遅れてしまったことは否めない。

現にワシントンは、丹波において驚愕の事実を知ることになるのだが、先ず最初に瞠目したのは、新アフリカ大陸を縦断する大動脈建設の異常な進捗振りだったと言う。

実に全長三万キロにも及ぶその長大な道路建設工事は、大規模な橋梁やトンネルの工事まで含むものでありながら、驚くべきことに秋津州軍は僅か二週間で仕上げてしまったのだ。

ちなみに、秋津州軍のヒューマノイドの輸送能力は、その一体一体がペイロード四トンほどのヘリコプターに匹敵する上に、ヘリに比して決定的に有利な特徴を持つ。

それは、大量のヒューマノイドが一箇所に瞬時に集中して、機能として一体化してしまえる点であり、その結果三十体も集まれば百トンもの重量物でさえ素手で軽々と運び、その上そのままの体勢で加工はおろか、据え付け作業までやってのけてしまうのである。

対象物が寸法上巨大なものなら、それこそ千体どころか一万体でさえ一瞬で協働させることが出来るからこそ、途方も無い作業効率を実現出来てしまうのだ。

しかも、建設すべき道路百メートル当たり数十万ものヒューマノイドを、全線にわたって一斉に配備した上で作業に掛かることから、例えその総延長が十万キロであった場合でも、単に百万個の百メートル区間があるだけの話になってしまう。

すなわち、百万個の百メートル区間を全て同時に建設してしまえるのだ。

単純に全区間が同様の平地だけであったなら、一区間の作業時間が二日間である以上、全区間が同時に二日で作業を完了してしまうことになる。

但し、実際の工事には、大河に架設する巨大橋梁もあれば山間部の掘削工事もあり、かてて加えて全長数十キロにも及ぶ大トンネルの掘削まで必要だったため、二週間を要したまでのことなのだ。

そして、秋津州にはそれを支える膨大な補給能力がある。

自在に飛行する巨大ポッドが文字通り無数に協働し、無限に思えるほどの資材を潤沢に補給し続け、それらの全てを一糸乱れず整然と運用するに足る独自の通信技術がある。

飛行するヒューマノイドは、空中だろうが高所だろうが足場も命綱も一切必要とせず、挙句どんなクレーンや重機よりも、はるかに柔軟で使い勝手の良いものなのである。

ワシントンから視察のために派遣された技術者たちは、そのような状況を目にして、もう笑ってしまうしか無かったらしい。

その工事が巨大なものであればあるほど、その作業効率はいよいよ途方も無いほどのものとなって行き、優に五年六年を要する国家的な大土木事業でさえ高々二週間で終えてしまうのだ。

しかも、丹波ではこのような大規模な土木事業が各地で同時に進行中であり、ひるがえって合衆国の新領土では本格的な工事は未だ始まってもいない。

ワシントンの焦りと苛立ちは想像に余りあるだろう。

その結果、常日頃「秋津州の代弁者」、若しくは「秋津州の友人」と称され、自分でも思いがけぬほどの権力を握ってしまったタイラーにとっても、まことに厳しい年の瀬になってしまった。

彼の目にさえ落日のワシントンの姿が容赦なく映り込んで来ており、本国の訓令を待つまでも無く、おのれの重責をひしひしと感じざるを得ず、当然、必死の思いで魔王の歓心を買うべくさまざまに努めてはいる。

しかし、魔王の玉座は依然として頭上はるかに遠く、ほんの数年前まで世界に覇を唱えていた筈のホワイトハウスの主に対してさえ、微笑みを投げてくれるどころか、近頃では振り向いてもくれないのである。

合衆国大統領特別補佐官にとって、そのことが何よりも恐ろしい。

何しろ、突然の不幸に見舞われて以来、あの魔王の本音が益々判らない。

タイラーの目に映る魔王の背後には、時として燃え盛る紅蓮の炎が見えてしまうのだ。

少なくとも魔王の胸の中では、煮え滾る憤懣と復讐の念が渦を巻いてしまっている筈であり、そのはけ口も見出せぬまま、このまま時が流れて行けば、いつかは必ずそれが溢れ出るに決まっている。

誰が考えても、そうなるに違いないのである。

相手はその辺に転がっている青白き秀才などでは無い。

血みどろの肉弾戦でさえ幾たびも勝ち抜いて来ている、文字通りの歴戦の雄なのだ。

その豪強さは最早伝説の域に達しているとされ、近頃では、我が海兵隊の猛者の間にさえファンを持つと囁かれるほどの相手なのである。

それほどの男が一旦激してしまえば、それを制御出来る者などいるわけが無い。

まして、ケンタウルスの一件があり、魔王の一顰一笑(いちびんいっしょう)がなおのこと気になるこのごろなのだが、突然妻子を失ってからのその表情が、益々冷然としたものに見えて仕方が無いのだ。

その結果、小心者の心の中には、今や恐るべき鬼が急成長を遂げつつある。

無論、疑心暗鬼と言う怪物だ。

その怪物が、絶えずひそひそと囁きかけてくる。

最近は殊にそれが甚だしい。

怪物は囁くのである。

「魔王の戦略は、合衆国の滅びを意図するものに違いない。」

「我が合衆国を滅ぼそうと図っているのだ。」

タイラーは、暮夜密かに総毛立つ思いで夢想することがある。

無論、我がホワイトハウスに翩翻と翻る八咫烏の旗をだ。

だが、小心者がどんなに煩悶しようとも事態が好転する気配は全く無く、秋津州の外事部にしても、通り一遍の儀礼的な対応はしてくれるものの、ワシントンの苦衷を好意的に解釈して笑みを見せてくれるほどでは無い。

そうであるにもかかわらず、その魔王の近頃の対日姿勢はどうだ。

近頃相次いで誕生した新田と岡部の男子に対してなど、個人的に祝いの品々まで贈ったと聞いている上、あろうことか、それぞれ名付け親の大役さえ引き受けたと言う噂まであるのだ。

そう言う心遣いの百万分の一でも、我が合衆国にしてくれたことが、かつて一度でもあっただろうか。

実に、腹立たしい限りなのである。

片腕と頼むジムなども憤懣やるかたない様子を見せているが、合衆国を取り巻く国際環境が一向に改善される気配が無いまま、彼にしてもいたずらに時を費やす一方だ。

何しろ、恐るべきガンマ線バーストが地球に到達する時期が、二千十一年の五月から七月にかけてのいずれかであることは既に堂々たる定説となってしまっており、事実を知る者にとって、その対策が他の天体に移住する以外に無いことは最早常識なのだ。

理想論としては、その危険ゾーンの六ヶ月前までには、全ての対応を完了させるべきだとされているが、今は既に二千八年の年の瀬なのである。

限界点は二千十年の秋口だとされているにもかかわらず、それまでに、余すところ二十ヶ月少々でしかないことになる。

一日も早く新領土の原野を切り拓き、人間の住める環境を構築して置かなければならないのだ。

さもなくば、合衆国市民に原始人のような生活を強いることになってしまう。

一刻も早く文明的な生活環境を準備しなければならないのである。

いや、それだけでは未だ足りない。

どんなに奇麗事を並べて見たところで、この国際社会の中では、他国に比べてより高い水準の経済力を持たなければ、激烈な国際競争に勝ち抜いて行くことは不可能であり、うかうかすれば政治的にも敗者となってしまう。

そのためにこそ、活発な経済活動を可能とする近代的で利便性の高い社会的インフラを他に先んじて構築して置く必要があるのだ。

そうでなければ、巷には失業者どころかホームレスが溢れかえってしまうのである。

だからこそ、ことを急ぐのだ。

だが、現実はどうだ。

我が合衆国は、かえって他国に先んじられてしまっている上、今のままではその差は開くばかりであり、近頃では、諸国のメディアなどから、「白頭鷲の皮を被った手乗り文鳥だ。」などと痛烈に揶揄されるに至り、繊細なその心はなおさら傷付くばかりだ。

魔王から直接情報を取るべく必死に手配した例の美女軍団作戦にしても、全て水泡に帰してしまい、期待の星であった筈のあのキャンディ・ティームも、刀匠の弟子であったテロリストに絡む作戦で結局無駄遣いをしてしまった。

魔王にとって最も憎むべき敵(かたき)と散々に肉体関係を持ってしまった以上、彼女たちの滞在など最早逆効果でしか無いことから、とうに帰国させてしまっている上、その他の女たちにしても総入れ替えの最中なのだ。

そうでなくても、その身勝手な評価基準から言えば、戦士達も既に年齢を重ね、その面からして、とうに限界を感じ始めていたところでもある。

皮肉なことに、ターゲットは、れっきとした一国の元首でありながら極めて若いのだ。

何せ、今年の九月で二十三歳になったばかりであり、それに対応させるべき戦士達の方はほとんどが年上ばかりだ。

この戦術に関しては、かつて唯一の成功例があったと聞いており、考えてみれば、そのマーベラでさえ、ターゲットに対して三歳もの年長であった筈だが、何せ当時のターゲットは未だ十八歳でしかなかったのである。

三歳の年長であっても、なお戦士は充分な若さを保持していたことになるが、この意味でも、状況が大きく異なってしまっていることを改めて思わざるを得ない。

それに、妃の座と言う重要ポストが空いている今、戦士の任務にしても何も情報収集に限ったことではなく、場合によってはその空席を埋めるものであっても一向に構わない。

いや、構わないどころか大歓迎だ。

国王独裁のこの国でその女性が一旦世継ぎの王子を産むことにでもなれば、ワシントンから大量の政治顧問団を送り込むことも可能であり、そうなれば、あの新田源一などは帰国するより無くなるだろうし、あくせくと個別に情報を取る必要は無くなり、秋津州の国政を全てにわたって壟断してしまうことさえ可能だ。

他の多くの国にしても、想いは同じなのだろう。

現に彼らも、年若い美女を厳選して続々と送り込み始めており、無論我が国も負けてはいられない。

既に、この海都はもとより、近頃では八雲の郷にまで相当数の戦士を送り込みつつあり、タイラーからして見れば、その勢いは今後益々強めて行くべきものなのである。

八雲の郷のサンノショウにおいて、わざわざ現地の大和商事に建築を依頼した瀟洒なホテルまである。

ワシントンの用意したダミー会社が巨額の予算を掛けてまで、それを大和商事に発注したのも、偏(ひとえ)にその建築作業が素晴らしいスピードを誇っているからであり、現地に進出済みの米国系企業などは、その点遠く及ばないことが最初から明らかなのだ。

まして、近い将来にも魔王の来臨を期待する以上、その施設そのものの無害性を大和商事側に担保させる狙いも無いとは言えない。

少なくともその施設の建設作業の全てを任せている以上、相手にとってその分だけ安全性が増すことは確かであり、その効果にしてもまるっきり無視することは出来ない筈なのだ。

とにかく、秋津州ロイヤルホテルと銘打つそのホテルが近々落成の運びで、娯楽施設に溢れた建物の一郭には国王専用を謳うフロアまで設け、戦士の一部には妖艶なショーダンスまで準備させていると聞く。

全ては大統領のマシーンの胸の中の鬼が大騒ぎした結果なのだろうが、タイラーの胸の中の鬼にしても大人しくしてくれているわけではない。

近頃では胸の中で別の鬼が騒ぎ出しており、あろうことか、高々十五歳の少女を用いるべきだと大声を上げ始めてしまっていたのだ。

胸の中の葛藤は、ワシントンから寄せられたある特殊情報に接した瞬間から続いており、それは既に一週間を数えてしまったが、ジムなどの強力な推輓もあり、胸の中の鬼がようやく勝ちを制し、つい先日ゴーサインを出したばかりだ。

何せ、ワシントン情報によれば、その少女はかのピッツバーグに眠る伝説の麗人に瓜二つだと言い、その麗人は、言うまでも無く魔王の初恋の相手であり、気高く咲いた大輪の花なのだ。

それも、タイラーにとって、ことのほか芳(かぐわ)しいアングロサクソンのことでもあり、その点、この少女にしても同様であったことが、タイラーにとって、それこそが何にも勝る重要な要素に感じられてならない。

タイラーの心の奥底に居ついてしまっている人種的偏見の表れであることは確かだが、例え、如何なる非難を浴びせられようとも、内心その想いだけは動かないのである。

それに、この少女は、僅か五日ほど前に交通事故で両親を失ってしまっており、言わば天涯孤独の身となったことを知り、その上での決断であったことは確かだが、かと言ってタイラーの胸の疑惑は覆うべくも無い。

その交通事故は、どう考えてもタイミングが良過ぎるのである。

両親の排除を密かに企図した者の仕業ではあるまいか。

もし、その両親が健在なら、このような「作戦」など、実行することは出来なかった筈なのだ。

事故発生の直後から、州政府からの派遣と言う名目で、女性のエージェントが三人も張り付いて対応していると聞くが、その点でもあまりに手回しが良過ぎるのである。

尤も、万一自分の想像が当たっていたとしても、ワシントンは、証拠などかけらも残さずことを処理することの出来る実行組織を持っており、現地の警察もありふれた交通事故の一つとして処理済みである以上その真相は永遠に藪の中だ。

いずれにしても、その両親の葬儀も済まない内から既に作戦は動き出してしまっており、状況から見て、仮に自分がゴーサインを出すのをためらい続けたとしても、自分以外の別ルートを使ってでもその作戦は必ず続行されるに違いない。

そうである以上、この作戦の指揮を執るにあたって尤も相応しい者は、やはり自分以外には無いだろう。

 ◆ 目次ページに戻る
スポンサーサイト


  1. 2007/10/06(土) 12:12:07|
  2. 妄想小説 主権国家|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:0
<<自立国家の建設 103 | ホーム | 自立国家の建設 105>>

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://unclejim.blog4.fc2.com/tb.php/354-71b085a9
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。