日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 014

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開 戦

なお、秋津州の北西部には、麓に湖沼を抱いた山岳地帯がある。

起伏に富んだ山間部は鬱蒼たる樹林に覆われ、清冽な湧水も随所に見受けられることから、小規模の部隊が身を潜めるには格好の環境を具えており、中腹付近の窪みや洞窟には、近頃八十名ほどにまで増員された部隊が、それぞれに分散して設営していたのである。

そのそれぞれの分隊が夜陰に紛れて行動を起こし、ひそひそと下山し、その南麓に集結を終えたのが十日の午前二時丁度であった。

一方で、前もってNBSの内部に潜入していた工作員二名が、社名入りの大型バス二台を調達、既にその地点で待機しており、即座に全ての装備と部隊を乗せて進発した。

最初の行軍目標は、東南東へおよそ五十キロメートルほどの小高い丘陵地帯だったとされるが、その地点は首都までほんの指呼の間であり、麓には工作員二名が前線基地として急ごしらえの拠点まで準備中だ。

部隊は三時三十分目標の地点に到達、それまですし詰め状態であったバスから弾薬装備の一部を下ろし、軽い食事を摂って小休止、機関銃二挺と守備兵十二名を残して四時三十分再び動き出した。

この部隊は、後陣からの兵站補給などほとんどあてに出来ない状況にありながら、秋津州の完全占領を目指し、二次的には永久原動機ほか財貨の奪取をも目論んでおり、以後の糧食などは徹頭徹尾現地徴発で賄うことになるが、無論この連中には、徴発する物資の対価を支払う心算など毛頭無かった。

しごく単純に原住民から、実力を以って劫掠するだけのことだ。

諜報によれば、現下の秋津州には銃火器類も空飛ぶ兵士も全く存在せず、自軍の兵力が例え脆弱なものであっても、ごく短時間で首都を制圧し得ることを疑うものなど一人もいなかったのである。

彼らの士気は高く、その未来は必ずや栄光に輝くに違いない。

作戦は順調に進捗し、四時四十分、ついに運命の銃声が響き渡り、それはのちに歴史的な意味を持つに至る。

それは、先発させた斥候兵二名がNBSの取材クルーの車両と遭遇、銃を以って恫喝して停車させ、六名のクルー全員を射殺し、その車両二台を奪った際の銃声であった。

このことに端を発したこの紛争が、果たして厳密な意味での戦争と呼べるものかどうかは、甚だ疑問の残るところではあったろうが、この最初の犠牲者六名の中には、山麓の湖の現地案内係として臨時に雇われた秋津州住民二名が含まれており、周辺に存在していた複数の「D二」や「G四」によって、この情景の一部始終がマザーに送信され続けていたことは重要だ。

侵略者たちのこの行為もまた、期せずして貴重なデータを残すこととなったのである。

のちに世界が知ることになるその音声付の動画データによれば、このときの二名の斥候は、無抵抗の米国人居留民(いずれも白人)四名を車両から引きずり降ろし、その直後に、無情にも全く問答無用で射殺してしまっていた。

同行の秋津州人二名についても、又同様である。

なお付近には、哀れな捕虜たちが遠方と通信することを可能とするような機器類などは全く存在しない。

その車両を奪いさえすれば、それら民間人の手足を緊縛して路傍の草むらにでも放置するだけで、充分その軍事目的は達せられた筈なのだ。

その作戦行動を秘匿するためとは言いながら、この場合ほんの数分間秘匿できれば事足りたのだ。

何故ならば侵略軍の本隊は、この直後には、車両四両を使用して、そのまま秋津州の心臓部に突入する企図を固めていたからだ。

秘匿すべき作戦目的など、無いに等しいと言って良い。

然るに、目視によっても明らかに分明し得る民間外国人(白人)を、何の配慮も無く射殺してしまっている。

のちに、メディアによって広く公開されることになるこのシーンを、特に白人先進国の多くの民衆が、いったいどのような精神状態を以て繰り返し目にすることになるものか、少なくともこの時犠牲になった四人の白人たちは以って瞑すべしではあったろう。

さて、一方の秋津州側の動きだが、地上のD二から敵部隊集結の情報をマザーが受信したのは二時二十分、直ちにマザーから防衛戦闘令が発令されることになる。

地上の秋津州住民がそれを受信したのが概ね三時零零分、国防軍と名を変えた直近の村の自警団五百人ほどが、首都の議事堂前に集結を終えたのは四時三十分である。

国防軍などと言って見たところで、それはいわゆる「若衆宿」の少年部以上の者たちのことであり、十二歳以上の健常な男子の全てを含み、しかもその装備はと言えば剣帯に吊った日本刀だけであり、彼等はこの前近代的な装備を以って、機関銃まで装備した侵略軍を決然と迎え撃つことになるのだが、それは、あくまで王の許した防衛戦闘の範囲内のことでもあっただろう。

五時十分、議事堂付近で本格的な衝突が起こり、日本刀装備の国防軍五百人は瞬時にして壊滅してしまうのだが、一人として逃げ走る者はおらず文字通りの全滅であったと言う。

四台の車両に分乗し、議事堂前の広大なグラウンドに侵入した侵略者たちは、その数こそ微弱なものであったが、車両の窓越しに行われる射撃は、絶大な効果を発揮することになった。

防御のための盾も持たず、剣を振りかざしひたすら突撃して来る相手なのだ。

撃つ側にとっては、まるで平時の射撃訓練を行うのとたいした違いは無かったであろう。

また、議事堂とNBSの敷地とは、ほぼ隣接していると言って良い。

事前にある程度の情報を受け取っていたサランダインがこの情報を秘匿していたこともあって、ジャーナリストたちは何一つ知らされることは無く、身近で繰り広げられる戦闘シーンに驚愕したが、かと言ってそれを見逃すはずも無かった。

複数のカメラが捕らえ続けたその映像は全てライブで世界に発信されて行き、日本刀を抜き放ち絶望的な白兵突撃を繰り返す特異な民族性が、世界に大きな衝撃を与える役割を見事に果たした。

続いて、遅れて集結してきた他村の自警団も全く同様の装備のまま次々と突撃して行く。

とにかく、逡巡するものなど一人もいないのである。

広大なグラウンドで短時間に行われたこの戦闘で、千二百ほどの秋津州兵士が全て戦死してしまったのは確かであった。

その中には十代前半と思える少年兵が相当数含まれていて、これらも例外なく日本刀を抜き連ねて突撃して行き、数秒後にはそのことごとくが銃弾になぎ倒され、血煙を上げながらむくろとなっていった。

あげくに侵略者たちは、倒れている秋津州兵士の中を丁寧に止めを刺してまわり、議事堂前のポールに高々と赤い星の国旗を掲げ凱歌を上げたのである。

このようにして主要な戦闘はごく短時間で終結し、次いで彼等はNBSの建物に向かい、その場の全員を拘束監禁、金品を奪い一部の女性を連れ出しては犯し、そして殺した。

同時に、NBS以外の建物も捜索の対象となり、内務省裏の二棟の中では数人の女性が乱暴され無残に殺されてしまい、その中には村上優子のひどく損壊した遺体も混じっていたと言う。

結局彼女は味方の筈の兵士たちに、そうとは知らずに散々に乱暴された挙句殺されてしまったことになるのだが、このとき数人の女性の遺体が、極めて無残に扱われている場面の映像データまでがマザーの手中に残り、これもまた後にメディアの手に渡ることになるのだ。


六時零零分、遂に中国陸戦部隊千八百が上陸する。

上陸地点は、首都から南西へ三十キロメートルほどの新造なったばかりの桟橋(秋津州港)であり、軍用車両四十台ほどを含む諸々の物資が何の抵抗も受けずに続々と陸揚げされて行き、早速拠点の設営が始まった。

言わずもがなのことではあるが、彼ら中国人民軍部隊の作戦目的は、「中国領海東省」に居住しながら、いまだに秋津州国民を標榜してやまない、言わば「化外の民」を、強大な軍事力を以って服属させ、北京政府による実効支配を確立することにある。

その軍事行動の過程で、仮に戦闘が行われることになったとしても、それはあくまで「内戦」であって、断じて対外戦争などでは無いのである。

彼ら人民軍にも、かくの如く絶対的な正義が存在していたことになる。

この意味に於て、いかなる国家も容喙すべきものでは無いと信じており、勇躍して今次の作戦行動に入っていることは言うを待たない。

また、それなりの事前諜報によって、この「海東島」には一切の近代的軍事施設が存在せず、そこに住む「化外の民」どもは、哀れにも小銃一丁保持していないことについても揺るぎの無い確信があった。

北京の重鎮たちが、例の空飛ぶ怪力兵士たちの潜在的戦闘能力について、想像力を全く欠いていたことも思えば不思議なことではあったのだが、結局は現実感を伴わない潜在的な戦力など、単にその古ぼけた頭脳が受け付けなかったに過ぎないのであろう。

また、この感覚は既に首都の占領を完遂しつつある、もう一方の侵略者たちにとっても、ほぼ同様であったろうことも容易に察することが出来る。

兎に角、今回の「敵軍」たるや、ミサイルどころか、野砲一門、小銃一丁装備していないことで知られており、万一膨大な数の敵軍が天空から降ってきたとしても、その兵装はと言えば風変わりな拳銃のようなものだけであり、近代装備を具える自軍にとって、さしたる脅威とはなり得ないのである。

このような状況に於いて、中国人民軍は少なくとも数百丁の機関銃と予備弾薬だけは十二分に用意して来ており、なおかつ後発の輸送船が更なる補給をも予定している。

彼等自身凄惨な戦闘など予想もしておらず、いきおい、その作戦も単純なものにならざるを得ない。

海東島の中心部にある「化外の民」の奉ずる、議事堂や内務省なるものを真っ先に制圧して見せ、次いで三つの村々とやらを占領する。

各地域において、従わぬ者どもを瞬時に制圧し得ることについては、何の疑問もいだいてはいなかったのだ。

しかも、上陸直後最初に放った斥候の齎した情報が、この安易な先入観を更に補強することに繋がって行った。

首都に向かう方角に於ける脅威は、全く無いと言うのである。

それぞれ機関銃を搭載した軍用車両四両に、三十名を乗せた威力偵察部隊を出したのが九時丁度、上陸地点付近に設営した拠点に百名ほどの守備兵を残し、一時間遅れで本隊千六百が進発する作戦だったが、その間際になって、先発させた偵察部隊から敵と遭遇して苦戦中である旨の報告が入った。

中国人民軍は百二十名ほどを車両二十両を以て急行させ、残りの本隊は二手に分かれて進発した。

兵力に勝る彼らは少数の敵を圧倒し、苦も無く追い散らしながら首都に入り、正午にはその制圧を完了して議事堂前のポールに今度は「五星紅旗」が翻ることとなった。

NBSのいた建物は接収され、そこに司令部が置かれ、その場にいた関係者たちの拘禁状態は依然として続いたが、彼等の中から新たな犠牲者を出すことだけは免れたようだ。

短時間の掃討戦を展開しながら、司令官が「中国領海東省」が軍政下に置かれた旨を宣言する迄に、たいした時間はかからなかったのである。

尤も、掃討戦なぞと言って見たところで、残るは無力な一般住民だけなのだ。

多少なりとも戦闘能力を持った男子は、ほとんどが国防軍に加わって最初の戦闘で壊滅してしまっている上、外郭堰堤部に散在する灯台望楼を守備していた者たちにしても、それぞれ内陸に向けて移動中、ごく小規模の遭遇戦を戦って既に全く失われてしまっている。

この状況下で行われる掃討戦である以上、その結果も又知れているであろう。

緑に包まれた秋津州三箇村は、文字通り侵略者の餌食となった。

情け容赦のない略奪・強姦・殺戮・放火の実態が無数に記録され、その中には乳幼児の殺戮場面まで多数含まれていたのである。

全ての村落が放火され、黒煙が空を覆った。

その空の下では全くの狂気が全てを支配し、獣と化した兵士たちによる悪魔の宴が飽くことなく続けられ、これ等の記録が多数のヒューマノイド(秋津州住民)や「D二」、そして無数の「G四」によって、はるかな天空にあった恐るべき者に悉く送信され続けていることなぞ、侵略者たちには想像することも出来なかったに違いない。

多くの非戦闘員が避難すべき時間は相当に残されていたにも拘わらず、不思議なことに、シェルターに逃れ得た者はほんの一握りの者だけであったと言う。

のちになって、この動乱によって生き残った住民は、一パーセントにも満たないことが明らかになって行く。

実に、九十九パーセント以上が犠牲になったことになり、まさに秋津州人は殺し尽くされたと言うべきであったろう。

若者が三つの天体の巡検と諸物資の集積について具体的な指示を済ませ、一旦マザーの船に戻ったのが十五時零分、そのときには既に全てが終わってしまっていたのである。


事態を知るや、若者は秋津州の王として無論機敏に反応した。

作戦は、マザーの大船団の全てを、地球から二十万キロほどの距離にまで瞬時に移動させることから始まった。

これにより、以後船団そのものが、言わば秋津州上空の静止衛星のようにコントロールされることになる。

これまでは地球から六千万キロも離れた位置で、ただただひっそりとしていたが、事態がここまで進んでしまった以上、いまさら地球上からこちらの姿を観測されてしまうことなど恐れるに足りない。

二十万キロと言えば地球と月とのほぼ中間の位置にあたり、このあたりにまで接近しておけば、最早地上との交信の際に発生するタイムラグなど、たいした問題にはならないのである。

いずれにしても誰の助けも借りるつもりが無い以上、敢然と立って戦うか、それとも天の神にでも祈りをささげながら、従容として滅び去っていくほかに道は無い。

「命令っ。」

覚悟を決めていたこととは言え、敵は無力な一般住民、それも乳幼児に至るまで皆殺しを計ったことは確かなのだ。

それは、最も手軽な民族浄化作戦とでも言うべきものであって、殊にかの国にとって得意技であるとは言いながら、あまりに残忍なその行為には、やはり腹の底から憤怒が込み上げてきて、必要も無いのに声に出して命じてしまう。

加えて、サランダインティームも陵辱された上無惨に殺害されてしまった模様であり、ひたすら流血を恐れていたころの王の姿は既にそこには無かったのである。

「第六兵団動員。」

王の動員令に応えて、軍装の若い女性が正面の巨大なモニタの左半分に表示された。

未だ二十歳ほどにしか見えないその女性は、多少硬い表情ではあったものの、かなり整った顔立ちを具えている。

常備八個兵団の中でも、第六兵団と第七兵団は全て女性型ヒューマノイド「RC-F」で編成されており、モニタの若い女性は今回動員された第六兵団の司令官を以て任じていた。

一部の例外を除き、兵士型ヒューマノイドには発声機能は与えられていないものの、音声による会話よりもはるかに優れた通信機能を持つ。

ここで王は変わった命令を発した。

「別働部隊を全て女性部隊と交替させよ。」

現在展開中の情報収集部隊と輜重部隊の全てを、女性型兵士部隊との一斉交替を命じ、その結果、地球上に展開されている全部隊は全て女性型のものとなり、今後は当然男性型兵士「RC-M」は一体も存在しないことになる。

命令の結果、交替する部隊のそれぞれがデータの相互更新を行い、新規に投入された女性型別働隊は前任部隊のデータと任務を素晴らしいスピードで引き継いで行く。

さすがに、海洋の水中部隊の交替にはかなり手間取ったようで、全ての交替と引継ぎには十分ほどの時間を要した。

「別働部隊を第六兵団の隷下に編入せよ。」

この瞬間に、別働女性部隊を第六兵団の隷下に置くことになり、編入する側とされる側との間で膨大なデータの相互更新が開始され、ほどなくそれも完了した。

「直ちに秋津州の敵部隊を殲滅せよ。」

モニタの司令官は、無言のまま敬礼して応えている。

王の攻撃命令は、モニタの司令官を通じて次々と逓伝され、末端のD二とG四にまで伝達されるのだ。

さきほど第六兵団に編入されたばかりの情報収集部隊は、秋津州の敵兵をも全て捕捉しており、敵兵の付近で任務に付いていたD二が攻撃命令を受けた瞬間、高速ライフル弾をはるかに超えるスピードで敵兵を貫き確実に致命傷を与えて行く。

車両を用いて山岳地帯に入ろうとしていた少数の敵兵も、全て捕捉し殲滅した。

この攻撃命令はわずか数秒で確実に実行され、モニタには「命令の実行を完了しました。」と静かに表示がなされた。

「敵潜水艦の艦橋以外の全ハッチを接着せよ。」

モニタの司令官は、またもや無言の敬礼で応えている。

海中の潜水艦を捕捉追尾中の部隊は、それぞれ膨大なD二を頻繁に海面上と往復させながら水面上の味方との通信に備えており、次々に浮上してきては僅かのあいだだけ空中にとどまっているD二に対し、上空からの命令が確実に伝達されていく。

今度の命令の実行とその確認には、わずかに手間取ったようで二十分ほどの時を経てから、またもやモニタに「命令の実行を完了しました。」とのテロップが表示された。

この瞬間に、中国は無けなしの戦略原潜までが、北極海の海中で只の鉄屑と化してしまったことに気付かない。

その他の攻撃型原潜も通常型のものも、全てドック入りして大修理を行わない限り、魚雷もミサイルも発射することの出来ない只の鉄の箱にされてしまったことを、しばらくしてから知ることになるのだろう。

「海上の敵艦を沈めよ。」

これは数秒で完了した。

太平洋上はおろか秋津州湾内にいた敵艦船六艘も、その艦底に大穴を開けて瞬時に沈めてしまったのである。

このとき初めてマザーが発信した。

「敵地の軍事基地の捕捉を完了、最新データの更新を完了致しました。」

中朝の地下施設も含めて最新データの更新が完了し、作戦上の信頼性が格段に高まったことになる。

「D二とG四を以て、敵領土の軍事施設を攻撃せよ。」

敵地の軍事施設を、その直ぐ近くで捕捉し続けてきた膨大なD二とG四が、逓伝されてきた命令を受領すれば瞬時に反応する。

それぞれのD二とG四が、その分担する攻撃目標を壊滅させるために要した時間はほんの数秒だったであろう。

この命令の実行も僅か三分ほどで完了し、中朝二国は事態を把握するいとまも無く、ミサイルの一発さえ撃てずに手持ちの近代兵器の全てを失ってしまうことになった。

たったの三分間で軍用の航空機や車両、そして砲台やミサイル発射システムの全てが、超高速で飛び交うD二とG四によって文字通り壊滅してしまったのである。

地下の特別頑丈によろわれた施設にだけは、ほんの少々手こずったが、それでさえ三分以内で全て片付いてしまっている。

秋津州軍は、攻撃目標が、例え広大なユーラシア大陸の全域に分散していようが、全く問題にもしないほどの壮大な攻撃力を具えており、地上の目標物の場合など、それこそ、ほんの数秒で片付いてしまう。


敵国本土への攻撃が一段落したあと、マザーによる新たなデータ収集と更新が数回に渉って行われ、この作業には二十分ほどを要したため、王がその結果報告を受けたのは秋津州の現地で直接指揮をとっているときであった。

新たに整合性を確保されたデータは、少なくとも北半球の全域に渉ってカバーしており、今後においては南半球のものまで付加されて行き、やがて全地球規模のものに成長して行くのだろう。

ここまで事態が進んだ以上、この点でも遠慮している場合では無い。

それにしても若者の反撃は痛烈であった。

はるかな荘園からマザーの船に帰ったのが十五時零分、そして十六時零分には秋津州に戻り、その領土を完全に回復していたことになる。

つまり、領土内に直接侵入した者たちを殲滅し、なおかつ遠く離れた敵の本土にまで痛撃を加えるために要した時間が、ほんの一時間ほどでしかなかったことになるのだ。

若者は、多くを引き連れて帰国した。

それは十個中隊、約百三十万もの女性型兵士と、医療技術プログラムを組み込まれた住民タイプの者たち二百である。

各地で黒煙が上がり空を覆っており、真っ先に村々の救援救護にそのほとんどを振り向け、手元に残した一個中隊には首都圏の救護を命じた。

百三十万と言う膨大な兵員を一気に投入したことで、怪力を持った空飛ぶ兵士たちの威力が存分に発揮されることになる。

侵略者の手にかかり機能を停止させられた個体は無論多くに上っていたが、それらの個体は外見上如何にも死亡したように見せているだけで、実際には「微かな信号を発信し続ける」と言う最低限の役割だけは依然果たし続けている為、新たに出動した兵士たちは、未だ燃えている家屋の中からでさえ、秋津州住民の全てを探知し、極めて短時間の内に収容して来ることが出来た。

九月初旬と言う酷暑のさなかのことでもあり、グラウンドの南側には冷凍能力を備えた遺体安置用の巨大設備が二棟、急遽運ばれてきていた。

この設備は巨大倉庫のような外観を持ち、一棟当たり一万体もの収容能力と立体的な電動式移動ラックを備えており、女性兵士に抱えられて空中を運ばれて来る遺体が次々と収容されていき、最終的にそれは敵味方併せて九千体もの多きにのぼった。

同時に、議事堂前には百人以上の女性医療ティームを配した堂々たる野戦病院が設置され、外国人が全て優先的に治療を受けられることになった。

天空から運ばれてきた巨大な医療用施設は、潤沢な医薬品と医療設備とを備えており、付属する複数のSDによる給排水態勢も又万全で、ごく短時間のうちにその対応を為し得たが、それらの外国人の中に、たまたま重傷者がいなかったことも幸いしたであろう。

実際にNBSのメンバーが治療を受け始めたころには、天空のファクトリーで準備されていた機材や物資が続々と搬入されてきて、広大なグラウンドには巨大な集合住宅やSDが多数出現していた。

そのSDは、医療用としては当然だが、集合住宅その他の生活用水まで賄うに充分だったことに加え、一つが空になると、すぐさま入れ代わりに新たなSDが運ばれてくる手はずであることも明らかにされたのだ。

人々の混乱は、もうそれだけで静まってしまった。

この場合の集合住宅に至っては、ちょっとした高級アパートを思わせるほどのもので、標準以上の家財道具と生活用品が過不足無く揃えられていた上に、NBS関係の全員が即座に清潔な独立空間を宛がわれ、上下水道の面においてさえ立派に機能し、バスや水洗トイレが使用出来るほど素早い対応がなされていたのである。

それでも広大なグラウンドには未だ相当な余裕があり、またしても巨大な倉庫が搬入されてくる。

その倉庫には大量の衣料や食材、そしてさまざまな生活用品が収納されており、直ちにふんだんに配給を受けることが出来たほどだ。

それを目の当たりにした人々は、列を作らずともいつでも入手可能と感じた途端、もう誰も慌てなくなってしまった。

食材の中でひと際目をひいたのは、貴重な動物性蛋白源としての大量の冷凍鯨肉で、聞けば王の荘園では、鯨を粉末に加工して肥料にするほど大量に繁殖しているのだと言う。

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  1. 2005/11/01(火) 01:02:01|
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