日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 054

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若者が神宮前に留まっていたのは、たかだか三十分に過ぎなかったのだが、俄然そのことが外部に漏れた。

しかも、肝心の若者が未だそこにいるのではないかと言う、尾ひれまで付いていたから騒ぎだ。

もともと官房長官の時ならぬ対策室入りをキャッチした時点で、さまざまに見当を付けた者も少なくなかった筈だ。

神宮前のオフィスの正式名称は、分室とは言え、今でも「秋津州対策室」なのだ。

そこに政府高官が入ると言うことは、当然秋津州がらみだとは誰しも察しがつく。

それも状況から言って、かなりの緊急性が認められるのである。

普通に考えれば、秋津州の要人が急遽訪れ、その要人との緊急会談がもたれるのではないかと見るのが妥当だろう。

まして秋津州要人と言えば、たった一人の人物しか連想出来ないのだ。

マスコミが色めきたつのも無理は無かった。

対策室の周囲はおろか、銀座の秋津州ビルの前にまで多数のマスコミが集まり始め、喫茶立川などは、あっと言う間に満席になり、その従業員たちはてんてこ舞いをする羽目になった。

今日は日曜日のことでもあり、その周辺は閑散としていたものが、今ではものものしい雰囲気に変わってしまっており、付近の路上には人が溢れ、車道を挟んだ反対側には、テレビカメラが数台揃ってベストアングルを狙う構えだ。

みどりの部屋からは、交通整理のために出動した警官の姿まで見えており、若者はのんびりと手料理を食べてくれてはいるが、この騒ぎが始まってしまった以上長居は出来ないに違いない。

窓の下を覗いて見ると、報道関係者に限らず、既にかなりの野次馬まで集まり始めたようで気が気ではない。

今年の二月辺りから見れば、このヒトに関する報道価値が一段と高まっているらしく、この調子ではますますお出でが遠のいてしまうだろう。

「大丈夫かしら。」

エレベーターも動いてるし、階段だって普通に上って来れる筈なのだ。

「ん?」

食後のお茶を喫しながら怪訝そうな顔である。

「ここまで上がって来ないかしら。」

「ああ、大丈夫だよ。」

「ほんと?」

「うん、甚三が指揮して全部止めてるから。」

井上さんがガードしてることは判ってはいるけど、大勢で押し掛けて来られれば井上さんだって困るだろう。

「まさか、お部屋の中までは来ないでしょうけど。」

「あはは、心配性だなあ。」

「だって、すごく一杯集まって来てるんですもの。」

「マスコミは、あれが仕事だからな。」

「でも、何もあんなに集まって来なくたっていいのに。」

「連中も必死で山を張ってるんだよ。」

必ずしもここにいることを確信しているわけでは無いと言う。

「そうなんでしょうか。」

「落ち着かないなら、下まで行って見てきてごらん。」

「いえ、もう気にしないことにしますから。」

「うん、一階のシャッターも閉めさせたし、下から屋上まで全部配置してあるから絶対に誰も来れないよ。」

見れば、すっかり寛いだ顔付きで話し方までのんびりしている。

「いえ、あんまり騒がれるとなかなか来られなくなっちゃうんじゃ無いかと思って・・・。」

「あんまり変わらないと思うよ。」

「じゃ、気にしないことにする。」

「うん、来たいときは遠慮なく来るさ。」

「でも、相変わらずお忙しそうね。」

「最近はそうでもないさ。」

「この前も随分お疲れのようだったし。」

「いや、ここへ来れば骨休みが出来るから。」

「そう言ってもらえれば、嬉しいけど。」

「飯も旨いしな。」

「でも、あんまり大したおかずじゃなくてご免なさいね。」

「いや、充分だ。腹一杯喰ったし。」

「おほほ、ほんと沢山食べたわねえ。」

「うん、すっかりのんびりした。」

「お風呂も二度も入ったしね。」

「うんうん。それと何か不自由なことは無いかな?」

「大丈夫、あたしものんびりした気分だから。」

「それは良かった。とにかく急ぎの時は周りの女の子たちに言えば直ぐに連絡がつくからね。」

「周りの女の子たち」とは、ヒューマノイドたちのことを指していることも判っている。

「便利なことは便利なんだけど・・・。」

どうにも味気ない気がしてしまうのだ。

「けど?」

「ううん、いい。」

「そうか。」

「とにかく、あまりご無理なさらないで。」

「大丈夫だよ。」

「だったらいいんだけど。」

「うん、疲れたと思ったら又来るから。」

「疲れて無くても顔は見せなさいよ。」

ついつい、息子に対するような物言いになってしまっているが、自分でも全く違和感が無いのである。

「判った。」

この光景をタイラーが見たら、果たしてどう思うだろう。

タイラーの知る秋津州国王とは、全く別人のような若者の姿がそこにある。

その後充分に寛いだと見えて、いつものように風のように帰って行ってしまったが、集まった大勢の報道陣は去ろうともしない。

少なくとも彼等の視界の中では、ビルの出入り口のシャッターは一度として開閉する気配は無かったのだ。


一方、ワシントンに置き去りにされたタイラーは、秋津州に戻るためにかなりの手間ひまをかけなくてはならなかった。

再入国の許可が下りないのではないかと一時青くなったが、思いのほか簡単に許されて、とりあえずはほっとしているが、合衆国の高官である自分を、平然と置き去りにしたあの魔王の心情を忖度すれば、二度と入国が許されないのではないかと思ってしまったのも無理は無い。

心当たりもある。

例の工作員の活動が、露見してしまっている可能性があるのだ。

下手をすると、彼女たちは逮捕拘禁の憂き目に会っているかも知れないと思い、ワシントンから現地の様子を窺ってみたところ全く異常は無いと言う。

この置き去り事件一つとっても、いろいろと要らぬ心配をしてしまうのも、現在の力関係では止むを得ないことではあったろうが、冷や汗をかきながら戻ったタイラーを待ち受けていたのは、ふんだんの成果を携えたモニカティームの得意顔であった。

その活動により、三つの荘園のより精細なデータが、映像も含めて大量にもたらされたのである。

そのデータは、それぞれの荘園に駐屯する膨大な秋津州軍団はもとより、広大な農耕地で働く無数の現地人や大油田地帯の存在まで大声で主張している上、そこには牛馬どころか豚や象やライオンでさえ数多く棲むようだ。

建設中の第二基地に関するデータにしても、その実写映像としか思えないものばかりで溢れかえり、そこにもやはり大軍団の威容がいやと言うほど映し出されており、挙句に、この地球上の画像データまで大量に出て来る始末だ。

はるかな虚空にある我が国の軍事衛星や、潜航中の潜水艦の接写映像まで出てくるのである。

それもそのそれぞれの被写体の周囲を、かなりの至近距離で周回しながら撮ったとしか思えない動画映像ばかりなのだ。

敵の持つ壮大な破壊力は先の戦争でいやと言うほど思い知らされているが、全てのカメラが被写体を舐めるように接写している以上、我が国の軍事衛星や潜水艦が常に秋津州軍の手中にあることになってしまう。

ご丁寧にも、原子力空母の艦底を、舐めまわすようにして撮っているものまで大量に出てきた。

お望みなら、いつでもその艦底に大穴を開けて見せてやるよ、と言わんばかりだ。

もともと、第一基地の概要だけはほぼ掴んでおり、そこにも巨大なファクトリーや貯留基地が存在し、あの秋津州軍が壮大な軍容を誇っていることも確認済みだったのだが、そこへ持って来てこれでは、見れば見るほどげんなりしてしまう。

例のSS六改を使って全てをワシントンに送り、程なく返って来た反応は、ますますタイラーの肩を落とさせるものであった。

いずれの映像も、どう調べて見ても捏造の痕跡を発見出来ないと言う。

その結果、我が国の軍事衛星や原子力空母などが、常に敵の手中にあることを現実として認めざるを得ないことになるが、少なくとも宇宙空間や公海上では、秋津州のこの程度の示威行動については、法理上からは苦情を言えた筋合いのものではない。

もっとも、苦情を言ってみたところで結果は知れている。

無視されるか、却って開戦の口実を与えてしまうだけの話だろう。

少なくとも、恥をかくだけで得る物は何も無いことは確かであり、我が合衆国の威信だけが、ますます傷付いてしまうに違いない。

秋津州側には地球上においても鉄壁の備えがあることになり、そのことだけでも我が国は敵するすべを持たない。

第一基地と第二基地、そして系外銀河に存在する三つの荘園が連携している以上、天才的な用兵家が指揮を執り、如何に優れた戦術を駆使したところで、最早どうにもならないことがいよいよ判然としてくるばかりだ。

不意打ちを掛けるにしても、第一基地にさえ手が届かない今、より遠方の第二基地や荘園についてなど、もう笑ってしまうほかは無いだろう。

まして我が国には、これほどの大敵に対し、秘密裏に不意打ちをかけることが許される政府など存在しないのである。

第一、その予算すら立たない。

これほどの大作戦を敢行するためには、議会一つとっても事前の対策が必要であり、小規模作戦ならいざ知らず、対秋津州戦に限って緒戦で不意打ちなど所詮空論に過ぎないのである。

無論、対秋津州戦に完全勝利することなど最初から諦めてはいたが、せめてイーブンには持って行きたかっただけなのだ。

しかし、そのか細い夢も儚く消えてしまった。

皮肉なことに、この頃になって、英国からもさまざまな秋津州情報が寄せられるようになった。

もはや、英国一国だけで、それを独占しておくべきではないと言う判断がなされたのであろうが、英国の諜報網にも重大な情報が数多く捉えられていたことになる。

無論、我が合衆国の情報員も寝ているわけでは無く、日本政府の中枢にまで張り巡らせた諜報網の威力は、決して他国に劣るものでは無い。

何しろ、現在の日本にはそのような諜報活動を処罰するような法どころか概念すら存在しないのだ。

世界中からスパイ天国と揶揄される所以だ。

早く言えばバカにされているわけなのだが、肝心の日本人自身はそれに気付かない。

ほとんどの日本人は、そのことに興味すら抱かないと言って良い。

六十年前から日本人に施し続けて来たマインドコントロールが、これほどまでに成功するとは、さすがのワシントンも思わなかっただろう。

ちなみに言えば、そのときの戦勝連合国がイコール現在の「国連」であると言うことすら、多くの日本人が教えられていないのだ。

いや、知識として知ってはいても、単に知っているだけだと言って良い。

大の大人ですら、国連事務総長は日本の総理大臣よりも上位にあるなどと、全く噴飯ものの勘違いをし続けているほどだ。

しかし、時勢は一変した。

秋津州の猛然たる台頭によって、その日本人たちですら覚醒してしまうかも知れない。


さて、洋上茫々たる秋津州は、言わば絶海の孤島と言えよう。

しかし、そこにも変わらぬ実りの秋は到来して、今日も若者はその対応に余念が無い。

国中の学校は全て「秋休み」に入り、例によって未だ頑是無い幼童たちも、例外無く家事労働や農耕作業に駆り出され、春の農繁期のときと同様に一部から非難を浴びることになったが、秋津州からは一切の反応は出ていないと言う。

ヒトは何よりも喰うことが先決だとする国王が、食糧自給を最優先の政策課題としていることは今さら言を新たにするほどのことではないと言うのだろう。

若き君主は言う。

ときに、国家と言うものは外交の限りを尽くしても、孤立を余儀なくされることがある。

節を守り、誇りを保ち続けるためには諸国との国交を断ち、毅然として孤高を持する覚悟が必要になることもあり、その際、貿易を以って立国が成っている国家の場合、短期的には、その経済的損失は膨大なものにならざるを得ない。

国内企業の大多数が縮小し、又或いは消滅し、同時に金融システムまでが軽々と破綻するのだ。

挙句の果てにその国の通貨は対外的には紙屑と化し、やがて行政システムまでが崩壊してしまうかも知れない。

中でも、極端に食糧自給率の低い日本などでは、我が子に食わせる食を得るためには、警察官ですら銃を抜いても不思議は無い。

治安は、急速に失われて行くことになる。

経済的に破綻してしまう以上その燃料を輸入することも出来ず、火力発電所が真っ先に停止し、間も無く原発が止まる。

そのため電力の供給もその七十パーセントが失われ、店舗や家庭の冷蔵設備は全て当てにならなくなり、要冷蔵の食料品に至っては貯蔵すら出来なくなってしまうのだ。

それまで飽食の限りを尽くしてきた若年層などには、あらゆる店頭から食料品が消え失せてしまう光景など想像もつかないだろうが、国内的にも通貨が信用を失った結果、食糧の売り惜しみが始まり、店頭からその姿を消すまでに、そう大した時間はかからない筈だ。

その点、食糧の自給率を上げておきさえすれば、その意味でのパニックは最小限で食い止めることが出来る筈であり、そんなときにも一人の餓死者も出さずに凌いで行けることが如何に大切なことか、秋津州の幼童たちにもきっと判るのだろう。

健気に立ち働く子供たちの横顔に、暗い影などは一向に見えないのである。

諸方の農地を巡回する若者の姿が報道カメラにもしばしば捉えられ、その日焼けした顔からは、国民の胃の腑を安定的に満たしてやることが何よりも大切だと言う、強い意志が汲み取れる。

又、今年の作柄が決して良好とは言えないことから、王にインタビューしてみたところ、「今年の作柄は三十パーセントと見ており、百パーセントに持って行くためには少なくともなお十年の研鑽が必要だろう。」と言う談話が返って来たと言う。

二十年掛かろうが、三十年掛かろうが、国民の食糧を確保することは、為政者としての最優先の責務であると応え、未だハタチ前の若者の断固たる決意を伝えていた。

秋津州では、ほとんどの農地が新たに開墾開拓されたものばかりであり、荘園から運び込まれた膨大な土壌との相性と言うものも無いではない。

それがこの秋津州の自然に深々と馴染んで行くためにも、相当の期間を要することもあり得るのである。


さて、国王のいる農地付近は今日も雑多なメディアで賑わっていたが、その中には例のティーム・キャンディの姿があり、その華やかな容姿と積極果敢な姿勢がひと際鮮やかで、多くの男性がさまざまに袖を引くのも当然だが、彼女たちの反応はいかにも素っ気無い。

一度でも他の男性とデートしたりすれば、もうそれだけで国外退去になることも意識しないわけではなかったが、何よりも、今更他の男の誘いに応じる気など無かったからに他ならない。

ターゲットは確信を以って定まっており、その作戦に際しては、それこそ万全の装備を整えるよう心がけてもいる。

まして、例のエレベータホールで待機するときの身なりなどには特段の気配りが見られて当然で、特別な意図を以て誂えた衣装がその身体的特徴を遺憾なく際立たせて妖艶そのものだ。

二人共見事なくびれを見せるその腰は充分に発達し、腰から下の部分だけがまるで別の生き物ででもあるかのように躍動している上、その容姿全体が肉感的で扇情的な要素で彩られ、男心を刺激せずには措かないのだ。

まったく、見れば見るほど、理性を失わせてしまうほどの魅力を具えた女たちであり、それは若い男性には最も刺激的なものと言って良いほどのもので、国王といえども健康な男子の一人である以上、到底無関心ではいられない。

墓参の旅に出る前から頻繁な波状攻撃を受けて来ており、男子としての本能をそれなりに刺激されていたことも確かで、度重なる取材の申し入れがあることに事寄せ、ある日居室に招き入れたのである。

小躍りするようにして入室した女たちから、型どおりの挨拶を受けながらつい見惚れてしまったほどで、ゆったりとしたソファに招じ、お茶を振舞いながら形ばかりの取材を受けてやることにしたが、甚三郎や侍女たちが謹厳な佇まいで控えおり、その視線に晒されながら席に着いた女達にはさすがに緊張感が漂う。

やがて二人の戦士は、若者に正対する席からインタビューらしきものを始めたが、カメラどころかテープレコーダーすら用意が無いようだ。

「陛下、早速ですが。」

意外に流暢な日本語であった。

二人とも二十一歳で、ロッティとサンディと言う名であることも自己紹介を受けるまでもなく知っており、どうやら主に質問を担当するのはロッティの方で、サンディの方は手帳とペンを持って身構えている。

「うむ。」

「あれほど大規模に闘った相手国に、これほどの支援をなさる理由についてお伺いしたいのですが。」

事前に用意してきたらしいまともな質問を投げてきたところを見ると、一応ジャーナリストとして最低限のスタイルだけは守るつもりでいるようだ。

「哀れだと感じたからさ。」

王の回答は簡潔明瞭だが、かと言ってそれが本音だとは限らない。

「でも、秋津州はほとんど皆殺しの目に会わされた筈ですのに。」

「降伏すれば、最早敵では無い。」

「慈悲の精神なのでしょうか。」

「ほう、なかなか難しい日本語を使うものだ。」

「おほほ、ありがとうございます。」

多少、場がくつろいだ。

サンディの方は、メモをとるために前かがみになってこちらを見上げており、はちきれそうな胸の隆起がいかにも目に眩しい。

つい、視線がそちらに向いてしまうのもやむを得ないところだろう。

「うむ。」

「では、秋津州連邦についてはいかがでしょうか。」

これも事前に用意してきた質問なのだろうが、仮にもジャーナリストを名乗る以上、この時期当然の質問ではあった。

「よく聞かれるが、私は知らないな。」

「最近では、日本代表部への訪問客が随分多いと聞き及びますが。」

「ほう、そうなのか。」

もっとも、そんな話は日本政府に問うのが筋と言うものであろう。

「陛下ご自身は、連邦なり連合なりについては、いかがお考えなのでしょう。」

なかなかに手厳しい。

「それは、我が国と他の国家との間に限ってのことかな。」

「はい。」

「であれば、現状では考えていないとしか言いようが無いな。」

「と申されますと、将来はお考えになることもおありになると・・・。」

「それこそ、将来のことなどは判らん。誰か判る者がおれば教えてもらいたいくらいのものだ。」

「しかし、今現在でも、たくさんの国々が陛下の庇護を求めていると言われておりますが。」

これは事実と言って良い。

程度の差こそあれ、そう言う国家は既に百を超えているだろう。

「私は、秋津州のことだけで手一杯だよ。」

「ありがとうございます。」

全く紋切り型の質問ばかりだ。

その上、ロッティは肝心のテーマについて質問を打ち切ってしまったようだが、本来ならここから先が突っ込みどころ満載の筈なのだ。

「しかし、少し硬いな。」

「判りました。じゃ、も少し柔らかく参りたいと思います。」

「どうぞ。」

「あの、陛下のお好みの女性のタイプを伺ってもよろしいでしょうか。」

「お、早速柔らかい話で来たな。」

「はい、お言葉に甘えまして。」

ロッティも婉然と微笑んでいる。

「それは勿論、そなたたちのようなタイプだな。」

社交辞令だけで無く、目の前の二人は実に魅力的なルックスを具えており、その性的好奇心を刺激して已まない。

しかし、秋津州国王から見た政治的ツールとしての価値は又別物であったろう。

「まあ、嬉しい。」

サンディが無邪気な声を上げ、その場の空気が一段と和らいだ。

「お上手でいらっしゃいますこと。」

ロッティの方も、この予想外の軽口には、いっぺんに緊張感を溶かされてしまったらしい。

「いや、世辞では無い。眺めているだけでも心楽しい。」

これはこれで若い男子としては紛れも無い本音であり、女たちにしても、獲物との距離を急速に縮めつつある実感を持ったことだろう。

ましてその獲物には、一千万ドルもの懸賞金がかかっていて、ボスの口振りではその額も急騰する感触が強いのである。

「とてもうれしゅうございますわ。」

「うむ。」

「いっそ、この取材は場所を変えて続けることに致しません?」

いよいよ直線的な攻撃態勢をとることにしたのであろう。

「何処に変えるのか?」

「あの、それは勿論、わたくしどもの部屋でございますわ。」

「ほう、プライベート・ルームに招いてくれると申すか。」

「喜んでご招待申し上げますわ。」

それは、そうであろう、彼女たちにとってそれこそが目的の始まりなのだ。

「そこには、酒はあるか。」

「もちろん、お酒もございますし、ほかのヒトの目もございませんから。」

ロッティは、侍女たちの方にちらりと視線を走らせながら言う。

「そうか、そこならもっとゆっくり、そなたたちを眺めることが出来ると言うわけだな。」

「それはもう、ご存分にご覧になっていただけますわ。」

ロッティは、自身の女性としての魅力に余程自信があるのだろう。

「ふうむ、それは楽しみなことだ。」

まったく、若者も人が悪い。

実際は、軽い会話を楽しんでいるだけなのだ。

「まあ、嬉しい。では、早速ご一緒させていただきますわ。」

二人とも、この戦果に目を輝かせながら立ち上がろうとする。

「それがな、今日は少し都合が悪いのだ。」

「まっ、陛下の意地悪っ。」

サンディが嬌声を上げた。

折角、魚が餌に喰いついたと思ったのに、釣り上げる寸前で取り逃がしてしまったような気分なのだろう。

「いやですわ。おからかいになっては。」

ロッティも艶やかな目付きで睨んでいる。

「いや、別にからかうつもりはない。」

「それなら、参りましょ。」

「いや、だから今日は先約があるのだ。」

「じゃ、いつならお時間いただけますの?」

ロッティの方もこの折角の機会は、絶対に逃したくは無いのだろう。

その追求は、すこぶる鋭い。

「今のところ未定だな。」

「それでは、明日お迎えに上がりますわ。」

全く強引だ。

「折角だが、明日は不在かも知れん。」

「男らしくございませんわ。それにもうじき陛下のお誕生日ですもの、そのプレゼントもご用意してございますのよ。」

「ほう、何かな?」

つい、聞いてしまった。

「おほほほ、きっと喜んでいただけると思いますわ。」

二人とも、いかにも意味ありげに婉然と笑みを浮かべてみせる。

若者にもそのくらいの見当はつく。

「ふうむ、それは益々愉しみなことだ。」

「絶対、後悔させませんから。」

「まあ、楽しみはあとに取っておくことにしよう。」

「でも・・」

言いさしたロッティの口を封じるようにして止めを刺した。

「行けるときが来たら、こちらから出向くから、わざわざ迎えに来ぬでも良い。」

「でも、それではわたくしどもの部屋がお分かりになりませんでしょう。」

「そのときは電話して聞くから良い。」

まさか、部屋の場所はおろか、その中の家具調度の配置まで手に取るように知っているなどとは言えるわけも無い。

彼女たちの部屋の中などは既に多数のG四が散々にチェックしており、このティームが連続した三世帯分もの部屋を贅沢に使っていることもとうに承知の上だ。

その三部屋はそれぞれに二LDKほどの規模を持ち、若い女性の一人暮らしには充分なスペースを確保している上、三部屋の内、両端の部屋を二人がそれぞれ個別に使用し、真ん中の部屋を共通のエリアとして設定するほどの力の入れようだ。

この二人組にかける、タイラーの期待の大きさがいよいよしのばれる。

結局二人はかなりの落胆の色を見せながら、それぞれの携帯電話番号を書き残し、それこそしぶしぶと帰って行ったのである。

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  1. 2005/11/05(土) 04:24:44|
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