日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 132

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ところが、一方で、若者にとってまったく意外なことが進行していたのである。

みどりたちが、しきりに最終兵器と呼びたがるあの舞姫の身の上にだ。

国王が供のものを引き連れて瞬時に帰館して行って程なくしてのことだが、その舞姫のもとを淑やかに訪れた美貌の者がある。

ホテル側が驚いたのは無論その美しさにあったのでは無く、それがつい先ほど王とともに引き上げて行ったばかりの女性秘書官その人だったことだろう。

だが、その装束だけは全く異なっていた。

同様に颯爽たるビジネススーツ姿ではあったが、その色合いもデザインもまったく異なっており、良く見れば靴や髪形まで違っていてその点では別人と判断するほかは無い。

まして受け取った名刺に、大和商事秘書室迫水弥寿子(やすこ)と謳ってあるところを見ると、どうやら一部のメディアに登場したこともある例の双子の姉妹のかたわれであるらしい。

無論、ホテル側が緊張しない筈は無い。

その凄艶なまでの美女が形式上民間人となってはいても、秋津州と言う国家の成り立ちから見て、王家直属の臣下であることに違いは無いからである。

しかも、その来意はホテル側にとって、或いは舞姫本人にとってこれ以上無いほどその望みに敵ったものだったのだ。

何せ、開口一番国王の意を受けて使者に立ったと言い、舞姫に真摯に謝意を述べたばかりか、大枚のプレゼントまで差し出したのだ。

帝王のプレゼントであることは紛れも無い。

いきさつから言って多少気落ちせざるを得なかった舞姫が、俄然狂喜したことは想像に難くないだろう。

少なくともおのれの演じた懸命の舞いが、いや、本来恥多きものである筈の一人遊びが、あの魔王の意に敵ったことだけは確かなのだ。

ましてこれが初めてのプレゼントである以上、魔王の帰り際の一言が単なる社交辞令でなかったことが鮮やかに証明されたようなもので、その心中に住まうものが一層激しく燃え盛ったのも無理は無い。

女は湧き上がる喜悦の中で、今さらながらそのことを思い出していた。

あのときの魔王は、確かに「今日はまことに良いものを見せていただいた。今後も一層のものを望んでおるぞ。」と仰せい出されたのだ。

「今後も一層のものを望む。」と仰せられたのである。

この場合の一層のものとは、言うまでも無くおのれの性欲をおのれ自身で満たす行為のことを指しており、すなわち「それ」を一層望まれていることになる。

今後も更に一層懸命に演じて見せよとの御諚(ごじょう)であることに違いは無いだろう。

思い起こせば事前に齎されたあのご依頼は、頃合を見て他のものを遠ざけ、二人だけの空間を作り出すことだけであったが、よって来(きた)るべきものについてはわざわざ断るまでもない筈だ。

子供ではないのだ。

世界の帝王が、秘書官の口を借りたにせよ、この私と二人切りになりたいと仰せなのである。

遂に来るべきものが来たと思った。

胸のときめきは最高潮に達し、そのことが齎したものは自分でも驚くほどの激情であって、それが止め処も無いほどの欲情を呼び起こしてしまい、あの方の視線を感じれば感じるほど益々それが高まった挙句、眠っていた淫らなけものを一気に目覚めさせてしまったのだ。

そのけものを最も強く揺り動かしたのは、あの方の熱い視線であった筈なのに、哀れなけものの願いが拒絶に会ってしまったとばかり思い込み、今の今まで、身の置き所の無いような気分さえ味わわされてしまっていたのである。

他の者には知られていないことがせめてもの救いではあったにせよ、あの方の口からいつなんどき漏れてしまうか知れたものではない。

それがどうだ。

あの方は淫らなけものをお嫌いになるどころか、一層のものをお望みであることが今改めて明らかになったのだ。

先ほどまでの憂いが全て消し飛んでしまったばかりか、それまで抱いていた負の要素がとんでもない大逆転劇まで演じてくれたことになる。

やはり、あの方だって紛れも無く一人の男だったのである。

さらに女を喜悦させたのはそのプレゼントの真の中身だ。

問題の女性秘書が恭しく差し出した封筒から出て来たのは、額面十万円(秋津州円)のチケットであったが、その額面の多寡はさて置き、それに添えるようにしてわざわざ舞姫自身の希望を尋ねられたことが一際重大であったろう。

(筆者註:秋津州円の十万は日本円では概ね三千万にあたる。)

そのお尋ねは即ち帝王ご自身のお尋ねである筈で、それもこのいきさつでわざわざのお尋ねである以上、それを叶えてくれるお気持ちがおありになるからに違いない。

そのお気持ちも無いままに、わざわざ望みを言えなどと仰る筈が無いのである。

途方も無い歓喜が湧き上がり、同時にあの方の望んでいるものが鮮明に思い浮かび、下半身のけものに再び強い疼きが走ってしまったほどだ。

そもそも戦士の望むところは、偏(ひとえ)に魔王の懐深く飛び込んでワシントンの意に沿う情報を取り、あわよくばその恩寵を蒙って帝国の世継ぎを生すところにある。

一意に目指すところは、言うまでも無く帝王の寵姫(ちょうき)の座そのものなのだ。

そして今、そこに上る階段に片足をかけた。

歓喜の中で想う事はさまざまだ。

帝王の来し方(こしかた)を見るに付け、その寵姫の座はさして多くはない。

希少とさえ言って良いほどだ。

それなのに仲間たちや関係者たちの口振りで行けば、その獲得レースは熾烈を極めているとされ、実際にエントリーしている者の数はどんなに少なく見積もっても千を超えていると言う。

現にワシントンの意を受けて参加している者だけでも、二桁ではきかない筈だと聞いており、任那や秋桜にも広く配備されているらしいし、一部の戦士などは日本の地にまで網を広げていると聞いてるし、実際このロイヤルホテルを主戦場にしているライバルだけでも二十人は超えているだろう。

あの方専用のロイヤルルームでお酌を任されてる人とか、カジノのカウンター当たりを受け持っている連中なんかにも、とても敵わないような美人がいるし、とにかく、信じられないほどの競争率なのだ。

幸か不幸か未だ鉢合わせしたことはないけど、ほかの国からも大層な戦士が挙ってエントリーしてるみたいだし、中国やロシアなんかでは、本国で完成させた陛下専用の迎賓館みたいなところに、それこそ国中から掻き集めてきてすごい特訓までやってるらしいけど、このあたしだってダンスとか日本語の会話だとか、そのほかにも結構厳しい特訓を受けて来たんだし、みんなレースに勝ち残るためなんだから、そのくらい当たり前よね。

負けるもんか、こうなったら絶対勝ち残ってやるんだから、みんな見てらっしゃい。

孤児として施設で成長し、それなりに辛酸を舐めてきた惨めな青春を、きっと何倍にもして取り返してやるんだ。

ちょっとした小銭に手を出しただけで警察に引っ張られて、散々いたぶられちゃうような生活なんかとはこれで永遠にお別れね。

あたしだって好きで泥水ばかり啜って来たわけじゃないんだし、こうなったらその頃散々ばかにしてくれた連中なんか、この足元にひれ伏させることだって出来るんだから。

あれを思いこれを思いする内に、絢爛たる夜会服に身を包んで、リムジンから颯爽と降り立つ自分の姿が心に浮かんだ。

目の前にはいろんなヒトが跪いて迎えてくれていて、そこには、有名な上院議員とか州知事の顔に混じって、未だ十三歳だったこのあたしを警察の中で暴行した警察官の姿まで見えるのだ。

ちくしょう、忘れるもんか。

このけだものにも、絶対後悔させてやるんだ。

この州知事だってハゲのインポのくせに、あたしを床に跪かせてよだれを垂らして喜んでやがったくらいだし、変態のケチのくせに、まるで汚いものでも見るみたいにしてたこの上院議員だって、今じゃ憧れの目で仰ぎ見てるじゃないか、なんだか体中がぞくぞくして来ちゃう。

いいこと。もう、このあたしを跪かせることが出来るのはあの方だけなんだからね、良くおぼえてらっしゃい。

とにかく、こうなったらあの方を絶対逃がしちゃいけないんだし、そのためなら、何だってやってやるさ。

あの方は自分にとって魔法の杖なんだと思った途端、あの方に色んなカタチで奉仕してる場面が目に浮かび、痺れるような快感さえ感じてしまっているほどで、その機会を一日も早く、そして一度でも多く掴まなくちゃいけないと改めて心に決めたのだ。

そうして魔法の杖を手にしたら、散々味わった惨めな想いを百倍にして返してやるさ。

危険な欲望で際限も無く膨らんだ風船が高々と浮揚を始めている今、女性秘書とのやり取りが、その望みに沿って運ぶことになるのも当然の成り行きではあったろうが、無論その内容は若者の知るところでは無いのである。


また、一方で東京の横山葉月のもとにも、第一報としてみどりから息せき切った電話が飛び込んで来ていた。

その件で、言わば勅使として吉川桜子が訪れる筈だが、異存があるかと言うのである。

聞けば全てローズ姫と同等の扱いだとは言うが、そう言えば王宮住まいのキャリアならあの娘(こ)の方が上なのだ。

文句を言うとしたら、反ってあっちの方だろう。

国王の閨の中で二人の少女が並び立つと言う構図に関しては、心中複雑なものが無かったわけではないが、サロンのかねてからの総意から言っても今さら異論など述べるべくも無く、無論否やは無いと応えた。

ただ、しきりに胸の中が波立ち、あらぬ想いが脳裏を駆け抜けて行ったことだけは確かで、しばらくの間動悸が収まらなかっただけなのだ。

思えば母子ともどもに久しく望んでいたことだったには違いないが、それにしてもあまりに急な話だったことでもあり、しかもあの国では一夫多妻が普通で、多い人なんか六人も七人もお妾さんがいるって聞いてるし、あれやこれやのことが頭の中を駆け巡り、花嫁の母としては一瞬うろたえてしまったのも已むを得まい。

直後に吉川桜子を公式な使者として迎え入れ、娘が秋津州の正妃の座についたことを改めて耳にするに及び、一番に憂えたのは正妃の母親たる自分の今の職業であったと言って良い。

いっそ店仕舞いして、この際娘のそばでひっそり暮らそうかとまで考えたほどだが、陛下は、逆に正妃の実母に酒の相手を望むのは不謹慎の謗りを受けることの方を憂えているくらいだと聞き、今後も同様に酒の相手を望んでおられるご様子でもある。

しかも現に、国王の母親の如き処遇を受けているみどりママの前例まであるくらいで、結局、秋津州王家にこの手の職業を忌む気配などさらさらないらしく、少なくとも陛下が、この点では現状維持を嫌っておいでになるわけではないのだろう。

ご使者の懇切な物言いは充分な説得力を発揮して、不安材料の一つが苦も無く解消したことにはなったが、その直後に娘の携帯電話に掛けた結果驚くべき事実まで知ることになるのである。

なんと、大胆にも枕まで抱えて陛下の寝室に押しかけたのは他ならぬ娘たちの方だったと聞くに至っては、もう、何も言うことは無くなってしまったと言って良い。

挙句、その口振りでは、自らの下着を自ら剥ぎ取ったのも何もかも相談づくであったらしく、少なくとも、入室する前に二人してその意思を確認しあったことだけは事実のようであり、そこまで聞けば、開いた口が塞がらないとはまさにこのことだったのである。

娘に言わせれば互いに抜け駆けは無しよと相談したまでのことのようだが、言わばまんまとしてやられたあの若者が哀れにさえ思えて来るほどだ。

何でも徹夜明けの若者は前後不覚に熟睡していたらしく、娘たちの勝手気侭な振る舞いにもその両手が従順に反応を返すばかりで、言わば一方的におもちゃにされながら、ひたすら白河夜船(しらかわよふね)の体(てい)であったらしい。

まったく、嫁入り前の娘のくせして、聞けば聞くほど呆れるほどの悪ふざけを仕掛けた気配であり、殿方の一番大切な箇所にまで代わる代わる触れてみたと言い、しまいには陛下の手を自分たちの体にまでわざわざ導いたと言うのには、もう呆れ返ってものも言えない。

尤も、側についてる女官たちから、折りに触れてその手のことも特別の指導を受けてたくらいだから、その点では二人共もう並のおぼこ娘じゃないとは思うけど、何しろ肉体的には全く未経験の乙女たちなのだ。

今夜にも訪れる破瓜(はか)の痛みに驚きゃしないかと心配したけど、そのことにも充分自覚があるようだし、今さら口を出すことでも無いだろう。

考えれば考えるほど娘たちの行動力には驚かされたけど、思えばこのあたしが「行動」したときなんか、今のローズちゃんよりもっと若かった筈なのだ。

そう考えれば、うちの咲子なんかもうハタチなんだし、それこそ年に不足は無いのである。

しかも今回のことは、陛下ご自身が二人共手放したくないと口走ったことがきっかけだったらしく、今までずっと計りかねていた王の真意がそうであると耳にしたからには、最早遠慮は無用とばかりに、溢れんばかりの自信を持って討ち入ったとさえ言うのだ。

その結果が思うだに無残な悪ふざけに発展してしまったのだろうが、それもこれも娘たちが自分から望んでしたことなのだから、これから何があろうと、こちらから苦情など言えた義理では無いだろう。

突然寝込みを襲われてうろたえる国王の顔が一瞬目に浮かびはしたが、そこまで聞けば娘たちの度胸には、反って喝采を送りたいほどの心境になってしまっているくらいだ。

あとは、王家のしきたり通りにことが進行するのをただ見守るほかは無いが、母親としてこれと言った嫁入り支度の用意も無い今、その意味でもみどりママとの連携がますます大切になってくる。

何しろ、王家の奥向きに限っては絶大な権力を持つヒトなのだ。

娘の幸せのためにも、早速出かけて行って教えを請わねばならない。

とにかく、ちょっと思ってみただけでもいろんな心配事が次から次へと湧いてきてしまい、その善後策を考えてやるのは、どう考えたって母親の役目なのだ。

いくら片親だからって、まさか、何一つ持たせぬまま、文字通りまったくの身一つで嫁がせるわけにもいかないのである。

第一、娘自身が肩身の狭い思いをするだろうし、その件だけはみどりママのアドバイスが是非とも欠かせない。

今後どんな成り行きになるにせよ、少なくとも奥向きの権力者の裏判だけは取っておくべきなのだ。

ママの場合、店も自宅もすぐ隣のビルなんだし、こうなったら、もう店どころの騒ぎじゃない、開店前の時間を利用してご報告かたがた早速出かけてみることにしよう。

尤も、常日頃のサロンからの口うるさい攻勢もあって、二人分の嫁入り道具だけは、かなり豪勢なものばかり、とうの昔に整えられていることも充分承知しており、これ以上何を用意してやったら良いのか、あれこれと思い惑うばかりだ。

また、後の話ではあるが、この嫁入り支度に関しては、一方のローズの方が実家を持たない身であることを慮り、横山家の方も自前のモノは一切用意しないことで清く決着を見ることになるのである。

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  1. 2008/06/13(金) 10:31:32|
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