日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 046

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改めてタエコを見直すと、かなり細身ではあったが思ったより上背があった。

聞けば、モニカより少し小さめの百七十三センチもあり、十九歳になったばかりだと言うが到底十六、七にしか見えない。

どうやらこの二人が、かなり気の合うタッグを組んでいる気配を濃厚に感じ取ったとき、たまたま東京に出掛けている京子から通信が入った。

「陛下、今よろしゅうございますか?」

京子には、現在の若者の状況についても充分な報告が届いている筈だ。

「うむ。」

「だいぶ、お酔いになってらっしゃるようで、それが少し気掛かりなのでございます。」

「うむ、この二人は組んでおるな。」

「はい、どちらが成功しても、ボーナスは山分けの約束のようでございます。」

そのためにこそ緊密に協力し合う約束なのだろうが、こちらから見れば他人事ながらよほど不公平な協約にも思える。

モニカには溢れるほどの魅力を感じるのだが、タエコには全くそれを感じない。

タエコには、ランドセルが似合いそうだ。

ただ、モニカから見たタエコの若さは、充分な強みに感じられるのかも知れない。

「そうか。」

「そのお二人は互いに似たような境遇で、随分気が合うようですわ。」

「・・・。」

「モニカさまのお部屋は、只今最終チェックを済ませましたから。」

もっとも、京子にとってのモニカの周辺などは、かなり以前から重点的なチェック対象であったことは間違いない。

「ご苦労。」

「あまり、お勧めは致しかねますが。」

その口振りでは、この二人にさほど危険な匂いは感じ取れないが、とてものことに積極的な賛成などは出来ないと言う。

「わかっておる。」

「お申し付けの件は、順調でございます。」

京子は何やら若者の指示を受けて、目下東京で動いている。

「うむ。」

「それでは、失礼申し上げます。」

これらの通信は、無論二人の女たちに気取られることは無い。

程なく目指す部屋の前まで来ると、タエコは「陛下、急用が出来ましたので、おまけはここで失礼しまーす。」と言って、さっさと引き返して行ってしまった。

モニカは手を振ってそれを見送ると、バッグから取り出したICカードを使ってドアを開け放ち、甚三郎の方を向いてにっこりとして見せた。

先に入室して、チェックしろと言うのだろう。

「それは良い。」と言いながら、先にたって入室すると、続いて入ったモニカが部屋の明かりを点けてから向き直った。

潤んだような瞳が、直ぐ下から見上げて来る。

濡れ濡れとした真っ赤な唇が少し開き気味に、真っ白な前歯を覗かせかすかなあえぎを漏らしている。

近々と見下ろすと、それはぬめぬめと光りを放ちながら、わずかに震えているようだ。

ふーむ、よほど欲情してしまっているのか、それとも極度に緊張しているかだろう。

さっきまではあまり感じなかったが、小鼻の脇辺りに小皺が目立ち、その褐色の肌はお世辞にも美しいとは思えなかった。

強引に引き上げられた胸乳の上部も、この位置からだと実に良く見えて、そのあたりの肌理(きめ)の粗さもあらわに目についてしまう。

男の視線に捉えられている場所を意識したものか、両手を首に絡め、伸び上がって激しくキスを求めて来た。

心なし、息を弾ませている。

「しばらく待て。」

我ながら、実に冷静な声が出た。

いやいやと言うように首を振りながら、必死で引き寄せようとする腕の力にも余裕を持って対抗していた。

「トイレだ。」

遠慮の無い声で言ってやると、恨めしそうな目付きで睨まれてしまった。

実際かなりの量を飲んでいたのだから、トイレに行きたくなっても不思議は無い。

用を済ませ、かなり贅沢な調度のリビングに戻ると、入れ替わりに女の方もトイレに立った。

それを良いことに無遠慮に冷蔵庫を漁り始め、鯨のベーコンと生野菜を掴み出した。

急に空腹を覚えたのも確かで、生野菜を洗うべく蛇口を捻ると、勢いよく水が出てくるのを見てついにんまりとしてしまった。

生活用水を潤沢に使えるようにするため、散々苦労した過去を思い出したのだ。

手掴みのままベーコンの塊にかぶりついているところを、モニカが呆れ顔で眺めている。

なにしろ、もう片方の手には、ソフトボールより大き目のレタスを握っているのだ。

突っ立ったまま、盛大な音を立ててレタスを噛みながら、まるでいたずらを見つけられてしまった童子のように、太い眉の下の瞳がきょとんと見開かれている。

まるで子供のような無防備極まりない姿に笑いを誘われたらしい。

モニカが、止め処なく笑い続けている間にも、童子の頑丈な顎が盛大に活躍して両手の獲物はきれいに平らげられて行った。

ハンターは体を捩って笑い続けながら密かに思うところがあった。

秋津州の大型ショップで売られている生鮮食品の仕入れは、そのほとんどを日本からのものに頼っているが、物によっては、日本で買うよりもなお新鮮だと言われる。

それらのショップは、いまや万に近い外国人を主たる顧客として首都だけでも複数営業しており、自分も二日に一度は買い物に出掛けるが、好物と聞いた鯨肉のベーコンを買い置いたことが功を奏したらしい。

それだけ食べればいい加減満腹だろうと思いながら、黙って眺めてると、腹ペコの少年が再び冷蔵庫を開けてごそごそやり出した。

見ると、ミルクとバターを引っ張り出してきた。

キッチンテーブルには食パンが乗っている。

もう、仕方が無い。

「少し、お待ち下さいな。」

結局、卵を三つばかり焼いてあげて、ソーセージも炙った。

手早く皿に移し、ナイフとフォークを付けて差し出すと、これも美味しそうに平らげ、明日の朝食用にと思っていた食パンなどは、もう影も形も無い。

ミルクも一リットル入りの紙パックから直接喉に流し込まれて、すっかり空になった。

「うむ、大変馳走になった。」

呆れたことに少年は、全くの食い逃げで、あっさりと帰って行ってしまったのだ。


少年がその部屋を出たところに、東京の京子から再び通信が入り、その酔いを醒ましてくれることになる。

「いかがなさるおつもりですか?」

「うむ。」

「これでは、誰だって怒りますわ。」

「いや、怒ってはおるまい。」

「あらあら、お見通しでございますこと。」

「しかし、危ういところであった。」

「おほほ、さようでございましょうとも。」

「取りあえず、口座を二人分用意してくれ。」

「お二人分とは・・。」

「モニカとタエコだ。」

「額面はいかがいたしましょう。」

「それぞれに五百万で良かろう。」

「米ドルでございますね。」

米ドルでの五百万は、およそ日本円では五億円以上にはなる。

タックスを度外視すれば、もともと彼女たちが狙っている賞金に匹敵する額なのだ。

「うむ。」

「では、ご当人たちに加茂川銀行本店においでを願っても、差し支えはございませんわね。」

加茂川銀行の本店に直接来てもらって、窓口で正規の手続きを経て口座を開いてもらうと言う。

「いや、直接手渡してやろう。」

極秘にプレゼントするつもりなのだ。

仮想敵国第一位の国から派遣されて来た工作員である以上、敵側から大金を受け取るところは人目を憚って当然だろう。

「では、そのように手配させていただきます。」

「東京の方は?」

「久我様には、お伝え申し上げました。」

「うむ。」

「ビジネスとはあらゆるリスクを織り込みながら、ご自分の判断で動かすべきもの、と言うお言葉は、なかなかご理解願えないようでした。」

「それで結局、どうしろと申すのだ。」

「確実な高収益事業を立ち上げたいとお考えのようでした。与信は充分でございますので・・・。」

新規事業を立ち上げるための資金は、今なら増資して市場から調達することも可能であり、そうでなくとも銀行筋が大喜びで貸し出してくれる筈だ。

これも全て、秋津州国王の信用供与あってのことであり、それを裏側から見れば、若者が手を引いてしまえば、久我電子工業の信用は一瞬で崩壊してしまう。

この強力な後ろ盾の登場によって、一旦は危急存亡の瀬戸際から急浮上して来れたが、決して業績内容まで好転したわけでは無く、このままではジリ貧になって行く可能性が強い。

米国の梃子入れによって多少の安定感を取り戻しつつあるとは言え、韓国経済の先行きはまだまだ不透明であり、市場からの評価も決して明るいとは言えないのである。

製品の出荷先を未だに韓国企業に依存してることが、久我電子工業の最大の弱点になってしまっているのだ。

もともと若者は半ば捨てる覚悟で、一千億を限度とした信用供与に踏み切りはしたが、その経営にまで関与する気は無い。

ところが、久我電子側は実質的な傘下企業としてのスタンスを自ら取り始め、言わば親会社のオーナーとみなしている国王に指示を求めてきたことから、その対応を京子に命じたに過ぎない。

その経営には興味が無いことを、改めて伝えさせたつもりなのである。

だが、これでは如何ともし難い。

久我電子工業の経営そのものを背負えとでも言うのか。

そんなことは真っ平ご免だ。

いざと言うときに一千億まで借金をかぶってやるほかに、これ以上ハタからしてやれることなどある筈が無い。

「だから、それこそ自分たちの経営判断だろう。」

「それも申し上げました。」

「・・・。」

「それから、久我様のお嬢さまに秋津州に来て遊んでばかりいないで、勉学に励みきちんと花嫁修業をせよ、とお諭しになったのはどこのどなたさまでしょう。」

確かに国王は、家の大事を省みず、それこそ浮わついて遊んでばかりいる娘を、一度きつく叱った事があった。

「それが、どうした。」

「ですからお嬢さまは、お会いになりたいお気持ちを必死にこらえて、花嫁修業に精をお出しになってらっしゃるのですわ。」

「それで良いではないか。」

「でも、あちらさまではいきさつから言ってご本人はもとより、ご両親さままでが、陛下が求婚なさったものと思い込んでおられますわ。」

「私はいまだかって、誰に対しても求婚などしたことはない。」

「婚約者のご実家だからこそ、一千億もの信用供与もなさるわけで、赤の他人にそんな大金をプレゼントなさる方などいる筈が無い、とも仰っておいででしたわ。」

国王がこの一千億を捨てる気でいることなど、市場側も想定してはいない。

久我電子に新たな資金不足が生じた場合、当然、新たに積み増しされるものと期待しており、だからこそ、債務超過目前と見られるにも拘わらず、その株式が今も買われ続けると言う不思議な景況を呈することになるのだ。

「う・・・。」

「ですから、あちらさまでは娘の婿殿からの支援をお受けになり、さらに事業そのものも娘夫婦にお引渡しになるお考えでいらっしゃるのですわ。いえ、事実上一度潰れたのだから、とっくにオーナーは陛下だとも仰っておいででしたもの。」

「私は・・・。」

「でも、よそさまのお嬢さまに、しっかり花嫁修業をせよ、だなんて。だから、お嬢さまもすっかり素直になられて・・。それでは、あまりにお可哀そうで。」

「しかし・・・。」

もう、押しまくられてたじたじの体だ。

「ここは、やはりご責任をお取りになるほかはございません。」

京子は、断定的に言い切ってしまう。

「う・・・。」

「とにかく、あちらさまではすっかりそのご予定でいらっしゃるようでございますから。」

「予定だと、」

「再来年の春にはお嬢さま、ご卒業でございます。」

「・・・。」

「ご両親さまがご挨拶にいらしたいと言うお望みもございましたが、いましばらくはご遠慮下さるよう、わたくしの方からお願いしてございます。その代わりと言っては何でございますが、是非にも陛下のご来臨を賜りたいとのお言付けをお預かりしてまいりました。」

「お京。」

「はい。」

「それで信用供与の話にあれほど拘ったんだな。マザーがそれほどあの娘を気に入ったと申すか。」

マザーは、過去数百年に渉って進化を続けてきた優れた人工知能であることは否定しない。

その判断が、これまでも常に的確であり続けてきたことも認めよう。

しかし、私は生身の人間なのだ。

マザーや秋元姉妹には実感し得ないことだろうが、人間には感情と言うものがあり、ときとしてそれは、利害得失や理非曲直をも踏み超えてしまうことがある。

かつて何度も朝食を共にした、白兎のようなあの娘が活計(たつき)の道を立てるにさえ困窮する様子が目に見えていたのだ。

今改めて久我京子を想ってしまえば、哀憐の情がふつふつと湧いてきてしまう。

そのことこそが、自分自身が生身の人間である証拠なのだ。

その感情が、果たして愛憐と呼ばれるものとどれほど異なるものなのか、最早確たる自信は持てないことにも気付かされている。

その想いが無意識の内にあったがために、久我電子に対する無用の介入をさせてしまった。

如何にマザーからの提案があったからと言って、全てを決定し、そして実行させたのは疑いも無く自分自身なのだ。

今は、酔いも醒め果てる思いだ。

気付いたときには、一気に内務省最上階の居室にまで移動し、呆然と窓の外を眺めていた。

夕立はとうに止んで、夜空には星まで顔を出している。

だが、京子の通信は無遠慮に追い縋ってくるのだ。

「陛下も、あのお嬢さまのことをお気に召しておいででございましょう?」

「・・・。」

そう聞かれても、返答に困るのだ。

自分の胸の真ん中には、いまだに別の女性が影を落とし続けている。

「それに、このたびご一族の方々が空しくなられてしまった以上、マザーのおはらの内にある方々がご成長なさるまでには、少なくとも十五年、いえ、二十年の歳月を待たねばなりません。」

「分かっておる。」

「そうなれば、やはりご同流のおん方のほうが、王たる資質を持ったお子をお産みいただける確率が高うございます。」

秋津州王たるべき資質には、少なくとも一瞬にして荘園にまで移動し得る特別な能力が不可欠なのである。

「一概に言えることではあるまい。」

「マザーの中には、王家お代々の内、直近の七代さまの生体データがございます。」

「それは、そう聞いている。」

「それぞれのご生母さまのデータもでございます。」

「うむ。」

「ただ、ご当代さまのご生母さまの分だけがございませんでした。」

自分は哀しいかな、生きた女性のハラから生まれてきたものではない。

その意味で、自分には初めから生母はおらず、しいて言えばマザーの人工子宮が生母と言うことになる。

ただ、亡き父の精子との交配を受けた卵子があり、遠い昔にその卵子を産んでくれたのも一族の女性だと聞かされている。

その女性のデータに関し、京子は「ございませんでした。」と過去形で言葉を結んでいた。

「見つけたのか?」

「はい。つい先ごろ古いデータウェアハウスの中から、発掘出来たのでございます。」

緊急の重要度が低く、かつ三百年以上も前のデータの一部が収納されているそのノードは、普段はマザーのネットワークから全く切断された位置にある。

「何故、黙っておった?」

「検証に時間がかかったのでございます。間違いないと判りましたのが、つい先ほどのことなのでございます。」

「そうか。」

「はい、只今画像をお送りしております。」

「む。」

見覚えのある女性のポートレートが数枚分、画像として繰り返し送信されて来る。

それは、二十代や三十代と思しき和装の女性が、さまざまなポーズで静止している画像であり、無論全て同一人物と思われるものばかりだ。

「いかがでございましょう。」

「・・・。」

「アングルによっては、良く似てらっしゃいますわ。」

「・・・。」

「これなどは、同一人物としか思えませんもの。」

その一枚は、それこそ立川みどりその人としか思えないほど良く似ていた。

「う・・。」

「陛下はお小さい頃、ひょっとしてこれをご覧になられたのではございませんか?」

「・・・。」

「やはり、ご存知でらっしゃったのですね。そしてわざわざマザーの目の届きにくい場所を選んで収納なさった?」

「うむ、確かに私だ。」

若者が、母の面影を宿したデータを幼い胸に刻み込み、そのデータをひっそりと隠したのは王位を継承した直後のことであった。

全てを閲覧する権限を与えられたばかりの八歳の童子が、真っ先に探したのは母なる人の面影だったのである。

八歳の童子は、ひたすらそれを独り占めしたかっただけなのだ。

「全て比較検証いたしましたが、みどりさまとは遺伝学上も全く関連性が無いとの結論に達しました。」

「・・・。」

「血縁関係は、全く認められません。」

立川みどりとは、全くの他人の空似だと改めて宣言してくれているが、そんなことは初めから分かり切っている事なのだ。

「もう良い。それ以上申すな。」

マザーはこの二人の生体データを、あらゆる角度で比較検討したのだろう。

「承知いたしました。」

「久しぶりに顔を見に行ってくるとするか。」

もう、まる四ヶ月もその顔を見ていない。

「お待ちください。未だ申し上げることが・・。」

「早く、申せ。」

「ご生母さま方の生体データの解析の結果、久我さまとの有効な共通点が多数見受けられます。」

「有効?」

「相似性と申せるものが多数。」

要は、だからこそ久我京子と言う娘が、適正な資質を備えた世継ぎを産む確率が高いと言いたいのだろう。

「分かったから、もう言うな。」

聞きたくないのである。

マザーが高度な技術を駆使して、母や久我京子の生体データを検証しているさまなど想像したくも無い。

もうそれだけで、彼女達が汚されているような感覚が湧き上がってきて、ただもう理屈抜きで嫌なのだ。

この感覚だけは、いくら説明してもマザーには分かるまい。

俺は人間なのだと大声で叫びたい。

しかし、マザーに課せられた使命は、秋津州王家の存続をサポートし、その特殊な能力を利して一族の繁栄を目指すことにある。

この使命は、マザーと言う人工知能が存在する意義の根幹をなしており、当代の王といえども言わば権限外だと言って良い。

この点についてのマザーの行為だけは、止めることが出来ないのだ。

強いてそれを阻むような命令を発したこともあったが、マザーも秋元姉妹も当然のように従わない。

従わせるためには、マザー本体に記述されたプログラムのカーネル部分を書きかえる必要があり、書きかえたあとでマザーを一度シャットダウンさせてからでなければ、それを実行させることは出来ない。

当然、シャットダウンさせる命令は有効だ。

しかしシャットダウンさせている間、無数の周辺機器同士の整合性を保ちながら、その全てを無難に動作させ続けることなど自分には不可能だ。

この場合の膨大な周辺機器には秋元姉妹や巨大なファクトリー、そして軍の大部分が含まれるのだ。

荘園で活動中の軍に限っては、それぞれの司令官をトップとして、それ以下の階層的個別責任制とでも言うべき方式を採っており、万一、司令官を失った場合に備え三体の代行者を定め、その席次通りに交代すべく命じてある。

詰まり、三つの荘園に配備してある三個兵団は全て独立して動いていることになる。

ころあいを見て出かけて行く私の指示を待ちながら、事前に命じておいた指示に基づいて活動を継続しているのだ。

このため、これらの三個兵団だけはマザーのシャットダウンには直接の影響を受けずに済むが、マザーのネットワークに繋がれている者たちが受ける影響には深刻なものが有る。

第一、マザーの中の人工子宮に関わる制御装置も全て停止せざるを得ず、自分にとって最も大切な一族の生命まで失ってしまうことになるのだ。

また、マザー自身は、自分自身を定義している根幹部の記述を書きかえることは出来ない。

長い自己進化の過程で、マザー自身が絶えず書き換え続けて来たのはカーネル以外のところなのだ。

「承知いたしました。話題を変えさせていただきます。」

「今度は何だ。」

「立川みどりさまも、未だ排卵機能を有しておられます。」

未だ言うか。

「・・・。」

無性に腹立たしい。

「久我さまもダイアンさまも、健康そのものの機能を具えておいでですわ。」

「黙れ。」

王が珍しく激しく叱った。

「はい。」

「人間にとって大切なのは、断じてその機能などでは無いのだぞ。」

若者は、人間にとって、その固体それぞれの持つ機能の優劣などは大事なことでは無いと言う。

「お言葉ですが、人間もその機能を全て停止すれば、最早人間とは呼べないと存じますが。」

「違う。全機能を停止しても人間は人間なのだ。」

「承知致しました。」

「お京には分かるまいが、人間には精神と言うものがあり、誇りと言うものもある。」

「はい。」

「例え死んでも、その精神や誇りは残って、子々孫々に伝えられて行くのだ。」

それこそが、人間が人間である所以だと言いたいのだろう。

「はい、だからこそお世継ぎの一刻も早いご誕生を願って、いろいろとお世話させていただいております。」

「う・・。」

結局この議論も、こう言う帰結になってしまうのか。

「それでは、クラブ碧にお渡りの件は、新田さんとみどりさまに伝達しておきましょう。いつものように一旦神宮前にお入りになりますか。」

一応、日本政府の面子を立てて、神宮前で出入国の確認をさせることにも多少の意味はある。

「うむ。」

「かしこまりました。」

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  1. 2005/11/04(金) 06:56:53|
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