日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 123

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さて、この頃の丹波では地球の「その後」に関してもさまざまに情報が氾濫し、その地は既に人類の生存には適さない状況にあることが明らかにされつつある。

自然その映像にしてもブラウン管を通して多くの人々が頻繁に目にした筈であり、彼等の全てが、その故郷の地が既に激変してしまっている光景を視覚的に受け止めたことにはなるのだろう。

何せそこには一木一草見ることは無く、大アマゾンを始め、かつては名だたる森林地帯だった領域でさえ全て枯れ果ててしまっており、その荒涼たる風景が庶民に与えた衝撃は相当なものがあったに違いない。

それこそ白骨のような枯れ木が延々と続き、その地に再び緑が復活するまでには、気の遠くなるほどの時間を必要としていることを物語っていたからだ。

地表を動き回る生物の姿は全く認められず、大型動物の死骸が諸方に朽ち果てようとしており、空を飛ぶ鳥の姿さえ全く見掛けることが無いのである。

辛うじて生き延びることを得たのは洞窟の暗闇に棲む小動物や苔くらいのもので、それでさえ明るい陽の光を一瞬でも浴びればそれで最期だ。

元々地盤が脆弱だった地域が緑を失って益々脆弱化が進み、各地で大規模な地滑りや崩落が相次ぎ、大洪水の爪痕までそちこちに見受けられ、山川の形状が激変してしまっている風景まで目に写るのだ。

大気中のオゾン層は悉く破壊され尽くし、回復するにはどれほどの期間を要するかも不明とされ、その間はUVC紫外線と言う死に神が絶えず地表を直撃し続け、暗闇で僅かに生き延びることを得たものたちにしても、生物である限りそれを浴びれば全て一瞬で死滅してしまうのである。

そこへ持って来て、諸方に従来から噴火する火山の姿があり、しかも延々と燃え広がる山火事がある。

枯れ木や枯れ草が益々延焼の火の手を煽り、各地の巨大都市もその多くが既に燃え尽きていたとは言え、一部には未だに燃え続けているものがあり、延焼を食い止めようとする者が存在しない以上、いずれその炎は地表の多くを燃やし尽くしてしまうことだろう。

それらの炎が大気中の酸素濃度を急速に減少させつつある上に、酸素発生型の光合成をなすべき生物が存在しない以上、結果は知れている。

地球は既に低地においてさえ一般の人間の必要とする酸素濃度を失いつつあり、そのこと一つとっても、人類の住処(すみか)としては既に滅んでしまったと言うべきだ。

いずれにしても遠からず地表の多くが砂漠と化す運命にある以上、その表層部が再び養分を取り戻すためには、プレートテクニクス理論に則って全ての大陸が大移動を続け、その地表にも大変化を齎してくれるまで待たねばならぬと唱える者さえいる上に、一部に至っては、数億年後の地球では酸素を不要とする生物ばかりが、大手を振って闊歩しているかもしれないと指摘しているほどなのだ。

さまざまな説があるにせよ、各国当局が公式に認めている説においては、人類の生存に適するまでに地球の自然が回復するのは、少なくとも何十世代も後のこととされていることがひとしお重大だったろう。

秋津州財団の研究員にしても再三地球に飛んでいるが、主要各国が揃って秋津州に請願し「地球探索」のための調査団を派遣したこともあり、今やこの推測の正当性が各国政府によって公式に裏付けられたことにより、そのことを疑う者は先ず希なのである。

だが、ごく一部とは言いながらそのことに懐疑的な論をなすものもおり、中には全面的に否定的な立場に立つ者もいないわけでは無い。

現在、齎されている地球の映像情報なども全て捏造だと主張する者もおり、メディアの中にさえそのような論をなす例があり、ましてイエローペーパーと呼ばれるモノの中などにはとんでもない奇論を展開するケースが目立ち、その者等の見解では、地球はいまだに健全な自然環境を保持していることになっており、全ての発端は意図的に企てられた謀略に起因すると決め付けた上、その謀略の張本人があたかも秋津州国王ででもあるかのように匂わすのである。

現に全人類が丹波と言うこの惑星に移住を果たした今、一人秋津州国王ばかりが絶対の権力を益々確固たるものとし、世界に覇を唱えているではないかと力説するのだ。

詰まり、今次の移住騒動で唯一最大の受益者こそ国王であって、そのために企図された謀略であったと示唆するのである。

無論これ等の奇論もあくまでレアケースであって、殆どの場合正統な議論と見る者はいないが、中にはそれらの動きに対し、激しい反応を見せる人間もいなかったわけではない。

本来なら、財団研究所の常任研究員、松川徳治氏などその最たるものだったとしても不思議は無いだろう。

そもそも今回のガンマ線バースト騒動においては、その学術的考査を行って最初に発表した者こそこの松川博士その人であって、そのいきさつから言っても、少なくとも反論の機会を欲したことだけは確かだろうが、かと言って学会の専門誌の紙面を用いるには、相手側の論理があまりに正当性に欠けるばかりか、それらのメディアは極めて娯楽性の高い雑誌ばかりなのである。

少なくとも、学究の徒たる者がまともに相手にするような代物で無いことだけは確かで、無論博士自身は沈黙しているが、一方に当然沈黙しない者もいた。

ヤマトサロンにおいてなどは、国王が卑劣な謀略の張本人とされたことには、並み居るメンバーが斉しく憤りをあらわにしており、殊に、近頃その内部で久我妙子(こがたえこ)と呼ばれつつある女性などは、かなり激昂して田中盛重に詰め寄ったと言われている。

彼女達は、国王がその後の地球の姿にも存分に接する機会を持ち、当然豊富なデータの蓄積もありながら、我関せずと言う態度であり続けていることに批判的なのであり、言ってみれば、このような故無き誹謗中傷を受けてなお沈黙している国王の姿勢に対して不満を抱いていることになる。

この点においては、新参者の久我妙子女史の抱く不満が最も甚だしいとされているが、この女性とは無論かつてのタエコ嬢のことであり、今やサロンにおいても国王陛下の義兄の暗黙の配偶者として遇されており、国王との個人的交友にしても昨日や今日のことでは無い。

しかも、その性格から言っても元々遠慮などするタイプとは程遠く、田中盛重などでは到底太刀打ち出来ない上に、新田から見ても大いに苦手とする人物でもあり、近頃ではある意味ヤマトサロンに旋風を巻き起こしていると言って良いほどだ。

尤も、その歯に衣着せぬ物言い一つとっても、全ては秋津州王家に対する強烈な身びいきから来ているものばかりであり、それが高じてひいきの引き倒しになってしまう場面も無いではないが、みどりなどから見ればときに頼もしい味方にもなり得る存在なのである。


暦は巡り二千十一年の十一月二十二日に至り、磐余の池の宮島においてある催しがあり、その参加者はと言えばヤマトサロンのメンバーばかりだとは言いながら、新田や田中を始め普段は滅多に顔を見せない久我正嘉氏まで顔を揃えたと言うから驚きだ。

無論、国王を中心に特別の故人を偲ぶための集いなのだが、とにもかくにも、国王が何よりも大切な家族を奪われてしまってからまる三年の年月(としつき)が流れたことになる。

又この日は、奇しくもローズ・ラブ・ヒューイットの十八歳の誕生日にあたるのだが、国王の周辺ではこの日は暗黙の物忌みの日として斉しく認知されてきており、その誕生祝いの宴は少なくともその日には開かれることはなかったとされている。

そして数日が経ち師走の声を聞く頃、王宮の二番区域において改めて祝宴が催されることになったのだが、もう一人の王家の住人横山咲子嬢が来る十五日に二十歳の誕生日を迎えるに当たり、ローズ譲のそれと合同で祝うことになったと言うのである。

新田自身がその妻から耳にしているところでは、その実施について最も声高に主張していたのは久我夫人だったとは言うが、どう表現しようと、その主催者はヤマトサロンそのものだと言って良い。

ヤマトサロン自体、こと王家の家庭的な行事に限れば、その圧倒的な影響力は覆うべくも無いと囁かれるほどで、その宴に改めて出席の義務を負わされた格好の国王も一言の苦情も出さなかったと言う。

近頃では、王家のこのありさまがNBSを始め各メディアの取り上げるところとなり、各界の微苦笑を誘うに至っており、さしもの覇王が家庭内においては、すっかり尻に布かれてしまっているとする論調が盛んだ。

とにもかくにも、このヤマトサロンには多種多様の女性たちが結集していることになるが、殊に久我夫人などは王家のキッチンにまで始終顔を出し、二人の「側室」から親身に和風料理を学んでいるとされ、美少女たちとも濃密な人間関係を築きつつあると言う。

いずれにしても、サロンの中で久我夫人の天真爛漫で恬淡たる性向が好意を以て受け入れられ、今や押しも押されぬ主要メンバーの一人と看做されていることだけは確かなのである。


やがて二千十二年の正月を迎え、八雲の郷はこの一の荘でさえ少なからぬ積雪を見ており、ましてや北方に連なる山並の頂(いただき)辺りなどはとうに真っ白に染まり、きたるべき春を悠然と待ち構えている風情だ。

例によって、除雪作業の為に相当規模の国軍が出動しており、午後に開かれる賀詞交歓会の来客たちからも、さぞかし感謝されることにはなるのだろう。

土竜庵には例年通り若者が訪れ、その膝の上では三歳になったばかりの源太郎がはしゃいでおり、ここ数年のあれこれを思えば、亭主の新田にとっては久方振りに訪れたのどやかな新春と言って良いほどで、心づくしの手料理をいそいそと運ぶ妻の体内では新しい命がすくすくと育ちつつある上、聞けば岡部のところも又同様だと言う。

昨今では、大和文化圏以外でさえその経済活動が活気を取り戻しつつあるとされ、その復興も予想を覆すほど順調に運んでいると見ており、ヤマトサロンの勢いが増して、その声が聊か耳に障ることを除けば殆ど事も無い正月の筈だったのだ。

新田からすれば、人類が未曾有の大災害を蒙ったとは言いながら、全てにおいて順風満帆だったと言って良いのである。

ところが、ある話をきっかけに事態が一変してしまった。

本来若者との酒盛りは一際美味な雪見酒を味わえる絶好の好機だったものが、思いもよらぬ情報に接し、又しても、大きな屈託を抱えることになってしまったのである。

情報源は無論若者だが、そのときは、どうやら二人切りになるのをお待ちになっておられたものらしく、妻が席を立つのを見計らってからひっそりと仰せになったのだ。

未だ不確定要素が多いこともあり秘中の秘との仰せだったが、こっちは、それを聞いた途端顔色を変えてしまうほど衝撃的な内容であり、情け無いことにその後の雪見酒が満足に喉を通らなくなってしまったほどだ。

ご自身は平然と酒盃を傾けながら仰せになるのだが、話の中身は尋常ではない。

何と、重大な脅威となり得る者が暗黒の彼方を航行中であるらしい。

それも単に航行中なだけならまだしも、現在この丹波との距離を毎秒三万キロも狭めつつあり、そのままで進んだ場合、一年以内でこの丹波に限り無く接近することになると言う。

しかも、古ぼけたその船が、十一年前にこの星を襲った連中と同じ意匠の紋章を掲げていることから、同一の種族と看做していると仰るのだ。

眼前の窓の月に映し出されたその紋章は、今なお世界各地で用いられている「双頭の鷲」の一つと思われ、不鮮明ながら右足にハンマー、左足に王冠を握っており、自分の知る限りでは、コンスタンティノポリス総主教庁のものに最も類似していると思わせるものであった。

しかもその船は全長六百キロメートルもあろうかと言う途方もないモノで、その巨大さから見ても宇宙空間で組み立てられたものであるらしい。

また、その構造から言っても、地上で完成させたモノとは到底思えないと仰るのだ。

何せ、船体後部の中心部には言わば巨大なシャフトのようなものがあって、それを軸に常時回転し続ける部分を具えており、他の船体部分とは隔絶された居住空間を成していると言う。

半径五十キロメートルもある回転部分だけで前後に百キロメートルもの幅を持ち、そこには当然遠心力が働いており、大量の土砂は勿論森や湖まで存在し、人工太陽が複数輝いて盛んに光合成が行われていると言い、結局その部分には大気は勿論大地と空があることになる。

しかも、その人工の大地に立って上空を見上げれば、はるか五万メートルに迫る高さの大空があると言うから驚きだ。

結局、擬似重力を発生させて言わば宇宙コロニーとでも言うべきモノを形成し、そこには多数の生物が「生活」をしていると言う。

「彼等」はその空間で精妙なリサイクル機能を働かせ、巨大な冷却装置まで機能させているらしく、それらの動力源にしてもいわゆるPMEタイプのものを用いており、どうみても継続的な生存条件を確保しているとしか思えないと仰る。

又、船体の前部には複数の小型船を格納しており、それを言わば地上とのシャトル便として使用している筈だと仰るが、いざともなれば、それが恐るべき攻撃部隊として機能することになるのだろう。

現に、その小型機の多くは前年この星を襲った異星人の搭乗機に酷似しており、その意味でも前回の敵との同一性が裏付けられると言うから一大事だ。

そもそも前回は、地上付近にまで降下してきた巨大な母艦らしきものがあり、若者はその中に潜入して果敢に闘った結果ようやく撃退する事を得たのだが、その恐るべき艦影は今は一向に見当たらず、その母艦こそ言わば敵の戦艦と看做しておられることもあって鋭意探索中だと仰る。

何よりも、その恐るべき戦艦が船腹に掲げていたのがこの「双頭の鷲」だったのであり、艦影は全く異なるとは言え、同一の紋章を掲げた巨大宇宙船が現在も猛烈なスピードで接近中であることは確かで、その発見にしてもかなり偶発的なものではあったらしいが、それが、ご自身死を覚悟させられたほどの攻撃を受けた相手である以上、最大最強の敵の襲来と看做さざるを得ず、一際重視なさるのも当然だ。

前回の攻撃時にも相当な物資を略奪して行ったことも事実であり、自然、敵にとっての攻撃目標が丹波全域になることが予想される以上、その意味では我々人類が勝手に定めている国境線など、何の意味も持たないことだけは確かだろう。

無論、秋津州は密かに臨戦態勢であり、我が日本にとっても最大級の重大事項であることに変わりは無く、ことは深刻なのだ。

陛下は、敵の中に相当数の触手を潜入させて諜報に専念してらっしゃり、その異星人の個体数にしても五万から十万程度と見ておられるようで、その生体の画像データもこの目で見せていただいたが、驚いたことにその外見は純白の肌を具えたヒト(ホモ・サピエンス・サピエンス)に異ならない。

外見上、白人系ではあるが、我々「人類」と全く同じ「生物」だったのだ。

過去の戦闘の結果保存されていた微小な生体サンプルの提供を受けて、我が日本でも今後分析を進めるつもりだが、陛下のお話によると、あろうことかそのDNAはコーカソイドのものであると言い、少なくとも生物学的には我々人類と全く同種同類の「生き物」であることだけは動かないと言う。

しかも、その「異星人」たちの言語は古風なギリシャ語に似ているらしく、その会話の多くを分析中だと言うが、その航行先も意図するところも今以て不透明のままだ。

ただ、過去においてその種族がこの丹波を一方的に襲った実績を持つ以上、その目指すところに無関心ではおられず、当然の疑問についても思い切ってお尋ねをしてみた。

「しかし陛下、十一年前の話ならいざ知らず、現在のお力をお持ちになる以上、殲滅するのは容易いのではありませんか。」

聞き及ぶ範囲では、過去の激戦時には、若者の「特殊能力」は現在のそれとは比較にならないほど軽少なものでしか無かったが、現在の能力を以てすれば手も無く殲滅し得る筈だと思ったのだ。

敵を捕捉した以上、それこそ、一瞬で粉砕してしまうことさえ可能な筈なのである。

「それはそうなのですが・・・・・。」

若者は一瞬絶句したが、そのときの若者の表情は、一生忘れられないほど苦渋に満ちたものであったのだ。

何と敵の船には、どう見ても戦闘員とは思えない女性たちばかりか、驚くべきことに万に迫る子供たちの姿まで見えていると仰りながら唇をかんでいらっしゃる。

一瞬で察せざるを得ない。

今や万夫不当を以て鳴り響いているこの勇者が、非戦闘員、まして頑是無い幼児など決して殺せないことをだ。

思えば、これこそがこの若者の最大の弱点なのであり、決して他に知られてはならないと改めて思い極めたのである。

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  1. 2008/05/07(水) 20:56:37|
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