日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 027

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さて、この頃の秋津州では、中央銀行としての秋津州銀行が目出度く立ち上がり、金融システムの根幹を支えるべく重厚な態勢を以てその業務を始めており、民間銀行としての加茂川銀行も又、各所に支店を構え立派に営業を開始していた。

しかし、この民間銀行には当初国内での貸し出しの機会などはほとんど無く、そのため、通常の貸し出し金利を稼ぐことは出来ず、その収益のほとんどは為替交換等の手数料に頼らざるを得ない宿命を背負っており、本来、収支のバランスがとれずその経営が立ち行く余地が無い。

しかし、王立と目されることにより、この加茂川銀行は巨大な財産を持ち得た。

全世界のマーケットに対する途方も無い影響力のことである。

この銀行が、言い換えれば秋津州と言う国家が放つ光りと影が一際大きな機能を果たすことになるのだ。


最近ではこの国が、多様な非鉄金属に加え、単独で純分離された希土類まで大量の出荷能力を持つことまで知れ渡り、原油や穀物、ひいては為替や証券など、ほとんどのマーケットの根底に関わるような重大情報を握っている点が重大であったろう。

これも繰り返しになるが、秋津州は若者さえ健在ならば、三つの荘園と言う独占的な生産地と運搬手段を持ち、完全な自給自足を全うすることも可能であり、全世界から挙って経済封鎖を受けたところで致命傷にはなり得ず、少なくとも物質的には凌いでいけるのである。

仮に一旦若者が腹を据えてかかれば、他国の思惑を全く顧みることなく自侭な出荷調整を行えることになり、極端な場合、全ての出荷を恒久的に停止してしまうことすら可能だ。

なおかつ、その産品の数量的な威力も暴力的と言って良いほどのもので、決定的なことに、その出荷情報は他者は誰一人事前には知り得ない。

事前に知るためには、秋津州側から情報をもらうほかは無いのだ。

その情報こそが最大の財産なのである。

又、秋津州の銀行の代理業務を行うことにより、自行の破綻が秋津州の好むところではないと見なされるだけで、他行との間に凄まじい格差を産んでしまう。

秋津州の銀行の代理業務を行うだけで、自行の信頼性が格段に高まり、マーケットにおける競争力が格段に強まるのである。

逆にバスに乗り遅れてしまえば、もうそれだけで信頼性が損なわれてしまうため、世界中の金融機関が目の色を変えてしまっているほどで、諸外国に店舗展開を行おうともしないこの銀行に、各国のビッグバンクから代理業務の申し入れが殺到することになった。

結果として、この加茂川銀行は世界の金融ネットワークの中で、大いなる一ノードを構成するまでになって来ており、変則的な形ではあっても、いまや立派に国際的な決済業務を行い得るのである。

加えて、各店舗に配備された年中無休の要員は実質無給に等しい者ばかりであり、その経営コストを格段に軽減しながら今日も活き活きと業務を遂行している。

又一方で、「秋津州の円」が国際舞台に登場したことも軽くは無いだろう。

だが、秋津州は建国間も無い新生国家である上、IMFやWTOはおろか国連の存在すら無視し続け、いかなる国家とも条約を結ばず国際間に一人超然としており、個別の案件では是々非々で協議に応ずる姿勢は示してはいるものの、他国が作った既存の枠組みからは一歩も二歩も退いていることに変わりは無い。

少なくとも、国際間における不安定要素をふんだんに持っていることは確かであり、それにもかかわらず、そのような新生国家の発行通貨が、いまや国際通貨として機能し始めているのである。

普通なら有り得ない事であったろう。

その通貨は、単にその新生国家の王が法貨宣言を行っただけのものに過ぎないのだ。

だが、市場原理とはまことに正直なものであった。

今次ユーラシア大陸に注ぎ込まれた膨大な物資の中でも、殊に穀物類が市場に与えた影響は抜きん出て大きなものがあり、輸出国や市場関係者たちの間からは、悲鳴にも似た怨嗟の声が聞こえてきたほどだ。

その破壊力に怯える者の数の多さが、言い換えれば世界の穀物市場に残した爪あとの大きさが、そのまま秋津州の力の大きさに通じることを計らずも証明してしまったと言って良い。

そのこと一つとっても、その通貨の信頼性を支えているものは、ひとえに秋津州自身の信用だけであり、そしてそれは既に揺るぎのないものに成長しつつあるようだ。


また、近頃では多くの国が秋津州に磐石の拠点を持ちたいと願っているが、この希望も近く満たされる見通しが立ったと言われる。

着々と進められている復興事業の一環として、いよいよ近代的な高層ビルが、多数完成し始めているからだ。

これ等の建造物も、その原型は内務省や国民議会とほとんど同時に天空から搬入されてきたものであったが、その巨大構造の故に、さすがに本体の据え付けや内装等の作業に手間取ったらしい。

しかも、その内の幾つかが、日本で言うところのマンションやホテルの機能を持つことが明らかになるにつれ、主要各国はそれぞれの現地事務所として賃貸契約を行うべく、鋭意ことを進めていると言うが、この国では外国人や外国企業の不動産所有を認めていないことから、全て比較的短期の賃貸契約にならざるを得ないと言う。

なお、秋津州には多数の外国人がいるが、ごく一部の例外を除いて、その全てがSS六改をチャーターして出入りしている筈だ。

いまだに戦時体制を採る秋津州は二百海里防空識別圏を宣言しており、その中には「圏内への進入はSS六に限定する」と言う、極めて一方的な内容まで含まれていた。

まして、「その圏内に侵入しようとするものは、一切警告無しに撃墜する。」とまで言い切っており、秋津州の軍事能力から見て、海も空も充分な警戒態勢がとられていることは確実であり、敢えて無謀な侵犯行為を試みる者など全く見当たらない。

逆にSS六改に搭乗してさえいれば、この国への出入りがかなり手軽に許されるのである。

理由は簡単だ。

言うまでも無くこれ等SS六改は全て秋津州の完全な管理下にあり、搭乗している者たちに対する自動的なチェック態勢も完璧に整っているため、その出入国者たちの無害性が容易に担保されるためだ。

また、当初から居留していた外国人の大部分はNBSの関係者ばかりであったが、今ではNBS以外にも各国の報道陣が数百を数え、長らくプレス専用の建物の中にすし詰め状態になっており、これも当地が、世界の安全保障を揺るがす重大ニュースの発信源で有り続けていたからに他ならない。

最近では各国当局筋からも公式、非公式を問わず派遣されてきている者が多くを数え、この者たちは桁違いに豊富な活動資金を懐にしており、完成したばかりのホテルへの投宿やマンションへの入居の希望が殺到し、殊に米国筋の押さえた部屋数が群を抜いて多かったと言われた。

NBSに名を借りてやって来ている例の女性部隊だけでも数十人もの多くを数え、彼女たちのそれぞれが、マンションの相当数の部屋を押さえ、一人一人が個別の活動拠点とし始めており、米当局から出費される費用も決してばかにはならない筈だ。

当然、タイラーもマンション形式の建物の中で連続した十数室を押さえ、様々な機材を設置して言わば合衆国代表部の拠点としているほどで、これ等を含めて、今や二千人ほどの外国人が活動し始めており、それぞれがそれぞれの滞在生活を営みつつあり、やがて彼らの全てが秋津州円を求め、それを使用して活動して行くことになるのもごく自然の成り行きであった。

秋津州円の信頼性を疑う者は既に無く、必要の際には、限度額の制限はあるにせよ、米ドルやユーロ、若しくは日本円に軽々と交換出来ると言う紛れも無い現実がそこにある。

「秋津州の円」が活発に流通し始め、決済時の一厘未満の端数を四捨五入処理すべきことと、通貨の発行は当分の間王の荘園で行われることが宣言され、厘・銭・円と言う秋津州通貨のラインナップが名実共に定まって行く。

一円の百分の一が一銭、一銭の十分の一が一厘である。

以前にも触れた通り、内務省職員には三千円から五千円ほどの月棒が支給されていると言われ、賞与と言うものが無い。

秋津州の円が為替市場と言う大海原に船出した際のレートは、一ドルが八十六銭四厘であったが、これこそがマーケットの下した秋津州円の評価であり、ちなみに一ドル百七円(日本円)のレートで換算して見ると、右月棒のそれぞれは三十七万千五百二十七円と六十一万九千二百十二円となり、直接税も年金もないため、その全額が可処分所得である。

引き比べて、農業及び半農半漁の所帯などでは、現金収入と呼べるようなものは無いに等しく、農耕地の開墾拡充も現在計画中であり、いまだ農耕地を有さない農民まで存在し、とにかく、何から何まで全てこれからなのである。

もし彼らが普通の人間であった場合、そのまま貨幣経済の荒波の中に放り出されてしまえば、不動産を担保にして借金を重ねるか売り払うかしかない。

たちまちにして、手持ちの農地も宅地も失ってしまうに違いない。

あとは、子供や臓器を売る他に生きるすべを失ってしまい、その結果、一部の金融資本だけが突出して肥え太ってしまうと言う構図が現出する筈だ。

急激な貨幣経済を迎えた途上国では、今も、現実に起きている問題なのである。

いずれにしても、七人の幼い国民たちには、国王の手厚い庇護が必要であることは言うを待たない。

当然、国王自身の政策の眼目もそこにある。

この頃行われたNBSの取材に対する国王の談話は、貨幣経済の中における秋津州農業の行く末を心から憂えるものであったと言うが、宿命的に小さな耕地面積しか確保出来ない以上、その農産物は相対的にコスト高にならざるを得ず、この現実をふまえれば、例え国王でなくとも、自国の農業が激しい国際競争に勝ち抜いていくことの困難さを、色濃く滲ませた談話にならざるを得ない。

しかし、一旦国王の身に不測のことでもあって、外から食糧を移入する手段を失ってしまえば、当然国内での生産に頼るほかに無いことは自明の理だ。

食糧の不足した分だけ、必ず国民が飢えてしまう。

豊かな穀倉地帯を持つ輸出国にあっても、天候不順などによって、いつなんどき凶作飢饉に見舞われるか知れたものではないのである。

二年以上の凶作が続いた場合、その国の備蓄食糧が底をついてしまうかも知れず、その国自身が深刻な食糧不足に陥った時、それでもなお秋津州に食糧を輸出してくれることなど有り得ないだろう。

一旦そんな事態になれば、大抵の国の政府は食糧の国外流出を厳しく制限する筈であり、本来いかなる政府にとっても自国民の「食」を確保することは最優先の課題であり、自国民を犠牲にしてまで他国民を救う義理も余裕もある筈がない。

どんなに奇麗事を並べて見たところで、どこの親も苦労して手に入れた一切れのパンは、飢えた他人の子によりも、同程度に飢えた我が子に食べさせたいと願うだろう。

他人の子がいかに飢えようとも、我が子の命には代えがたいと思うのが自然の人情でもある。

また、その時の国際情勢によっては、経済制裁として輸出制限措置を数カ国の協調戦略として発動してくることも無いとは言えず、まして、秋津州は世界に超然とした姿勢を示しつつあり、自力で生存していくためには、食糧の安定確保がますます重要課題となることは確かだ。

ちなみに、今次の紛争で秋津州が占領した各領域は豊かな穀倉地帯を数多く含んでおり、これを版図として押さえて置きさえすれば、この問題も一挙に解決出来た筈だと評する者もいたほどで、事実、それら広範な穀倉地帯においては、農民一所帯あたりの広大な耕地面積を確保出来るため、マーケットにおいて余裕を以て競い得るほどの低コスト生産が可能なのである。

現に日本より狭小な国土しか持たない筈の、かの大英帝国は第二次大戦において勝者側の一員だったために、未だに広大な衛星国を多数保持し続けることを得ており、そのため、食糧資源のみならず地下資源の端々に至るまで、自らの衛星圏の域内だけで、全て賄って余りあるほどの地歩を固めることが出来た。

くどいようだが、その国が現在それほどまでの衛星圏を保っていられることの最大の理由こそが、かつての大戦における勝者であったことに他ならず、無論敗者となった我が日本は、現に膨大な領土と衛星圏を全て没収されているのである。

そうであるにもかかわらず、若き君主は完璧な勝者でありながらその領有には関心を示さず、その理由については、国民の実数がごくわずかでしかないと言う現実が、預かって余りあることも確かであり、仮に秋津州の人口が数百万もあったとすれば、その行動も又違ったものになっていたかも知れない。

また別の報道によると、このところの王は農耕地の開拓現場に顔を見せない場合、秋津州北方の外海に出向き、その深海底で稼動させていた浄水プラントにおいて、併設の製塩精製工程の拡充に没頭していると言う。

王はこれまで、支援物資の一部として、膨大な食卓用と飼料用の「塩」をユーラシア大陸に搬入し続けてきたが、天空のファクトリーも大量の工業生産を継続しているため、いわゆる工業用の「塩」と言うものも大量に消費して来たと言う経緯がある。

これ等の全ては、三つの荘園にある岩塩層や塩湖に頼っていたもので、マザーや秋津州のウェアハウスの中にも相当なストックが確保されてはいるものの、これとても農産物の場合と同様に、国外からの移入が困難な場合を想定し、それに備えておくことの必要性を重く見ての行動に違いない。

王としては常に最悪の場合を念頭において、この小天地での自給自足のための準備におさおさ怠りが無いのだろう。

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  1. 2005/11/03(木) 03:27:16|
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