日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 150

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いずれにせよ、スフランツェスが中央政庁を置いている以上、この状況下でその周辺が静穏を保てる道理が無い。

灰神楽が立つような騒ぎの中で、既に相当な住民がその地を離れつつあるのだ。

現に、皇后自身が密かに王宮を脱け出して微行中と言う報告まで受けるに至っており、追っ手の掛かるのを予期してか随分遠回りの道筋を取ってはいるようだが、その目指しているところもおのれの実家では無くこの王家の里であるらしい。

尤も、実家などと言ってみたところで、もともとあって無いようなものだ。

そもそも孤児だった彼女が皇帝の目にとまってから、急遽養女としての体裁(ていさい)を整えただけのものであり、無論血縁者など一人もいないのだから、いざ時勢がこうなってみれば最早頼りにも何もならないのだろう。

本来、皇帝のみをその権力の背景として来た女性なのである。

その皇帝の死が顕れてしまっている上に、巧妙に利用してきたスフランツェスの権力基盤までが揺らぎ始めているのだ。

いや、揺らぎ始めていると表現するのは適切でないのかもしれない。

見ようによっては、既に危殆に瀕してしまっていると言って良いのである。

少なくとも、皇后はそう見た。

スフランツェスは遠からず政権どころか命まで失うと見たのである。

このまま王宮に腰を据えていれば共倒れになることは目に見えており、しかも聞くところによると、再び出現したと言うオヤカタサマが最強の王者としての片鱗を見せ始めている上に、あろうことか皇女が自らその臣下であると公言していると言う。

既に根無し草の身に戻ってしまった我が身に引き比べれば、顔色を変えてしまうのも当然のことだったろう。

ちなみに、彼女はスフランツェスの大逆の事実を知らぬまま、その皇帝就任を承諾したばかりか、自らがその皇后の座に就くことを条件に、近頃その求愛を受け入れる約定まで交わしてしまっている。

本来の夫たるべき皇帝が生還する可能性がゼロではなかったにもかかわらずだ。

際立って上昇志向の強い性格であるだけに、それはそれで当然の成り行きではあったろうが、かと言ってそのことまで漏れてしまえば、反皇后の動きが一段と激化するばかりだろう。

ことほど左様にさまざまな悪条件が揃ってしまっている上、例の皇女毒害に関する疑惑が未だに消えていないのである。

現に多種多様の情報がある。

内廷の女官たちの内輪話なども大量に収集してしまっているこんにち、さまざまな推測が成り立たないわけではない。

それによれば、当時の皇女は、未だ蕾の身とは言いながら、既に大輪の花を思わせる芳香を放ち始めていたことになり、皇后がそのことをひどく気に病んでいたことが窺えるのだ。

まさに栴檀(せんだん)は双葉より芳しと言うべきか、しかもその双葉は現王朝最後の血統を引いており、それは他に類を見ない。

既に傍流のそれでさえ、まったく絶えてしまっていると聞くだけに、その希少「価値」は言うもおろかだろう。

もとより、「ヒト」としての血統に本来の価値など無いに等しいが、ここで言う価値があくまで「政治的利用価値」のことを指す以上、激烈な政争のはざまでそのことが大きくものを言う可能性を秘めており、しかもその類希(たぐいまれ)なる芳香が、遠からず重大な意味を持ち始める予感があったらしい。

一方に甚だしい荒淫を囁かれるヘラクレイオスの存在が既にあり、その次代の権力者に対して非常な影響力を持ってしまう恐れすら抱いていたようだから、災いはその芽の内に摘んでおこうと考えたとしてもおかしくは無い。

自身が、その美貌を最大の武器として今の地位を手にした過去を持つだけに、栴檀の発芽を最大の脅威と受け止めたとしても不思議は無いのである。

現に、側近中の側近と言われたほどの高級女官が唐突に失踪している事実まであると聞いており、そこにも謎の一端が隠れていないとは限らないと見て鋭意捜索中ではあるのだが、結局真相は未だに藪の中だと言って良い。

それはそれとして、時にあたって我が主は、皇女に随身を望まぬ者の侵入を拒むと仰せであり、少なくとも、皇女に敵対する恐れのあるものなど、鳥居より内側へは一歩たりとも踏み込ませてはならないことになる。

既に神門の詰め所としてのものは勿論、神の馬場の北端付近にも癸(みずのと)型のポッドを以て「鳥居下の詰め所」と称する関所まで構えるに至っており、我が手勢が資格の無い者の通行を厳しく阻んでいる以上、彼女がその構えを破って鳥居をくぐれる可能性は全く無い。

但し、鳥居下の詰め所の南側にも丙(ひのえ)型ポッドの設置を多数予定しており、その収容能力がひたすら膨大であるだけに、その中に入ることまでは禁じてはおらず、あとは彼女自身の選択次第と言うことになるのだろう。

何しろ、王家の里への侵入を拒まれたからと言っておめおめと王宮に戻れば、裏切りを知ったスフランツェスが血相を変えて待ち構えている筈なのだ。

その心中を思えば、問答無用で剣を抜いたとしても少しの不思議も無い。

現に彼女が適わぬまでもと諸方に発した密使などは、一部とは言いながらスフランツェスの手に落ち、激烈な取り調べを受けた挙句容赦無く斬殺されてしまっているほどであり、追い詰められた野獣は、怒りと焦りのあまり何をするか知れたものではないのである。

ただ、皇后も並の女では無い。

妖艶極まりない風貌もさることながら、影では「妖怪」と呼ばれるほどに恐るべき権謀の才まで併せ持つとされ、あらゆる術策を弄して、内廷における並び無き権勢を十年の余も保ち続けて来た人物なのだ。

当然寵臣も少なくないから人手に不自由することも無く、宮廷を去るにあたっては、純金製の国璽(こくじ)は勿論、あらん限りのアスプロン金貨や宝石類を携え、男女合わせて五十人にも及ぶ扈従の者を従えていたが、派出した密使が多数に上った上、その後櫛の歯を挽くようにしてその数を減じ始めており、流石の妖怪も時勢の転変の妙を一際思い知らされつつあると言う。

とにかく、その行路は既に悲惨と表現するにやぶさかではない。

雨露を凌ぐだけで精一杯のところだ。

結局妖怪は落ち合う先を神門と定めて一行を二手に分けたようだが、その本隊にしてからが既に十人にも満たない人数でここから三十キロも離れた地点で彷徨っていると言うから、追っ手に追われて進退窮まったと言うべきか、このままではその数も更に減じてしまうことは確かだろう。


しかし、忙しい。

主から命じられた仕事が際限も無いのである。

もとより、最善を尽くしてはいる。

殊に最も肝心な領域分離に絡む作業では、既に物理的作業の多くを終えてしまっているばかりか、その結界付近には水も洩らさぬ警戒線まで布いて見せる予定でいる。

無論主(あるじ)の許しを得た戦略の一環ではあるのだが、その警戒線に沿って展開して見せる「可視兵力」は、騎馬の者だけでも一万、徒歩立ちの兵に至っては百二十万を超える壮大なものであり、警戒線の総延長が一万二千メートルに過ぎないことを思えば、その配備が如何に潤沢なものかが判るだろう。

単純に言って、一メートルに付き百人以上にも及ぶのだ。

しかも、その上空には更なる予備兵力まで大量に待機させ、緩急に応じて自在に姿を現して巨大な示威行動を採らせる手筈であり、良くも悪くもその効果は絶大なものになる筈だ。

ときにあたって今次の敵対勢力たるや、近代兵器をとうに失ってしまっている上に、首都圏において組織的且つ集中的に運用が可能な兵力に至っては、最大に見てさえ千にも満たないのである。

その上、その「千」に含まれるべき帝国軍たるや歴々たる国軍であって、少なくとも個々の兵士はスフランツェスの家臣ではないのだから、今となってはその指揮に従うかどうかも大いに疑問であり、百歩譲って遠方の拠点に分散している手勢を全て駆り催し、兵力の集中に百パーセント成功したにしても、到底三千を超えるまでには至るまい。

しかも、首魁の求心力が急速に失われようとしている今、地方拠点の勢力にしても衰亡の一途を辿らざるを得ない運命であり、あれこれ勘案すれば、スフラツェスの握る手勢はどう贔屓目に見ても数百単位に過ぎないことになり、それに対するにこれほどの大兵力など如何にも過剰と言うほかは無いが、主から頂戴するご命令には、無意味な流血を可能な限り忌避すべき旨が強く込められており、闘わずして敵の戦意を挫くに足るほどのものを、思うさま見せ付けることを以て最上策としていて当然だろう。

とにかく、敵対勢力が戦意を喪失してくれさえすれば、少なくとも戦闘には至らずに済むのである。

その分だけ多くの民を救うことが可能となる道理だ。

既に「作業」は粛々と進み、基礎工事に用いた膨大なベイトンが乾き始めている。

今夜中には兵員用以外のポッドまで殆ど配備を終えてしまう見込みであり、「神門の詰め所」と「鳥居下の詰め所」に配備する守備兵力にしても、それぞれ五千づつを予定していることから、少なくとも正面から敵対行動をとって来るほど愚かな者は出ないだろう。

また、全ローマ人に対する検疫作業も重大な課題となっていることから、それを全うするためにも全員の捕捉と追跡は欠かせない作業であり、全域に渉って配備済みのG四の働きが一段と待たれるところではある。

その後の分析作業にはなお旬日を要すると見ているが、それすらも全体の作業から見ればごく一部でしかない上、主(あるじ)の心積もりで行けば、全ての準備作業を一ヶ月ほどでやりおおせる必要があるだけに、何もかもが一刻を争う状況だと言って良い。

しかもローマ人たちが如何なる行動に出ようとも、それが重大な結果を誘引すると認められれば、その全てに対応することが求められるだけに、諸方から入る通信が如何に煩瑣なものであろうとも、おろそかにすれば忽ち破綻を招く恐れがある。

破綻のあれこれもさまざまだが、中でも主(あるじ)の最も恐れるものは、言うまでも無く大規模な流血騒動の勃発にほかならない。

実際各現地からは危機的状況を想起させるような報告が入り始めており、それによれば目下旧ウェルギリウス領に対する示威行動の真っ最中だと言う。

俄然、ウェルギリウス家の遺児が動いたと言うのだ。

追捕の目を遁(のが)れて逼塞(ひっそく)していたアンドレアスは、未だ十四歳の身でありながら、例の早馬の急報に接するや俄かに奮い立ち、僅かな遺臣団を引き連れて勇躍その旧領に踏み込んでおり、その本城こそスフランツェス方に押さえられてはいるが、そこから十キロほど離れた廃城に腰を据えて盛んに檄を飛ばした結果、相当数の旧臣を糾合することに成功しつつある模様だ。

何しろその少年は、この居住区全域の滅びを目前に控え、オヤカタサマの出現とスフランツェスの大逆と言う願っても無い好材料をリュックサックに詰めているのだ。

更には、総主教の救出と言う衝撃の新事実まで電光のように伝わった筈であり、スフランツェス方の凋落は目に見えており、自然、馳せ参ずる者が少なく無いのだろう。

その糧秣にも事欠くほどの人数が集まり始めているだけに、このまま放置すれば、本格的な衝突が起こって大量の血が流れ、新たな憎悪の連鎖が始まってしまうのだが、その対応一つとっても主(あるじ)の裁断を仰ぐ必要が生じていると言って良い。

何せまったく歯がゆいことに、現地人同士の紛争の場合、軍事的な支援に関しては極めて抑制的な思考法をお採りになる主なのだ。

大量の流血が目前にありながら、こればかりは、実際に伺ってみるまでは予想もつかないことなのである。

また一方のカラヤニス城でも、さこそと思わせるような変化が起き始めていると言う。

何しろ、このカラヤニス家には、殊にウェルギリウス家が滅亡してからと言うものは、不遇の皇女にとって唯一の庇護者であり続けて来たと言う揺るぎの無い実績がある。

それこそ、一家の存亡を賭してまで支援してきたのである。

当然、皇女に対して巨大な影響力を有する筈であり、そのことを重く受け止める者が急増しているらしく、皇女に対して帰服を願い出る者がその仲介を願って城門を叩き始めていると言い、一段と強気になったステファノプロスが、アンドレアスに大量の兵糧を送る決意を固めた上に、いよいよ城内の女どもを送り出す準備に入ったと聞く。

送り出す先は無論王家の里に他ならず、荷駄を集め護衛の士を多数選抜中だと言い、下働きの女どもまで含んでいるようだから、女どもの総数も五十人を下回ることは先ずあるまい。

とにかく相当数の女性が出発の準備に掛かっていることは確実であり、中でも老カラヤニスの孫娘のマリレナの場合、カラヤニス親子からオヤカタサマのお世話係と為すべく万端の準備が厳達されているだけに、家宰のステファノプロスとしては否も応もない。

尤も、マリレナ自身にそのことを嫌っている風は見えず、それどころか暴漢から救われた折りの颯爽たるお姿に接して以来、かえって心を惹かれている気配さえあると言うのだから、おふくろさまから受けている密命の内容から言っても、大いに歓迎すべき成り行きだと言って良いだろう。

そもそも、その密命の概要によれば、皇女を以てそのキャスティングの主役の座に据えてあった筈なのだが、残念ながら主(あるじ)の意図は全くそこには無い。

それどころか、一人前の女性とすら見ておられないご様子だ。

これでは、おふくろさまのミスキャストだと言われてしまっても仕方が無いだろう。

尤も、そのキャスティングの脇役として例の妖怪の名があったことも事実であり、これをしもオヤカタサマ次第と言うほかはないのだが、その点での思し召しなど窺い知ることも出来ない。

そのオヤカタサマご自身は物資調達のために他の荘園と忙しなく往来しておられ、しかもおふくろさまの元へも立ち寄られたこともあって、今では丹波世界に関する最新情報までその詳細を得るに至っている。

尤も、丹波世界の実態がどうあろうと、オヤカタサマは、形式的なものとは言いながらローマ人の降伏の願いを既に受け入れられたのだ。

取りも直さず、秋津州とローマ帝国の戦争に限れば終わったことになるであろう。

百歩譲ってスフランツェス政権が命脈を保ったにしても、彼等は丹波に近付く手段すら失ってしまっており、仮にその手段を改めて獲得し得たにしても、人類社会を震撼させるに足るほどの攻撃力は二度と手にすることは無いのである。

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  1. 2008/10/08(水) 14:26:18|
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