日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 126

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「だがなあ、あながち冗談とばかりも言えねえぞ。」

先輩は、頗る糞まじめな表情を浮かべて見せるのである。

「またあ、おどかさないで下さいよ。」

「ま、ポイントは、どうしても秋津州の国権を以て守りたいとお思いになるほどのモノをお持ちになれるかどうかだな。」

この予言が外れるためには、あの若者がそれほどのモノを持てるかどうかに掛かっていると仰る。

「え。」

「判らねえかよ。」

「あ、ほんとのご家族のことですよね。」

国民を守るに際し、その意思を持つ限りにおいて、国家権力以上に合法的な機能を持つ装置などいまだに存在しないことは確かなのである。

但し、その国家が弱国であっては、守りたい国民も守れなくなってしまうだけの話だ。

くどいようだが、その国が「弱国」かどうかの基準は、何も軍事的な要素だけに限って言っているわけではない。

「ふふん。」

「じゃ、先輩も・・・」

「相変わらず鈍いなあ、おめえも。」

又しても奥さまに笑われてしまったが、結局この先輩も秋津州の既存の体制を維持したいと願ってることだけは確かなのだろう。

そのために必要なファクターは、これもまた言われるまでも無いことだ。

「判りました。今後一層奮励努力致しますです。」

自国寄りの思想信条を具える後継者の誕生を待ち望んでいるのは、何も日本だけに限らないのである。

「ふふん。」

又してもせせら笑われてしまった。

「しかし、陛下のお行儀の良さには驚かされるばかりですわ。」

無論、女性とのことを指して言ったつもりでいる。

通常、女性の協力なくして後継者の誕生なぞ望めないのは当然だが、この意味での「協力」を望んでいる女性と言うだけなら、それこそごまんといるのだ。

仮に、公募などしようものなら、あっと言う間に大量の応募が殺到すること請け合いで、現に、不謹慎にもその手の企画を立てて大規模にアンケート調査をやらかしたメディアまであり、そのメディアの言い草によれば、統計学上は世界に二億人もの希望者がいることになっちゃうらしいが、若く凛々しい君主自身の魅力もさることながら、秋津州の未来の国母と言う地位の持つ輝きが、尋常一様のものでないことだけは充分に窺える結果ではある。

一時ヤマトサロンでも大いに話題となり、二人のお嬢さまなどは、その競争者の多さに恐れをなして半べそをかいたことさえあったくらいだ。

「おめえとは違うってさ。」

「勘弁して下さいよ。」

だが、この件ばかりは、なんと言われても仕方が無い。

現に、いっとき縁遠くなった筈の例のでかぱいのアメリカ娘とも近頃交際が復活しかかっている上に、あのときのロシア嬢にしても何のかんのと言いながら再び電話を掛けて来ているありさまで、あの氷のような美貌にはいささか動揺を覚えずにはいられないからだ。

例の宇宙戦争を控えて自分の値打ちが再び急騰しているのだろうが、英中仏独などからもその手の攻撃が既に始まってしまっている気配まで感じており、この分では遠からず自分の周囲は、再び花盛りの季節を迎えてしまう予感さえする今日この頃なのだ。

「尤も、陛下がおめえとおんなじでもまた困るがな。」

「あらら、陛下だって例のベリーダンスは大好きのようですよ。」

八雲の郷の三の荘には例の秋津州ロイヤルホテルがあり、そこで世界の王を篭絡する一手段として、しきりに催される妖艶極まりないイベントのことなのである。

「そりゃそうだ、男なら嫌いなやつはいねえだろう。」

伝統ある本来のベリーダンスと言うものが果たして如何なるものであったかはさて置き、現にそこで行われるイベントに限っては、男性の本能をひたすら刺激して已まないものであり、その目的から言ってもそれも当然と言うほかは無い。

しかも、初期の頃に専らプリンシパル(主役)を務めていた年配のプロダンサーも既に交代してしまっており、近頃では全て若手ばかりで占められるに至っているのである。

「先日なんか、そんなかでもぴか一のダンサーのお酌を受けてましたし。」

確かジェシカとか言うイタリア系のアメリカ娘なのだが、数あるダンサーの中でも目下お気に入りナンバーワンであることだけは動かない。

自分の目から言えば、綺麗というよりも、顔と言い体つきと言いひたすら色っぽい女で、でかぱいのアンの口振りでは、未だはたちかそこらの小娘が、満足な日本語一つ使えないくせに、既に相当なボーナスまで手にしているらしく、笑止千万にもアン自身がかなりの敵愾心に燃えている気配まで垣間見せるのだ。

デートの最中に聞かされる身にとっては鼻白むこと甚だしいが、結局、このアンにしても本音では、出来ることならと、強国秋津州の国母の地位を望んでいることに変わりは無いのである。

あんまりむかつくから、一度、「今度陛下を紹介してやるからデートしてみたら良い。」と言ってやったことがあるが、体中整形美女のくせして小鼻をひくつかせながら身を乗り出してきて、「前金で一千万払う。」とこきやがったくらいで、現に最大の好機を掴んだジェシカ嬢のアタック振りには、もう見るからに凄まじいものがあって当然だ。

「うん、聞いてる。そのダンサー相当なものらしいからな。」

「私なんか、もうくらくらするくらいのオンナです。」

「尤も、例のサロンではえらく評判が悪いらしいな。」

奥さまはかたわらでお澄まし顔でそっぽを向いてらっしゃるが、先輩はそのお顔にわざわざ視線を走らせながらの仰せだ。

「そりゃそうですわ。なんせ毒の花の匂いをぷんぷん振り撒いて、純情な陛下を迷わせようってオンナなんですから。」

「うん、うちの奥さんなんかオンナのテキだって言ってるぜ。」

その奥さまが先輩のわき腹を小突いてらっしゃる。

「まあ、敵さんが自信を持って用意した最終兵器だって言う人もいるくらいですからねえ。」

「あははっ、最終兵器はよかったな。」

「久我夫人なんか、あんなのが来たらそれこそ床(ゆか)が腐っちゃうとか言い出してますし、みどりママも、王家のエリアには一歩も足を踏み入れさせないって言って、もうえらい剣幕ですわ。」

「そんなこと言ったって、ご当人さまがお気に入りならしょうがねえだろう。」

又しても、奥さまが先輩の横っ腹を小突いている。

それも、今回はかなり力が入っていたように見えなくもない。

「まあ、陛下もいまんところ、そこまでは行ってないんですけどね。」

「サザンクロスにご招待ってえ話も聞いてるぞ。」

陛下のデートの話なのだ。

酒席でその娘にそこへのデートをせがまれて、陛下は少なくとも拒絶はなさらなかったのである。

「あれはみどりママが強硬に言いましてぶっ壊しました。」

それを耳にしたみどりが黙っているはずも無い。

「お二人の方からは何も出なかったのか。」

この場合のお二人とは、無論咲子嬢とローズ嬢のことなのだが、近頃のヤマトサロンでは専ら姫と呼ばれることが増えて来ており、今ではあの図々しいビル支局長までが好意を込めてその呼び名を使っているくらいだ。

長らくお付きの侍女たちにかしづかれながら過ごして来ている上に、迫水秘書官からの指導の甲斐もあってか、お二人とも既に充分な気品をお持ちで、その姿が例え王のキッチンにあってさえ、流石のビルも以前のようなぞんざいな接し方だけは躊躇われるのだろう。

この点でも王家の姫君たちは益々気高くお美しいのである。

賀詞交歓会などでは綺羅星の如く居並ぶ東西のご令嬢たちだが、例えどんなに美々しく着飾っていようとも、それに匹敵するほどのお方にはついぞお目にかかったことが無いくらいで、ジェシカやアンなど無論その足元にも及ばない。

「いまんとこは・・・。」

「しかし、そいつは少しヤバいかもな。」

先輩は奥さまのお顔を見ながら仰り、奥さまは奥さまで無言で頷き返してらっしゃるところを見ると、ヤマトサロンもまた、この「最終兵器」からの防衛論争で風雲急を告げているのだろう。

「でも、あんなオンナから誘われたら、私なんかもう裸足で駆け出しちゃうかもわかりません。」

派手な厚化粧が実によく映える顔立ちで、その独特の色香は何ものにも勝ると思わせずには置かないほどのものであり、あの方が男としては珍しいほど長い空閨を守ってこられたところから見ても、惹かれるのも無理はないと思えてしまうのである。

「こらこら、おまえは明日見合いする身なんだぞ、少しは言葉を慎め。」

「えへへへっ。」

「くれぐれも明日はまじめな顔してなくちゃいかんぞ。」

「判りました。」

「わかりゃいいが、おめえと言う男は調子づくと何を言い出すか判らんからな。」

先輩は世にも苦い顔を見せており、又しても鋭い鏃が飛んできそうな気配は濃厚だ。

「ところで、例の異星人の話なんですが。」

いささか身の危険を感じたこともあり、話題を変えるには絶好の話柄だったろう。

「うん。」

「確か十一年前は、無茶苦茶な攻撃をして来たヤツ等ですよねえ。」

第一波の攻撃から数えれば、既に十二年になるとも聞いている。

「そうらしいな。」

「そうらしいなって・・・」

「何が言いたい。」

「いや、ですから当時の秋津州人は無差別攻撃って言うか、相当ひどい目に会わされたって話ですよねえ。」

当時原住民としてのキャスティングを割り振られていた者は、決して少ない数ではなかった筈で、しかもその者らは脆弱な戦闘能力しか持たなかったらしく、自然劫掠強姦はおろか破壊放火などなど相当な被害を受けてしまったと聞いているのだ。

「実際は全部ヒューマノイドだったって話だな。」

「でも、少なくとも初期の頃は知らなかった筈ですよね。」

現に、一部とは言え、若く美しい外見を具えた女性型のものなんかは、そのまま拉致されてしまったほどだ。

「だから、何を言いたいんだよ。」

「ですから、普通の生き物だと思いながら残虐行為に及んだことになるって言う話ですよ。」

「ふむ。」

「言わば、ピザ島の戦いで、侵略者たちが働いた残虐行為にも通じると思うんです。」

「だろうな。」

「そう言う連中が今も着々と接近中なわけで、こっちとしても相当な覚悟でかからなくちゃなりません。」

「そりゃそうだ。今度の敵さんもオンナ子供だからと言って、遠慮してくれるような手合いじゃ無さそうだからな。」

「とにかく相当残虐な相手らしいですよね。」

「まあ、大東亜戦の米軍なんかも東京大空襲と言わず広島・長崎と言わず、相手が女子供だからって、遠慮なんかこれっぽっちもしなかったからな。」

かたわらで奥さまがうつむいてらっしゃるが、実際、東京だけでも百回を超える空襲を受けており、中でも最大の被害を蒙ったとされる東京大空襲などはその一回だけを見ても、一度に十万に迫る非戦闘員が米軍の無差別攻撃の犠牲になっているのである。

その光景を「虐殺」と言わずして、なんと言えばいいのだろう。

「ほんと、そうですよねえ。」

「地上戦じゃ、かなりの日本人女性が米兵の毒牙にかかってるしな。」

勿論、沖縄戦のことを指して言っているに違いない。

「まあ、わが栄光の帝国陸軍のこともありますから、あまりヒトのことばかりは言えませんけどね。」

「ちょっと待て、こら。」

先輩の目が細くなって、一瞬ぎらりと光ったような気がした。

「いや、先輩の仰りたいことも判るんですよ、でも敵さんの言うことも全部が全部嘘ってわけじゃないと思うんですよ。」

秋津州戦争以前の彼等がことあるごとに非難の声をあげていた、かつての帝国陸軍が大陸で働いたとされる残虐行為のことを指して言ったつもりだったのだ。

「ふうむ。」

「でしょ。」

「やっぱり今風(いまふう)の教育を受けて来た人間だなあ。」

「あ、その点先輩だって似たようなもんじゃないすか。」

「確かにな、だがオレの場合大人になってからがおめえとは違う。」

「どう違うんすか。」

半分は酒の勢いもあっただろう。

思わず口を尖らせて抵抗してしまったのである。

「オレの場合は、一応近代史を学ぼうとする意識を持ってたっつうところが大違いなんだよ。」

「それならボクだって・・・」

「おめえのは、敵さんの拵えた近代史だろが。」

両者の奉ずる近代史観の間には、相当な開きがあったことは否めない。

「でも・・・」

「ひょっとして、本気で学んだとでも言いたいのか。」

「それなりには・・・」

「じゃあ聞くが、例えば帝国陸軍が最期の最後まで貫き通した連隊衛戍(れんたいえいじゅ)主義ってえのをどう見るよ。」

「え。」

「連隊衛戍主義だよ。」

「なんすか、それ。」

「衛戍ってえのは衛も戍も両方とも『守る』って意味だ。」

「へえ。」

「連隊と言うのは、簡単に言ってしまえば、一定の自己完結能力を具えた戦闘部隊の基本単位のことだ。」

「そのくらいは知ってますよ。」

「旧陸軍の連隊それぞれが、常に一定の兵営に駐屯して訓練を繰り返しながら秋(とき)に備えていたんだが、その連隊の兵士は、連隊区と言ってその周辺の一定の市町村から徴兵・召集されてくる決まりになってたんだ。」

「そうなんすか。」

「時期に寄っちゃ多少の例外はあるが、基本的にその区域は一定で不変だ。」

「ほう。」

「これだけ聞いたら、ぴんと来るものがあるだろ。」

「へ。」

「へ、じゃねえ。」

「はい。」

「なんにも感じねえのか。」

「そう言われても・・・」

「要するにだなあ、一つの連隊に入営する兵士の出身地が常に同一の地域に固定されてたってことを言ってるんだ。他国は知らんが、我が日本はそのへんで与太って歩いてる半端モンを手当たり次第にかき集めてくるなんてこたあ金輪際しなかったのさ。名前が同じヘータイだからって、味噌も糞も一緒にされて堪るもんかい。」

先輩が皮肉を込めて言う「他国」がどこの国のことかは、今さら言うまでも無いだろう。

「あ・・・。」

「判ったか。」

「じゃ、みんな故郷が一緒ってことですか。」

「そうだ。少なくとも本籍は一緒だ。」

「そうすると、互いに血縁関係、姻戚関係が濃密で、親の代どころか、先祖代々からの知り合いばかり集まってるってことになりゃしませんか。」

「まあ、概ねそう考えていいだろうな。しかも、そう言う兵士たちが同じ釜の飯を食って共に厳しい訓練に耐え、一朝ことあれば共に戦地へ赴いて共に戦う。」

「じゃあ、出身地に残る親族や知り合いたちから見たら・・・・」

「兵士たちはみんな、郷土を守るために郷土の誇りを背負って戦っていることになる。」

「まるで地元贔屓(じもとびいき)のかたまりみたいなもんですよねえ。」

「うん、地元の高校が甲子園で闘ってるようなもんだ。」

「ですよねえ。その野球部員が全員地元の子供たちの場合なんか、ものすごい応援になりますからねえ。」

「ファインプレーや貴重なヒットでも打とうものなら、それこそ郷土の英雄だ。」

「ほんと、そうですよ。その子の親族なんか鼻高々でしょう。」

「逆に、野球部員の一部が破廉恥な不祥事を起こして出場辞退になっちゃったりしたらもうことだ。」

「悪事千里を走っちゃいますよねえ。」

「その子の親族なんか、肩身が狭いだろうねえ。」

「もう、いたたまれないでしょうね、きっと。」

「軍隊の場合はそれがもっと強く出る。」

しかも、戦勝の受益者は全国民なのだ。

地元の連隊が負けようものなら、肩身が狭いこと甚だしい。

「あ。」

「戦場で破廉恥な行為を働けば親戚一同郷土の恥だ。鼻つまみと言って良い。」

「狭い地域社会じゃあ、絶対に広まっちゃいますものねえ。」

「尤も、その行為が非難を浴びるかどうかは、全て当時の民衆の心情的規範に関わってくるがな。」

「規範が違うと・・・」

「少なくとも平時の規範とはまるっきり違う。何せ身内や知り合いの男どもが現に戦場で血みどろで戦ってるんだからな。」

「ううん。」

「まあ、そのときに生きてみなけりゃ実際の民衆の気分なんか判らねえだろうが、少なくとも戦地の男どもが勝ち残って欲しいと祈ったことだけは確かだろう。」

「それは、そうでしょうね。」

「勝ち残る為には、敵をやっつけるほかはねえんだ。味方を裏切って逃げちゃったりしたら敵前逃亡でそれこそ銃殺だ。」

「その上、故郷では親族一同が辛い想いをすることにも。」

「当時のことだ、破廉恥なことをやったら下手すりゃ孫子(まごこ)の代まで祟るだろう。」

「ほんとですね。」

「兵士の身になって考えても、身内の人間まで地域の鼻つまみになっちゃうのは死ぬほど辛い。」

「はい。」

「自分一人の問題じゃねえんだ。殊に農村地帯なんかじゃ、親戚の娘の嫁入り話にも差し支えが出て来る。」

「でしょうね。」

当時の日本においては、農村地帯の占める割合が圧倒的に大きかったことも、確かな事実なのである。

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  1. 2008/05/22(木) 15:19:20|
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