日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 124

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その後の数日間はデータの山にまるで埋もれるようにして過ごしたが、少なくともその間、敵艦の進路に変化は見られず、しかもさらに百億キロ近くも距離を詰めて来ているとされ、今も着々と近づきつつあることが確かめられたのである。

国井総理や相葉副長官ともひっそりと協議中だが、何しろ全てにわたって不確定要素が多過ぎて対応策など無論定まる筈も無い。

陛下ご自身も、今回捕捉した連中が十一年前の敵の一党であれば、明白に降伏して来ない限り依然として敵であるとのご認識だが、現実問題これほどの強敵があっさりと降伏するなどあり得ないのだ。

結局、目的地がこの丹波であればその意図は明らかだろう。

岡部とも窓の月を用いて頻繁に意見交換の機会を得て、各地の地下シェルターの準備の話題から、ついには戦時体制のあれこれにまで踏み込んだが、いずれにしても材料不足で如何ともし難いのである。

敷島特会の存在が財政面を大きく支えてくれてるとは言え、このままで事態が進行してしまえば確実に金融不安を引き起こすと予測し、一旦そうなってしまってからでは、金融政策面での舵取りも一段と厳しいものになると嘆くことしきりだが、実際に異星人の襲撃を受けてしまえば、折角傷口の塞がったばかりのマーケットが大混乱に陥ってしまうことだけは避けられない。

何せ、大和文化圏の外を見れば、ようやく復興の緒に就いたばかりだと見る向きが少なく無い上に、食糧の増産一つ取ってもまだまだ充分とは言えないのだ。

岡部からすれば、一刻も早い先制攻撃によって早期に決着をつけてもらいたいところだったろうが、こっちとしては若者の真意が判るだけに、なおのこと屈託は深い。

その思いを想って、胸の中は嵐が吹いているほどなのである。

いずれにしても日本政府を通して米国政府にも伝え、七カ国協議のテーブルに乗せて情報の共有化を図ることにしたが、何せ相手は若者ですら悪戦苦闘したほどの相手のことでもあり、一般の国々からすれば、それはもう圧倒的な攻撃力を保持しているものと見るほかは無い。

しかも、前回の戦闘時には若者自身が未だ幼く、自然その特殊能力にしても未成熟だったところに持って来て、相手は直径五百キロもあろうかと言う円盤型の艦(ふね)に膨大な戦闘爆撃機を搭載して来襲したと言うのである。

その巨艦が富士山数万個分にも当たろうかと言うほどの代物である以上、その巨大な質量が、未だ幼かった特殊能力の限界を超えていたのも無理は無い。

その上、相手はD二にも似た武器を使用していたとされ、弾速こそD二より劣るとは言いながら、質量だけは四倍ほどもあり、未だD二もG四も持たなかった秋津州軍に対しては圧倒的な威力を発揮したのも当然だったろう。

その恐るべき飛翔体を、陛下ご自身は「タカミムスビ(高御産巣日神)の矢」と呼んでいたと言うが、変幻自在の自律飛行を可能としていたらしく、命中率に至ってはほとんど百発百中だったと言い、無論通常の砲弾のように打ちっ放しになるものでは無く、同じものが何度も繰り返し飛来して我が方の兵を瞬時に破砕してしまう。

しかも、この「タカミムスビの矢」たるや、ご自身が認識し得るものに限っては、何度も暗黒の彼方へ追いやってしまわれたそうだが、それでなお別のものが次々と飛来して攻撃してくるのである。

旧式のヒューマノイド兵などではまったく太刀打ち出来ず、脆弱な秋津州軍は散々に打ち破られて思うさま劫掠を許してしまったほどなのだ。

血を吐くような難戦に懲りた若者が、この「タカミムスビの矢」を参考にしてやがて最強の常備軍を建設するに至るのだが、それから数えて優に十一年の歳月が過ぎようとしている今、敵方の武備にしても進歩してない筈は無いだろう。

今となっては、途方も無い威力を持つ兵器を具えていたとしても何の不思議も無いのである。

重厚な軍歴を誇る安田官房長官の分析によれば、「敵の兵器が一切進化してなかった場合ですら、国家警務隊(秋桜隊)の持つ例の特殊戦力を除けば、日本軍は敵すること能わず。」とまで、言い切ってしまっているほどだ。

タカミムスビの矢を搭載した戦闘爆撃機が超高空を飛行しながら攻撃してくれば、どう考えても防ぐ術(すべ)は無いと言うのである。

あの米軍ですら、このタカミムスビの矢には敵することは出来ず、超高空からマッハ二十を超える高速で襲われれば短時間で制空権を失い、膨大な海上勢力もほとんど海の藻屑となってしまう筈だと言う。

人類が現状の兵器を以て闘う前提に立てば、実に恐るべき戦闘能力と言って良い。

しかも、肝心のその戦艦の所在を今以て捕捉出来ないでいるのだ。

そうである以上、その最大の脅威がいつなんどき急襲してくるか判らない上に、その兵装もまったく不明のままだ。

発見すら出来ない以上、どうすることも出来ないのである。

開戦を控えて敵の実戦部隊を捕捉出来ないでいると言うこの現実は文字通り致命的ですらあり、これも偏に若者の特殊な索敵能力に頼るほかは無い以上、先進各国の秋津州依存の傾向はいよいよ強まるばかりだろう。

現実に双頭の鷲を掲げた巨艦が、秒速三万キロもの猛スピードで今も刻々と接近中であることだけは確かなのだ。

とにもかくにも、少なくとも我々人類にとって共通の脅威であることだけは確実だとして、七カ国協議の議論も一刻も早く迎撃の構えを採るべしと言う方向が定まり、早くも一部に、丹波防衛軍の総帥を若者に擬して発言する者まで現れた。

既に、人類は強大な異文明との軍事衝突を確実に予感したと言って良い。

尤も、捕捉中の敵艦との距離は未だ八千億キロの余もあるとされており、いずれの国家も自力では偵察部隊の派出すら適わない。

何せ、丹波の属するこの惑星系においても、主恒星との間には平均して一億五千万キロほどと、かつての地球時代のそれと同等の距離があるのだが、問題の敵との距離は実にその五千倍にも及ぶのだ。

仮に各国が最速の有人宇宙船を飛ばしてみたところで、そこには、搭乗員が船内で何世代も過ごさざるを得ないほどの距離があるのである。

自然各国は八雲の郷に多くを派遣して、偵察行動に当たっては国王陛下に随伴することを請い願い、鋭意敵情報の収集に励むことになる。

その数も既に万を越えたとされ、それぞれが秋津州ビルの自国代表部を拠点としているようだが、米国などは元々膨大な駐在員を置いているところに、さらに千余の人員を派遣して来ており、あのタイラーも今頃さぞてんてこ舞いのことだろう。

若者が索敵行に出る際などは百を越えるSS六が帯同し、数千の外国人が随伴しようとするため、とにかくそれだけでも大騒動なのだ。

無論、重装備の彼等の全てが数千億キロの彼方にまで瞬時に移動して行くのである。

その甲斐あってか、やがて数多くの信ずべき情報を得た各国当局は、事態の容易ならざることを否応無く認識させられた結果、二月の下旬に至り安保理において正式に国連軍の創設が決議されるに至った。

総司令官の座には例によって米軍の将星が座ることも固まり、臨時総司令部がNewワシントンの一郭に置かれることになったと言う。

その妥当性はどうあれ、少なくともそれは名目上は丹波防衛軍と呼ぶべきものだった筈だが、如何せん先立つものが足りない。

各国共に巨額の戦時公債を発行して急場を凌ごうとはするのだが、とにかく軍を維持するだけのカネが無いのである。

日本政府は、米国の数百倍にも達する拠出を一旦行った上に、いざともなれば国家警務隊はおろか国防軍の全てを投入する覚悟を固めてはいるが、何しろ予算不足で主要国の合同演習を行うにも四苦八苦のありさまだ。

新田は秋桜資金を投入する覚悟を固め、女帝に運用の手仕舞いを申し入れようとしたところに国王から二十兆円にも及ぶ拠出計画の話が飛び出し、これが秋津州円建てであったことからやがて大喝采を浴びることになった。

何せ、日本円にすれば、六千兆円にも及ぶと言う途方も無い額なのである。

壇上から発表する機会を得た新田の映像は瞬時に世界を駆け巡り、秋津州の執政官としての名望はいよいよ高まった。

当然であったろう。

何しろ、その新田の管理下で、巨額の資金が参軍する国家の全てに怒涛の如く配分されて行くのだ。

それも、べらぼうな金額なのである。

七カ国協議の構成国なども、通常の軍事予算の数年分にも匹敵するほどのものを一挙に手中にすることを得た上、その後の拠出の見通しに関しても確実視されるに至り、皮肉なことに、これが壮大な戦争景気を呼び込むことになった。

各国当局はその資金を裏付けとしてそれぞれの軍を整備拡張し、それに伴い種々の軍需物資を大量に発注するに及び、やがて四月の声を聞く頃には、世界各地で膨大な実需が発生して多様な生産ラインが轟然と稼動し始めたのだ。

無論、そのことによって齎される経済的波及効果は際限も無いほどのものであり、若者の直轄領に限らず、殊に日米両国などでは、既にあらゆるマーケットが沸騰し始めているとされ、当然、庶民レベルですらそのこと(敵襲)を知ることになり、ヤマトサロンなどでも俄然議論の対象となり始めた。

筆頭格のみどりママの場合、言うまでも無くひたすら非戦論一辺倒だ。

ごく単純な戦争反対論なのである。

鹿島夫人や加納夫人は軍人の妻として直接的な議論には加わってはいないにせよ、内心は明らかに抗戦論であり、久我夫人はもとより、ダイアンや菜穂子などはキャサリンの理論的援護を受けて最初から歴然たる抗戦論だ。

それも徹底抗戦論であり、闘わずして屈服するくらいなら死んだ方が増しだと言う声さえ出ていると言う。

現にその相手は、こっちが如何に戦争に反対していようと、問答無用で攻撃してくると言うのである。

そうである以上、防戦せざるを得ないと力説して已まない。

しかも、前例から見て相手は明らかな無差別攻撃を加えてくる連中であり、降伏したからと言って女子供が無事に済む保障など何処にも無いのである。

このような敵襲が眼前にあると見られる以上、この徹底抗戦論も当然と言えば当然の議論だったろうが、如何せん一人みどりママがひるまない。

丹波か但馬への疎開移住の可能性を重く見て強硬な非戦論を繰り広げ、ひたすら殺し合いは嫌だと叫ぶばかりだ。

若い側室たちはと言えばこれまた全く対照的で、ただ一筋に陛下を信じていると言い、その家族である以上運命共同体だとして、とかくの議論は無用と見ているかのようでさえあり、やがてみどり一人が孤立しかねない状況になった。

何せ、何もせずにひたすら逃げようと言い続けるのだから無理も無い。

ダイアンなどは、じゃあ逃げ込んだ先を再び襲われたらどうするんだと言い、みどりママはそのときは又逃げればいいと言う。

結局、いつかは逃げる先が無くなってしまうことは明らかで、闘わない方針でいる以上そのときは降伏するより手は無くなるのだが、みどりママにしても降服する気は無いのである。

しかも、逃亡するにしても、王家の周辺の人間だけならいざ知らず、人類の全てを漏れなく移動させるにはその準備に膨大な時間を要することは明らかで、今回のような緊急時には到底間に合わない。

詰まり、みどりママの議論で行くとなると、いざとなったら他の者たちを見捨てて自分たちだけが安全なところへ逃げ込むことになってしまう。

そのためみどりママの議論はいよいよ敗北せざるを得ず、その声も細る一方だ。

その後、事態を重く見た女帝の指示があったものらしく、四月の下旬に至って迫水秘書官を通してある情報がひっそりとサロンに届いた。

あくまで王家の内部情報としての扱いだったが、それは、みどりママですらその主張を一変するに足るほどの内容を含んでいたのだ。

一言で言って、王家の特殊能力を以てすれば、敵の船を数億光年の彼方にまで瞬時に移動させてしまうことはおろか、木っ端微塵に粉砕してしまうことすら可能とされたのである。

結局、若者がこの敵を楽々と屠るに足る打撃力を持つことが明らかにされたことになり、正直なものでヤマトサロンのムードは見事に一変してしまった。

みどりママですら一刻も早い攻撃を望むに至り、敵の襲来を漫然と待ち受けるのは如何にも愚策であるとした上、肝心の敵の戦艦の所在が掴めないままではあるにせよ、とにかく、現に捕捉中の船だけでも先制攻撃を掛けるべきだと主張し、みどりなどは若者に早期の攻撃を直接説いたようが、肝心の若者が煮え切らない。

一向に攻撃を開始する気配も見せずに、ただ黙々と索敵行動に専念するばかりだ。

その間も敵との距離は日々刻々と狭まりつつあり、メディアも寄ると触ると宇宙戦争の話題で持ち切りだが、少なくとも大国と呼ばれる国々の場合ですら、庶民に対しては自国の防衛能力が敵の攻撃力に比して悲劇的なほど脆弱だとまでは伝えられてはいないのだ。

だが、各国の政府当局だけは、来襲しつつある異星人が容易ならざる強敵であることを認識しており、秋津州ビルには諸外国の要人が数多く訪れていると聞く。

王宮のサロンにおいても、みどりママが金切り声を上げる場面まであると言うが、国王が攻撃を躊躇する真の理由を知らされないままに、眼前に迫り来る大戦争を前にして議論が沸騰するばかりでどうすることも出来ないのである。


やがて六月の声を聞き、各国の戦備がいよいよ整い始めたとする報道で溢れかえる中、国際社会の裏舞台でもさまざまなすり合わせ作業が行われ、秋津州ビルではさまざまな多国籍会議が頻繁に催されるまでになった。

それら多様の会議も大半は今次の丹波防衛戦に関わるものばかりであり、各国の安全保障担当閣僚や制服組のトップクラスまで集めるものも見受けられ、八雲の郷の一の荘は既に丹波防衛軍の一大拠点の観を呈し始めており、その実質的総帥のお乗り出しを切望する論調が巷を席捲してしまっているほどだ。

実質的総帥とは、何れにおいても秋津州国王その人を指しており、無論例外などは見受けられない。

全人類が文字通り斉しく共通の敵を持ったことにより、有史以来未曾有の協調体制を布かざるを得なくなった今、それが戦時体制である以上統御すべき指導者は欠かせないと叫ぶメディアまで出て、その論調に従えば、「丹波防衛軍」を一糸乱れず統御し得る者こそその座に就くべしとしており、それこそ国王以外に適格者がいる筈は無いと言う。

過去においてその敵を現に撃退した実績を持つ以上、その論も、それはそれで、理屈としては真実であったろうが、肝心の秋津州は今以て国連に非加盟のままであり、自然国連軍には加わってもいないのだ。

尤も、覇王自身は国連軍に加わろうと加わるまいと、無類の敢闘精神を発揮して敢然と闘うに違いないと見られており、そうである以上、丹波防衛軍を強力にリードする者は若者以外に無いとする声は圧倒的でさえあり、現に、新田のところへは、その手の打診が多数舞い込んで来ており、その真意は別にして日本政府を通じてアクションを起こそうとする例も無いではない。

甚だしい例では、丹波世界の秩序構築に当たっては欠くべからざる条件だと前打って、長らくほこりを被っていた「秋津州憲章」なるものまで担ぎ出して来るやからもおり、見てみればカビの生えた国連憲章の焼き直しで、その中身の最大の特徴たるや、敵国条項の完全削除と日秋両国の常任理事国入りである。

極端な例では、有事の際の常任理事国を秋津州一国に限定するとする案まで実在し、その場合に構築されることになる秋津州連邦と言う名の世界政府の中では、秋津州だけが拒否権を持つと謳い揚げ、それによって初めて指揮系統の統一が敵うと言い、それ無くしては世界の安寧秩序を保持することは最早不可能だとまで言い騒ぐのだ。

このケースでは、文字通り国王が世界の王となって全ての指揮を執ることになるのだと言う。

殊に南方海上に散在する小国の場合など、この案に相乗りして国民の一部を鬼界が島の地下施設に避難させて欲しいとまで言い出す始末なのだが、無論そこは紛れも無い秋津州領であり、戦争が起きたからと言っていちいち逃げ込まれたのでは、逃げ込む方は良いだろうが、逃げ込まれる方は堪ったものでは無いのである。

果ては、日本からまで団体で押しかけて来るありさまで、会ってみると実に意気軒昂たるものがあり、リーダー格の予備役少佐などは数千人規模の義勇軍を募って参軍する意向を示し、武器一式と演習用の土地だけは現状の日本国内では確保出来ないことから、是非とも支援を請いたいと言い出す始末だ。

詰まり、広大な土地を租借して国王から頂戴した武器を以て武装した上、その地に盤踞したいと願っていることになる。

その資金も二十億は集める自信があるとは言うが、話どおり三千人の兵を集め得たとして、どの程度の予算を見込んでいるものか、その点一つ取っても甚だ心許ない。

想定されている戦いが惑星間戦争のことでもあり、他国領土に進駐して行かない限り、現実問題既存の戦時国際法違反を云々されることは無く、雑多な私服を用いることも可能とは言いながら、兵士の給与や食費などをどう捉えているのか。

仮に三千人の兵を三百日維持するとして、猛烈な軍事教練を前提にしている以上、兵士の給与だけでも百億ほどは用意してかかる必要がある上、一人あたりの食費関連が一日千五百円(日本円)と見て、それだけで既に十三億五千万も掛かるのだ。

しかも、その闘いが果たして何年続くものやら、闘いには常に相手がある以上、それこそやってみなければ判らないのである。

仮に兵営ぐらいは支援してやったにしても、駐屯中は寝具や備品、風呂やトイレも必要であり、医療費一つ取っても莫大な経費を覚悟せねばならず、車両や通信関連にも最低限のものは用意しなければならぬだろう。

まして実戦ともなれば、戦況に応じて当然転戦を強いられるが、その移動手段の問題もある上に、戦死者はおろか膨大な傷病者の対応まで考えて置く必要があり、最初から出来る話では無いのである。

祖国防衛のためには野に臥し山に隠れ、泥水を啜り草の根を齧ってでも戦い抜くとは言うものの、何せ典型的な近代戦争なのである。

その気概だけは買うにしても、遺憾ながら所詮机上の空論でしか無い。

安田官房長官から直接説得してもらって、ようやくお引き取りを願ったが、とにかく、えらい騒ぎなのだ。

国王が世界に独裁権を揮うような秋津州連邦案などは、若者の真意を知る以上無論一顧だにしていないが、相変わらず種々雑多な遊説の徒が押しかけて来る。

何せ若者は、常々「人は斉しく社会の中に棲み、それぞれの歩調でそれぞれの方向へその社会を方向付けようと努力するものであって、それを全て強制的に同一のものにしてしまおうとするなど正気の沙汰ではない。」と語っているほどで、しかも、大規模な社会に対する「統治」になど自信を持てる筈も無く、独裁権を持つ秋津州憲章など所詮受ける筈も無いのである。

だが、一方で若者の真意をさまざまに忖度するものもまた少なくない。

無論、その場合の多くは例によってスーパーパワーの謀略の匂いを嗅ぎ分けたと主張し、あらゆる動乱は大規模であればあるほど魔王の利益を際限もなく増大させる筈だと言い、魔王は、世界の秩序が液状化するさまを横目で眺めながらほくそえんでいるとまで主張するのである。

新田にしてみても、旧秩序を全て一旦破壊することによって、完全な新秩序を打ち立てることが初めて可能になると考えないではないが、いざこうなってみると全人類にとっての「究極の秩序」が果たしてどのような姿をしているものか、確たる自信など持てる筈も無いのだ。

だが、一方で、人間個々の持つ貪欲なまでの向上心や競争心は依然として健在だ。

国際社会、殊に当局筋の抱く先行き不透明感が拡大傾向にありながら、現に、マーケット自体は圧倒的な戦争景気に沸いてしまっており、世界経済は既に往年の繁栄を取り戻しつつあるとする向きまで出始めているほどだ。

米国の失業率なども劇的に減少していることも事実で、しかも大和文化圏のマーケットにも積極的に参入を果たす勢いを示し始めており、日本の西方に位置するEU諸国にしても、その経済活動をようやく活発なものに変えつつある。

米国は勿論、英仏独露中の企業なども大和文化圏への参入を目指して盛んに接触を求めて来る中、東京の岡部との意見交換も回を重ね、その傍らにいる女帝の思惑も今では一層強く嗅ぎ分けられるまでになったが、相変わらずこちらの方の意向は、王家の世継ぎ誕生をひたすら最優先課題としていて最早苦笑してしまうより無いが、かと言って、妻の菜穂子なども負けず劣らずの体たらくである以上、あまり人のことばかりは言えない。

妻に、何でそこまでこだわるのか聞いてみたところ、本人は日本の国益のためだと理路整然と主張し、それどころか王家の持つ特殊な能力の受益者は人類全てにわたる筈だとして、そのことが絶えてしまう事は断じて見過ごせないとまで言い募るのである。

結局、あのヤマトサロンに集う女性軍は、私の見るところ、理屈はどうあれ、女性問題におけるあの若者の行儀の良さに本能的に好感を抱きつつ、一方でついついお節介なやり手婆あの心境になってしまうに違いない。

しかし、そのことをあからさまに指摘しようものなら結果は知れているだろう。

たちまち、猛烈な集中砲火を浴びるに決まっており、相手が相手であるだけに、それだけは厳に慎まなければならないが、現にそう言う連中に取り囲まれてしまっているあの若者の境遇にも、心から同情を寄せざるを得ないのである。

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  1. 2008/05/14(水) 15:03:44|
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