日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 168

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「ところで、田中君が忙しいってことは判ったんだけど、騒いでたとか、オレンジプランとかって何のことよ。まさか、さっきの秋桜維新(こすもすいしん)のことじゃないんでしょ。」

少なくとも、妻にとっては初耳の話なのだ。

「うん、まったく別の話だ。」

「だからあ、どんな話なのよ。」

「一言や二言じゃ言えねえよ。」

「ふうん、ややこしい話なのね。」

「およそのことは岡部からも聞いてるし、関連映像だって見てないわけじゃないんだが・・・・、そう言やあ窓の月に転送したって仰ってたな。」

数分後、夫婦の目の前で窓の月が起動し、情報伝達装置としての機能を鮮やかに発揮し始めており、そのモニタには波間に浮かぶ離島が映し出され、すぐさま音声が反応して全てを補足してくれている上、その俯瞰図(ふかんず)で内部構造まで見ることが出来ているのだから、その離島が人工的に加工された代物だと判るのである。

「これって丹後の海よね。」

「そのようだな。」

「これが田中君のオレンジプランなの。」

「ネタの一つだよ。」

「ふうん。」

「ま、よく見てみろよ。」

「これなんて、まるで富士山の裾野部分だけ残して、その上の方を全部切って捨てたようなカタチね。」

俯瞰図として描かれている形状がである。

仮に高さと底辺の直径が同等の直円錐があったとして、その中間当たりに水平に包丁を入れて切り飛ばし、下側だけ残したような形だと言って良いが、無論裾野の一番下あたりはそれ以上の広がりを見せている。

「うん、五合目あたりに包丁を入れたのやら、七合目あたりで切ったのやら、いろんなのが揃ってるみたいだな。」

相変わらず窓の月は便利極まりない機能を発揮してくれており、疑問に音声が反応して補足を加えながら、鮮やかに映像が切り替わって行き、やがて多様の大きさのものが数多く登場して来るに至った。

「ほんと、大小取り混ぜていろんなのが揃ってるみたいね。」

「ざっくり言って大中小に分けられるようだねえ。」

「LMSサイズってとこかしら、差し詰め大きいのはL球(えるだま)かしらね。」

「あはは、そうすっとちっちゃいのはS球(えすだま)だな。」

「ひょろっとしてるのも平べったいのもあって、高さも千差万別だわね。」

「最大のものだと三万メートルはあるかな。」

無論、図面上の底辺から頭頂部までの高さがである。

「頭頂部の面積はどのくらいになるのかしら。」

実物は、その部分だけが海面から顔を出すことになる筈だ。

「うん、おまえの言うL球で行けば、概ね百五十平方キロほどだろう。」

「じゃ、M球が百平方キロで、S球が五十平方キロってとこかしら。」

仮に地球時代の三宅島に例をとれば、概ね五十五平方キロほどだったのだから、そこから類推しても凡そのところは見当がつく。

「そんなとこだろう。」

「あら、中にはラクダみたいに二こぶ繋がってるのもあるのね。」

無論、図面上の話である。

「これだと、海ん中で二つの島が少し離れて並ぶことになるな。」

「差し詰めダブルのM球だわね。」

「これが田中プランの味噌んなる筈だ。」

「でも、こんなもの、なんで騒ぐのかしら。」

騒いだ張本人は無論田中である。

「おいおい、俯瞰図を良く見てみろよ。」

「え・・・。」

「ほら、中に空洞が出来てるだろ。」

その空洞の上限は、多くの場合頭頂部から見れば二千メートルも下側に位置していることになっており、一部の空洞に至ってはそれが五千メートルにも達している上、数ある島の中には、下限の位置が二万メートルを超えている空洞まで散見されるのである。

「あら、ほんと、それも中で幾つにも分かれてるみたい。」

要するに、多層構造になっているのだ。

「おいおい、その空洞の中身が肝心じゃないか。」

「あらら、オイルって書いてあるわ。」

「そうだ、オイル・・・、原油だよ。」

「あ、じゃあオイルの備蓄用なのね。」

「そうだ、壮大な備蓄タンクの話だ。それも大小取り混ぜて五百個は下るまい。」

この分では、その頭頂部の面積を併せただけで、地球時代の四国どころか九州を超えるほどのものになってしまうかもしれない。

「話によっちゃ、これを丹後から運んで来てもらうわけね。」

「普通に宇宙を運んで来たら、破裂しちゃうけどな。」

「え、なんで。」

「内圧が高すぎるからさ。」

「あ・・・、じゃ大量に封入しちゃうわけかあ。」

無論封入するのは膨大なオイルに他ならないが、その多くは佐渡産のものを使う予定だと耳にしている。

「容器の内外を大量のベイダインで補強なさったらしいが、それでも丹波に持ってくるとなったら、一瞬で移動して、一瞬で海中に沈めてしまう必要があるだろうな。」

「そうか、宇宙どころか高空に置いただけでも、気圧の関係で一発で破裂しちゃうってわけか。」

「まあ、丹波の海に沈めてから封入する手も無いわけじゃねえが、それじゃあ手間あ喰って仕方がねえ。」

俯瞰図では採油用と封入用のパイプが地下に向かって複数伸びており、封入用のものが数段太くなっているとは言うものの、丹後の海で作業する場合一定の海域で集中的に行えることに引き比べ、こっちへ運んで来てからではそうは行かなくなってしまうのである。

「なるほど、こんなにたくさんあったら、事前に用意しとくしかないわよねえ。」

現に、五百個もあることになっているのだ。

「ゴーサインが出次第、封入作業の一斉開始だろう。」

「それで、一瞬で移動して、一瞬で海中に沈めちゃうのね。」

「陛下にしか出来ない芸当だが、仕事としちゃあそこんとこが一番難しい場面だ。」

「そこまでは判ったけど、これを何に使おうって言うのよ。」

「ま、一言で言っちゃえば、外交上の取引材料にしようってハラだ。」

「あ、そうか。喉から手が出るくらいの国ばっかりだもんね。」

「殊にワシントンだろう。」

「そりゃそうね、任那からのパイプラインで全需要の半分近くいっちゃってるらしいし、残りの相当部分も秋津州からタンカーが出てるんじゃ、夜もおちおち眠れないでしょ。」

一説によれば、秋津州産のものだけでその国の全需要の八割を占めていると耳にするほどだ。

「陛下に蛇口を閉められたら一巻の終わりさ。」

「アメリカじゃ備蓄分が二千万バレルも無いって言うし、石油の一滴は血の一滴って標語まで作って騒いでるらしいわね。」

地球時代の合衆国の備蓄量は官民併せれば十六億バレルを超えていた筈なのだから、最早比べるべくも無いだろう。

しかもその国では、国内の油田は全て先細りだと言われ始めている上、近頃では全油井がフル稼働で生産しても国内需要の一割にも満たないとまで囁かれているのである。

「大統領閣下の執務室に掛けてあるかも知れねえな。」

その標語がである。

「でも、不思議よねえ。戦前の日本はその蛇口をアメリカさんに思いっ切り閉められちゃったのよね。」

今の敷島と違って、地球時代の日本の産油量は殆どゼロだったのだ。

「オイルだけじゃねえ。鉄もだ。アブラと鉄が手に入らなくなりゃあ、あとは滅ぶしかねえ。」

だからこそ、死中に活を求めて対米戦に打って出たのである。

「少なくとも、近代国家としては成り立たなくなっちゃうわよね。」

「だからこそ、アブラは外交上のツールとしてとりわけ威力があるんだってことよ。」

一方にPMEと言うものが登場した今となっても、航空機の殆どが石油燃料を必要としていることもあり、しかも暖房用燃料として、かつ多様の化学製品の原材料としても軽んずることは出来ない以上、石油は国家の命運を左右する戦略物資そのものであり続けていることになる。

「じゃ、田中君のプランも満更悪くないってことになるじゃない。」

「ふふん、相手によりけりだ。」

「プレゼントの相手はアメリカだけなんでしょ。」

「バカ言え。そんなことしたら、ほかの国からブーイングの嵐だろう。」

「じゃ、どうすんのよ。」

「最終的にはアメリカさんと水面下で基本合意を形成することになるんだろうが、その前にほかの国とやり始める筈だ。」

この場合のほかの国としては、英仏独中露印イランやアフリカ先進国群などの名が脳裏に浮かぶが、岡部などは日本の対トルコ外交戦略を優先課題の一つに掲げているほどであり、今次のローマ人問題を踏まえればそのことの重要性も無視すべきではないだろう。

何せ、現トルコ共和国はローマ人をその故地から駆逐したオスマン帝国の系譜を引いており、逐われた側のローマ人がこの人類社会に戻って来た上に、そのバックには秋津州がついていると言うのだから、トルコ側にとってことは容易ならざる事態なのである。

現に、その件に絡んで駐秋トルコ代表部から盛んなアプローチが始まってしまってるくらいなのだ。

「え・・・。」

「ま、殊にロンドンとやり取りすることになるだろうな。」

地球時代とこと違い海外に石油利権を持たない英国も、米国ほどではないにせよ、その需給を逼迫させていることに違いは無い。

しかも、日本にとって今の英国は欧州先進国群の中で地理的にもっとも近い存在であり、言わば西方の隣国だと言って良い。

「あ・・・・。」

「それも、ひそひそとな。」

「でも・・・・。」

今の日本は昔と違いその点の防諜機能は完璧に近いのだが、ロンドンにはワシントンの耳目が大量に存在してしまっている筈であり、妻はそれを言いたいのだろう。

「うん、どんなに小声で話してもワシントンの耳には轟音になって届くだろうよ。」

「あらま・・・、それじゃ置いてけぼりにされたワシントンが怒り狂うでしょうね。」

「少なくとも、ロンドンに対して不信感を募らせることだけは確かだろうな。」

「米英を離間させちゃおうってのかあ。」

「とにかく、その点でもガラガラポンをやるしかあるめえ。」

「ふんふん、それからいろいろ始まるわけね。」

「暫く経ってから第二の大和合意として取り纏めを図る必要があるだろうな。」

公式な国際的合意を取り纏めるのである。

「あら、また世界会議みたいなことをやらかすつもりなの。」

「やるしかあるめえ。」

「そこのテーブルで、オイルの取り分を巡って大騒ぎが始まるわけか。」

「量もそうだが、どの国がどの場所にセットを望むかの調整だ。いらねえって言う国は出て来ねえだろうからな。」

「どっちにしても、丹波の海にセットするときは大忙しになっちゃうわね。」

忙しい思いをするのは無論陛下だ。

「忙しいこともそうなんだが、同じ海でも地殻の厚みが問題なんだ。」

「え・・・。」

「セットするときゃ、大抵海底の岩盤を深く掘っておいてからになるんだから、地殻の薄いところじゃ危なっかしくって仕方がねえ。」

「あ、そうか。下手なところを掘り過ぎると海底火山になっちゃうか。」

「な・・・、漁業権や海底ケーブルのことだってあるし、何処でもいいってわけにゃあ行かねえんだよ。」

「じゃあ、どうしても下さいって言ったら、相手国の陸上に乗せてやりゃいいでしょうに。」

「さっき言ったばかりだろ、上空五千メートルぐらいになっただけで気圧が極端に低くなっちゃうんだぞ。」

「あ、そうか。破裂しちゃうのか。」

「陸上でこんなもんが破裂したひにゃあ、とんでもねえ大災害だぜ。」

「そりゃ、そうね。」

「随伴ガスに引火しちゃうだろうから、あっと言う間に火の海になっちまわあ。」

「もう、判ったわよ。」

「百歩譲って陸上に大穴を掘って埋め込んでやるって手も無いじゃあねえが、途轍もなくでかい穴になっちゃうぜえ。」

頭頂部に比して裾野の部分が大きく広がっているのである。

「だよね。」

「だから、これほどの規模のものだと、もう海ん中しかねえだろうが。」

「だったら、例のSDで十杯ぐらいプレゼントしてやりゃいいじゃないの。あれって、高さが精々八十メートルぐらいだって言うから陸(おか)の上に置いとけるでしょ。」

「それっぽっちじゃ相手さんが喜ばねえ。」

少なくとも、米国を初めとする大消費国にとってはたいした量にはならないのである。

「そっか、相手が喜ばなきゃあ、責め手にはならないか。」

「そう言うこった。」

「それなら、相手さんの陸地に穴を掘って直接原油を封入してやれば良いじゃない。」

相手の陸地の地下に直接備蓄タンクを造成すればいいと言う。

「バカ、それじゃあ途方も無く手間喰っちゃうじゃねえか。」

「あ、そっか。」

「五ヶ所や六ヶ所の話じゃねえんだからな。」

「それは判ったけど、こっちは何を要求しようって言うのよ。」

当然、見返りを求めての駆け引きになる。

「うん、田中の言い分だと広大な農地だ。」

「あら、今だって充分広いじゃない。」

地球時代と比べれば相当な広さなのだ。

「しかし、日本が開放経済政策を採ろうとする以上、平場(ひらば)の国際競争力と言う話になりゃあ、まるっきり勝てねえだろうが。」

殊に途上国との間には、穀物の出荷価格の点で雲泥の差がついてしまっているのである。

尤も、国内需要を上回るほどの生産量を確保している国など、日秋を除けば未だ数えるほどでしか無いのだが、悲惨なことに、多くの途上国が自国民が飢えるのを承知で、外貨獲得の必要から輸出を続けてしまっているのが実情だ。

「農家への補助金無しには、とても無理でしょうね。」

無論、日本の農産物の国際競争力の話である。

「今は未だ低コストの秋津州人が日本の農業の多くを支えていて、しかも秋津州が大量に買ってくれてるからいいが、そうでなけりゃあ成り立たねえ話だ。」

コメは勿論、小麦、大豆、とうもろこしまで輸出していると言う現実がある。

「たくさん作っても海外に買ってくれる相手がいなきゃあ、日本国内で食べてもらうしかないのよね。」

「そう、近い将来日本人が農地を引き継いだあと、高いのを承知で自国民がばんばん買ってくれない限り、生産者は赤字どころか出荷すら危ぶまれる。」

「秋津州が買ってくれなかったら、きっと、いっぱい余っちゃうんでしょうね。」

「実際問題、たくさん作れば作るほど余計値崩れして、しまいには畑のコヤシにするしかなくなっちゃう。」

「これだけ(諸外国と)経済格差がついちゃった以上、少々の輸入関税ぐらいじゃ、途方も無く安い農産物がどんどん入って来ちゃうものねえ。」

「だから、保護関税も農家への補助金も必要ねえくらいに生産コストを下げたい。そうなれば、海外の安価な農産物と素手で渡り合えるようになるからだが、そのためにべらぼうに広大な農地の確保が喫緊の課題だって騒いだんだよ。」

田中がである。

「ふうん、じゃ、オイルと引き換えにアメリカの農地をよこせって言うつもりなの。」

「違うな。秋桜海(こすもすかい)を全部日本の農地にするから、そのことに目をつぶれって言いたいらしい。」

秋桜海(こすもすかい)とは、秋桜島と日本(敷島)の間に広がっている海のことであり、その面積は概ね二百万平方キロにも及ぶのだ。

「何よ、それ、海が農地になるわけないじゃない。」

「うん、そこが味噌だ。」

亭主のほうは盛んににやついているのである。

「味噌だけあって、だいぶしょっぱい話なのね。」

妻君はそっぽを向きながら吐き捨てるように言った。

「んにゃ、相当辛(から)い話だ。」

「勿体ぶってないで、さっさと白状しちゃいなさいよ。」

「あはは。」

「ほらあ、一人で喜んでんじゃないわよ。」

「じゃあ、そろそろ講釈に掛かるとするか。」

「まったくう。」

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  1. 2009/03/11(水) 11:57:15|
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