日本大好きじいさんの落書き帳

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告|
  3. トラックバック(-)|
  4. コメント(-)

自立国家の建設 111

 ◆ 目次ページに戻る

さて、立川みどりが有紀子どころか律子と葉月親子まで引き連れ、ぞろぞろと海都に入ったのは八月の六日のことであった。

みどりにして見れば、さまざまな思いがある。

何しろ近頃の銀座は右も左もお引っ越し騒ぎで、周囲の知り合いがどんどん姿を消して行く。

現に終日灯りが灯らないビルは増えるばかりで、不動産は全く買い手がつかないから、その売却整理には見切りを付けざるを得ない。

変な話だけど、只で貰っても登記料や固定資産税がかかるだろうし、抵当流れになった物件が溢れていると言う話まで聞くけど、この日本では外資系以外銀行が潰れたと言う話は聞かない。

あれやこれやで、みんな泣く泣く流動資産だけ持って、アクセスポイントとやらに向かうと言うのだ。

中にはお見送りのご挨拶に出向く場面まであって、実際、このあたしも結構忙しいのである。

テレビなんかでは、もう半数近くの日本人が渡航済みだと言って騒いでるし、みんな自分の判断で移住を始めちゃってるみたいで、実際商売どころの騒ぎじゃないのだ。

葉月ちゃんのお店なんか、とにかく入りが悪くって、このところずうっと開店休業みたいな日が続き、場合によっちゃ閉めちゃおかって話も出てるみたい。

お店の子の中にもとっくに移住しちゃった子もいるって言うし、そのビルのオーナーにしても今年中には移住するつもりでいるらしい。

テナントで入ってるお店なんか、スナック葉月以外ほとんど閉めちゃったみたいだから、益々人出が減るばかりで、開けてたって女の子の給料どころか電気代も出ないだろう。

あたしもこの際だから店仕舞いしちゃおうかと思って、息子に相談して見たら、「強いて反対はしないけど、人生長いんだから、あとで後悔しても知らないよ。」って言われて改めて思い直したくらいなのだ。

未だ四十三なのに、ここで引退しちゃったら、その先の人生は長いぞうって言われちゃったわけだし、どっちみち、この地球には棲めなくなっちゃうのは確からしいから、商売の方も敷島でやり直すしか無い。

千代さんに手配を頼んだ新しい物件もとっくに決まっているし、あとから頼んだ葉月ちゃんのお店の話までとんとん拍子だったから、そっちの開店の準備もしなくちゃいけない。

そのことがあって近頃は、葉月ちゃんと敷島に出向くことも多かったから、大事な息子のかたわらで過ごせる時間が極端に減っていたこともある。

窓の月を通してちょくちょく遣り取りしていたから、最近はかなり元気を取り戻してることも判ってはいたけど、傍にいて気を遣ってやらなければいけないことだってあるのだ。

それに、あたしの目から見ると、あの子の身近にいる人たちには、どうも心配りが足りないように感じられてならない。

新田さんなんか、あの子の健康より外交の方が大事だと思ってる気配だし、田中君なんか、最近は息子と一緒になってただ大酒を喰らってるようにしか見えない。

今度の新しい秘書さんにしたって、わざわざ律子ちゃんのそっくりさんを捜して来たとか言ってるけど、そりゃあ確かに頭も良さそうで十ヶ国語ぐらいはぺらぺらだって言うし、とてもハタチ前とは思えないくらいしっかりしてるとは思うけど、それにしたって人形は人形でしかないのだ。

いくら惚けたって、こっちは、息子の顔色を見てりゃ直ぐに判っちゃうんだから。

独り者の田中君なんか、最初のうちこそあの魅力にぽうっとなってたみたいだけど、さすがに最近は判っちゃったらしくって全然様子が違うんだもの、それを見てるだけでバレバレなのよ。

それに、京子さんや真人ちゃんが亡くなって、かれこれ九ヶ月も経つんだから、いくらなんだって、もうそろそろお葬式ぐらい出してあげなきゃ仏さんが浮かばれないと思うし、首からぶら下げてるお骨(こつ)にしたって、ちゃんとしてあげなくちゃ可哀そうでしょ。

葉月ちゃんだってそう言ってるくらいなんだから、今まで少し遠慮してたけど、とにかく世間さまに後ろ指を指されないように、これからは、あたしがしっかりしなくちゃいけないと思う。

その意味では頼もしい応援団が揃ってるんだし、今度は少し強気で攻めてみようかしら。

うちの息子にしたって未だ若いんだから、この先、ずうっと独身ってわけにもいかないんだし、お嫁さん候補だって見繕ってやらなくちゃいけないだろう。

しっかり者で良く気の付くお嫁さんが見つかればいいけど、本人の好みってこともあるし、ほんと悩んじゃうわよねえ。

それに未だショックが尾を引いてるみたいだから、あんまりやいのやいの言うのもどうかと思うし、ほんとどうしてやったら良いのかしら。

ちょっと気は強いけど律子ちゃんみたいな子が側に付いててくれれば、少しは安心出来ると思うんだけど、お妃さまみたいな気詰まりなものには金輪際なりたくないって言うし、そうかと言って、本人の言うような現地妻って言うのもどうかと思うしねえ。

第一、ああ見えてもあの子は生真面目なところがあるから、そう言うお妾さんみたいな話は嫌がるかもしれないし、こればっかりは無理矢理ってわけにもいかないだろう。

そう言えば咲子ちゃんだってもうじき十八だって言うし、今どきの女子高生なんだから、ボーイフレンドの一人や二人いない方が不思議だろうから、もう立派なオンナだと見といた方が良いのかも知れない。

ほんとなら来春の卒業だったのが、この騒ぎで大分繰り上げ卒業になるって聞いてるけど、進学の方も微妙なことになりそうだって言うし、それもこれもこの先どう言うことになるんだろう。

今までの商売をそのまま丹波で続けるだけだって強がってるお客さまもいたけど、よっぽど景気が良くならない限り、そんな簡単な話で済むとも思えない。

それに、テレビじゃ盛んに言ってるけど、ガンマ線なんてほんとに来るのかしらねえ。

その点、世界中でそう言ってるんだから嘘じゃないとは思うけど、あたしなんか未だにぴんと来ないわ。

まあ、今のところみんな丹波へ引っ越せるみたいだから、それはそれで一安心なんだけど、見渡すとそこらじゅうのお店がシャッター下ろしちゃってるし、兜町なんかもう火が消えたようで、折角の丹波景気もすっかり萎んじゃったじゃないの。

天災なんだから誰のせいでも無いんだろうけど、破産して首括っちゃう人もいっぱい出てるみたいだし、それを思えば私たちなんか未だ恵まれてる方なのだ。

特にあたしの場合は息子に援けてもらったから良いものの、もしそうじゃなかったら、ガンマ線騒動が無くたってとっくの昔に夜逃げしてたに違いない。

今回その息子が突然の不幸に見舞われ、ショックのあまり体調まで崩しちゃったけど、ほんと言うと、これが初めてのことじゃ無かったのだ。

ほとんど知られてないけど、何年か前にも似たようなことがあって、そのときも散々気を揉まされたのだ。

あとで聞いたら、そのときも可愛がってた子供たちをいっぺんに亡くしちゃって、それがショックで落ち込んじゃってたんだけど、そのときだって立派に立ち直ってくれた筈だ。

今度だって、もうそろそろ元気になってくれてもいいころだし、今日だってそのために来てるんだから。

今朝は、前以て言ってあったせいか、神宮前でポッドに乗ってから王宮までひとっ飛びだったし、みんなで献花を済ませて、そのあと揃ってお昼ごはんを食べることにしてあったのだ。

献花のあと、あっと言う間に内務省の屋上に着いて、ポッドから降りると美智子ちゃんが早々と出迎えてくれていた。

律子ちゃんなんか美智子ちゃんと手を取り合って再開を喜んでるけど、ここで変なこと言っちゃうと、いろいろぶち壊しになっちゃうんだろうから、当分は黙っといてやることにしよう。

それに、息子の面倒を見てくれてるのは今のところ美智子ちゃんなんだろうし、お人形さんだと言っても、その点良くやってくれてるとは思うから、
ものは考えようで、変なオンナに引っ掛かっちゃうよりはよっぽど安全なのだ。

五階に降りて行くと、いつもの天井の高い部屋に通され、あたしは見慣れてるけど、あとの三人は豪華なインテリアにかなり圧倒されてたみたい。

息子の側にいたのは田中君と井上さんだけだったから、遠慮なしにさっさと紹介を済ませちゃって、直ぐにお茶の時間にしてもらったわ。

席が決まると有紀子なんか早速息子の膝の上で満足そうな顔してるし、美智子ちゃんと井上さんはお役目だから、五・六メートル離れたところで固まっちゃってるし。

当然、美智子ちゃんと律子ちゃんはまるっきりそっくりで、両方とも女のあたしから見ても抜群に綺麗で色っぽいのである。

考えて見ると、息子も田中君も本物の律子ちゃんに会うのは初めてのことなのだ。

息子の方は意外にけろっとしてるけど、田中君の方は二人を交互に見比べながら、何か言いたげにきょろきょろしてるし、葉月ちゃん親子にしたって似たようなものだけど、流石に遠慮して今のところ余計な口は慎んでるみたい。

田中君が座持ち役を買って出たつもりらしいけど、さっきから話が滑りっ放しだし、律子ちゃんが改めてお詫びとお礼の挨拶を済ませたところで、お食事の時間が来るまで少し休憩を取ってもらうことにした。

何しろ、三人とも大分緊張気味だったのだ。

律子ちゃんと葉月ちゃん親子の控え室を別々に用意してもらって、田中君と美智子ちゃんがそれぞれ案内に立ったすきに、こっそりと聞いてみた。

「いかがでした?」

「ん?」

息子は膝の上の有紀子と、なにやら楽しそうに会話を交わしている。

「ですから、お気に召しましたか?」

「うん、こうしてると憂さを忘れるよ。」

盛んに有紀子と戯れているのである。

「そうじゃなくて、さっき紹介した中でお気に召した方はいませんかって聞いてるんですよ。」

「さっき会ったばかりじゃないか。」

きょとんとした顔だ。

ほんと、じれったいわねえ。

「会ったばかりでも、好みかそうでないかくらい判るでしょうに。」

「そんな野暮なことを聞くなよ。」

「じゃ、気に入ったヒトはいるのね?」

「うん。」

照れくさそうな顔だ。

「絶対悪いようにはしないから、言ってご覧なさいよ。」

「そんなにせかすなよ。」

「やっぱり律子ちゃんなんでしょ。」

そうに決まってるわ。

「ほんとに美人なんだねえ。」

「じゃ、律子ちゃんなのね。」

「違うよ。」

「え?」

「うん。」

「それじゃ、咲子ちゃんなのね?」

律子ちゃんじゃなかったら、もう咲子ちゃんしかいないじゃないか。

「彼女もきれいでとても可愛いねえ。」

「背も高くてすらっとしてるわね。」

百七十センチは軽く超えてるだろう。

「そうだねえ。」

「じゃ、咲子ちゃんでいいのね?」

「なにが?」

「だからあ、ときどきデートしてもらうお相手の話でしょ。」

「いや、デートの話じゃなくて、ときどき酒の相手をしてくれたら楽しいだろうなと思ってさ。」

バカだね、この子は。同じことじゃないか。

「よし判った、全部このあたしにまかしときなさい。」

「うん、咲子ちゃんのお母さんによろしく伝えといてくれ。」

「え?」

「うん。」

「娘さんを酒の相手に借りるから、よろしくって言っとけばいいのね?」

葉月ちゃんは大喜びするだろうけど、果たして咲子ちゃん本人はどうかしら。

前に理沙ちゃんから聞いた話だと、中学んときに剣道始めたのだって、この子の剣道のニュースを見たからだって言うし、あたしの見たところじゃ、少なくても嫌がることは無いと思うけど。

「そうじゃないよ。お母さんの方に相手して欲しいって言ったんだよ。」

「なんだってえ?」

「いや、だから、無理にとは言ってないよ。ママが誰が気に入ったかって聞くからさ。」

「あたしが聞いてんのは、本気でデートするお相手のことよ。」

第一葉月ちゃんは、もうすぐ三十七になる筈だ。

それにたいした上背も無いのに軽く六十キロを超えてるらしいし、普通より何倍もの脂肪分を後生大事に貯め込んでるオンナなのだ。

胸もおなかも一メートル以上あるらしいし、取り柄と言えば、娘と同様に飛び抜けて色白なことくらいなのである。

丹波への往復のときに何度か顔は見てる筈だから、ひょっとしたら、そのときから意識してたのかしら。

でも、まさかねえ。

「そうか。」

「そうよ、そうやっていつまでもお骨(こつ)なんかぶら下げてるから、余計心配するんじゃないの。」

遂に一直線に切り込んでしまった。

「うん。」

「もう、そろそろ外してもいい頃じゃない?」

無論、首から提げてるロケットのことである。

「そうだなあ。」

「じゃ、こっち寄こしなさいよ。」

外してやるつもりで手を伸ばすと、体を後ろに反らして逃げようとする。

思い切り睨みつけてやった。

「そろそろちゃんとしてやらんとな。」

この図体で、しょんぼりしてるのだ。

「そうよ、男のくせにいつまでぐずぐずしてたら気が済むのよ、まったく。」

少しきつかったけど、このくらい言ってやらないと通じないだろう。

「そうか、やっぱり女々しいか?」

「あたしも可哀そうだと思って言わないようにして来たけど、なんだかんだ言って、もうすぐ九ヶ月になるのよ。」

「うん。」

「さ、あずかっといてあげるから外しなさい。」

「うん、もうちょっと持ってちゃダメか?」

大きな手でロケットを覆うようにして抵抗するのだ。

まったく、駄々っ子と一緒じゃ無いか。

「そんなこと言ってたらきりが無いでしょ。はい、寄こしなさい。」

「判った。じゃ、これからちょっと行って来ようか?」

「え?」

「だから・・・。」

「あ、宮島ね。」

その宮島の一郭に新たに建立した小さな別宮があり、そこの裏手の祠には既に母と子のお骨を納めてある。

その納骨の時は、このあたしもちゃんとついて行ったのだ。

「うん。」

「あの人たちと揃ってお昼にする約束なんだから、それまでに帰って来れるわよね?」

「大丈夫さ。」

「じゃ、行こう、直ぐ行こう。」

「よし。」

そのままその場から、井上甚三郎一人をお供に、それこそあっと言う間に宮島に飛んだのだ。

現地では数人のかんなぎたちに見守られながらロケットごと納骨し、有紀子なんか何にも教えてないのに手を合わせていたくらいだから、きっと何かしら感じてはいたのだろう。

行って帰って三十分ほどの旅だったけど、晴れ晴れとした顔してるところを見ると、このぐず息子もやっと気が済んだらしい。

だが、帰ってからがまた大変だった。

葉月ちゃんに耳打ちしてやると、赤くなったり青くなったりした挙句、「ひょっとして、うちの咲子をお気に召したのかしら。」なんて言いだす始末だ。

将を射んと欲すればなんとやらかい。

まあ、勝手に思わせとけばいいか。

それからの彼女は電話をかけまくり、店の子たちに臨時休業を伝えるやら何やらで、すっかり張り切ってしまっている。

無論、早速酒の相手をつとめるつもりでいるのだろう。

お昼ごはんの時も結構賑やかだったけど、その夜は、田中君は勿論、途中から新田さんやら相葉さんたちまで加わって、大宴会になっちゃったのは言うまでも無い。

そのほかにも何人か参加者が増えて、しまいには三十人を超えてたみたいだし、そのうちに女の人も混じってかなりのドンちゃん騒ぎになっていた。

みんな日本人だと言うし、中には見覚えのない人もいたけど、その人たちはどうやら相葉さんの部下の人たちだったみたい。

咲子ちゃんなんか、お運びさんを手伝いながらジュースやコーラで最後まで付き合ってくれてたし、田中君や新田さんも楽しそうに飲んでくれたのだ。

ときどき葉月ちゃんの豪快な高笑いが響き渡り、息子も終始機嫌よく飲んでるところを見ると、何かが吹っ切れたのかもしれないし、まあ、おかげでこのメンバーの全員が互いに打ち解けてくれたことは確かだったろう。


結局一行は一泊することになり、無論葉月親子にもそれなりの一部屋が宛がわれたが、殊に娘の咲子はベッドに入ってからもなかなか寝付けないでいた。

昼食の後で母親から言われたことが、気になって仕方がないのである。

母は、みどりママから「陛下が、母にお酒の相手をしてくれるよう望んでらっしゃる。」と耳打ちされたと言うのだ。

そして、陛下の本当のお目当ては娘の方であって、その下心があるために母親に白羽の矢を立てたのだと母は言う。

詰まり、「将を射んと欲すれば、先ず馬を射よ。」と言う話なのだ。

現にみどりママもそれを否定しなかったと言うし、そう考えるといよいよ頭の芯が冴えて来てしまう。

母はそれ以上のことは口にしてはいないけど、その様子から見ても内心大喜びで張り切っているに違いない。

勿論、それもこれも全て娘の幸せを願ってのことなのだろう。

今回私が進んで同行したいきさつもあるから、当然私の気持ちも判っちゃってる筈だし、思い合わせれば、母が亡き父と知り合ったのも丁度今の私ぐらいの年頃だったって言うし、今度のことには特別の思い入れを抱いてしまうのかも知れない。

でも、国王陛下がこの私をお気に召しただなんて本当なのだろうか。

考えれば考えるほど頬が火照り胸が高鳴ってしまう。

しょっちゅうテレビに映る陛下は今や超のつくほどの有名人で、おまけに世界一の大富豪としても鳴り響いちゃってるし、クラスメイトの間なんかではうるさいくらいに騒ぐ人もいるのである。

ましてその人はこの日本の一番の味方で、北方領土や竹島を取り返せたのもみんなその人のおかげだって言うし、今では法律上も立派な日本人の扱いになってるって言うくらいなんだから、その陛下を嫌いだって言う人の方がかえって珍しいと思う。

現に友達の中にも熱狂的なファンがいるくらいだし、その子なんか私がお会いしたことを知ったら、すごく羨ましがるに違いない。

私だって、中学のとき急に剣道をやる気になったのも、陛下がその道の達人だと言う番組を見たからだった。

それもこれも、剣道を通して少しでも陛下に近付きたいと思ったからだったのだ。

きっかけは不純なものだったけど、幸い初段を得て剣道部の主将まで務めるに至っており、密かな夢は陛下にお稽古をつけていただくことだったのに、その陛下がこの私にだなんて・・・・。

とうとう明け方まで一睡も出来なかったのである。


一方の律子はそんなこととは露知らない。

一番気掛かりだったテロリストのこともやっとお詫びすることが出来たし、その件で陛下がちゃんと許してくれてることもはっきりと感じ取れたのだ。

もう一つの気掛かりは美智子ちゃんの存在だったけど、それも美智子ちゃん自身の口から直接聞くことが出来て、その心配もほとんど解消した。

彼女はあっさりと否定したのである。

神宮前でのいきさつから言って、今さらあたしに隠す必要は無い筈だし、その上、お母さんが終始背中を押してくれてる気配も充分感じていた。

何しろ、お母さんは猛獣使いなのだ。

宴会で葉月ママがお化粧直しに立ったすきに猛獣のそばに行って、お酒を作りながら嬉しい一言を聞くことも出来た。

例の恥ずかしい「短編映画」のことをこっそり聞いてみたのだ。

「あのう、あたしの映画、ごらんになりました?」

流石にちょっと恥ずかしかったけど、その目に必殺の思いを込めたつもりだ。

「うむ、まるで天女が舞いを舞っているようであった。」

目を細めて優しく応えてくれた。

頬が染まったのは酒のせいばかりでは無い。

「うれしいっ。」

小声で言いながら、テーブルの下で大きなその手を思い切り握ってやったわ。

確かにその手は、このあたしを受け入れてくれていた筈だ。

間も無くママが戻ったので、それ以上の攻撃は遠慮しておいたけど、あたしの想いだけは確実に伝わった筈なのだ。

そしてその夜宛がわれた個室は、とても豪華なものだったしベッドもかなり大きめだった。

シャワーを浴びてちゃんと薄化粧までして、ずっとお出でをお待ちしてたのに・・・・。

次の朝一番で美智子ちゃんをとっつかまえて問い詰めてやったわ。

「ねえ、ゆうべ咲ちゃんも個室だったの?」

「いいえ、お母様とご一緒のお部屋でしたわ。」

「・・・。」


一方、みどりはみどりで、お葬式のことが気になって仕方が無い。

ぐずぐずしてると、もうじき一周忌が来てしまうのだ。

天下の秋津州家がそんなことになったら、あたしと言うものがついてて世間様に恥ずかしいじゃないか。

宴会の最中に、それとなく新田さんに耳打ちしてみたが、新田さん自身も頭を痛めてるみたいで、結局、それもこれも肝心なのは息子の気持ちであるらしい。

新田さんの口振りでは、何もかもあの犯人の裁判の成り行きによるみたいで、少なくともその話にけりがつかない内は無理だろうと言う。

それじゃ、いつごろけりがつくんだって聞いてみたけど、それこそ直接聞いてみろって言われちゃったし、前に神宮前で千代さんに当たってみたときのことを改めて思い出しちゃったわ。

そのときの千代さんも、それこそ全て陛下のお胸の内だって言ってたけど、ほんとこのままにしといていいのかしらねえ。


八月の七日、秋津州の海都ではローズ・ラブ・ヒューイットと言う一人の少女が、大人びた化粧と身なりを強いられて、おずおずと内務省ビルを訪れていた。

無論、秋津州国王に拝謁の栄を賜るためであり、同行のタイラー補佐官からその際の心得を種々諭されてはいたが、なにしろその少女は未だ十五歳なのだ。

尤も、少女とは言うが、既に胸も腰もたわわに実り始めているところに、百七十センチに迫る上背がある。

専属のスタイリストの手によって豊かなブロンドを艶やかに結い上げられ、大人びた上下揃いのビジネススーツを着せられた上、踵の高い靴を履いて歩む姿は到底十五歳には見えなかった筈だ。

土竜庵でも、新田と相葉が涼の指摘を受けてモニタを見ていたが、ハタチ前後にしか見えなかったと述べているほどだ。

しかし、その女性は紛れも無く十五の乙女であり、かつて、突然の交通事故で両親を奪われ、悲しみに浸っている余裕すら与えられず、運命そのものを転換させられてしまった少女なのである。

それまでの少女は、あまり裕福とは言えないまでも両親との平穏な暮らしを得ていた筈だが、その事故がそれを一瞬にして奪い去ってしまった。

それは、去年のクリスマス直前の土曜日に起こった。

その夜、ある相手から呼び出しを受けた両親が揃って目的地に向かう途中、何と、父の運転する車が崖から転落して、同乗の母共々に死亡してしまったと言う。

少女が報せを受けたのは日曜の朝が来てからだ。

警察で遺骸を前に茫然とする彼女の前に、校長と共に三人の白人女性が現れ、孤児となった彼女を保護する為に州政府から派遣されて来た者だと告げた。

全て上品な中年女性ばかりであり、同行して来たのは少女の通うハイスクールの校長なのである。

十五歳の少女が、一片の疑いも持たなかったのも当然のことだったろう。

その瞬間から少女の生活は彼女たちの保護下に置かれ、それまで両親と住み暮らしていたウォークアップアパートメントから、プール付きの高級住宅に移り住み奇妙な共同生活が始まった。

少女にして見れば、その異常な状況をあと半年だけ辛抱すれば、とりあえず義務教育課程だけは修了することが出来るのである。

(筆者註:日本と異なり合衆国ではハイスクールまでが義務教育。)

両親の死については、警察によって完全な自損事故と判断されたこともあり、結局少女の手元には一万ドルも残らなかったのだが、それでなお経済的には不自由することが無かったからだ。

無論従前どおりに通学し卒業も果たしたが、同時に三人の女性からもさまざまなレクチャーを受けることになり、その過程で、自身が秋津州の王妃候補に擬せられていることもおぼろげに知った。

そのことに関連して、少女は五年前の新聞記事のスクラップや記録映像も大量に見せられた筈だ。

そこにはさまざまな人物が登場したろうが、その中に自身に瓜二つの女性を見出すまでにたいした時間は要さなかったに違いない。

しかも、その女性はあの秋津州国王の初恋の相手とされ、二人の仲睦まじい姿を捉えた報道映像まで残っており、少なくとも当時はかなりの有名人だったと言って良い。

記事によれば、その女性自身は戦火の中で悲劇的な死を遂げてしまうのだが、国王は即座に復仇を果たしたとされている。

何しろ、複数の国家から一方的な武力侵攻を受けながら、程なく凄まじい反転攻勢に移り、全ての敵地を完全占領して記録的な大勝を博したほどだと言う。

記事は、当時十九歳になったばかりの国王について、世界で最もタフな男性と評しており、少女自身もそのように感じたことは確かだ。

しかもその人は、未だローティーンの頃から異星人による侵略まで受けながら、一度も屈服したことが無いのだと言う。

丹波が武力侵攻を受けた当時、高々十四歳の少年王が、燃え盛る戦火の中で、屈服するくらいなら討ち死にした方がましだと言ったとされており、少女にとってのそのイメージは手に負えない乱暴者の表情すら垣間見せ、荒れ狂う猛獣のように感じさせたことは確かだ。

現に記事の多くは秋津州戦争を経てからのものであり、多くの場合、それは圧倒的な力を持った畏怖すべきものと捉えられており、それから比べれば、少女の周辺にいる男どもとはかけ離れた存在だったことも想像に難くない。

結局彼女は、この奇妙な共同生活は二度と得られぬ絶好の機会だと言う「示唆」を受け続け、日本語の会話は勿論、日本と秋津州の文化に付いて学習する機会もふんだんに持つに至った。

日常において常に貴族的な挙措動作を保つことは勿論、踵の高い靴を履いて優雅に歩行する訓練まで強制され、挙句の果ては和食文化に慣れるためと称して、納豆どころか鯨肉まで食べさせられたのだ。

秋津州において王妃の座に就くにあたり、全て必須の教養課程だとされたことになる。

その学習は日々営々と続けられたが、そのお相手とされる人たるや、録画映像の中でしか会うことの無い人物だ。

ちなみに当時の少女には、当然ながら結婚に関する選択の自由も保障されており、その手の施設に入ることさえ覚悟すれば全てを忌避する自由もあった。

少なくとも、少女自身にその自覚はあった筈だ。

現に、校長はその都度立会人を同席させた上で、再三個人面談を実施してそのことを伝え続け、かつ少女の意思の在り処を幾たびも尋ねた。

しかし、それでなお少女が忌避しなかった理由がある。

その特殊な生活は当初の間こそ違和感を伴うものであったが、その後徐々に周辺事情を知るに及んで、彼女自身の内面で重大な変化が起こり、やがてそのイメージの中の王妃と言うポジションが、人知れず黄金の輝きを放ち始めたからだ。

実際、画面の中で日々見入って来た問題のお相手の風貌は、少なくとも不快感を伴うものでは無く、それどころかその立ち居振る舞いを好もしく思うことさえあったほどだ。

まして、その人の力が、合衆国どころか世界の命運をさえ左右してしまうほど圧倒的なものであることを、否応無く認識させられてしまった。

三人の女性などは世界の王だと言い、ワシントンでは、密かに魔王と呼ぶ者さえいることも知った。

その当時、少女の持つ特殊な境遇が、彼女をして強力な庇護者を求めるようしきりにその背を押し続け、なおかつ少女に、庇護者として最高の条件を具える者の後ろ姿を、常に恣意的に美化して見せ続けたことは確かだろう。

しかも、再来年の春にはこの地球が全く滅んでしまうことまで公表され、それまでに人類は悉く丹波に避難する必要があるが、その丹波を領有していたのが他ならぬその魔王だと言う。

詰まり、合衆国ですらその人の領地に間借りさせてもらう形になるのだ。

その人は、丹波唯一の衛星ばかりか、丹後や但馬や佐渡などと言う他の天体まで「所有」し、その全てにおいて屹立した王であって、信じ難いほど強大な軍事力を具えていることから、不用意に怒らせてしまえば、この合衆国など一噛みに出来てしまうほどの猛獣なのだと言う。

三人の専任教師は、絶えず誰かしらかが傍にいて実にさまざまの情報を伝え続けた。

その結果、少女にとってのその人のイメージは、恐れと憧れを綯い交ぜ(ないまぜ)にしたものとなって行き、今日のイベントが彼女になおのこと緊張を強いてしまったのも無理は無い。

その上で少女は、内務省と言う名の宮殿に足を踏み入れている。

その建物に入る前から膝に震えを覚え、エレベータを降りてから美しい女性秘書官に導かれて行く間も、まるで雲の上を歩いているような気がして足元が定まらなかったほどだ。

先に立つ補佐官の背中を見ながら半ば夢心地で回廊を進み、やがて重厚かつ豪奢な調度類に目を奪われながら、遂に目的の部屋に入ったのである。

その人は、確かにそこにいた。

今、頑丈そうな執務机を離れ、東洋人にしては並外れて長身のその人が歩み寄ってきたのだ。

てっきり軍装とばかり思っていたのに、意外にもその人は濃いグレーのスーツを着て握手を求めてくる。

だが、少女は恐れと羞恥で顔を上げることも出来ない。

「我が秋津州にようこそ。」

教習用の映像で経験した通り、実に野太い声が響き、思わず胸が震えてしまった。

「・・・。」

習い覚えた筈の挨拶が、この肝心の場面で出て来ないのである。

おずおずと手を差し出すと、大きな手が包み込むようにして握り込んでくれた。

「済まぬ。緊張させてしまったかな。」

「お目にかかれて光栄でございます。」

やっと、予定していた挨拶が出来たのだ。

このとき、一・二歩下がったところから補佐官の挨拶があった。

「陛下、ご配慮を賜り心からおん礼申し上げます。」

その人は補佐官に目礼を返しただけで直ぐに向き直った。

「よろしければ、お茶にしましょうか。」

私の目の奥を覗き込むようにして仰るのだ。

驚くほど優しい語調に出会い、思わずこくりと頷いてしまった。

たっぷりとした応接セットに補佐官と並んで席を与えられ、座に着くとテーブルを挟んで正面がその人の席であった。

先ほど案内してくれた女性秘書官がワゴンを押して来て、たちまちお茶がセットされたが、このサコミズと言う名の美しい女性に付いても勿論学習済みだ。

壁際に控えたイノウエ隊長は長剣を腰に微動だにせず、意外にももう一人お傍にいる筈の田中さんと言う日本人の姿はどこにも見えない。

およそ五十平方メートルほどの空間が、衣擦れと茶器の触れ合う音のほかは静けさに満ちていた。

恐らく、完璧な防音設備が整っているのだろう。

隣の補佐官に倣ってティーカップを口に運ぶと、とても良い香りが漂い、それを味わう内にやっと人心地がついた気がして改めて正面を見ることが出来た。

濃い眉の下のその目が優しさに満ちているように感じられ、思わず微笑んでしまったが、その人もまた自然に微笑み返してくれるのだ。

少女の目には、到底野獣には見えなかったのである。

気が付けば、隣の補佐官がしきりに目配せをしている。

あ、そうだった。

もう一つ予定していたご挨拶があったのを思い出し、あわてて立ち上がったので足がテーブルを揺らし、茶器が騒がしい音を立てた。

「あの、心からお悔やみを申し上げます。」

それは、あまりに唐突に過ぎたかも知れない。

「ありがとう。そなたも二親を亡くされたとお聞きしたが、衷心からご哀悼申し上げる。」

「まあ、ご存知でいらしたなんて。」

「うむ、一昨日、そなたが拝謁を願い出ていると聞いたが、そのときにいろいろと報告があったのだ。」

「あのう・・・。」

どんな報告だったのだろう。

「ん。」

「・・・。」

「悪い報告は無かったから安心しなさい。」

にこにこと微笑んでいらっしゃる。

「まあ・・・。」

「ところでご不幸は去年の十二月だったそうですな。突然のことで大変だったでしょう。」

まるで全身を優しく包み込まれたような気がした。

「ありがとうございます。そのときは、ただ、もうびっくりして哀しくて・・・・。」

「うむうむ。」

「でも、陛下だってご一族の方々をいっぺんに・・・。」

「うむ、そなたより一月(ひとつき)ほど前のことであった。」

「一度お参りに行かせて下さいませ。」

献花台のあるその場所は、一般人の立ち入りは厳しく制限されていると聞いていたのである。

「ありがとう。」

「わたくしも、それ以来一人ぼっちでございますから。」

「失礼だが、未だ十五歳だそうですな。」

その言葉も優しさに満ちていた。

「さようでございます。」

「そうか、十五歳か。」

その人の視線は虚空を彷徨い、遠く彼方を見据えておられるようだ。

はっと思い当たった。

「そのころの陛下は、戦いの最中だったようにお聞きしましたが。」

自分でも思いがけない言葉が口をついて出た。

その人は十四歳から十五歳にかけて、死を賭して防衛戦を闘っていらしたことを思い出したのだ。

「よくご存知ですな。」

「はい、いろいろと勉強致しましたので。」

「あっはっはっ、なかなか素直でよろしい。」

豪快に笑ってらっしゃる。

褒められたのかしら。

「まっ・・・。」

それにしても、なんて優しい目なんだろう。

その目に真正面から見つめられて、耳たぶまで真っ赤になってしまった。

理想の配偶者像をその人に擬(なぞら)えている自分に、改めて気付かされたのである。

「多少、気が楽になったかな。」

しばらく間を置いてから、ぽつりと仰ったのだ。

「はい。」

そのお心遣いが身に沁みて嬉しくて、先ほどまでの緊張が、まるで嘘のように溶けて行くような気がする。

「実は、昨夜大勢で酒盛りをやらかしましてな。それ以来わたしもずいぶん気が楽になりました。」

「では、陛下も昨夜までは緊張しておられたのでございますか?」

「うむ、よほど張り詰めておったようだ。」

「あのう・・・、それはわたくしとの約束があったせいなのでしょうか?」

無論乙女らしい勘違いだ。

「そうだとも、確かにその通りだ。」

お顔が笑み崩れていらっしゃる。

「陛下ほどの方でも、そんなことがおありになるなんて驚きましたわ。」

この方は、初恋の人とそっくりの自分との邂逅を心待ちにしてらしたのだ。

胸の奥に自然な優越感が湧いて来て、心に不思議なゆとりが生まれたのである。

「何も驚くことはあるまい。」

「でも、陛下は既に史上空前の覇王でいらっしゃるとお聞きしておりますから、そのようなことがおありになるなんて夢にも思いませんでしたわ。」

横で聞いているタイラーは、はらはらするばかりだ。

第一、この覇王などと言う物言いは、取りようによっては、かなり非礼な表現になると言って良い。

「ふむ、覇王と申すか。」

タイラーの心配をよそに、覇王自身は相も変わらぬ柔らかな表情だ。

「はい、そのように学習致しました。」

「中には、そのように申す者もおるであろうな。」

「では、そのような評価は相応しくないと仰せなのでございますか?」

「いや、我が身の行いを省みるばかりだ。」

タイラーは驚いた。

何と、魔王が「覇王」と評される行動を取って来たことを反省すると言ったことになる。

「目指すは王道だと仰せなのでしょうか?」

「いや、常々狩人や漁師でありたいと考えておるくらいで、統治者の道はわたしには不向きなのだ。」

「まあ、ご本心でございますか。」

少女は無邪気なのか豪胆なのか大胆な発言ばかり連発しているが、タイラーからすれば、このようなパターンで反問するなど非礼極まりないことに思えてしまう。

「わたしには、またぎや農夫の暮らしが似合いだと思っておる。現に十八になるまで、日々そのような暮らしぶりであったわ。」

「またぎ・・・でございますか?」

流石にこれは、少女の語彙の中には存在しないものだったのだろう。

「うむ、野山を駆け、大海に船を出し、狩りをして日々を暮らすのだ。」

「まあ、素晴らしい。是非お供させていただきとう存じますわ。」

「ほほう、このようなことに興趣を催すと申すか?」

タイラーからすれば、驚くほど軽やかに会話が進んでおり、これはワシントンにとって決して悪い兆候では無い。

「はい、是非見てみたいと思います。」

少女は、目を輝かしてしまっている。

「それなれば、我が秘蔵の隠し沢を案内(あない)して遣わそうかな。」

その隠し沢は魔王の「秘密の」漁場を意味するのだろうが、それこそが隠された軍事拠点であるかも知れず、タイラーにはその重大性がひしひしと伝わって来る。

「まあ、嬉しい。」

思わず子供のような声を上げてしまった。

「それほど見たいと申すか?」

「勿論でございます。」

「それでは、秘書官を紹介しておこう。」

目配せ一つで美しい秘書官が歩み寄り、驚くほど恭しい態度で名刺を差し出した。

無論、少女を王の賓客として遇しているのである。

「いつにても、ご希望を聞いて差し上げなさい。」

えっと思った。

その人は、確かに秘書官に「いつにても」とお命じになられたのだ。

早速連れて行っていただきたいけれど、どんな服装を整えたらいいのか、まさか、ジーンズにスポーツシューズじゃ失礼だろうし、帰ったらスタイリストさんに相談して見よう。

それに、こう言う場合サンドイッチぐらいは作って行きたいけど、どんな具を入れたら喜んでいただけるのかしら。

それとも、最近習い覚えた日本流のおにぎりの方がお好きなのかしら。

焼いたサーモンのおにぎりなら私だって大好きだし、そうなるとやっぱり梅干しは欠かせないだろうし、とにかく、国王陛下とバスケットを持ってピクニックに出かけるのである。

少女の胸の夢想世界が、まるで夏の空に浮かぶ入道雲のように膨らんでしまったとしても、誰にも責めることは出来ないだろう。

一方タイラーの方はこの成り行きにただ茫然としていたが、この少女の魔王に対する威力が徒ならぬものであることだけは確信出来たのだ。

直後に作成されるレポートにおいて、少女はその威力に関して必要以上の修飾語に彩られて登場して来るに違いない。

 ◆ 目次ページに戻る

  1. 2007/11/02(金) 15:38:06|
  2. 妄想小説 主権国家|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:0
前のページ 次のページ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。