日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 051

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二千五年七月十五日の早朝、国王と秋元京子との通信。

国王の現在地は内務省最上階、京子は未だ松涛にいる。

「陛下、松涛のご用意が整いました。」

「何の用意だ?」

「久我様のお嬢さまに、お入りいただくお住まいのことでございます。」

「そこまで、申し付けた覚えはないぞ。」

若者は、単純に、経済的に支援してやるよう指示しただけのつもりだったのだ。

「ご卒業なさるまでは、と仰せられましたわ。」

「う・・。」

「お嬢さまとお母さまにお移り頂きましたから、陛下にも一度ご検分いただきませんと・・・。」

既に、娘とその母親だけは例の松涛に引き取ったと言うのだ。

聞かれないことを良いことに、その屋敷には相当に金もかけ、相当数の配下を配備したことなど一言も報告しようとはしていない。

その配下とは、無論ヒューマノイドとD二やG四のことであり、なおかつそこには、永久原動機を用いた複数の発電装置までが立派に稼動している。

但し、この配備に関しては少なくとも新田と岡部から積極的な同意も得ており、その上更なる配備まで求められているのだ。

もっとも、その内容を国王が知ろうと思えば、付近に配備してあるヒューマノイドやG四などから、直接報告させることはいつでも可能なことではある。

「勝手にいたせ。」

今更何を言っても仕方がない。

「それと久我様の会社の方は、近々通常の清算と言う形になろうかと存じます。」

「やはり、民事再生法とやらの適用も無理か?」

「はい。」

あの業績では、建て直し自体が無理なのだろう。

これも、私自身が本格的に支援体制を固めさえすれば、どうにでもなることなのだが、肝心の経営者自身に再建の具体策や意欲が無い以上致し方も無い。

これで、こっちの懐から一千億と言う大金が消えて行くことが確定したことになるが、どうせ捨てることになるのなら、この一千億を久我電子の金庫の中に、直接投げ込んでやった方が未だ良かったかも知れない。

韓国企業に対する売掛金の焦げ付き残高が、軽く一千億を超えていたのだから、一円の利益も計上せずに済んだかも知れないのだ。

「経営者親子の私財も残らんのだな。」

「お住まいや別荘などの不動産は、全て抵当権が・・・。ですから一切残りませんでしょう。」

現在の立派な住まいも、既に立ち退きの準備に入っていることも耳にしてはいる。

「ふむ、半端な物を隠して詐害行為と看做されてしまってもなあ。」

「仰せの通り、一切口出しは控えておりますし。」

「うむ、くれぐれも無用の口出しは控えよ。」

「心得ましてございます。それと、お嬢さま、明日からご学業の方が夏休みだそうで、久々に秋津州にお出かけになりたいご希望でございます。」

「いや、日本で学業に励むよう申し聞かせて置きなさい。」

今、久我京子本人に押し掛けて来られても、正直言ってその対応にも困るのだ。

「はい、花嫁修業にも一層精をお出しになるよう申し上げておりますから。」

なお、秋津州には家庭用燃料としてのガスが無い。

現実に当人が秋津州で暮らすようになった時のことを考えて、わざわざIHヒーターだけを使ったさまざまな料理にも挑戦させているが、最近では、農耕文化にも興味を示し本人もすっかりその気になって修行しているつもりなのだ。

無論、これも若者の耳には入らない。

「む。」

「建国記念のイベントの準備も、ほぼ終えましてございます。」

秋津州国内のさまざまな作業にも、日本の地から京子のコントロールが及んでいる。

「うむ。」

「二十カ国ほどは、こちらから迎えの便を出す事にしてございます。」

世界にはさまざまな国が有り、自費で参加してくるだけの余裕の無い国も有る。

無論、その辺も京子と新田との間でとうに調整済みで、そのような国に対してはその滞在費用まで、全てこちら持ちと言うことになるのだろう。

「そこまですることもなかろうに。」

そこまでして参加国を集めることには、若者自身はあまり乗り気では無いようだ。

「いえ、新田さんのご方針でもございますので。」

新田の方では、この際出来るだけ多くの参加国を集めようとしていることも聞いてはいる。

無論そのことが、日秋両国の影響力を高め国益に適うと判断したためだ。

「判った。」

新田の判断は尊重しておくべきだろう。

「各国の訪客たちの案内係としては、女性ばかり千人ほどの態勢を組んでおりますので。」

「任せる。」

「それと、オイルの出荷量を少々増やしたいと存じます。」

現在は日々の平均では、五百万バレルほどでしかない。

現在バレル当たり三十五ドルほどで出荷出来ていることから、日本の秋津州商事が仲介手数料を取ると、国王の手元には一億五千万ドルほどしか残らない。

これも王の収入全体から見れば、ほんの一部に過ぎないのだ。

最近では、SS六改のレンタル料収入も馬鹿にはならず、永久原動機にいたっては凄まじい売り上げを誇っており、加えて、鉄鋼石や非鉄金属類の出荷も好調に推移して来ている上、秋津州の継続的出荷能力を評価するあまり、中には銑鉄の状態で欲しがる手合いさえ出始めている。

もっとも、数十年も前から秋元家の名義でひそひそと売り捌いて来て、さまざまに姿を変えて分散保有してきた莫大な資産も、今次の終戦処理の対策費としてあっさり消えてしまった。

元来、それすらも国王の資力の一部と看做しているため、秋元家の私財などどうと言う事は無いが、京子としては、その全体の残高が残り少ないことを気遣っているだけなのだ。

このため、改めて若者の資産を形成し直そうと、鋭意努めているというのが偽らざるところなのだろう。

「新たなSDの編成も終えておりますので、いっそ、二十五機ほどに増やそうかと・・・。」

毎日二十五機のSDで輸送すると言うことは、その量はおよそ二千万バレルほどにもなってしまう。

二千万バレルと言えば、ごく荒っぽく言って二十万トン級タンカー二十隻分ほどに当たるのである。

世界中の原油産出総量が、日産五千万バレルから一億バレル以下で推移していることから見れば、それがいかに凄まじい量かが判るだろう。

その上それほどの量を供給するとなると、それだけ頻繁に荘園から搬送してくる必要が生じてくる。

マザーの船団は、地球圏内に留まる巨大な宇宙基地として機能しており、荘園から到着する諸物資は一旦ここに貯留される仕組みになっている上、荘園とマザーの大船団の間に限っては、その搬送を担うことが出来るのは国王だけであることも変わりが無いのである。

マザーのファクトリーではオイル専用のSDが大量に竣工して、新しい輜重部隊として編成されたばかりだ。

若者は、今夜にも、それら新編成の部隊とウェアハウス群を引き連れて、荘園にまで赴かねばならない。

尤も、宙空ではそのほかにも巨大な工事が進行中だ。

「その半分ほどにしておけ。」

結局、マーケットそのものを、一挙に破壊してしまう恐れすらあるほどの量なのだ。

「これも新田さんのご意見ですが、秋津州のキャパが日産二億バレル超と言う事実を、公表してしまうことも視野に入れておくべきとのことでございますが。」

荘園の原油の採油能力が丹波だけでも、日産二億バレル以上であることは、別に昨日今日の事ではない。

その秋津州産出のオイルが、かなり良質なものであることも既に確固たる定評を得ているところに持って来て、更に、さまざまな性質を持った原油をそれこそ自在に供給し得る能力を持ち、大量に精製する機能まで具えていることなどは、アナリストならずともさぞ衝撃的な情報には違いない。

大量のSDが完成した以上、世界中の油井が全てその機能を停止してしまっても、秋津州一国だけでその全てを肩代わりして余りあるほどになったのだ。

これ等の事実を正式に公表すれば、世界のマーケットに深刻なダメージを与えてしまう事は確実で、若者はそのことを危ぶんだのだ。

「公表はしばらく待て。」

「では、そのように。」

「破産者が巷に溢れてしまえば、何をしても仕方があるまい。」

一バレル十ドル以下などと言う、激烈な価格破壊を招いてしまう恐れすらあり、王の言う破産者の範疇には、れっきとした一国の政府まで含まれるのだ。

採油コストの高い地域などでは、掘れば掘るほど大赤字を垂れ流す事になり、考えて見ただけでも空恐ろしいほどの結果を招くだろう。

ましてその影響はオイル業界に限ったことではなく、たちまちその他のマーケットにも広く伝播して行き、結果的に世界的な大恐慌を招いてしまえば、ことは本末転倒になってしまう。

「ボーキサイトについてはいかが致しましょう。」

ボーキサイトとは、アルミニュームの原材料のことである。

それについても既に大量に出荷を始めているが、一次精製を済ませてからの出荷に切り替える案も持っている。

もっとも、最終的な精製処理の段階では大量の電力を必要とするため、どうせなら無料に近い電力を持つ強みを活かして、一貫生産を考えた方が得策なのかも知れない。

マザーのファクトリーでは、その全ての技術や機能を具えてはいるものの、現実には、あまりアルミニュームの生産は行ってはいないため、その生産ラインも決して大きなものではないのである。

秋津州では、はるかに優れた合金をとうの昔に開発しているため、アルミやその合金類を使用する例がほとんど無いのだ。

「ふむ、ボーキサイトなどは、いくらでも採掘出来るものだからなあ。」

ボーキサイトと言う鉱物資源は、至るところでその埋蔵が確認されており、希少価値などとは全く縁の無い、ごくありふれた物質なのである。

しかし、それでも秋津州産のものには凄まじい競争力がある。

採掘から搬送、そして精製と、全てに亘ってとてつもなく安価なコストで賄えることこそが最大の強みなのだ。

「では、精製ラインの拡充を図ることに致しましょう。」

京子としては、王の衰えきった財力を一刻も早く回復させたがるあまり、マーケットに起きる混乱などは気に掛けることが少ない。

「うむ。」

王がラインの拡充を許した以上、それも、ごく短期間の内に完成してしまうことだろう。

「それと・・・。」

「未だ何かあるのか。」

「お叱りを覚悟で申し上げますが・・。」

「またか。」

京子がこう言う切り出し方をする場合、その内容も察しがつく。

「とにかく、もう一年も陛下のおん種子を頂戴致しておりません。」

やはり、予想通りの話題であった。

「済まんが、そう言う気にはなれんのだ。」

「どうしても、あの三人ではご無理でございますか。」

あの三人とは、例の侍女たちのことだろう。

神々しいまでの美貌の持ち主として、何度かメディアにも取り上げられたこともあるが、無論、その全てがヒューマノイドであることまでは知られてはいない。

「うむ、そう言うことになるのかな。」

ただ、単に性的な欲求が起きないだけのことなのだ。

「やはり、亡きマーベラさまのことが・・・。」

「死なせてしまった責めの一端は私にもある。」

「いえ、陛下のご責任などではございませんでしょう。」

「あのときどうすれば良かったのか、今でも考えてしまうことがある。」

「そのようなことをお考えになっても、何の役にも立ちませんでしょう。」

ヒューマノイドである京子には後悔する機能などは無いが、人間である若者には溢れるほどの感情がある。

京子にも涙を流してみせる機能はあるが、無論感情などあろう筈も無い。

「うむ、理屈では判っているのだが・・。」

「では、そろそろお忘れいただいて。」

簡単に過去を忘れろと言うが、それが出来ないからこそ人間なのだと言いたい。

「無理に忘れようとも思わぬわ。」

「とにかく前にも申し上げましたが、ご一族の方々の保存種子は、特に男性のものが底をついておりますので。」

「判っておる。」

「もう健全なものは全く残ってはおりません。」

「それも判っておる。」

これも、一年も前から聞いていることだ。

「劣弱な保存種子からは、頑健なお子の誕生は望めません。」

これを言われるのが一番辛い。

「・・・。」

「マザーのお腹のお子達にしても、空しいことに・・・。」

実は、この頃の天空においては、哀しいことに、人工子宮の中の胎児まで脆くも失ってしまっていたのだ。

だからこそ、京子がうるさく言い募るのも判り過ぎるほどに判っている。

「うむ、残念なことであったな。」

若者は軽く目を閉じた。

あまりにも儚く散っていった一族の御霊に、せめてもの哀悼の誠を捧げている。

「ですから、松涛の方にもお早めのお出でを。」

「・・・。」

いつも思うことだが、これでは、まるで種馬ではないか。

そう感じれば感じるほど、余計にその気が無くなって行くのを、もう一人の自分が、皮肉な笑いを浮かべながらひっそりと眺めている。

マザーや京子が優先的に求めているものが、王家の特殊な能力であることも充分に判ってはいる。

少なくとも現在は、あの荘園にまで往来する能力を持つ者は、私以外には誰一人存在しないのだ。

この私がいなければ荘園の資源を運搬してくる手段が失われ、荘園との往来が全く途絶えてしまうことになり、自然、現在の強大な軍事力も膨大な財源もいつかは失われ、必然的に地球上の秋津州は立ち枯れて行くほかは無い。

そうなって困るのも又、この私自身なのだ。

そのためにも、将来多数の一族が暮らせるようにと、大汗をかきながら秋津州の国土の改良に精を出して来た。

しかし、その結果はどうであったか。

今現実に一人の一族も持てず、自分だけが唯一の秋津州人に成り果ててしまっている。

理屈では、京子の言うことの方に合理性があることは認めるが、かと言って人間は、合理性だけを以って行動するわけではないのだ。

かって京子が、しきりにダイアンとの接触の機会を増やそうとしていたが、あのときもそうされればされるほど、ますます気持ちが萎えて行ったことを思い出す。

それに、ダイアンは世界に名だたる大コーギル家の跡取り娘であり、ほかの誰かの庇護を受ける必要など全く無い存在なのだ。

それに引き比べて久我京子やモニカたちには、濃厚にそれがあることを感じてしまう。

自分の中にあるのは、そう言う感情なのだと今改めて思う。

そのことが、このお京にはどう言っても判らない。

「では、せめて侍女たちに。」

「その気になったらな。」

「それに健康な若い男子が、かれこれ一年もそのことがおありにならないのも、お京はとても気掛かりなのでございます。」

実際にここ一年ほど、目覚めている間はただの一度も射精していない。

「私の健康がか?」

「はい。」

「異常だと申すのか。」

「いえ、それぞれ個体差があろうかと存じますので、その範囲内かと。」

「ふうむ、そう言うものか。」

「陛下の場合、毎朝お体に起こる生理現象もご立派で健康そのものかと思われます。」

健康な男子が毎朝目覚めと共に下半身に覚える、凛々たる生理現象のことを言っている。

俗に言う、朝立ちのことだ。

「立派なのか?」

「はい。ですからそのときにでも侍女のものをお呼び下さればよろしいかと。」

通常の場所でなら、どこで目覚めても彼女たちは身近に控えている筈なのだから、それこそ一声掛けるだけで用が足りる。

それこそが彼女たちが帯びている最重要任務である以上、何一つ問題が起きないことも十分に判ってはいる。

「なるほど。」

しかし、苦笑せざるを得ないのである。

「簡単なことでございましょう。」

「お京から見れば、みんな簡単なことになるのだろ。」

つい、皮肉が出てしまう。

「若しくは・・・。」

「んっ?」

「若しくは、手淫をなさればもっと簡単かと・・。」

手淫とは無論自慰のことだ。

通常、若く健康な独身男子のほとんどが、この方法で生理的な処理を行う。

しかしこの若者の場合、ほんの思春期のころから、京子から男女のことについても実地に訓練を受けてきたこともあり、そのことを全く未経験のままに成長してきてしまったと言う経緯がある。

それも、大人の女性としての京子が、常に傍にいてその欲求に応えていたおかげで、その必要が無かっただけなのだ。

今では、その役割は三人の侍女たちに引き継がれた筈なのだが、若者の方が一向にその欲求を発しないまま今日に至っている。

「そう言えば、やったことが無かったな。」

若者にも、そのくらいの知識はある。

但し、全て京子や書物による知識ばかりだ。

「ただ、おん種子をお受けする器として、侍女のものにお申し付け下さればよろしいのでございます。」

若者の中には、女性と言う存在に対して一種微妙な憧憬がある。

例え相手がヒューマノイドであるとは言え、彼女たちをまるで便器のように扱うことにはどうしても抵抗があるのだ。

「これからは、そうしよう。」

この点で京子に抗っても疲れるばかりだ。

「こうなれば、モニカさまでもタエコさまでも決してお邪魔はいたしませんから。」

「ふむ、やはり邪魔をしておったか。」

「いえ、お勧めも致しませんでしたけれど、特別なことも致しておりませんわ。」

「そうか。」

「丹波の写真をお渡しになったあのときなども、良くご辛抱なさいましたこと。」

「ふむ。」

実際あの時は、ひどく欲情してしまった。

我ながら、けだものの本性が顔を出してしまったことに、戸惑いを感じたほどだったのだ。

それも、全く久し振りに感じた激しい欲求だったことは確かだ。

「ですから、もう無理にご辛抱なさらずに。」

「判った。」

これこそ、いちいち指図されることではない。

「それと、あちらは別にもう一ティーム編成したようでございます。」

「ほう、それはまたご苦労なことだ。」

「今度のティームは、ブロンド娘ばかりの二人組みでございます。」

「少しはマーベラに似たところでもあるのか。」

今は亡きマーベラは若者にとって間違いなく初恋の相手であり、同じブロンドと聞けば人並みに興味も湧く。

「残念ですが、まったくタイプが違うようでございます。」

京子から、画像が送られて来る。

その女性たちの映像なのであろう。

「ふうむ。」

それは、見事なブロンドの、米国の男性雑誌の紙面を飾るような二人ではあった。

「お二人とも二十一歳で、ロッティとサンディと仰るようでございます。」

「二人とも互いに良く似ておるな。」

体格、風貌ともに良く似ていることは確かだ。

「お気に召すかも知れませんわね。」

「まぁ、楽しみにしておこう。」

確かに、それはそれで楽しみであることを隠す気は無い。

「只今、日本語の会話などの訓練をなさってるようですわ。」

「そんなに下手なのか?」

「いえ、かなりお上手なほうかと存じます。」

「ほう。」

「日本の文化についても、熱心に学んでらっしゃるようですわ。」

「うむ、何事も学ぶことは良いことだ。」

「トムが大の苦手の和食メニューなども、そのカリキュラムに含まれているようでございます。」

「そこまでやるのか。」

「それも、もうじき卒業のご様子でございます。」

「やはり、この者たちも組んでおるわけか?」

「さようでございます。」

「タイラーもよほど窮していると見える。」

「そのせいか、このティームにはかなり思い切った手段で攻勢をかけるよう指導しているようでございます。」

「うむ。」

「相当露骨な手段を用いてくるものと思われますので、お覚悟をなさいませ。」

無論京子は、この新しいティームのメンバーに対する、さまざまなチェックも怠ってはいない。

「それは楽しみなことだ。」

「ですが、とりあえず今月一杯は、ご辛抱下さいますように。」

「何かあるのか?」

「いえ、感染症などの最終的なチェックに今月一杯はかかろうかと。」

この二人が入国してきてからほぼ三ヶ月が経過しており、無論その入国の時点からは徹底した追跡調査も続けてきているが、ある種の感染症においては、患者が感染してからのそれなりの期間が重大な意味を持つ。

京子としては、改めて検体を取って再度検査を行ってから、言わば安全宣言を出すつもりでいるのだろう。

「判った。」

「あ、只今ダイアンさまがご帰国なさったようですわ。」

ダイアンとメアリーを乗せたSS六改が、今飛び立ったところだと言う。

二度と戻って来ないつもりなのかも知れない。

「うむ、大分つむじを曲げた様子だとは聞いておる。」

「何ですか、モニカさまとタエコさまとが、二人同時に妊娠なさったことになってるようでございます。」

噂話がダイアンの耳に届いたときには、二人の女性を同時に妊娠させたことになっていたのだ。

まして、全てはダイアンの住まいと一つ屋根の下で起きたことになっており、彼女の受けた衝撃が尋常一様のもので無かったことだけは、充分に察することが出来る。

「そうらしいな。」

「あらあら。よろしいのですか。」

傷心のあまり、ひっそりと帰国して行くダイアンを放っておいて良いのかと聞いている。

それも、事実とは異なる噂話に打ちのめされての事になるのだ。

「しかし、聞かれもしないのに一々こちらから説明するわけにも行くまい。」

こちらとしては友情こそ感じてはいるものの、男女間の特別の恋情までは抱いたことは無い。

恋情どころか、欲情すら覚えたことが無いのだ。

中途半端に引き止めたからと言って、相手の気持ちに応えてやれるわけでも無く、とどのつまりは、蛇の生殺しのような目に会わせてしまうくらいが関の山だろう。

それに、誤解の内容が内容だけに余計言いにくいこともある。

そもそもが、モニカたちを言わば逆スパイのような形で利用し、彼女たちの手を通じて、非公式情報を流したいと考えているさなかなのだ。

それを知れば、米英が全く対抗心を失うほどの威力を秘めた情報までとうに用意が出来ている。

それも、わざわざそのルートで流してやるところが重要なポイントであり、あくまでその情報の信憑性を高めるための手段なのだ。

現時点で公式に発表してしまえば、相手側は当然こちらの作為を疑い、映像一つ取っても、作為を以って捏造されたものと思うに違いない。

だが、こちらが女性工作員の色香に迷い、その結果心に重大な隙を生じ大切な情報を盗まれたことにすれば、同じ情報でもその価値は格段に高くなる。

彼女たちは、今ではその母国に対する帰属意識をほとんど捨て去っている様子まであり、中でも一人に付き五百万ドルづつのプレゼントは、それ相応の効き目があった筈で、結局作戦は順調に進捗していることになる。

この意味から言っても、女性工作員たちとの情交の噂をわざわざ否定してしまうのは、作戦の遂行上いかにもまずい。

逆に、一部からは王の恋人であるかのように言われたダイアンが、失意の余り帰国したと言う事実は、こちらにとってもっけの幸いであり、その分だけ、モニカたちとの噂の信憑性を一層強く補強してくれるに違いない。

いずれにしても、この新生国家の統治者にとって、国家の安全保障と言う荷物は余程重いものであることは確かだ。

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  1. 2005/11/05(土) 01:15:39|
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