日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 029

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また、このころの国民議会はその議員も定数を満たし、散発的な開会と閉会を繰り返しつつ本格的な論議が行われ始めており、陸海空の交通運行に関する国内制度の概要が固まり、中でも特徴的であったのは、国内全ての車両の原動機を永久原動機に限るとしたことであったろう。

わずかに稼動していたNBS所有の内燃機関搭載車両は、特例として向後一年と言う期限を切ってその使用が認められ、それ以後の使用は全面的に禁止されることとなったのである。

日米等の工業先進国では、既に永久原動機の搭載車両の生産が始まっており、一年もの準備期間があればNBS側にも深刻な問題が生じることは無いと言う。

何よりも、国内の車両に対する登録番号標の交付が始まり、間も無く全ての車両に取り付けられる運びとなり、初めてその所有者の責任の所在が明らかにされることとなった。

そして、議会での論議は自然国際市場にも対応すべく、様々なルールの整備にまで踏み込まざるを得ない。

議会の代議員には、国際的な市場経済の概念についても相当な予備知識を持つ者が多く、活発な議論が具体的に行われつつあり、NBSのカメラが捉え続けるその内容は、世界に向けて発信され各方面に与える影響も少なくはないと言われている。

しかし、舞台の上で国家運営の枠組み作りの進行劇を演じているのは、実際にはほかならぬヒューマノイドなのだ。

しかも、この演劇のプロデューサーは国王であり、演出家はマザーであり、又秋元京子でもあるのだろう。

誤解を恐れず言い切ってしまえば、少しばかり規模の大きな人形劇が演じられていると言う事も出来る。

この人形劇と言う虚構をそうとは知らずに、世界が注視すると言う構図が既に定着してしまっているのだ。

これが、外界から秋津州の今後を占うための大いなるよすがともなっており、この意味では世界一観客数の多い人形劇であると言うことも出来よう。

この国民議会と言う虚構の果たしている役割は、一に、秋津州における堂々たる民権と民意を議すべき議場の存在を、絶え間なく世界に発信し続けて行くことに尽きており、国王にとっては、この虚構もこの意味に限れば、その務めを充分に果たしていると言うことが出来るのだ。

ただし、秋津州の国家としての存在は紛れも無く実像であり、実像である以上執行すべき予算を持たなければ、何一つその運営が出来ない。

問題は、国家の運営にとって何よりも重要な予算が、国王を抜きにしては立って行かないと言う現実だ。

現在の予算のほとんどが、秋津州商事からの税収に頼っているのが実情であり、この点から言っても、秋津州は国家全体が王のものである所以であろう。

七人の幼い国民が成長し、それに続く者が増えて行き、やがて真の国民としての自覚と能力を持つことによって、自らの国家を支えていけるようになるまでは、ひたすら王が全てを担って歩んで行くことになるが、そのことが、国王自身にとっての最大の生き甲斐であることも変わることは無いのである。


十月も中旬を迎えるころ、日本の領土問題にとって一際重大なニュースが流れた。

問題の北方四島に自衛隊が上陸し、中央と自治体の調査団がそれに続いたと言うのだ。

大規模な測量と共に徹底した全島調査が行われ、これらの調査においても、違法な居留民は一人も発見されることは無く、ここに領土の実質的な奪還が現実のものとなって、向後の具体的な復興プログラムが実施されることになるのだろう。

そしてこのプログラムの中には、永久原動機を動力源とした発電施設の建設計画が多数含まれており、それが離島の全てに渉っていることが大きな話題となった。

話題の焦点はその建設計画が無人島にまで及んだことよりも、この発電施設の特殊性にこそあっただろう。

何せ、この発電施設には、タービンと言うものが無い。

当然、タービンを回転させるべき高温高圧の蒸気も巨大な冷却装置も必要とはせず、原子力は勿論、水力、火力とも根本的に異なり、一切この手のエネルギー源を不要とする点において決定的な違いを生んでいる。

唯一起動時にのみ、ごくわずかな電力を必要とすることも既に述べた通りだが、それも手動の小型発電機を使うだけで充分なほど微量の電力なのだ。

例えそこに、他のエネルギー源が皆無であっても人力を以て軽々と起動し得るのである。

仮に電池を使用する場合であっても、最近の腕時計に内蔵されている、小型のボタン電池クラスの容量で充分に事足りてしまうと言う。

原動機本体は廃棄物は勿論、熱も騒音も発生させず環境汚染の点においてもまことに優れており、その上巨大な設置面積も必要とせず、わずかな敷設面積だけで対応し得ることによるコストの軽減も小さくない。

直結の駆動方式を以ってさえ一千万KWh以上の発電機を、軽々と回してしまうほどの大出力を持つとされ、単純計算とは言えこの原動機一機で、既存の原子力発電所数ヶ所分の発電を可能としていると言うのである。

この方式は各国の発電所建設計画において、相当な割合で採用される可能性を秘めているが、現時点では未だその未知数の部分に対する実験的な試みとしての位置づけであったようだ。

ただ、この北方四島に関するさまざまな局面においても、新田源一と言う男の存在が、日本政府にとって強力なアンテナとして機能した結果であることだけは動かない。

いまや彼の存在は、日本外交の全てにわたる羅針盤とまで言われ始めており、新田無しにはその大綱を定めることなど不可能と言われるまで、その影響力が膨れ上がりつつあったのだ。

新田のオフィスと首相官邸を直結するホットラインも開通し、常時接続で大量の双方向通信が可能となっており、その結果、外交使節団の交換すらなされないまま、日秋の実質的な国交が立派に成り立ってしまっていたのである。

例の五カ国協議においても、日本代表の見解を抜きにした議論など成り立たない状況が続いており、国際社会における日本のプレゼンスばかりが重みを増し、以前のような非礼極まりない扱いを受けるような場面は、ぱったりと見られなくなった。

日本に無礼な振る舞いをするなど、百害あって一利も無いことを思い知ったからであったろう。


また、秋津州国内では、秋津州商事の経営になるホテルが数棟営業を始めており、いずれもが三千室以上の客室と第一級の設備を誇っていると言うが、その利用客は各国の報道関係者がほとんどであり、今のところ一般観光客の入国は許されずその姿は見当たらない。

当然、これ等のホテルの客室稼働率はほんの数パーセントに過ぎず、ビジネスとして見た場合その経営が成り立つ筈も無い。

全棟で一万を超えると言われる客室がほとんど空室であるにも拘わらず、秋津州商事の従業員たる膨大なホテルマンたちは、いつ何時満室となっても困らないだけの態勢をとり続けており、その固定費の負担を考えただけで瞬時に破綻してしまう筈なのだ。

その上、このほかにも未だに大規模な建設工事が続いており、それらが落成するのも遠くは無いと言われており、タイラーの探知した非公式情報によれば、中でも際立って大規模なものは「秋津州ビル」と呼ばれ、基本的にはテナントビルのようであり、その中には、プレスルームや大小の国際会議用と思える設備まで複数備えていると言う。

勿論、これも国王の政策の一環なのだろうが、その真意についてもさまざまに憶測を呼んでおり、種々の風評が立っているにせよ、少なくともそのニーズがあることだけは確かだろう。

何せ、銀色のSS六をチャーターして秋津州を訪れる者がいまだに増え続けている上、政府当局の意を体してやって来る者が引きもきらないのである。

それら政府筋の訪客には、主に新田源一と秋元女史が対応しているようだが、その接遇にあたっては、全て内務省の中のスペースが当てられて来ているのが実情であった。

ときには、三十ヶ国を超える使節団が鉢合わせしたことすらあったのだ。

内務省のスペースにも当然限りがある。

したがって、その「秋津州ビル」と呼ばれる巨大な建造物は、その対応のためとするのが妥当だろう。

タイラーの手元にある完成予想図によれば、二十五万平方メートルほどの敷地に立つ、本館とされる地上六十階ほどのその建物は壮観そのものの偉容を誇っていた。

鳥瞰図で見る限り、外郭の一辺の長さが二百メートルもある正方形を為しており、その内側には中庭としてのスペースが大きく確保されている上、広大な敷地内には、幾つかの別館や見事に配された緑地帯も見えて、王の雄大な構想の片鱗を垣間見ることが出来る筈だ。


また、用済みとなったプレス用の臨時の建物が目出度く撤去される運びとなり、代わって既に営業中のホテルにおいて重大発表が行われることになったと言う。

この記者会見では、真新しい壇上に立った新田源一の口から、全く新たに驚愕の追加支援が行われたことが明らかにされた。

米ドル、日本円、ユーロそれぞれに割り振られたその支援額は、ドルベースで言えば概略次のような巨額なものであった。

曰く、中露二ヶ国それぞれに五千億ドル、韓国、チベット及び東トルキスタンそれぞれに一千億ドルである。

これで、秋津州から放出された外貨の累計は、一兆ドルを大きく超えてしまった。

一部メディアの分析でも、ユーラシア大陸に注ぎ込まれた国王の財貨は既に二兆ドルになんなんとしているとして、これがマーケットに与える波及効果についても大きく取り上げることとなる。

それが、とてつもない需要を呼び込むことだけは誰の目にも明らかで、今回の大動乱が世界のマーケットに残した傷跡を大きく癒してくれることは確かだろう。

王立と目される秋津州商事の稼ぎ出す巨額の外貨が、又しても大きく放出されて、世界経済の循環構造の中に、再び還元されていくことを歓迎する声は限りなく大きい。

しかし、この衝撃的な記者発表の後に漏れてくる非公式情報の一つが、また重大な意味を持っていたのである。

その情報によると、新たに巨額の無償援助を受けたことにより、中露二ヶ国はそれぞれ国軍の建設に着手することとなり、その再構築について許しを請う旨の打診があったと言うのだ。

実質的には、秋津州の被保護国のような地位にある両国としては、言わば宗主国の承認無しには、本格的な再軍備に取り掛かるわけにはいかないと考えたのも不思議は無い。

不思議は無いどころか、極めて普遍性に富む考え方だと言って良いのである。

相反する国益が衝突して、大規模に闘ったのはつい先ごろのことであり、普通その敗者が本格的な再軍備を始めるには勝者の承認を要するであろう。

まして、これほど手厚い支援まで受けてしまっているのだ。

その勝者に無断で再軍備を始めると言うことは、通常、大きな裏切り行為と看做されて無用の疑惑を受けることを覚悟せねばなるまい。

そのためにこそ、事前のお伺いを立てたのだろう。

ところが、案に相違して、新田源一から反ってきた反応は全く拍子抜けするような内容であったと言う。

その程度のことで、いちいち打診してくるなと言われてしまったのである。

両国は、それでも念を入れて核装備についても重ねて打診してみると、その回答はもっとはっきりしたものであった。

その回答たるや、「核であろうが、何であろうが一切口を挟む心算は無い。独立国たるもの、如何なる軍備を持とうが他国がとやかく言うべきでは無い。」と言うものであったのだ。

今回の再支援にしても、再軍備のためにも当然使われるものとの前提で決定したものであって、両国の行う再軍備が気に入らなければこんな巨額の支援など最初から行わない、とまで言い切ってしまっている。

裏から言えば、例えどんなに強力な軍事力を持ったところで、秋津州にとって脅威とは成り得ないと言われてしまったようなものだ。

その上、国王の強い意思として伝えられたのは、「軍備を整え、我が駐屯軍の撤収を一刻も早く可能にしろ。」と言うものであったと言う。

つまるところ、秋津州国王の敗戦国に対する、「カネは出すが口は出さない。」と言う姿勢に、全く嘘偽りの無いことがさらに鮮明になったのである。

戦勝国である秋津州は、敗戦国に対して全くのフリーハンドを与えたことになるのだが、言わば冷たく突き放された格好の両国の首脳たちとしては、反って不気味なものを感じてしまったのも無理は無かった。

こうとなっては、駐屯中の秋津州軍を、なおさら手放し難くなるのも又、自然の人情と言うものだろう。

駐屯軍が存在している限り、強大な秋津州の翼下に抱かれていることになり、自国を攻撃することは即ち秋津州を攻撃することと同義語となるのだ。

これ以上強力な抑止力など他に類を見ないだろう。

両国の秋津州に対する依存度は、今後も薄れる見通しは極めて少ない。


また、このころの秋津州港内には大小さまざまな船舶が停泊し、多様な産品の船積みを始めている。

いまだに国際港としての開港はなされていないにせよ、多様な船籍を持った船が賑々しく入港し、その中には二十万トン級の巨大タンカーまで姿を見せており、無論その大多数は、いずれも荷積み作業に余念が無い。

その荷役作業に携わる者たちが、例の空飛ぶヒューマノイドたちであったことから、作業効率の良さには驚くほどのものがあり、穀類などは、SDが船上の空中に浮かび、直接その中身を船倉に落とし込んでいるケースまである。

ほとんどが秋津州産品の出荷のためと見て良いのだが、ごく一部には、逆に海外からの輸入品を積んで入港してきたものもあり、特に目立つ輸入品目としては大小さまざまの車両であったろう。

これ等は、無論永久原動機を搭載したものであり、そのユーザーの多くは内務省と報道各社であったと聞く。

報道各社としても、車両の内燃機関の規制について国民議会の合意が成ったことを受け、早速その導入にかかったものだろうが、殊にNBSなどは、各所に設置した給油施設の維持運用にも苦慮していたことから、内燃機関を搭載する従来の車両は、一日も早く海外に移送する意思を固めたようだ。

この国では、これ等の給油施設が住民にとっては明らかに無用のものであって、折角搬入したそれ等の設備も撤去の運びとなる日も近い。

なお、秋津州商事経営の大小の店舗が既に多数営業中だが、これ等の仕入れ搬入に際しては、今後とも航空便を使うことが明らかになっており、船便が使用されるのはごく一部の品目に限られる模様だと言う。

とにもかくにも、新造の港湾内は相当な船舶で賑わいを見せており、これ等雑多な船舶の出入りの際には、優秀なタグボートの代わりとなって飛び回る、多数のヒューマノイドの姿を見ることが出来た。

この、便利この上ない代役たちは巨大な船舶をも軽々と扱い、港湾内外の交通整理の役目を見事に果たしている。

長らく南太平洋上で行われて来た出荷作業の一切が移動してきたことから、バイヤーを含め入港を希望する船は後を絶たないようだが、巨大な港湾設備は未だほんの一部しか使用されてはいないらしい。

また、このころのタイラーの手元には、港湾の奥座敷に位置する船渠の一部が稼動して、新造船の進水を告げる情報が入り、その視察の希望を申し出て見たところあっさりと許可が出た。

大規模な乾船渠が十箇所ほど完成していることは知っていたが、未だ実物までは見たことが無く実感までは湧かなかったのである。

だが、訪れて見ると、その中では全く予想外のことが進行していた。

タイラーの感覚では、それらの大型ドックは未だ実質的な操業にまでは至らない筈だったものが、案に相違して既に巨大なタンカーが入っていて、何らかの改装工事が行われていたのだ。

現場の案内係に聞いてみると、これまたあっさりと説明があり、ちょうど機関の換装工事を終えたところのようであった。

しかも、驚くべきことにほんの数時間で基本作業を終えたと言う。

大体、これほどの大型船の機関をそっくり換装するためには、完璧な準備がなされていたにせよ膨大な時間を要するのは普通常識であろう。

その換装すべき機関が、剥き出しの甲板上に置いてあるのではないのである。

その機関室に到るまでには、一体どれほど多くの仕切り構造があるものか想像もつかないほどだ。

結局これも、天井クレーンの機能を一切必要としない、空飛ぶ怪力作業員たちの威力としか言いようが無い。

ただ、技術的な不審点も無いではない。

一つには、巨大な内燃機関そのものが船体構造の重要な一部をなしていることだ。

場合によっては、船体自体の強度にまで問題が生じてしまうことさえある筈で、この意味でも、さまざまなハードルを乗り越えて行けるだけの優れた技術の存在を痛感せざるを得ない。

現に、既存のばかでかい内燃機関は細かく解体の上取り外され、なおかつ永久原動機の取り付け作業は勿論、膨大な内外装の作業さえ終了していると言うのだ。

全く新たなバラストタンクまで備わり、のちに行われた試運転の結果も良好そのものであったと聞く。

設備面で言えば、これ等巨大船渠に繋がる運河も、優に二千メートルもの幅員を誇っており、最大級の空母でさえ楽々とすれ違い得るほどの規模であることも確認出来た。

その上その運河に接して、これほどの規模の船渠が十箇所ほども完成しており、優れた作業効率を誇る船渠の実力が、相当以上の水準にあることも否定出来ない。

挙句に、当初伝え聞いた問題の新造船現場はそこでは無いと言う。

行ってみると、全く別に小規模の乾船渠が複数操業していて、そこでは多数の漁船が完成間近であった。

小さい物では、十トンほどのものから、数百トンクラスのものまでさまざまである。

見たところ、スクリューを回すべき機関が全て永久原動機であることを除き、一般の船舶と特別変わったところは見当たらない。

既に試運転中のものもあったことから、頼み込んでその中の一隻に試乗させてもらったが、その静粛性は特筆すべきもので、振動の発生がほとんど見られないことには、ただただ感心するほかは無かった。

五十トンほどだと言うその小船が、六十ノットもの快速を実現出来ていると言い、その快速ぶりが逆に最大の不安要素であるとして、現在は強制的に二十ノット以下に押さえ込むべく一工夫しているところだと言う。

判りきったことだが、乗組員の都合が許す限り一滴の燃料も必要とせぬままに、その航続距離は無限と言って良いほどのものなのだ。

しかも、ついでに見てまわった船渠の近辺には、既に多様な施設が稼動していた。

天空から降りてくる巨大な資材を受け入れるべき施設があり、それらの加工を担う筈の工場群も整い、それぞれに相当な要員が配備されていることも確認した。

部下に指示して稼動中の要員たちを観察させてみたが、その優秀さを疑うに足る報告に遭うことは無く、不眠不休で働かせても作業効率の落ちない特性も含め、一般の労働者のそれと比べても、かえって優れているのではないかとさえ思えたほどだ。

その上、極めて微細な加工技能や特異な工作技能を有するものまでいるらしく、一部についてはタイラー自身も簡単に確認出来たくらいだ。

ましてヒューマノイドには、いわゆる動機付けなど全く不要で、唯一必要なものはしかるべき者からの指示命令だけだ。

その代わり、一旦受領した指示命令にはこの上も無く従順なのである。

この存在が限り無く大きい。

我が合衆国では例え数百億ドルをかけても作ることは出来ず、仮に大量生産に成功したところで、一体当たり優に数億ドル単位のコストを覚悟せねばならないことは、その研究に関与した者たちのほとんどが認めている。

結局、秋津州がそれを大量に、かつ安定的に確保出来ていることこそが最も重大だ。

米本国でさまざまに行われてきた製造実験によれば、現在欠けている環境要件の一つに「超超真空」なるものがあると言う。

同じく必要とされている「無重力環境」は比較的低コストで実現出来ているが、この「超超真空環境」を大規模に確保することには殊に問題があった。

ごく一般に「真空」と呼ばれる環境であってさえ、実際には一立方センチ当たり一千億個もの原子や分子が存在してしまうのである。

相当無理をして一立方センチ当たり一万個以下に抑えてみても、散々苦労して用意したつもりのその環境が、実験を始めるや否や、圧倒的なスピードで数千億個にまで増加してしまうのだ。

要するに、合衆国の技術力では継続的な「超超真空」と言う環境は作り出せないことになる。

仮に作れたにしても、その条件をクリアするためには途方も無いコストを必要とすることくらいは、門外漢のタイラーにも容易に察することが出来るのだ。

詰まり、本来これほど高価で高品質の工業製品が、国王の荘園では極めて安価に、しかも大量に生産されているであろうことは、あの途方も無い大軍団のほんの一部を見ただけでも充分に察しがつく。

その安定性やとてつもない耐久性も、戦場における活動実績から既にかなりの部分で信頼性を得てしまっており、ここではそのようなヒューマノイドが現に大量に稼動しているのである。

少なくとも、極めて安価で良好な労働力を大量に供給し得ることが、外国資本を如何に急激に引き付けることに繋がっていくものか、考えて見ただけでも空恐ろしいほどのことではないか。

現実には、外国人の土地の所有を禁じているこの国では、その点での障害はあるにせよ、秋津州人の名義を借りて大規模に生産設備を進出させようとする、巨大資本の意図までは否定出来ない。

このため提携を望む企業は溢れんばかりで、現にその仲介をタイラーに依頼して来る者もあり、それも対応に窮するほど多数に上っているのだ。

資本のダイナミズムは、良きにつけ悪しきにつけ国境など軽がると踏み越えて消長し、小規模な場合など、ときには国家ごと呑み込まれてしまうことすらあり、いずれにしても、秋津州の大量かつ安価な労働力の持つ破壊力は尋常なものでは無い。

この件も、ワシントンへ報告すべき重大事項の一つであることは確かだろう。

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  1. 2005/11/03(木) 05:15:34|
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