日本大好きじいさんの落書き帳

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告|
  3. トラックバック(-)|
  4. コメント(-)

自立国家の建設 138

 ◆ 目次ページに戻る

その夜の土竜庵では、国王を迎えて二人だけの作戦会議がひっそりと始まっていた。

ここで言う二人とは無論新田源一と国王のことであり、そこにはいささか緊張気味に手料理を運ぶ新田夫人の姿があったが、彼女にして見ればときがときだけに、いよいよ陛下の胸の内を垣間見ることが出来ると思ったからに他ならない。

酒肴の用意を充分整えてから一旦別室に引き下がりはしたが、乳飲み子を寝かしつけながら想うことは今さらながらさまざまだ。

何しろ陛下は、最初から捕捉していらした船に関しては、ひたすら追尾するばかりで未だに攻撃の気配すらお見せにならず、そのことに対して少なからぬストレスを感じてるヒトも多いのに、その船が今現在も着々と接近中なのだ。

その船が旅立ってから百年以上経ってることも判って来てるから、最近ではその船のことをドリフター(漂流者)と呼ぶ人が増えたけど、こっちから言わせれば漂流者どころか侵略者そのものなのだ。

ドリフターの居住区域には、十万余の異星人が私たち地球人とそっくりの暦と時間単位を用いて生活していて、しかも自分たちのことをロマイオイ(ローマ人)と呼んでいるらしく、現に公用語はギリシャ語だって言うし、ローマ人って、ほんとにあのローマ人なのかしら。

実際DNA鑑定でも私たちと同じ「人類」だって言うし、だとしたら、異星人どころか地球人そのものじゃないの。

最近の話では、その「ローマ人」は壮年男性の構成比率が極端に小さくて、しかもその壮年男性の多くが戦闘員として戦艦の方に搭乗しているとされているところに持って来て、その戦艦が未だに発見すら出来ていない。

その行方が、杳として知れないのである。

尤も、見つかっていれば、ほとんどの問題はすぐに解消してしまう筈なのだ。

見つけさえすれば一瞬で粉砕しちゃうことも、当分近づけないような遠くにまで追いやってしまうことも簡単だって聞いてるけど、それが見つからないからみんな困っているのである。

居場所が知れない以上いつどこから現れるか判らない上に、丹波に接近すれば成層圏の外から無数のタカミムスビの矢を飛ばして来る筈で、各国共にそれが一番の頭痛の種なのだ。

そのタカミムスビの矢は恐らく一割も打ち落とせないだろうから、そのほとんどが地表に到達してしまうことになるし、一旦そうなっちゃったら、地表付近をマッハ二十を超える猛スピードで暴れまわる筈で、一般の国ではほとんど対抗手段が無い筈だから、結局敵のやりたい放題になっちゃって、国民が皆殺しになっちゃうと言って心配しているのである。

しかも相手にとって地上の人間は全部敵ばかりだから、それこそ見境い無しに片っ端から攻撃して来るだろうって言ってるし、一旦地表付近の闘いになっちゃったら最後、米英仏なんかが言ってる戦術核だって、まるっきり使えなくなっちゃう筈なのだ。

現在ほとんどの国が相当な避難設備を地下に設けてるらしいけど、収容能力にしたって国民の一割以下だって聞いてるし、それだっていきなり襲われれば逃げ込む隙さえ無い筈だから、日本なんか本格的な地下施設は造らないで、ひたすら迎撃あるのみだとされてるのに、不思議なことに巷では反戦運動家とか言う人たちがやたら大騒ぎらしい。

その人たちは迎撃方針を捨てて全て話し合いで解決するべきだと主張して、東京でデモ行進までやってるみたいだけど、テレビなんかでしきりに反戦を叫んでる人の見解を聞いてると、実態を誤解しちゃってるみたいでおかしな話ばかり飛び出して来るのである。

そりゃあ話し合いで解決出来ればそれに越したことは無いんだけど、じゃあ、何時(いつ)どうやって話し合いするんだって聞かれれば返答にも困るでしょうに。

中には、敵は丹波の資源を漁りに来るんだから、降伏して欲しいだけ献上すれば良いって言ってる人までいるけど、その人にしたって自分の全財産を真っ先に差し出すつもりならまだしも、自分の物は一切献上する気は無いらしいし、いざ降伏して武装解除されちゃってから、日本の領土を全部よこせって言われちゃったらどうするつもりなんだろう。

それに、降伏したら今度は異星人の支配を受ける身なんだから、その命令で徴兵された挙句、ほかの国と闘わされる羽目になっちゃうかも知れないんだし、降伏したからと言って戦争を回避したことにはならないのである。

結局、具体的な対応策なんてなんにも無いくせに、口先だけで戦争反対を叫んでるとしか思えないのだ。

戦争反対を叫んで見せれば攻撃されないとでも思ってるのかしら、ばかばかしい。

第一陛下からすれば、その相手とは十年以上も前から戦争中なんだし、一方的に襲撃して来た相手と今さら武器を捨てて話し合いだなんて、あまりに非現実過ぎてただただ笑っちゃうしかないのである。

とにかく世間にはさまざまな声があり、敵情報についても真偽ない交ぜていろんな説が飛び交ってるみたいだから、そのあたりの情報を開示するにあたっては、その真偽を確認した上で慎重に取捨選択するべきだろうし、今頃陛下と主人が額を寄せあってひそひそやってる筈だけど、酒の肴のこともあるからあんまり放っておくわけにも行かない。

台所でさっと一品用意してその部屋に戻って見ると、今しもテーブルの上に窓の月が店開きしていて、モニタに映し出されるドリフターの居住区の風景に改めて見入ってしまったのである。

陛下が潜入させたD二が捉えた映像だとは思うけど、カメラはいま雲間から下界を眺めていて、これがまた本当に鮮明な映像で、もう少し高度を下げれば、きっと大空を飛び回る鳥の姿だって見えるに違いない。

その居住区と言うのは長さ百キロの円筒形をしていて、半径が五十キロほどあるそうだから、その円筒の内周面積は概ね三万平方キロ以上になるし、しかもそれが人工太陽の制御によって昼夜のコントロールまでなされていると聞けば、これだけのものを作ったパワーには誰にしても驚嘆せざるを得ないだろう。

しかも、その七十パーセントほどが陸地を形成していると言うのだから、少なく見積もっても二万平方キロ以上の陸地があることになっちゃって、もうそれだけで相当なものなのだ。

何しろ二万平方キロと言えば、地球時代の四国全土よりまだ大きい上に、そこには山や川や湖があり、小高い丘どころか二千メートル級の山まで聳え立ち、豊かな森林地帯は勿論かなりの規模の草原まであると言うのだ。

空には雲が流れ、遠くの方では今も雨まで降らせており、山岳地帯に降った雨水もやがて伏流水や河川となって平野部へと駆け下り、遂には小さな「海」にまで流れ込む。

はるか上空に数多く輝いてる人口太陽が、その「海水」を暖めて蒸発させ、そして雲を呼んで地上に豊かな恵みを齎してくれるのだ。

その平野部には複数の都市があり、それぞれの都市は城壁こそ持たないものの、灌漑設備を縦横に巡らして農業は勿論商工業もそれなりに営まれていて、居住区の自給体制をそこそこに支えているとも聞いた。

現に眼下の牧草地ではのんびりと草を食む牛馬の群れが見えており、豚や鶏にしてもたくさん飼われている筈なのだ。

最大のエネルギー源はPME発電による「電力」であり、それらしい発電所が各所にあるって聞いたけど、一部のものは久しく停止状態にあることから、どうやら全てが順調に動いているかまでは疑わしいとも聞いてるし、いくら精妙なリサイクルシステムを持っているって言ったって、いつかは資源そのものが枯渇してしまうに違いない。

だからこそいろんな資源を奪いに来るのだろうが、前回この星から奪って行ったと言う大量の鉄鉱石なんかも、船のどこかに積み上げられてる筈だし、今度もまたいろんな資源を虎視眈々と狙っているに決まっているのだ。

とつおいつしながらモニタに見入っていると、今カメラはある都市の上空から急激にズームして地上付近を大きく映し出し、そこで暮らすローマ人の姿を数多く捉えて見せてから、やがて市街地の裏山の風景を接写し始めたが、カメラが移動するに連れて実に奇妙なものを捉えてくれたのである。

それは、少なくとも「ローマ人」たちにとってはまったく不要の物であるばかりか、本来あってはならない筈のものなのだ。

「これは・・・。」

私も驚いたが、主人などは身を乗り出して声をあげてしまっている。

「はい。」

それは高さ三メートルほどの古色蒼然たる白木の鳥居であり、額どころか額束(がくづか)すら具えていなくて、その結界の向こう側におわす筈のものの比定こそ許してはいないが、小振りながらもその形状だけは日本の神社で見かける神明造りのものと概ね大差が無い。

(筆者註:額束(がくづか)とは鳥居の上部中央にあるもので、通常ここに神社名などを書いた額を掲げることが多い。)

カメラは鳥居をくぐって鬱蒼たる木立の中を五百メートルほども細道を登り、やがて一際開けた台地に出たが、数棟の小屋を両側に見ながらなおも行くと、それははるかな前方に忽然と姿を現した。

木立に囲まれながら鎮座していたものは、正面から見る限り横幅が百メートルを超えようかという巨岩である。

「ふーむ。これは、まるで磐座(いわくら:古代の日本において、しばしば神の御座所と看做されて崇められた巨石のこと)を見るような眺めですなあ。」

高さ二十メートルほどもあろうか、それはそちこちが苔むして、見ようによっては傲然と居座っていると言えなくもない。

「そう、私もそれを感じました。」

「何かしら、畏れさえ感じてしまいますなあ。」

「まったくです。」

「最近の発見でございますか。」

「いえ、この磐座自体はかなり以前に発見しておりまして、ご覧の通りの景観でもありますから詳しい探索は手控えておったわけですが、実は問題はこの内部にあったのです。」

「内部・・・ですか。」

今カメラは巨大な自然石の裏側に回り込み、鬱蒼たる樹間を縫うようにして進んで行き、やがて巨石の下部に口を開いた洞穴へと入って行く。

「人工の隋道かと思われます。」

「ほほう。」

その入り口に通じるように草木が踏みしめられて細い通路が出来ており、しかもその洞穴は、かなりの大柄な人間でさえ両手を広げたまま楽々と入って行けるほどの大きさを具えていたのである。

洞穴に入ると数メートル先は文字通りの暗闇であり、モニタの画面は煌々とライトが灯される中を進み、直線で五十メートルほども行っただろうか、五・六坪ほどもある石室へ行き当たって前進を止めたようだ。

天井はおろか床も壁も全て見事な平面を保った巨石であり、かなり丁寧に掘削されたものであることを物語っており、造作した者の真摯な仕事振りを想わせて已まない。

カメラはその石室の内部を舐めるように映し出していたが、やがてその突き当たりの壁際に座す一人の男性の姿を明瞭に捉えて見せた。

「つい最近の発見でございました。」

陛下が小声で注釈を加えて下さったが、今ライトに浮かび上がったのは、粗末な供物台を前にしてベッドのような形状の石に座した敝衣蓬髪(へいいほうはつ)の一老人の姿である。

深い年輪を思わせるその顔に髭は無く、その目はまったく閉じられたままで、両手を膝に置いたまま真正面を向いて身じろぎ一つしていない。

「ほほう、一見モンゴロイドと言うか日本人のようにも見えますな。」

それは、日本の田園地帯で鋤鍬を手に長年の風雪に耐え抜いて来た農夫のような風貌だと言って良い。

「かなりくたびれてはおりますが、小袖の着物に軽杉(かるさん)風の袴を着けております。」

それが事実であればそれこそ日本人独特の風俗に違いないのだが、現に足首からふくらはぎにかけて脚絆(きゃはん)を巻いてるようにも見えなくも無いのである。

「では・・・。」

今、主人が陛下の目の奥をじっと覗き込んでいる。

「はい。」

陛下も、それを日本人と認識しておいでなのだ。

「亡くなられておいでなのでしょうな。」

老人は、先ほどらい微動だにしていないのである。

「いえ、ヒューマノイドでございました。」

相変わらず陛下は、淡々とした口振りだがことは重大だ。

「えっ。」

「まったく機能を停止してしまってはおりますが。」

「ほほう。」

「エネルギー源が消耗し尽くしてしまったものと思われます。」

「なるほど。」

主人の方は、ただただ感心するばかりだ。

 ◆ 目次ページに戻る
スポンサーサイト


  1. 2008/07/30(水) 11:31:55|
  2. 妄想小説 主権国家|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:0
<<自立国家の建設 137 | ホーム | 自立国家の建設 139>>

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://unclejim.blog4.fc2.com/tb.php/442-61493cc0
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。