日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 139

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「現在、ダミーを準備しておるところです。」

このヒューマノイドの替え玉のことを仰っておいでなのだろう。

「なるほど、敵さんに気付かれることなく接収されるわけですな。」

製作中のダミーが出来上がり次第、入れ替わりにひっそりと「接収」すると言う意味に違いない。

「鋭意作業中ですが、ウェザリングに手間取っておるところです。」

ウェザリングとは、模型などの工作過程で、経年劣化に伴う汚れや風化などの表現を作品に加える技法らしいから、要するに、新しいものをわざわざ古く見せる技法のことなのだ。

「ぴかぴかの新品なら仕事も簡単なんでしょうな。」

「あはは、何せ朝夕見回りに来る者がおりますから。」

「ほほう、どう言う意味の見回りなんでしょう。」

「ローマ人たちはこれをヤサウェと呼び習わしておりまして、どうやら、信仰の対象としておるようです。」

現にそのヤサウェの前には供物台ばかりか、その上には数個の食器まで見えているのである。

「ヤサウェ・・・・ でございますか。」

「はい。」

「どう言う由来なのでしょう。」

「それも、これからご覧いただく場面で、おいおいご理解願えるものと思います。」

「しかし、彼等の奉じているのはいわゆるギリシャ正教だと伺っておりましたが。」

各都市部には、それらしい聖堂が現にあるのである。

「その通りです。」

「それが異教を奉ずるなど・・・・。」

「しかし、現に鳥居も存在しておりますし。」

「なるほど、あれはどう見ても鳥居ですな。」

「あれを見て鳥居じゃ無いと言う日本人はいないでしょう。」

「たしかに・・・。」

「では、次をご覧いただきましょう。」

「判りました。」

カメラは今、ヤサウェの眼前で右に折れ、襖二枚ほどの大きさの四角い穴を潜(くぐ)り抜けたところだが、驚いたことにそこには別のもう一部屋が姿を現したのである。

やはり五・六坪ほどのものか、壁のそちこちに八寸角ほどの真四角の穴が穿たれていて、左手に木製のベッドがあるだけの実に殺風景な部屋なのだ。

「いかがでしょう。」

「この壁の穴は、きっと灯りを灯すためのものでしょうな。」

「はい、PMEタイプの電灯を置いたようです。」

カメラが移動してその穴の一つを映し出す。

「ほほう、大型の懐中電灯のような形をしてますな。」

「幸い、一つだけ残っておりました。」

「やはり、そうとう古いものでしょうか。」

「機能は失われてはおりますが、軽く五百年は経っているようです。」

「五百年・・・ で、ございますか。」

人類史における真空白熱電球の発明は、十九世紀の後半まで待たなければならないのは確かだが、上空で数限り無く輝いている人工太陽のこともあり、少なくとも今さら驚くようなことではないのである。

尤も、彼等の王宮や市街地などの灯りには、電灯などほとんど見受けられない情景ではあるのだが。

「ところが、こちらのベッドのほうをご覧下さい。」

「なるほど、こっちの方は又ひどく新しいものに見えますな。」

その木製のベッドは未だ木目も鮮やかに見えているほどで、しかも、形ばかりのものではあったが簡素な夜具まで具わっており、これも又比較的新しい。

「新調して未だ間が無いのでしょう。」

「ほほう、では・・・。」

「はい、ローマ人たちが作り直したものと思われます。」

「では、このベッドに臥される方も信仰の対象だと仰る・・・。」

「様子から見まして、ヤサウェより、むしろこちらの方が上位にあるものとして扱われている模様です。」

「そのかたとはどのような・・・。」

「少なくともローマ人にとっては、救世主のような存在ではあるでしょう。」

「救世主・・・でございますか。」

「ここの番人たちからは、オヤカタサマと呼ばれております。」

「オヤカタサマですか。」

あの鳥居と言い、ヤサウェの装束と言い、目の前にこれだけの材料が転がっているのである。

そこから類推していっても、それは日本語の「お館さま」に通ずると思わないほうがどうかしている。

「はい。しかも、彼等の記録などからいたしますと、このドリフターも戦艦も本来の所有権はそのオヤカタサマにあるようです。」

「ほう・・・。」

「それを、あの紋章まで刻んでローマ人に与えたと言うことになりましょう。」

「ずいぶん太っ腹な方だったんですな。」

「あははは。」

陛下は、新しい肴に箸をおつけになりながら豪快に笑っていらっしゃる。

「そう致しますと、ヤサウェはどのような立場に・・・。」

「言ってみれば、ヤサウェはオヤカタサマの直臣(じきしん)であって、あるじの寝所を今も警護していると言う構図でしょうか。」

「直臣でございますか。」

「そうだと思います。」

直臣とは言っても、勿論ヒューマノイドなのである。

「ところで、そのオヤカタサマがこのドリフターや戦艦を作ったのは、五百年も前の話でしたよねえ。」

「少なくとも五百五十九年は経っているでしょう。」

「五百五十九年前でローマ人・・・、ええと現在が二千十二年と言うことは・・・・千四百五十三年ですか・・・・。そう致しますと、やはりビザンチンの滅亡・・・・。」

ローマ人たちが都市の中の都市と呼んだコーンスタンティヌーポリスが、オスマン帝国の攻撃によって陥落したのが千四百五十三年のことで、これを以てさしもの千年帝国ビザンチンも滅亡したことになっていて、それが五百五十九年前の出来事なのだから、国王陛下の仰ってる意味も自ずと知れてくる。

「それです。」

「では、あのコーンスタンティヌーポリス陥落の折りに、ローマ人たちが揃ってこの船に逃れたと仰る・・・。」

「はい、オヤカタサマのお慈悲によってそれが許されたと言うのです。」

落城を目前にして命を救われた以上、文字通りの救世主であったろう。

「と言うことは、ドリフターも戦艦もそれ以前はずっとオヤカタサマの専用機だったわけですな。」

「だと思います。」

「では、あの鳥居にしても、ローマ人たちが始めてドリフターに乗り込んだときには既に存在していたと・・・。」

「そのようです。その後幾たびか建て直されてはいるようですが。」

「そうすると、彼等は五百五十九年もの間、この大宇宙をさ迷い続けていることになりますか。」

「いえ、彼等の請いを容れたオヤカタサマがある惑星に新たな領土を割譲なすった筈ですから、ずっとそこで暮らしていた筈です。」

「ある惑星・・・。オヤカタサマの荘園・・・ですか。」

「はい。」

「やはりその星も、よほど良く似た自然環境を持っていたんでしょうな。」

勿論、地球や丹波に良く似た自然環境の意味なのだろう。

「はい。これも彼等の記録によれば、その名も惑星ネメシスとなっておりまして、この丹波からは恐らく十光年ほどの距離になろうかと思われます。」

「十光年・・・・でございますか。比較的近いことは近いですな。」

例えばこの丹波とかつての地球とでは数億光年もの距離があるとされており、それから比べれば十光年など物の数ではないのである。

とは言え、十光年とは光速で航行しても十年かかる距離のことなのだ。

「はい。」

「そう致しますと、オヤカタサマと言うかたは、例のコーンスタンティヌーポリス陥落の前からそこにいたことになりますな。」

「ヤサウェを連れて、その地に滞在してらしたことは確かです。」

本来なら最大の敵かもしれないその人物に対して、微妙に敬語まで用いておられる。

「そして、ローマ人たちは絶望的な戦況の中でオヤカタサマに救助されたことになりますな。」

当時のローマ人たちが数十倍にも及ぶ大軍に包囲されて、非常な苦境にあったことだけは動かない。

「彼等自身の記録にそうありますから。」

「そして、一旦ドリフターに退避したのちに惑星ネメシスに移住して行ったと。」

「はい、ドリフターの中でローマ人同士の激論が闘わされたようではありますが。」

「激論・・・で、ございますか。」

「はい、当然その後の方針に関する激論です。」

「その結果のネメシス移住だったのですね。」

「はい、その過程で、現に、移住先の候補地としてネメシス以外も多数実見したようですし、彼ら自身の選択だったと書いてありますから。」

「ネメシス以外も・・・でございますか。」

「様子では、北米大陸も見たようです。」

稀代の山師クリストファー・コロンブスがカリブ海のイスパニョーラ島を侵略して、おもちゃのような拠点を作ったのが確か千四百九十二年の筈だから、この話のローマ人たちの北米上陸はその四十年も前のことになりそうだ。

「ほほう。」

「尤も、原住民の抵抗にあって入植は諦めたようですが。」

「オヤカタサマは軍事的な支援はしなかったのですか。」

「一切しなかったようです。」

「流石のギリシャの火も役には立たなかったと言うわけですな。」

この「ギリシャの火」と言うのは、ローマ帝国のすごい威力を持った兵器として有名らしいけど、実際にどう言うものだったかまでは今以て不明だと言う。

「そのようなものは持たなかったようですよ。」

「ほほう。」

「その後、オーストラリアにも上陸したようですが、結果は似たり寄ったりだったと記録にあります。」

この当時のヨーロッパ人の世界地図には、オーストラリアもアメリカ大陸も未だ書かれてすらいないのである。

「そして、他の天体へも・・・。」

「はい、どの場所にも一瞬で到達したそうです。」

「一瞬で・・・。」

もう、間違いない。

そのオヤカタサマは、この国王陛下と同じような「能力」を持った「異能者」だったのだ。

「少なくとも、記録ではそうなっております。」

「では、衆議一決してネメシスへも一瞬で・・・。」

「はい。その後彼等の親族や友人などを、数ヶ月かけて五月雨式に移動させたと言う記録までありますから。」

「バルカン半島とその一帯からですな。」

バルカン半島とは、無論、落城したコーンスタンティヌーポリスがかつて繁栄を誇っていた半島のことだ。

「概ねそのようです。」

「ふうむ、その結果惑星ネメシスには新たなローマ帝国が築かれたと・・・・。」

「オヤカタサマの支援によって、極めて短期間に相当な規模になったとあります。」

「つまり、彼等ローマ人は、その後ネメシスで数百年もの長きにわたって時を過ごしたことになりますな。」

「少なくとも、彼等の記録ではそうなります。」

「そうしますと、彼等さえそのネメシスに撤退して行ってくれれば、とりあえず眼前の危機だけは回避出来ることになりますな。」

「ところが、そうも行かない事情があるようでして・・・。」

「ほほう。」

「これも彼等の記録にあったのですが、どうやら百三十年ほど前に、惑星ネメシスは稀代(きたい)の天変地異によって滅んでしまっているようです。」

「稀代の天変地異・・・、まるで我々の地球に起きたようなお話ですなあ。」

「このときにも、伝説のオヤカタサマが現れて危機の訪れを事前に知らしめ、少なくともそれを信じたローマ人を救ったとされております。」

「信じない者は、ネメシスと運命を共にしたと言うわけですな。」

「多くの者が救われたことは確かでしょう。」

「地上からドリフターへの移動など、例のシャトル便を使っても大事(おおごと)だった筈ですよねえ。」

「だからこそ、オヤカタサマの救いの手がいよいよ貴重なものになった筈です。」

「大量に・・・・、なおかつ一瞬で・・・。」

「それが肝心なところだと思います。」

「しかし、そのネメシスはどうなっちゃったんでしょう。」

「その後、昼の無いネメシスを見た者がいると記されているくらいですから、結局、滅んでしまったことだけは確かでしょう。」

「昼の無い世界・・・・。」

「はい。真っ暗な空のもと、燃える大地があったそうです。」

「真っ暗な空・・・・。」

「地上が、太陽の光を失ってしまったと言うのです。」

「まさか、単なる夜だったわけでは無いでしょうね。」

「彼等の記録には永遠の夜と書かれております。」

「いったい、何が起きたと言うのでしょう。」

「そこまでの記録はありませんが、ドリフターの中で又しても大激論になったそうです。」

「ほほう、又しても・・・。」

「当初は、ネメシスの上空に留まってしばらく様子を見るべしとする一派が優勢で、激しい争いまで起こったようです。」

「それは、そうでしょうな。」

「ヤサウェを介して下されるオヤカタサマのご託宣は、一刻も早くネメシスを諦めて、他の惑星を目指すべしとのことだったようですが。」

「その場合の他の惑星がこの丹波だったと・・・。」

「いえ、少なくとも第一候補は地球だったようです。」

「ほう。」

「しかし、ローマ人たちの方針はその後も定まらず、死人の出るような争いを続けた結果、オヤカタサマのお怒りを買ってしまったと書いてありまして、どうやらその後オヤカタサマがご自身の城に引き上げてしまわれたらしいのです。」

「流石のオヤカタサマも呆れちゃったんでしょうなあ。何しろ自らの運命を自ら決するどころか、殺し合いまでやっちゃってるわけですから。」

「まあ、そう言うことだったのでしょう。」

「つまり、ローマ人たちは見捨てられちゃったことになりますな。」

「しかし、ヤサウェだけは変わらずお残しになられた。」

「ほほう。」

「彼等はシャトル便を使ってその後もネメシスの地表を折に触れて観察していたようですが、当初燃えていた大地が今度は凍り始めたそうです。」

「太陽の光を失った地表が冷え切ってしまったわけですな。」

「今風に言えば全球凍結と言う現象でしょうか、一切が氷の世界です。」

「赤道付近もでしょうか。」

「無論です。しかもマイナス百度以下で、それもどんどん下がって行くばかりです。」

「そりゃあ、もうどうにもならんでしょう。」

「はい、その結果ようやく結論が出たようです。」

「彼等が結論を出すまでにどのくらい掛かったのでしょう。」

「二年ほど掛かったようです。」

「二年も・・・。」

「はい。そう言う経緯で、もはやネメシスには帰れないと言うことを彼等自身が自覚しておるのです。」

「では、新たに領土を獲得する以外に永遠に虚空を漂流し続けるほかに無いと・・・。」

「そう言うことになりますな。」

「それにしても、危機に当たって二度までも現れたオヤカタサマと言う人物は・・・・。」

「実際には、二度だけではないかもしれません。」

「ほほう、では・・・。」

「さまざまな推測が成り立ちますが、現段階ではあくまで推測の域を出ません。」

「お聞きしたいものですなあ。」

私自身、既にその材料に不足することが無いだけに、空想の世界が不遜なまでに広がってしまっており、それこそもっと伺いたい気持ちで一杯なのだ。

「推測は推測である以上外れているかもしれませんし、未だ口にしないことにして置きましょう。いずれヤサウェを回収して調べれば相当なところまで判明する筈ですから。」

「それはそうですな。」

あらあら、うちの主人ったらあっさり諦めちゃったみたいだけど、せめてもう一押し粘って見ればいいのに。

「それに彼らを撤退させるためにも、問題のネメシスの現在の状況も知って置く必要があるでしょう。」

「今でも全く判らないのですか。」

「十光年ほどの距離がありそうだと言う件にしましても、彼等の船の巡航速度から類推した結果に過ぎませんし、鋭意捜索してはおりますが未だに発見するには至りません。」

「考えてみれば、方角一つとっても全方位ですからなあ。」

確かにそうなのだ。

十三年前に一敗地にまみれて丹波を離れた彼等が、その後ネメシスの方角に去ったとは限らないのである。

詰まり、ドリフターの進行方向の後方延長線上にネメシスがあると言う保障など何処にも無いことになる。

「その位置関係に関しましても、ヤサウェが教えてくれるのではと。」

「なるほど。」

「その後の行き先を指導したのも、このヤサウェであることは確かのようですし。」

「なるほど、そのときはもうオヤカタサマは去ったあとでしたな。」

「はい。最早地球へは到底行く着くことは出来ません。」

「遠すぎますからな。」

何しろ地球は数億光年の彼方なのだ。

「丹波なら十光年ほどですし、ドリフターの巡航速度から見て、百年ほど辛抱すれば到達することが可能です。」

「百年・・・、すると船内で三世代から四世代を経ておることになりましょうな。」

「それ以上かも知れません。」

「ヤサウェ自身は丹波行きを決行してから、その後機能不全に陥ったと・・・。」

「ネメシスが滅んでから十年ほどで寿命が尽きたようです。ローマ人たちの記録では、オヤカタサマが次に現れるまでの眠りについたことになってはおるようですが。」

「と言うことは、ヤサウェはもう百二十年もあの姿のままで・・・。」

「そう、オヤカタサマのお帰りを待ちわびております・・・・。」

陛下は天井を見上げてどこかしんみりとした口調だ。

「ほんと、そうですなあ。」

「厳密に言えば、五百年以上待ち続けていることになりましょう。」

国王陛下は今静かに瞑目してらっしゃるけど、ここにもまたドリフターへの攻撃を躊躇わせる理由がありそうだ。

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  1. 2008/08/03(日) 18:50:40|
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