日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 161

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いずれにせよ、やがては秩序の再構築が求められる時代が来るのだろうが、今はそれどころの騒ぎでは無い。

現状は各国が生き残りを賭けて必死に競い合っている状況であり、それはそれぞれの個人レベルにおいても斉しく言えることなのである。

秋津州国内においても自己実現を期して膨大な外国人が懸命に競い合っており、見渡せばジェシカ・ペースと言う一米国人にしてもそれは同様であり、只々待ち続けて既に五ヶ月の余も時を費やしてしまっているだけに、その胸中は察するに余りある。

待ち人は絶えず戦場に身を置いていると耳にして来ており、そのことを以て唯一の慰めとはしていたのだろうが、その間の四ヶ月ほどはじっと耐えたと言って良い。

ひたすら待ったのである。

日本語会話とダンスのレッスンに明け暮れる毎日であり、たまに着飾って街に出ることはあっても、ほかにはこれと言ってすることが無いのだ。

バックダンサーを勤めるべく配備されていた数人の女たちは、己れとの人間関係に蹉跌を生じて持ち場を離れてしまっており、豪華なスィートで過ごす日々は文字通りの孤独である。

やがて、聞こえて来るニュースで、異星人の攻撃が回避されたことを知った。

永らく喧伝されて来た宇宙戦争は、その待ち人の奮闘の結果行われないことが確定したのだと言う。

しかし、指揮官のタイラーは只々待てと言うばかりだ。

全ては自ら望んだ任務だとは言いながら、無聊(ぶりょう)をかこつ中でその胸中にはさまざまな嵐が吹き抜けて行ったことだろう。

大和商事からは例の誕生祝い以来音沙汰無しであり、窓の月を用いて見通しを尋ねて見ても、待ち人は相変わらず繁忙の極みにあると言われるばかりだ。

それはそうだろう。

通常のニュースを見ていれば、そのくらいのことは子供にでも判るのである。

ヒトをバカにするのもいい加減にしろと言いたくなるが、愚痴を聞いてくれる相手すらいないのだ。

身の回りの全てが膠着する中で女は動いた。

指揮官に一時帰国の申し出をしたのである。

そして許可が出て幾たびか母国の地を訪れるようになり、その結果、その身にもようやく変化の風が吹き始めていると言って良い。

無論、女は今も傭兵の身であり、しかもこの作戦には莫大な公金が投じられているのだ。

持ち場を離れることに障害が無いわけでは無かったが、実際には指揮官から制止命令を受けるどころか、そこそこの活動資金まで受け続けていたこともあって、谷間の百合と呼ばれる己れの立場に危機感は薄い。

むしろ問題は大和商事の迫水弥寿子(やすこ)の方だと感じており、万一ノーを突きつけられれば諦める覚悟でいたようだが、問い合わせたところ迫水にその気配は全く無く、それもこれも獲物の多忙によるものと解釈するより無かったろう。

結局、指揮官から母国での滞在期間を三日以内に制限されただけで、女はレディと窓の月を携えたまま数回にわたって帰国を果たしており、その目的にしてもストレス解消と言う側面も無いではなかったが、その本筋はかつて辛酸を舐めさせられた母国に錦を飾ろうとするところにあり、それはそれで致し方の無い面も無いとは言えまい。

実際女は口にするのも憚られるような少女時代を送って来ており、その胸はひどく痛めつけられてしまっていたのである。

自業自得と言う見方も成り立たないではないが、その胸に毒の矢を放つ者は無数にあった筈であり、女にして見れば立つ位置が変わった今こそ一矢を報いたい。

何とかして、溜飲を下げたいのである。

真っ先に的に掛けたい標的はとうに定まっており、その所在確認や身辺調査にしても然るべき業者からその報告まで手にしているのだが、折りも折り最初の帰国時に、ある人物に出会うことによってその後思わぬ展開になり始めていたのだ。

その男の名はジェフリー・コーエン、アポの電話に接した際、大規模なファンドを率いていると聞き、周囲に尋ねて見ると驚いたことにホテルの若手従業員ですらその名を聞き知っており、そればかりか実に評判が良いのである。

彼のファンドは驚くような高配当を常に謳い、現にそれを実現し続けていることで有名だと言い、誰に聞いても、その辺に転がってるファンド・マネージャーとは別格の存在らしい。

しかもそのファンドに投資しようとする場合厳格な審査を要し、その排他性こそが独特のステイタスの源となっている上、一旦顧客となればさまざまな意味で特権的なもてなしを享受出来るのだと言う。

その上、コーエン自身が只の人ではなかった。

屈指の大富豪であると同時に著名な慈善事業家であり、自然政財界に縦横の人脈を誇り、SEC(米証券取引委員会)の幹部連とも深い付き合いだと言うのだから、何処から見ても証券界の重鎮と言って良いほどの人物なのだ。

女は、ニューヨーク滞在中も、ワシントンの払いだとは言いながら一泊数百万ドルのスィートに逗留している上、自身そこそこの資産を持つ身であるだけに、てっきり投資を勧められるものと思ったようだが、いざ会って見ると、これが意外なことに、週百万ドルの報酬を以て顧問契約を結びたいと言う話なのである。

契約金の二千万ドルの授受を前提に、その本社ビルには直ちに専用のオフィスと秘書が用意され、しかも実際に出勤する必要は全く無いとされた上に、外部から直接問い合わせがあった場合にだけ、顧問契約の実在性を肯定してくれさえすればそれで良いと言う。

信じ難いほどの好条件なのだが、何しろ、女はかつての吹けば飛んでしまうような貧寒たる不良少女では無い。

今では、秋津州国王の専属ダンサーとしての存在性を密かに囁かれるに至っており、現に国王との親密な関係にまで言及して、そのことを以て稀に見る情報源と捉える業界もあり、その典型がコーエンの身を置く世界である。

国王の政治行動はおろか、その出荷情報が、穀物や鉱物資源は言うに及ばず、PME等の工業製品においても市場の注目を浴びるものであるだけに、この契約は投資家にとっても小さな材料である筈が無いのだ。

このような状況下で為された申し入れである以上、要は広告塔として名前を貸せと言う話であり、たったそれだけのことで黙って毎週百万ドルもいただける上に、日陰の身が有名企業の顧問の肩書きを大威張りでぶら下げて歩けるようになるのだから、その点に限れば決して悪い話では無いのだが、現実には二の足を踏まざるを得ない事情が一方にある。

待ち人に対する接遇に関しては出勤する必要が無い以上問題は無い筈だが、ワシントンの立場に立てば二重契約の謗りは免れない上に、己れには汚れ切った過去まであり、それも一度や二度のことでは無い。

度重なる窃盗や売春の検挙歴が消えてなくなってくれるわけも無く、一たびそのことが喧伝されるような事態になれば、そのファンドの信頼性が大きくダメージを受けることによって、巨額の賠償を請求されてしまうことさえ予想されるのだから、よほどのバカでも無い限り慎重にならざるを得ないのである。

現に、女は顧問契約に付いては頑なに固辞してしまっている。

表向きの理由は、ある方の逆鱗に触れる恐れありとしたが、コーエンから見れば、そのある方が誰のことを指しているかは言うまでも無いことなのだから、このことが女の価値を一層高める効果を発揮した筈であり、ここにも強かな女の計算が働いていたことになるのだ。

いずれにしても、女は契約を固辞した。

固辞はしたが、コーエンとの交友は続いており、無論それは双方の利益に繋がるからに他ならない。

少なくとも、コーエンが秋津州との接点があるかの如く装うことは可能であり、たったそれだけのことでファンドの信頼性が飛躍的に向上し、いよいよ投資家の投資意欲を掻き立てることになる。

何しろ、女が帰国を報じるたびにその初老の男は必ず訪ねて来るのである。

ときには、豪華なリムジンが迎えに来るが、その場合の行き先は著名人の集まるパーティ会場に限られており、コーエンのエスコートを受けながら絢爛たる夜会服姿を人目に晒す機会が増え、ほどなく社交界において独特のステイタスを得るに至った。

あの秋津州国王にとって特別な存在であると言う囁きが広まったせいもあったろうが、かつて田中盛重が裸足で駆け出すと評したほどの艶(あで)やかさがあるだけに、たちまちにして引く手あまたの状況になったのだ。

自然、貴顕紳士の集うパーティからも直接招待状が舞い込むようになり、遂には格別に意義深い人物とも親しく顔を合わせるまでになったのである。

その人物とはパーティ会場で三度ほど邂逅を果たし、一度などはワシントンのオフィスに招かれて話し込む機会まで持つに至っている。

ジェームズ・リヴィングストンと言う人物なのだが、その後改めて彼の秘書から連絡が入ったのは十二月初頭のことで、任那の自室で過ごす女の胸は相当ときめいたようだが、かと言ってリヴィングストンが妻に先立たれた独身者であったからではない。

その男が次期上院多数党院内総務の呼び声が高いことを知り、その政治権力が己れの計画にとって黄金の鍵を握っていることを意識していたからに他ならないのだ。

米国の上院議員は各州から二名づつ選出される制度であって、しかもこの男の選挙区は因縁浅からぬアリゾナであり、その州の名は女にとっては哀しくも切ないふるさとの名だったのだ。

ちなみに、かつて十三歳の少女の胸に毒の矢を放った上院議員がいたと述べたことがあるが、それはこのリヴィングストンから見れば積年の政敵に当たり、その意味では敵の敵は味方だと捉えていたことにもなるのである。

尤も、現実に狙いを定めている標的は連邦議会にでは無く、そのアリゾナのメサ市にいる。

警察権力を盾に十三歳の少女を強姦した卑劣極まりない人物であり、その犯罪自体は今更立証は困難ではあろうが、その警官は今でものうのうとメサ市警に勤務していると言い、しかも調査会社によれば、そこの市長はリヴィングストンの政敵にとっては典型的な腰巾着だと言うではないか。

少なくとも、己れの利害がリヴィングストンのそれと衝突することは無いだろう。

現に、その上院議員は己れの話に積極的に耳を傾けてくれていたのだ。

既に、議員のオフィスとの間でさまざまな遣り取りが交わされ、議員とは近々アリゾナの地元オフィスで会う約束もある。

費用はあっち持ちで、新しいアリゾナを案内してくれるのだそうだ。

今のアリゾナにはあのグランドキャニオンの雄姿こそ無いが、幼馴染みの悪友たちがいる筈であり、中には会って見たいと思う者もいないわけではないのだから、その点楽しみで無いことも無い。

その意味では議員の誘いは渡りに船だと言って良いが、そう言う状況下で受けた連絡のことでもあり、しかも、標的の悪事を暴くために連邦警察まで動いていると言うのだから、女の胸がときめくのも当然のことではあったのだ。


尤も、指揮官であるタイラーは当然渋い顔である。

女の行動の全貌を知っているわけではないが、女が本国の社交界で華麗な姿を見せ始めていることは承知しており、どう考えても、本来の作戦に齟齬を来す可能性は否定出来ないから、任那の一の荘で過ごす女の元へシグナルを発することになる。

「どうだ、変わりは無いか。」

受話器の向こうから幾分不機嫌な声が響き、舞姫の顔に緊張の色が走る。

「はい、変わりありません。」

「報告漏れはないだろうな。」

「あのう、個人的な出来事に付いてはどこまで報告したらよろしいでしょうか。」

現に母国に滞在中の出来事などは、全て個人的な事柄だと言ってしまえるのだ。

「少なくとも、重要人物との接触に関しては全て報告すべきだろう。」

「でも、どなたが重要人物なのか判りませんもの。」

「おい、そう言う口を利いてると後悔する事になるぞ。」

「どう言う意味でしょうか。」

「ふふん、それが判らねえほどバカじゃあ使い物にならんだろう。」

「・・・。」

「それと、パーティなんかにふらふら出て歩くもんじゃあねえんだよ。身の程を弁えろ。」

「判りました。今後は控えるようにします。」

「判ればいいが、例のコーエンとの話はどうなった。」

「あ、顧問契約はお断りしました。」

「当然だ。上院議員の方はどうだ。」

「近々、アリゾナを案内してくれるそうです。」

「それだけか。」

「・・・。」

「おい。」

「あのう、聞いたばかりの話ですけど、何でも、FBIが動いてるそうです。」

「例の悪徳警官の話か。」

「はい。」

「事情は聞いてるから、ある程度は目を瞑っていてやるが、政治家と言うやつは政治家の論理で行動するってえことを忘れるんじゃあねえぞ。」

「え・・・。」

「わからねえのか。」

「でも・・・。」

「最後には、政治的ツールとして使い捨てにされるだけだって前から言ってるだろ。」

「(それは、おまえだって同じだろ。)でも、余罪があるらしくって、検挙出来たら、法廷で証言させてくれるって・・・・。」

「そうか、結局おまえは、直接面罵してやりたいわけだ。」

十三歳の少女を強姦した警官をだ。

「はい。」

そして思い知らせてやりたい。

「考えてみろよ。悲劇のヒロインにされてメディアが一斉に押しかけて来るぞ。」

「・・・・・。」

「おまえの過去は、あっと言う間に丸裸にされるだろうな。」

「わたしは構わないんです。」

「ばかやろう、そっちが構わなくてもこっちが構うんだよ。」

「・・・・。」

「いいか。あんまり人の足元ばかり見てやがると、こっちの忍耐にも限度があるからな。」

迫水秘書官の妹の動きを見る限り、魔王がこの毒百合をお気に召してることは間違い無いだろうし、現状では魔王に気に入られているオンナはほかに見当たらないのだ。

そこに希少価値があるからこそ、大抵のことには目を瞑ってやってるのに、このバカはそのことをこれ見よがしに振りかざして勝手なことをしようとする。

詰まり、こっちの足元を見てるのだ。

「・・・。」

「おい。」

「はい。」

「法廷に出るのだけは絶対に許さんからな。」

「どうしても駄目ですか。」

「そのことを帳消しにするぐらいの戦果がありゃあ話は別だ。」

「判りました。」

「どう判ったんだ。」

「近々、陛下がおもどりのようですから、直接お願いして見ます。」

「なにっ。」

「ですから、何か手柄になるような情報を下さいって・・・。」

「おまえ、そんなことが出来るのか。」

「はい。」

「自信があるんだな。」

「もちろん。」

「う・・・。」

どうやら、形勢が逆転してしまったようである。

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  1. 2009/01/14(水) 13:22:34|
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