日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 130

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田中盛重の見合いから数日が経ったある日のことだが、三の荘の秋津州ロイヤルホテルに又しても国王来臨の意向が伝えられた。

直接連絡してきたのは、いつもの女性秘書官ではあったが、無論秘書官風情の自侭になることではあるまい。

しかも前回の訪れから未だ四日ほどの日数しか経ていないのだ。

このことが、獲物が益々引き寄せられつつあるさまを一層強く想起させ、ホテル側の闘志に一段の火を灯し、ひいてはタイラー補佐官の更なる期待を呼んだことも事実で、その接遇態勢に露ほどの抜かりもある筈が無いのである。

豪華絢爛たるトラップルームが専用の扱いとなっている以上、常に充分に磨き上げられており、少なくとも小一時間の余裕さえ得られれば全ての戦備を整えることは容易い。

配置につく戦士たちにしても、日々入念に戦備を整えながら、常に正午にはスタンバイを終えているほどであり、訪れのご予定が十三時と聞いても何の支障も無いと言って良い。

現実には、支障どころか、獲物と僅かな会話を持っただけでお呼び出しが掛かるのを期待してしまう者までいるくらいで、それこそ全員が一打席でも多くバッターボックスに立つことを望んでおり、戦闘準備の号令が掛かっただけで一様に色めき立ってしまうほどなのだ。

また、それを人工知能の方から言わせれば、問題の女性についてもさまざまに調査を続行中とは言いながら、最近まで消すことが躊躇われた危険信号に代わって、ようやく青信号を灯すことを得たこともあり、それを知った若者が行動に移る可能性がいよいよ高まって来ていることになる。

何しろ、おふくろさまの目的が目的であり、これまでもあらゆる機会を捉えて、その間口をひたすら広げようとして来ており、その結果が他の者の胸の内を如何に傷つけてしまおうとも、それこそ意にも介さない。

そして、おふくろ様にとって目下最も高い可能性を秘めた女体が艶麗な衣装を身に纏い、数人のバックダンサーを従えて、大切な若者の眼前で妖艶かつダイナミックに舞い踊っているところだ。

その演舞が、若者の本能をひたすら刺激することを以てその目的としている以上、それは近頃益々工夫が凝らされ、ときに獲物の眼前にまで体を寄せながら、実に微妙な腰の振り方まで披露して見せるのだ。

それは、見ようによっては卑猥としか言いようの無いほどのものであり、しかも薄物の衣装が、もともと舞姫の腹部をぎりぎりのところまで露出させてしまっている上に、ときとしてその下腹部付近ですらあからさまに透過させ、女性の全てがあわやと言うほどのものなのだ。

ときにとって、今日のお供が井上司令官と迫水秘書官の二人だけだったこともホテル側にとって重大でないことも無かったろうが、中でも彼等を驚喜させたのは、女性秘書官からひっそりと告げられた事柄だったに違いない。

しかもその二人は、魔王の意を慮ってか、はるか後方に退いたまま微動だにしていないのだ。

肝心の若者はと言えば、先ほどから全く無言のままで、心ここにあらずと言わんばかりに茫然たる様子を見せており、明らかに常とは異なる気配を漂わせてはいるものの、秘書官からのひそやかな依頼は何ものにも代え難いほどの優先度を持つものだった筈だ。

そのことは無論戦士本人にも伝えてあることから、それは明らかにその戦闘意欲に格段の火勢を加え、成功への階段を着実に上りつつあるとまで思わせたに違いない。

それが証拠に見事にくびれた腰が先ほどらい一段と妖しくくねっており、その表情に至っては実に悩ましげな色を湛えて見せているのである。

ところが、肝心の獲物の視線が定まらない。

田中盛重なら裸足で駆け出してしまっているところだったろうが、若者に限ってはそうではなかったのだ。

実のところの若者は例の索敵行に専念するあまり昨夜来一睡もしておらず、その神経は異常に研ぎ澄まされ、茫然とするどころか高ぶってさえいたのだ。

だが、そのことをホテル側は誰一人知り得てはおらず、秘書官から事前に寄せられた依頼にひたすら応えようとするのみだ。

主賓の席では選ばれた美女が一人、肌もあらわなドレス姿で酌婦を務めてはいたが、若者の横顔に密かに視線を送りつつ先ほどから無言の行を強いられてしまっており、誰の助けも得られぬままに、役目柄困惑しきっていると言って良い。

壁際のシートにも充分に着飾った数人の美女が控え、彼女達にも何かしらの異変が伝わるのだろう、やがて僅かにざわめきを呼んだようだが、今しも鮮やかに舞い納めたプリンシパルが颯爽と席に着いて、その苦境を大幅に救ってくれた筈だ。

いよいよ近頃定例の様式に座が落ち着いたと見て、壁際のシートから安堵の吐息が漏れはしたが、依然として魔王の様子に変化は見られない。

一言も発せず、ときに虚空を凝視するかと思えば、選りすぐりの酌婦たちの群れに視線を泳がせてみたりと、見ようによっては深々と呻吟しているようでもあり、いつもの軽妙闊達な姿などどこにも見あたらない。

尤も、華麗な主戦戦闘機だけは多少訝りはしても恐怖までは感じずに済んでおり、いつものように獲物に寄り添うようにして座を占め、無言の横顔に向けて一言二言語りかけながら、匂やかな体温を積極的に通わせようとする。

新たな酒を作りつつ、その右ひざが獲物の左足に触れ、太ももどうしはとうに密着と言って良いほどの状態であり、いみじくも田中盛重が評した通り、天賦の色香が十二分に発散されてそれは獲物にも伝わらない筈は無いのである。

まして今日は、秘書官からの特別の依頼がある。

その依頼が魔王の意に沿わないものである筈が無い以上、いつものような遠慮は一切無用であり、どんなに露骨なサービスをしようとも、魔王は嫌がるどころか喜び勇んで反応を返してくれる筈なのだ。

魔王のこの表情にしても、先ほど繰り返し躍動させて見せた自分の腰の動きに反応したものであったとしても少しの不思議も無いだろう。

現に自らの局所に手を添えてたくましい腰を前後に揺すりたてて見せたときなどは、自然きたるべきさまざまのシーンを思い描き、おのれ自身が欲情を覚えてしまっているくらいで、既に股間には湯気の立つほどの反応を生じさせてしまっているのだ。

全ては秘書官から齎された事前の依頼によるものとは言いながら、既にその欲情は震えが来るほどに高まって来ており、その激しさは直ぐにでも目の前のたくましい肉体にむしゃぶりついて行きたいほどなのである。

程なくして控えの酌婦どもがひっそりと席を立ち、バックダンサーはおろかお供の二人までが退室して行き、依頼された通り残るは文字通りの二人だけの世界だ。

舞姫の情欲が一段と高まりを加える中、一層光量が落とされたこともあって、薄暗い室内には今や女性歌手の切々たるバラードが嫋々とむせび泣くばかりである。


一方の若者にしてみても、左膝の拳を大胆にその手で包み込みながら、しきりに上半身を擦り寄せて来る女体をまったく意識しないわけではないが、夢想の世界のことならいざ知らず、少なくとも現実の世界でそれ以上の関係を願ったことなど一度として無いのだ。

確かにその舞い姿は、最も刺激的な興趣を運んで来てくれるものではあるが、それはあくまで観客としての域を超えさせるほどのものでは無い。

少なくとも自分の理性がそれを命じ、確かな制御を与えていると言う自負がある限り、せき止めている何ものかが堰を越えてまで溢れ出すことなどあり得ないことなのである。

しかも、今はどうしても頭の隅から去らないものがあるのだ。

殊に今回の索敵行が齎したものがさまざまに状況の変化を思わせてくれており、目下天空の人工知能の分析結果を心待ちにしているところなのだが、容易にその反応が現れて来ないのである。

無論、これほどの短時間に全ての回答が得られるとも思えないが、先ほどから酒の味を忘れさせるほどの気の高ぶりを覚えてしまっており、それを更に追い立てようとする者が隣にいる。

しかも、その感触は少なくとも不快なものではなく、それどころか女豹の発散する汗の匂いに混じって漂ってくる、かなり濃い目の香水の香りでさえ実に心地良い刺激を加えて来る。

いや、必ずしもそれは単なる香水の香りだとは言い切れまい。

益々五感が研ぎ澄まされ、女豹の発散する芳香がかつての女性工作員のそれとも微妙に重なって来るのである。

あのときの村上なにがしの場合も、連れ立って部屋に向かうさなかですら、既にこのような香りを発散させながら、我が腕にしがみつくような素振りを見せていたことを思い出す。

それは明らかに女豹の発情を示すものであって、勃然たる征服欲を掻きたてて已まないものであったのだ。

試みに、抱え込まれた左腕を用いて女豹の腰に触れてみたときに、豊かな腰が一瞬激しく脈打つさままで思い出される。

今、現実に隣にいるこの女豹が等質の香りを激しく発散させており、徹夜明けの頭脳が既にいつも以上の反応を示し始め、女の微妙な身動きが最早意識せざるを得ないほどの力を以て、そのことに大きく手を貸してしまっていると言って良い。

そうこうする内、女豹の上半身が一段とこちら側に向きを変え、しかも、その左手がこちらの内腿のあたりにひそひそと触れてきており、やがて微妙に撫でさすってきさえするのだ。

薄手の衣装を通して白い腕(かいな)が目の下間近に怪しく蠢き、それは抗いようの無い力強さで隠微な何者かを連れて来てしまう。

甚三たちでさえ席を外したところから見ても、敵は打ち合わせの上で特段の接遇を目指していることは確実であり、例えその誘いに応じたところで喜ばれこそすれ邪魔が入る気遣いは無用だ。

現に、この特別室の外は甚三たちががっしりと固めており、この私が呼ばない限り誰一人入室を許さないことは確かで、しかも隣には、触れなば落ちん風情を露骨に見せる妖艶な女体がある。

「陛下、お願いでございます。」

耳元でたどたどしい日本語が囁き、その顔を近づけて来ながらねっとりと視線を絡めて来たときには、背筋に何ものかが走ったような気がして、それが、心の奥底で期待した通りの反応を導き出しつつあることを感じてしまった。

演舞のさなかから気付いてはいたが、その衣装はあらゆる部分がいつも以上の透過性を持っており、それはその胸元であってさえ例外では無く、そこには芳醇な果実がたわわに揺れて、否応無く視界に入るのである。

しかも、いつもと違って衣装の下に下着と呼ぶべきものが見当たらず、その中心点が見事に色づいて屹立しているさまさえこの目に映ってしまっており、敵は盛んに欲情していると見た。

悩まし気な吐息が強烈な芳香を運んできて、そのことが決して演技では無いことを窺わせ、限り無いほどの高ぶりを呼び起こそうとする。

眼前にあるその目は妖しくけむり、真っ赤な唇がぬらぬらと誘っており、女豹の望んでいるものは紛れも無いが、鉄壁の理性がそれに応じることを許してはいない。

だが、女豹の動きは我が身の予想をはるかに超えて大胆であった。

こっちの左腕を抱え込みたわわな果実にすり付け、しかもその腕先をおのれの股間にまでいざなおうとするのだ。

無論、その腕は未だに制御を失ってはおらず、如何に強引に引き寄せようと図ろうともびくともするものではないが、かと言ってそれがいつまで保てるかまでの自信は無い。

何せ、焦れた女豹がやにわに右ひざを折りながら、それを強引にソファの上に運んで見せたのだ。

しかもその姿勢たるや禁じ手と言って良いほどあられもないもので、あろうことか大股を広げ、鼻息も荒げにこちら側に向き直ったことになるのだ。

見れば特別に誂えたらしい衣装は、その股間にじかに触れることを許すデザインのものであったらしく、今の動作によって大きく口を開けてしまっており、いざなわれるままにそこに手を差し伸ばしたい欲望が勃然と湧いてきてしまう。

何しろそこには煙るような若草が豊かに生い茂り、こんこんと湧きいずる泉まであわやと言う景況なのである。

欲情しきったけだものが、身を震わせながら今我が手をそこへいざなおうとしており、切なげに眉を寄せたその顔は限り無く淫らだ。

「お願い・・・・。」

淫獣が腰を突き出すようにして哀願するのだ。

まるで情欲の塊が囁いているかのように思えて、拒む意思そのものが融けて行くような気がする。

そこには充血した花弁が妖しく口を開け、しかもひたすら蜜を溢れさせてしまっており、雌獣自身が激しく欲情していることは疑いも無い。

薄暗がりの中とは言いながら、卓越した視力が隠微極まりないそのさまをはっきりと捉えているのだ。

微妙な光沢を放つ花弁には今けもの自身の左手が添えられ、その開口部を更に押し広げるさまが否応なく視界に飛び込んでくる。

そこには既に濡れそぼった肉塊が妖しく蠢いて、全てをせきたてながら、情欲の香りを盛んに溢れさせてしまっており、しかも、その左手が如何にも耐えかねたように最も淫らな仕草を見せ始めた。

真っ赤なマニュキュアに彩られた白い指がしなやかに舞い踊り、溢れ出す灼熱の溶岩を激しく攪拌するさまを茫然と瞼に焼き付けながら、今は亡き興梠(こおろぎ)の名演を密かに思い浮かべている我が身がそこにいた。

それは、この上もなく刺激的な眺めであることに変わりはない。

「はああっ・・・・」

うっすらと浮かび上がる腹筋を激しく波打たせていた雌獣が、切なげに眉根を寄せ、真っ赤な唇をかみ締めながら熱い吐息を洩らしたかと思うと、今度は右腕を後ろに突いて身を支えなおすや、一旦鎮まり掛けた白い指が再び動きを早め、豊かな腰を浮かせ気味にのたうちながら吹き上げるように叫んだ。

「おおおおっ。」

びくびくと腰を震わせ、うつろな目を泳がせながら、赤い舌がしきりに下唇を嘗め回していたが、やがて再び右腕を差し伸ばして我が左手を握り締め、自らの左手が淫らな仕草を繰り返すうちに、切迫した息遣いを荒げ吠えつくように声を上げた。

「おねがいっ。」

それは、まるで老いた漁師のようなしゃがれ声であったのだ。

眼前で、欲情に取り付かれたけものが今泣かんばかりの形相でこいねがい、いやいやをするように首を振りつつ、一方の右手が懸命に我が手を導こうとして已まない。

黒髪を振り乱したけものが、とりあえず欲しているのは我が無骨千万な指先ではあろうが、既にそこには先客がいる。

白く細い指が激しく舞い踊り、ときに最も淫らな音でさえ耳にする今、拒むべき理由など何一つ無い筈なのだ。

活動を続ける真っ赤なマニュキュアが一際鋭く目を射たそのとき、我が身の内で勃然と鎌首を擡げるものがいた。

最も猛々しいものが今目覚めを告げようとしており、それを充分に自覚している我が身が一方にあって冷ややかな視線を送ってさえいるが、胸の中にはある衝動が急速に沸き上がってきていて、しかもその荒々しさはいよいよ猛るばかりだ。

何ものにも拘束される謂れの無いその衝動が、全てを蹴散らしながら今まさに雄叫びを上げようとしたその瞬間、虚空に流れる哀切なバラードが、唐突に異なるものを連れて来てくれたのである。

それは、近頃のみどりたちが好んで姫と呼びたがるあの娘たちの実に切なげな視線だったのだ。

しかも、その視線は決して咎め立てをしているのでは無い。

それどころか、さながら哀しんでさえいたと言って良い。

我に返ったように左手を伸ばし強引にグラスを取ったが、心の中では不遜な何ものかが未だ執拗に抗いを続けており、それが胸の中に新たな葛藤を生みつつはあったが、少なくともそれを自らの意思を以て辛うじてねじ伏せることを得たのだ。

「今日はまことに良いものを見せていただいた。今後も一層のものを望んでおるぞ。」

消え入りそうな素振りの舞姫に優しく声を掛けながら、静かに席を立つ余裕さえ生まれていたのだが、心の中では、この者には特別の礼をせねばならぬだろうと思い極めていたのである。


それについて秘書官に命じながら数分後には二番区域の執務室に立ち戻り、若者は、改めて久我夫人の訪問を受け入れていた。

迫水の報せによれば、夫人はなにやら期するところあり気で、それこそ決死の面持ちだと言うのである。

「何か格別のご存念がおありとうかがったが。」

徒(ただ)ならぬ様子を見せる久我夫人なのだ。

しかも、はるか昔のこととは言いながら、あやういところまでその手で握られてしまったことのある相手でもあり、その対応には、ひとしお慎重を期す必要はあるだろう。

その背後には、みどりママの顔までちらつくのである。

「ご存念も何も、陛下はお姫たちをどうするつもりなんですかっ。」

「どうとは。」

「あの子達の身にもなってやってくださいよ。」

例によって、敵はいきなり大手門からの突入だ。

「いや・・・。」

「ですから、どうするおつもりなのかって聞いてるんですっ。」

その勢いは決して侮ることは出来ない。

「うん。」

「さっきだって、あんな女にそうとう入れ込んでたって言うじゃありませんか。」

近頃のサロンでは最終兵器と呼ぶ例まであると聞いており、あの舞姫にはよほどの反感を持つのだろう。

みどりママの強硬な申し出に応えて、問題のロイヤルホテル行きに関しては、逐一ママにも報告するよう命じてあったのだ。

早速東京から危機感溢れる電話があったのだろう。

「いや、それほどでも無いよ。」

「うそ仰いっ。」

「いや・・・。」

「とにかく今日と言う今日は、絶対逃がしませんからねっ。」

「参ったな、これは。」

「参るのはこっちの方なんですっ。」

「ところで、兄じゃにお変わりはないか。」

変わりがあるも何も、つい先日も姫たち用の刀を打ち上げたとのことで顔を合わせたばかりだ。

「そんな話をしてるんじゃありませんっ。」

美しき闘士は許すまじき剣幕だ。

「いや、謝るよ。」

ここは、謝ってしまうに如(し)くは無いだろう。

「謝ったって許してあげませんからっ、だいたいあの子たちをどう思ってるんですかっ。」

王宮に棲んでとうに家族同然の者たちだ。

「どうって・・・。」

「どうでもいいってお考えなんですかっ。」

「そんなことは無い。」

「だったら、ここは、ようく考えて返事しなさいよっ。二人共お嫁に行っちゃっていいって言うんですかっ。」

「・・・。」

「台所で料理さえ作ってれば、それでいいって仰るんですかっ。」

「いや・・・。」

「ほかの男に取られちゃっても喜んでるつもりかって聞いてるんですっ。」

「う・・・。」

現に、敵襲があれば敵兵の毒牙に掛かることもあり得る。

じりじりと胸を焦がすような想いが襲って来て、それを懸命に遠くへ押しやろうとする我が身がいる。

「どうなんですっ。嬉しいんですかっ。」

遂に敵勢は本丸まで押し寄せてきた。

「い、いや、嬉しくは無い。」

「じゃ、嬉しくは無いけど、黙ってお嫁に行かせるって言うんですかっ。」

そのとき、何かが胸の中で叫んだような気がしたのである。

「いや、許されることなら誰にも渡したくは無い。」

「それは、どちらか片っ方だけなんですかっ。」

「恥ずかしいが、両方だ。」

「それ、信じてていいんですねっ。」

ご丁寧にも、念まで押されてしまったのである。

単身切り込んできた豪傑は、言うだけのことを言って気が済んだらしくとっとと帰って行ったが、未だほんの昼下がりのことでもあり、問題の姫たちにしても学校がある筈だし、ヤマトサロンの論客どもも一人の姿も見せず、あの田中盛重も昨日からその気配さえ無い。

どうやら、日本から特別の来客があったらしい。

そこに入室する者があり、命じて置いた昼食が応接セットに程よく並んだところで、さっさと平らげてシャワーを浴びて一眠りだ。

今頃は、大和商事の名刺を持った者が手土産を携え、あのホテルを訪ねている頃だろうが、その手土産は誰にせよ決して邪魔になるモノでは無いことから、こちらの謝意だけはあの舞姫にも充分に伝わることだろう。

何せ、恥を承知であれだけの舞を舞って見せてくれたのだ。

あの妖しい息遣いが未だに耳の底に残っている気さえして、事情さえ許せば近いうちにも再び出かけて行く気になっている我が身がそこにいる。

思えば、あの舞いをそれほどまでに得難いものに感じていることになるが、それもこれも男の自然の本性だと知る今、その本心を強いて隠す気は無いのである。

だが、みどりママが柳眉を逆立てて苦情を言う光景が脳裏をかすめたことも事実であり、恐らく、必死になって妨げてくることだろうが、一方でおふくろさまの描くシナリオはそれにはまったく拘束されない筈のものなのだ。

咀嚼を重ねつつさまざまな想念が脳裏を駆け巡ったが、昨夜来一睡もしていないせいか、平らげた昼食が猛烈な睡魔を連れて来ており、大急ぎでシャワーを使い、さっさと自室のベッドにもぐりこんだが、おふくろさまが拘り抜いた帝王のベッドは、その幅三メートルもあろうかと言う頗る付きの豪華さだったのである。

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  1. 2008/06/04(水) 12:58:42|
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