日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 129

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「正直、だいぶイメージが変わっちゃいました。」

「ふふん。」

「しかし、つくづく先輩らしいですねえ。」

この人の心の在り処(ありか)の何たるかが、今しみじみと胸に沁みてくるのである。

プロジェクトAのメンバーなどに言わせれば、この先輩と新田さんとは差し詰め得難き国士と言うことになるのだが、世の中と言うものは実にさまざまなもので、殊に思考の座標軸を異にする連中なんかの口に掛かれば、もたもたしてて書類一つ満足に作れない無能なヤツだと言うことになってしまうのだ。

「なんだ、いまさら。」

「だって・・・。」

「ん。言いたいことがあるなら、はっきり言え。」

「だって、先輩のことを超のつく軍国主義者だって言うヒトもいるくらいですから。」

「ふふん。」

「ボクだって、前はそんな目で見てましたから・・・。」

「あのな、俺は何も神さまみてえな日本軍だとか、残虐なことなんか一切やらなかったとか、そこまで強弁する気はねえぞ。」

「今日改めてそれが判りました。」

「おせえよ。」

「すいません。」

「ただな、・・・・」

「・・・。」

「我々自身が作り上げ、我々自身が運用した筈のこの軍と言うものをだなあ、その日本人自身が不当に貶めてる気がして、そいつがどうにもたまらねえんだよ。」

「はい、判るような気がします。」

「なんせその軍も全部日本人なんだからな。せめてその日本人ぐれえは、もっと公正な評価をしてやるべきだろう。」

「はい。」

「幼稚園の喧嘩じゃあるめえし、あの時代背景だ。盛んに謀略もやったろうし、いろいろ褒められねえことも仕出かしたがよ、そう言う面も全部ひっくるめて再評価されるべきだって言ってるだけなんだよ。」

「その点はボクも同感です。」

「その点」には、無論当時の時代背景のことも含む。

「例えばだよ。例の秋津州戦争でも秋津州軍は敵の軍民を相当殺した筈だよなあ。」

あれだけの規模の戦争なのだ。

敵側の非戦闘員にしても、一人も死ななかったと言うわけでは無いのである。

「確か、中朝露が発表した数値を全部合わせると、五百万人も亡くなってるそうですよね。」

無論軍民併せての話だ。

「うん、その数値の正当性はさて置いてだなあ、・・・」

「はい。」

「あの秋津州軍でさえ、女子供を少なからず殺しちまったことになるよなあ。」

「はい。」

「結局、秋津州の壮大なパワーを以てしてもそうなんだよ。」

「それは、・・・・仕方が無かったでしょうね。」

「仕方が無かった・・・・か。」

「はい。」

「あの方は、女子供を殺すことをとても嫌うよな。」

「当然です。」

「それでも、いざとなりゃ・・・・。」

「でも、陛下のお話だと、敵さんは女子供にまで銃や手榴弾を持たせる例があったそうですから。」

「うん、それでも大抵は殺さずに捕らえて武装解除の上即刻解放していた筈だ。」

「それが出来たのも、ひとえに秋津州があらゆる面で圧倒的な力を持っていたからでしょうね。」

「素手の敵兵など、例え百万人押し寄せて来ても屁でも無かった筈だからなあ。」

「秋津州軍だったら、やろうと思えば百万人の捕虜を完璧に殊遇することも可能だったでしょうね。」

「海軍ならいざ知らず、あの頃の陸軍じゃ、到底その真似までは出来なかったろうよ。」

確かに当時の日中海戦なら、もしそれが行われていれば日本海軍は余裕を以て勝利した上に、波間に浮かぶ敵兵を救助して確かな保護を加えることも出来ただろう。

しかも、その捕虜を国内の収容所まで大過無く送り込めた筈なのだ。

当時の両国の海軍力の差はそれほどまでに懸絶していたからなのだが、かと言って敵国の内陸で戦う陸軍にそれほどまでの力は望むべくも無い。

何せその敵地たるや茫々たる大陸であり、その意味で言うところの力は、無論兵站補給能力に負うところが限り無く大きいからだ。

「だって、少数の日本軍が敵地で必死になって戦ってるんですものね。ちょっと油断してれば十倍、二十倍の敵勢に包囲されちゃっててもちっとも不思議は無いんですから。」

「うん、兵力の上から見たら日本軍はぎりぎりの剣が峰で常に目一杯で戦ってたんだ。」

「圧倒的な力を持っていれば、捕虜を殺さなくとも済んだかも知れませんよねえ。」

「もしそれほどの力を持っていれば、最初からあんな戦争にならんで済んだかも知れんしな。」

「陛下も、今後の理想は、相手に最初から戦闘意欲を失わしめるほどの戦力を常に整備しておくことだと仰せでしたから。」

相手側が戦闘意欲を失ってくれれば、少なくとも戦争には至らないで済む。

「結局、それが現実なんだよな。」

「確かにそうなんですが、当時の日本軍の暴虐行為については情報が氾濫し過ぎちゃってますからねえ。」

「うむ。」

「ひどいのになると、日本軍が敵の肉を喰らったなんてものまであるし。」

「おめえ、それ信じてるわけじゃあるめえな。」

ヒゲ面の両目がキラリと光った。

「いえ・・・、ただ相当ひどかったって言うイメージがどうしても・・・・」

「ばかやろう。」

「はい。」

「敵の宣伝戦にいちいち振り回されていてどうすんだ。」

さっきまで大人しかった酔っ払いが、読み筋通り元気を取り戻してくれたようだ。

何もかも承知の上で挑発してみたのである。

「宣伝戦ですか。そう言えば敵さんは、その宣伝戦のために欧米人なんかもいっぱい雇ってたらしいですよね。」

「うん、そいつ等が如何にも第三者でございってツラしやがってよう、敵さんからゼニをもらって、もうこれでもかって言うくらい嘘八百を並べたてやがって、インチキ写真をべたべた貼り付けてご大層な本まで出してやがる。」

「色々映画にまでなっちゃうし。」

内容はどうあれ視覚的に見せられると、どうしてもその光景が強烈な印象を残してしまうため、知らない者なら、そこに映し出された光景を、あたかも史実であったかのように思い込んでしまう例が実に多いのだ。

しかも、本にしてもテレビドラマにしても、本来創作ものでありながら、如何にもドキュメンタリーらしき仮面をかぶって登場して来るからなおさら悪質だ。

一言で言って、大衆が錯覚してくれるのを始めから期待してやっているのである。

「しまいには、日本人までがその尻馬に乗りやがって、もっともらしいインチキ本でゼニもうけに走ってやがる。その点では充分反省しなければならんだろうな。」

反省と言っても、無論日本側の宣伝戦略の拙劣さを指して言っているのであり、少なくとも今となっては全く同感なのである。

「ほんと、日本人にもいろんな人がいますからねえ。」

「うん、とんでもねえ野郎もいるな。いくら言論の自由ったって、ことがことだ。でたらめを吹聴していいってことにはならねえ。」

「それを鵜呑みにして、真に受けちゃうヒトが現実にいるんですからねえ。」

「ひでえのになると、左派系政党の機関紙に連載したヤツを単行本に仕立てたモノまであってよ、しかもそれがばか売れしちゃうくれえだから、俺なんざもう開いた口が塞がらねえ。」

「あ、七三一部隊・・・。」

「だいたいなあ、ノンフィクションだって言って置きながら、登場する関係者は全部匿名だは、それだからまるっきり裏付けは取れねえは、証言者だとする人間の言うことなんざ論駁されるところころ変わっちゃうんだぜ。そんなもんがノンフィクションであってたまるかよ。」

ノンフィクションどころか、悪質極まりないプロパガンダだと言うほかは無いだろう。

「はい。」

「問題の石井部隊の元隊員を名乗る謎の人物がいるとか抜かしやがってだなあ、そいつから入手したとか言って載せた写真なんざ、ご丁寧にもほとんどが無関係のものだったことがばれちゃってるじゃねえか。」

「それ、当時超売れっ子だった作者自身がゲロしちゃってますよねえ。」

「ふふん、それが大ベストセラーだって言われた日にゃあ、呆れけえってものも言えねえや。」

「ほんと、いまだにノンフィクションだって信じてる人がいるくらいですからねえ。」

「まあ、衆愚だとかなんだとか言われて小ばかにされても文句は言えねえよなあ。情け無え話だがよ。」

「ほんと、つくづくそうですよねえ。」

傍らで、既に大コーギルをすっかり仕切っている筈だと囁かれている絶世の美女が一人、今艶然と微笑んでくれているが酒のペースは上がる一方だ。

「ところで、最近ずんと面しれえ話を聞くんだがよ。」

酔っ払った先輩の話は縦横無尽に飛んで行く。

「どんな話ですか。」

「六角庁舎のあのだだっ広い中庭で、近頃おもしれえ遊びが流行ってるそうじゃねえか。」

「え、いろんなことがありますけど・・・。」

現にその場所ではさまざまなことが行われているらしく、自分の知ってるものだけでも数種類のイベントがあるのだ。

先日などはアキモト准将が大勢のかんなぎを引き連れて、華麗な舞いを姫君たちにご披露に及び、お二方とも同様の衣装までお召しになって、実に楽しげにその舞を演じておられたほどで、殊に見事な拵えの日本刀を用いた剣舞などは、一見に価するものであったことは確かだろう。

恐らく近々に陛下にご披露に及ぼうとしてのものではあったろうが、見物の有紀子嬢などが大喜びで拍手まで送っていたほどなのである。

「馬だよ、馬。」

「あ、馬ですか。」

「そうだ、馬だ。」

「姫君さまたちは、お二人とも大分上達されましたよ。」

「うちの奥さんの話だと、輪乗りも早駆けも自由自在らしいな。」

どうやら、乗馬の話だったらしい。

「今度の建国記念式典では、騎乗姿でお供をなさりたいとの仰せですから。」

「軍服までご着用って聞いてるが、本気なのか。」

「このご時世でもありますし、従軍して死なばもろともの心意気なんでしょう。」

何せ、異星人との武力衝突が避けられない情勢なのだ。

少なくともヤマトサロンにおいては、陛下の圧倒的な戦闘能力がある以上、瞬時に撃退し得ると信じられてはいるものの、肝心の敵戦艦の所在は未だに捕捉すら出来ないでいる。

そうである以上、それがいつ襲ってくるか知れたものではない。

その時に陛下がご不在の場合のことを考えれば、当方にまったく被害が及ばないかと言えば、そこまでの自信は持てないのである。

過去の例でも、若い秋津州美人が相当拉致されてしまったと聞いているくらいで、万一の場合、二人の姫君などは真っ先に狙われても不思議は無いのだ。

「やはり、本気なのか。」

「キャサリンなんか泣くほど感激してたくらいですから。」

「ふうむ。」

「まことに健気(けなげ)で、そのお心ばえはまことに結構かと。ただ・・・・、」

「ただ、なんだ。」

「ただ、建国記念日に全軍を集結させたいご希望がおありのようで・・・。」

「言いだしっぺは久我夫人のようだな。」

「はい、それをお二人の口から陛下に申し上げたような気配が・・・。」

「お採りあげになるような話も聞こえて来たが。」

ご裁可がありそうだと言う意味だ。

「はい、その可能性も無きにしも非ずかと・・・。」

「未だその奥がありそうだな。」

「もし全軍を集結させれば、不心得者が核攻撃に踏み切る可能性が出て来るとか。」

先ごろまでの秋津州軍は、長らく他の荘園や丹波の宙空に広く分散して衛戍(えいじゅ)してきたが、全て秋津州の空と海とにまとまって展開して見せれば、理論上は、一気に全軍を壊滅させることも可能となる道理で、一万発の核ミサイルの絶好の標的になると囁かれているのだ。

「いや、その点は逆だろう。」

「え。」

「ワシントンなんかじゃ、反って深読みするヤツが増えとるそうだ。」

「深読み・・・、あ、トラップだと・・・。」

隙を見せることによって核攻撃を誘い、堂々たる大義名分を以て一大反攻に転ずると言うトラップのことだ。

「うん、陛下のお胸の内が合衆国を一気に滅ぼす方向に転換してしまったのではないかとな。」

「又しても、怯懦(きょうだ)の万犬が吠えまくっておりますか。冷静に考えれば直ぐに判りそうなものなのに。」

尤も、冷静さを失ってしまっているからこそ疑心暗鬼に取り付かれてしまうのだろう。

「あまり怖がらせてしまうのも、よろしくねえだろう。」

「そうでしょうか。」

近頃の手乗り文鳥は少々図に乗っているところが見受けられ、目の前の奥さまには申し訳ないが、もう少し懲らしめてやってもいいような気もするのである。

「臆病者を追い詰めると、とんでもねえことを仕出かすかも知れねえぜ。」

「・・・。」

「まあ、いい。それより、久我夫人の本音は世界帝国の旗揚げにあるらしいが、その話のアホ参謀はおめえか。」

それに関しては、自説の秋津州連邦設立論の杜撰さを痛烈に論破されたばかりだ。

「いえ、私じゃありません。」

「じゃあ、誰だ。」

「多分、ご主人の刀匠あたりじゃないかと・・・。」

推測なのである。

「ほほう。」

「何でもこの機に乗じて世界中の軍備を全廃した上、各国それぞれの国防を秋津州軍が一手に引き受けると言う段取りなんだそうです。」

と、久我夫人が言っているのだ。

「ふうむ。」

異星人との大戦争を控え、史上空前の軍事パレードをやって見せることによって、世界の国防軍たるべき蓋然性を強力にアピールしようと言うことか。

「どうせ、もともと全て陛下の領土だったわけですし、今さらその陛下が他国の領土を欲しがるはずはありませんから、理想的な世界政府が出来上がる端緒になると・・・。」

「新田さんの話だと、ご自身は大笑いなさったと聞いているが。」

それを耳にした若者が爆笑したと言うのである。

「でも、そのコストとして各国それぞれが、毎年GDPの千分の一づつ拠出する案まで出てるくらいですから、満更夢物語とばかりも言えないでしょう。」

その場合の拠出金は秋津州陛下に上納するためのものなのだが、みどりママなんかも、この点での希望的観測を捨てきれないでいる雰囲気が強い。

「おいおい、おめえまで、そんな脳天気なことを言ってちゃあ困るじゃねえか。」

「へ。」

「子供の遊びじゃねえんだ。もう少しまじめに考えろ。」

「だって、実現すれば少なくとも国家間の戦争だけは無くなるじゃないですか。」

秋津州軍以外、世界中から軍隊と言う軍隊が全て消えて無くなる話なのである。

理論上、国家間の軍事紛争はあり得ないことになるから、みどりママなんかが真っ先に賛成するのも無理は無い話なのだ。

「ばかやろう、その話にゃあ致命的な欠陥があるだろうが。」

「え。」

「判らねえかよ。」

「でも・・・。」

「今はいいとしても、次世代の帝王がどんな人間になるか、わからねえじゃねえか。」

秋津州の帝王は、無論そのまま秋津州軍の統帥者でもあるのだ。

統帥者どころか、個人オーナーと言って良い。

「あ、・・・」

場合によっては、最強の秋津州軍団が最大の凶器となってしまう可能性は否定できないだろう。

「未だ生まれてもいねえんだぞ。」

「やっぱり、ダメですかね。」

「第一、世界のうちで、まともな民主化がなされていて、曲がりなりにも統一の大業が達成されてる国が幾つあると思ってんだ。」

合理性の高い統一政権を持たない以上、国家の正統な意思を具現化することは不可能だ。

「どう見ても未だ半分もないでしょうね。丹波への移住騒動が一段落した途端、またあっちこっちで権力闘争が始まっちゃってますからねえ。」

「その多くが只の権力闘争じゃねえ。武力闘争に発展しちゃってるじゃねえか。」

典型的な内乱ばかりだと言って良い。

しかも、その数も見渡せば枚挙に暇(いとま)が無いほどだ。

「いや、ですから、そこへ派出した国防軍がその内乱を速やかに鎮め・・・。」

「ちょっと待て、こら。」

「え。」

「おめえの言い草だと、その場合に派出される国防軍ってのは秋津州軍のことだよな。」

「はい。」

「その国防軍が現地国の政府の要望に応えて活動するんだったよな。」

「そうですよ。」

「結局、その現地国の政府の指定する敵対勢力を、打ち滅ぼして欲しいって頼まれることになるだろうが。」

「・・・」

「第一、その政府の正当性を誰がどうやって判定するんだよ。しかもその場合の敵対勢力だって複数存在することの方が普通だぞ。」

「あ、・・・。」

一つの国家の中で、その国を代表する政府を標榜する団体が複数存在することさえ珍しく無いのである。

「場合によっちゃ、敵対勢力のほうが正当性が高いことだってあり得る。」

「・・・。」

「それに今後時間が経つに連れ、それぞれが主張する国境線が微妙にずれてくる筈だ。最初の領土引き渡しの時の国境線が、そのまま継続して守られるとはとても思えねえからな。」

「でも、それは陛下がお許しにならないでしょう。」

「アホ抜かせ。」

「え。」

「秋津州の一国家元首にそんな権限があると思ってんのかよ。」

「ですから、そこでそれを明文化した秋津州憲章の出番でしょ。」

有事の際の特別常任理事国の持つ事実上の決定権のことを指しているが、無論その際の特別常任理事国は秋津州一国に限られるのである。

近頃では、例の七カ国協議の席上でも中露の意見として陽の目を見つつあり、その議論が「秋津州超国家論」とか言う大層なネーミングまで附して報じられているほどで、無論、異星人との戦争が終結するまでと言う限定版ではあるが、その意味に限れば、荒唐無稽とばかりも言い切れない雰囲気が既に醸成されつつあると言って良い。

「ほほう、じゃ陛下には世界帝国の独裁者になっていただくわけか。」

「いえ、独裁者だなんて・・・。」

「んにゃ、そんな権限をお持ちになる以上、そりゃあれっきとした独裁者だぜ。念のために言っとくが、オレはそれでもいいけどな。」

酔っ払いの本音が顔を覗かせる。

「陛下に独裁者は似合いませんし・・・。」

「似合おうが似合うまいが、陛下に判定しろってことになるだろがあ。」

「う・・・。」

「どんな国家だって、さまざまの民意があって当然だし、そこの国の政府だってこれまた同様だ。そもそも全てが一致してりゃ内乱なんざ起きる筈が無えんだ。」

最早、ぐうの音も出ない。

「・・・。」

「陛下が大笑いなさった筈だよ。」

先輩はぽつりと呟いたが、その目がみように寂しげに見えたのは錯覚だろうか。

このとき、奥さまが小型の窓の月を先輩の前に据えた。

今しがたシグナル音が鳴ったのだ。

どうやら、対策室からの定期報告だったらしく、現状ではとりあえず異常無しとのことのようだったが、思えば、先輩もずっとこんな状態で激務をこなしてきていて、つくづく大変だなあと思ったが、その意味では新田さんなんかも似たような仕事振りだ。

みんな同志なんだなあと改めて思いながら、目の前のグラスを心に重く取ったのである。

酒の空瓶だけがどんどん増えて、気の置けない男同士の宴は果てし無く続き、時は既に深更を迎えてしまっている。

いきおい、次の日の田中盛重はひどい二日酔い状態で見合いの席に臨まざるを得なかったが、そこで対面した振り袖姿のお相手は写真以上に美しくかつ愛らしくもあった。

それは、その人生観すら変えてしまうほどのものであったらしく、しかもその相手は未だに彼を慕って先生と呼んで憚らない。

結果は推して知るべしであっただろう。

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  1. 2008/06/01(日) 16:35:12|
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