日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 142

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その後十月の中旬になって、あるニュースが各紙の一面を賑々しく飾り立てることになった。

その報せは対異星人作戦に直接関係するものであったが、この作戦が行われた領域が途方も無い遠方である以上、無論秋津州軍以外の手になるものではない。

しかもそれが、あのドリフターの実質的な武装解除を完遂したと言う内容であったことから、それはそれで世の喝采を浴びて当然だったろうが、かと言って最大の脅威とされて来ている戦艦の行方が未だに不明のままである以上、状況が決定的に好転したと感じる者など一人もいなかったろう。

その戦艦に襲われる恐怖から解き放たれたわけでは無いのである。

従って国王の孤独な索敵行も否応無く続かざるを得ない状況にあり、しかもそれが既に九ヶ月もの長きに及んでしまっているのだ。

そのことが国王の肉体にかなりの負担を強いている筈だとして、各方面からさまざまの声が上がり始めていたのだが、一方で、陛下のケースでは連続して無重力状態にある期間が極端に短い筈だとして、それほどの問題では無いと見る向きも少なく無い。

六角庁舎から発信される公式情報では、陛下の健康管理は適切に行われているとされてはいるものの、立川みどりなどは心労のあまり葬送の儀の直後から入院してしまっており、一途に国王の身を案じるあまり体調を崩してしまったことだけは確かなのだ。

東京でその病床を見舞ったダイアンと鹿島夫人からは、病人の口説がさまざまに齎され、これを受けたヤマトサロンが、その舌鋒に一段と激しさを加えることに繋がったのである。

家族を奪われた陛下にとって今が一番お辛い時期のことでもあり、せめてもの休養だけは是非ともお取りいただくべきだと言い、そしてまた、陛下の財貨を無為に放擲するような施策の続行はその財政を破綻させる道に繋がるとして、これ以上は絶対に控えられるべきだと言うのだ。

ヤマトサロンの中でも急先鋒は例によって久我夫人であり、沈黙しがちなダイアンを尻目に涙ながらに気勢を上げていると言うが、何よりも入院中のみどりの存在が小さくない。

今では田中夫人や加納夫人までが同調して、えらい騒ぎだ。

サロンの言説は既に秋津州の「世論」にも等しいとするメディアまで出る中で、新田夫人自らがその夫に激しく迫ったほどだったと言うが、新田の心情は思うだに切ないものがあったろう。

如何せん時期が時期なのだ。

迫り来る外敵に対する迎撃態勢を固めることにしても、或いはまた世界の経済復興に努めることにしても、人類そのものの運命が掛かっている重大事項であり、どちらも決しておろそかには出来ないのである。

なかんずく今回の戦役は過去のものとは大きく異なり、戦って勝利を手にしたからと言って、戦時賠償どころか新たな経済的利得など全く得られない相手であり、それを基準に打ち立てられた陛下の基本方針は、実際の軍役は全てご自身が担われるほかは無いと言う前提に立った上で、新田には丹波の経済活性化に全力を尽くすべしとするものであったのだ。

現に、新田の手になる巨額の戦費配分が依然継続中であり、それを背景に持った異常なほどの戦争景気が、いよいよ平時レベルのものにまで循環し始めようとしているときなのだ。

各国の設備投資も大型のものでさえとうに一巡してしまっており、このままで行けば各産業界はいよいよ未曾有の収穫のときを迎える筈であり、そう言う時期に一貫性に欠ける施策を採ったりすれば、それこそ九仞の功を一簣(いつき)に虧(か)くことにもなりかねないのである。

まして、あらゆるマーケットが、国王の拠出能力の限界点に関して鵜の目鷹の目の筈であり、ここは歯を食いしばってでも、もう一踏ん張りすべきときなのだ。

皮肉なもので、産業界には戦争の終息を望まない風潮が根強く蔓延(はびこ)っており、この「戦争状態」がいま一歩長引いてくれさえすれば、秋津州資金と言う巨大な材料を失ったにしても、世界経済は充分立ち行くと豪語する者まで出ているのである。

産業界の重鎮と目される者などからは、立ち遅れた国家が急速に経済復興を成し遂げる為にも、この戦争を終えてはならないとする暴論まで飛び出して来る有様であり、しかも彼らの中には秋津州資金のコントロール如何によっては、いざと言う場合のソフトランディングも充分可能と見る向きも少なく無いと言う。

何しろ、一旦崩壊してしまった世界経済が強力な加速器を与えられたことにより、大きく浮上したばかりか、素晴らしいスピードで急上昇しつつあるときなのだ。

そう言うときに、いきなり加速器を失ってしまえば、失速して墜落し、地上に激突してしまうかも知れないのである。

少なくとも今は、加速器を外すべきでは無いだろう。

現実の世界経済は、その全体規模を見ればとうに地球時代のそれを凌駕してしてしまっており、実際にはその殆どが大和文化圏に負うところが多いとは言いながら、現にアフリカ諸国なども豊富な地下資源を持ったこともあって、驚異的な経済成長を遂げつつあるほどだ。

その地では、一部に内戦が続いているとは言いながら、その経済規模は地球時代の二百倍に達するとする声まで聞こえて来る有様で、既にアフリカは過去のアフリカでは無いのだ。

殊に新アフリカ大陸は大和文化圏に隣接すると言う地理的条件を具えており、そのことを充分に活かしている成果だと言う声も大きいが、そこには地球時代からアキツシマ学校が多数設けられて来ており、その門をくぐった児童の数に至っては五百万を超えたとされ、彼等の果たした役割も決して小さくは無い筈だ。

その因果関係に関する議論はともかくとしても、現実にアフリカと言う名の巨大市場が眼前で誕生しつつあるのである。

日本の産業界などは、当然そこへ向けて脱兎の如く駆け出してしまっている状況だ。

尤も、日本の産業界が熱い眼差しを向けている新市場はほかにもある。

それは、近頃目覚ましい経済発展を遂げているインドであり、十億もの民が壮大な経済活動を繰り広げているその地も、今や充分過ぎる市場価値を持ち始めており、良好な日印関係が築かれていることもあって、その有望性はいよいよ高いと言って良い。

とにもかくにも、人類社会は、丹波移住と異星人との戦争と言う一大変事によって激変してしまったことだけは確かだろう。

第一、それぞれの国土の持つ自然条件が地球時代とは全くかけ離れてしまっているのである。

象徴的な事例を一つ挙げれば、アメリカ合衆国を含んだ新たな北米大陸のことがあろう。

その大陸には北部にカナダがあり、中央部には小さいながらもイロコイ連邦が国旗を翻しており、南部一帯を合衆国が大きく領しているとは言うものの、その合衆国に隣接して大陸の西海岸一帯を任那の郷が大きく占めてしまっている。

この任那の郷とは言うまでも無く秋津州の飛び地領のことであり、石油を始め極めて豊富な地下資源を誇っているのだが、当初の予想を覆して合衆国領にはそれが無い。

哀しいほどに無かったのである。

移住後のその国では当然油井の試掘に狂奔したが、その結果、当初の内こそ国内需要の三十パーセントを確保し得る見通しを持ったものの、その形質が予想外に劣悪だったことに加え、近頃では各油田の埋蔵量が極めて少ないことが判明しつつあり、生産性がお世辞にも良いとは言えないことも相俟って、あろうことかその実質自給率は近い将来数パーセントにまで落ち込むとされ始めたのだ。

一部の専門家の間などでは、ほんの数年後には一パーセントを割り込んでしまうと囁かれるほどで、そう言う国土しか持てなかったことが、今や合衆国の最大の悲運とされるに至っている。

その合衆国は、地球時代とは大きく異なり、いわゆる「海外領土」と言うものを一切有してはおらず、他国の油田地帯を手に入れる以外、自給率の向上は全く見込めない状況にあり、しかも、現状では需要の多くを隣接する任那からのパイプラインに頼っていることが、国家の安全保障上、今次の異星人の問題を除けば最大の課題になりつあると言って良い。

現に、一部メディアなどは「石油の一滴は血の一滴」とするスローガンまで掲げ始めており、その状況を目の当たりにした日本人の間からは、どこかで聞いたことのあるようなスローガンだと言う声しきりなのだ。

尤も、合衆国の悲運はそれだけに留まらない。

その領土には、地球時代にあれほど豊富だったウラン鉱脈が見事なほどに皆無であり、原子力の活用に当たっては、今後はすべからく他国からの移入に頼らざるを得なくなってしまったのだ。

そうである以上、合衆国の核武装遂行能力は確実に衰亡することになり、原子力空母も原潜もその運命は自然知れているだろう。

現在懸命にカナダ領内の探査に手を貸していると囁かれてはいるが、結局それも甲斐無い結果が待っているのである。

しかし、同様の悲運は何も米国だけに留まらない。

皮肉にも、地球時代には資源大国とされていた筈のロシアですら、新たな領土では石油の自給率は三十パーセントにも満たないとされ、中国が二十パーセント、英仏独に至ってはそれぞれ二桁未満の体たらくだとされているのである。

ところが一旦振り返って見ると、大和文化圏だけが全てにおいて飛び抜けて豊富な地下資源を有しており、既にそれは他を圧するほどの存在感を示し始めているのだ。

中でも日本などは地球時代にはこの点が最大の弱点だったものだが、新たな領土においては豊富な地下資源を誇っており、ウラン鉱脈はもとより、石油一つとっても優れた油井を数多く試掘を完了しているほどであり、既に資源大国の雄と称されるに至っているほどだ。

しかも、その潜在的産油能力は国内需要を大きく上回っている筈だとされていながら、国井政権は国有油田の多くに封印を施してまで海外からの輸入を促進しており、これには賛否相俟って姦しいが、少なくとも他の産油国からは、好意のこもった眼差しを向けられていることだけは確かだろう。

尤も、地球時代のように相手側の言い値で売りつけられるような無様なことは一切起こらず、しかもいざともなれば、一切の輸入を止めてしまってもおつりが来るほどの産油能力を持つことが知れている以上、この点でも逆に日本側の主導権が強まるばかりであり、近頃では実に象徴的な変化まで起きてしまっていると言う。

ちなみに地球時代には、テキサス産原油を標準とするニューヨーク・マーカンタイル取引所で取り引きされる原油価格が、世界の原油価格に多大な影響力を誇っていたものだが、丹波移住後の世界では当然のことながら全く姿を消してしまっており、それに代わって、日本産原油を標準とする東京工業品取引所で日々取り引きされている原油価格が、その指標として既に事実上の世界標準となりつつあると言うのだ。

実際の原油取り引きも標準的なもので見れば、地球時代の実質三分の一ほどの価格で推移して来ており、しかも、一日本人としての秋津州一郎氏が国外に所有する膨大な油田が、巨大な出荷調整を自在に行える条件を具えているとされているのである。

緊密な日秋関係を思えば、市場の反応も自ずと知れているだろう。

また、日本は広大な農地を一挙に確保出来たことと相俟って、WTOなど国際間貿易の取り決めなども、過去と比べれば極めて有利な形で改変に成功したことが大きく功を奏し、超円高と言う過酷な経済環境にありながら、国井政権による積極的な支援を背に、いまや農産物の国際競争力もそこそこに見るべきものがあるとされるに至っている。

農業生産者にしても実態は未だ殆どが秋津州人ばかりなのだが、日本人の目にも農事に熱意を持てる国際環境がようやく整いつつあるとされ、いよいよ大規模農地の払い下げが始まろうとしていた。

既にコメは勿論、小麦、大豆、とうもろこしでさえ一切を自給してあまりあるほどの実績があり、食糧の自給率に至っては、カロリーベースで三百パーセントを上回る勢いを示しており、多くの耕作地をコスト高の日本人の手に委ねたあとでさえ、百五十パーセントを下回るとする声など一向に聞こえてはこない。

コスト的に競争力に劣る農産品目が一部残るにしても、あらゆる農産物を産する秋津州と言う怪物が日本の背後に絶えず見え隠れしている上、中でも玉垣の郷の農地管理が未だに鹿島大将の影響下にあると囁かれているのである。

現に鹿島閣下がかつて居所と定めた指揮所のようなものが今でも現地で稼動していて、しかも現地入りしている鹿島夫人の姿まで頻繁に見掛けられており、その地で営まれる膨大な農業生産は、全て日本人の飢餓あるときに備えてのことだと言われて久しいのだ。

実際、国王と鹿島閣下の間には当初から暗黙の了解が成っていることは確かであり、二人の越し方を見れば、その了解事項の内容については言うまでも無いことだったろう。

まして秋津州には、壮大な農耕地を具えた荘園まで控えている。

そうである以上、仮に日本全土が打ち続く飢饉に襲われ、しかも世界中が一斉に日本への出荷を停止してしまった場合でさえ、日本国民が充分喰らうに足ることになる。

更には、地球時代に勝るとも劣らないほどの広大な専管水域を確保出来ている上、優れた魚場を数多く持つに至り、しかも、今では隣接する秋桜領海での漁獲割り当てまで得てしまっており、自然、各地の漁業も活発な操業振りを見せていることもあって、最重要戦略物資とされる「食料」については、既に磐石の構えを示しつつあると言って良いほどだ。

また、異星人の襲撃を控えて当然急落する筈の地価にしても、国家警務隊の特殊な防衛能力が格別に評価された結果、他国の例と引き比べても極めて堅調な値動きを見せており、このこと一つとっても、国家の防衛力と言うものの持つ希少価値が、国民の間に改めて再評価されつつあると言う。

少なくとも日本の市場だけは、敵の占領を想定しなかったことにはなるのである。

何せ、この極めて有効な防衛力を持たなかったと仮定すれば、日本の地価は概ね十分の一にまで急落していたとするアナリストが殆どであり、仮にそうなってしまえば、金融界を始め各産業界は例外なく大打撃を免れなかった筈なのだ。

だが、現実の日本国は既に抜きん出た経済大国であり、ここ数年間に起きた種々の変動によって齎されたインフレにしても、地球時代と比べて概ね二百五十パーセント付近で落ち着きを見せており、二千パーセントを超えるハイパーインフレーションを引き起こした米国と比べてもその差は歴然としていたと言って良い。

日経平均で見ても株価は二十万前後からなお上昇圧力を感じさせてくれており、新兜町などは連日沸き立つような賑わいで、この点でも国井政権の足元を揺るがすような材料など、どこにも見当たらないと評されるに至っている。

とにかく日本経済が絶好調なのである。

それが証拠に、日本の財務官僚たちが書き上げるべき次年度の予算原案の総額にしても、軽く三百兆円を突破すると囁かれる中、肝心の税収の方が極めて好調であり、信じ難いことながら予算額をさえ上回ってしまうほどの勢いなのだ。

税収の源たるGDPに至っては、このままで行けば六千兆円も夢ではないとされ、そうであれば地球時代から見れば概ね十倍になったと言って良く、インフレによる貨幣価値の変動分を勘案してさえ優に四倍増であり、唯一秋津州のそれには及ばないにしても、欧米諸国の猛追を完全に振り切ってしまっている状況だ。

しかも、このような爆発的な経済成長と大幅なインフレが、かねてより負っていた巨額の財政赤字を、額面上はともかく実質的には五分の一にまで縮小させてくれている今、国際社会の荒波を乗り切って行くためにも、順調な経済成長が必須要件であることをいよいよ強く思わせるのである。

また一方で、新田の秋桜資金にしても大和商事の主導で極めて優位に運用され続けており、一部のアナリストの試算によれば、その資産総額は既に日本円換算で二千兆円を超えるのではないかとまで囁かれるほどであり、しかもその費消にあたっては公的なものに限るとする基本姿勢が未だに微動だにしていない。

世上、新田と岡部の腹はとうに決まっていて、いざともなれば敷島特会の金庫に怒涛のように注がれる筈だと囁かれ、巨額の資金の行方はあらゆるマーケットから今や注目の的だと言って良いだろう。

このでこぼこコンビの連携は無論日秋関係においてもその要であることは確かだが、ただ、岡部夫人の差配するコーギル社が超巨大コングロマリットとして、近頃繁栄の極みにあるとする声も無いではない。

何せ、そのダイアンは秋津州国王とも特別のパイプを持つことから、豊富な情報を不断に入手して来ている筈だと囁かれている上、口さがない連中の口を借りれば、秋津州の経済面を担う特別顧問だと言うことになってしまうほどなのだ。

そのことの真偽はさて置き、現実に八雲島の一の荘に本拠を構えるその一企業が、現地の制度に則って運営され続けた結果、その納税実績一つとっても、秋津州の財政運営に大きく貢献している事実だけは動かないのである。

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  1. 2008/08/11(月) 09:42:41|
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