日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 144

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さて、一方の国王の方はと言えば、出立寸前の機内である報せを受け取ったこともあり、索敵の現地へ直行する事無く一旦天空の基地に立ち寄っていたのである。

その報せとは、敵艦の再現モデルについてのものであり、しかもCGだけで充分と言って置いたものを、何を血迷ったかその模型の断面カットモデルまで完成させてしまったと言う。

人工知能にして見れば、途方も無い余力を手にした今一層の万全を期したつもりではいるのだろうが、何はともあれ、今、眼前にあるのはドリフターと戦艦の模型であり、一万分の一の縮尺だとは言っても元のサイズがサイズなのだ。

自然巨大なものにならざるを得ず、現に円盤型戦艦の方でさえ直径が五十メートル、高さが二十メートルにも及ぶと言う代物なのである。

無論そのフォルムは、十数年前の記憶を改めてまさぐるまでも無く、かつて激闘を重ねた敵の母船そのものであり、その頂上に突き出た円柱形の膨らみを思わず見据えてしまったのも無理は無い。

その膨らみは、直径僅か五十センチ、高さに至っては二十センチにも満たないと言う小ささなのだが、その断面カットモデルを見るに及んで、その内部に極めて重要な構造物があったことを初めて知ったのだ。

当時の自分が、もしD二やG四のような触手を持っていたならば、その発見も容易であったに違いなく、直ちに壊滅的な打撃を加えることも出来た筈であり、従って地上においてあれほどの損害を蒙ることもなかった筈なのだ。

しかし、当時の自分はそれらの機能を全く欠いていたのであり、その結果迂闊にも敵の心臓部を見落としてしまったことになる。

つまり、「それ」がそれほどまでに重要なものだったことを今になって思い知ったのだ。

それは一口で言えば、同心円を以て上下に重なり合う二枚のディスクと言って良いものであり、中でも上部の一枚が比較的分厚く出来ており、その下側に位置するディスクの方は極端に薄く、しかも、それぞれが個別に回転し得る機能を持つようだ。

今、手許の窓の月のモニタはこの戦艦の俯瞰図を表示してくれており、問題の上部ディスクを捉えてその名も「居住区」と銘打ってはいるが、同じ「居住区」と言ってもドリフターのそれとは比較にならないほど小さなものでしか無い。

何せ、ドリフターの居住区の場合、その直径が百キロもあるのに対して、戦艦のそれは三キロもやっとと言うところで、自然その内部は純然たる工業製品で満ちており、大地どころか、天然自然の生き物などどこにも見当たらなかったろう。

但し、そこには二千にも及ぶ部屋がびっしりと詰まっていて、敵将が陣取る指揮所や船の運航を司る管制室が備わり、しかも万余の乗組員が宇宙服も無しに時を過ごせる条件まで具備していると言うのである。

宇宙空間においては絶えず回転して擬似重力を生み出し続ける構造でもあり、その居住区に入りさえすれば、特別の器具を用いる事無く全て平常の生活が可能になるとしており、その点に限ってはドリフターのケースと同じと言って良いが、そのほかの設えに関しては、その多くがひどく異なったものとなっており、中でも特徴的なことに、この戦艦のケースでは、それぞれの部屋自体が、あたかもジャイロスコープのような変幻自在の回転機能まで併せ持ち、その時々の重力から受ける「引力」に連動して機能すると言う。

しかも室内の装備機材の一切が床や壁に固着ないしは厳重なはめ込み式になっていて、いかなる姿勢の変化にも対応し得るものになっていると言うから徹底している。

ドリフターの場合と同様、そのディスク全体が圧力容器としての機密性を保持していることは当然だが、戦艦の場合は酸素発生型の光合成を担ってくれる植物などは一切存在せず、その代わりに酸素の補充を含む空調システムが機械的に機能して、その中での自然呼吸を許容すると言う。

また、その下部にある極薄のディスクは「調整区」と名付けられているが、それは機体全体の構造から見れば「居住区」と他の領域との中間に位置し、回転と停止を適切に行うことで双方向への通過を可能としており、その通過に当たっては数段階のエアロック施設を経る方式だが、このエアロック施設が、空気と水と言う対象の違いこそあれ、運河における閘門(こうもん)にあたると言えなくも無い。

モニタの俯瞰図によれば十箇所もの閘門が設けられており、それぞれに十干(じっかん:甲乙丙丁戊己庚辛壬癸)の一つが記されているところから、甲閘門、乙閘門、丙閘門のような称され方をしていたようだが、いずれにせよ「居住区」への出入りにあたっては必ずいずれかの閘門を経る必要があり、その中のエアロックシステムが、居住区の中の機密性を保持するためには不可欠のものとなっていることは確かだ。

詰まり、頑丈至極な魔法瓶の如き構造を持つ居住区が、このことによって乗員の必要とする気圧と酸素濃度を維持する仕組みであり、ましてその中に指揮所や管制室がある以上、真っ先にそこを潰していさえすれば戦闘そのものが早期に終息していた可能性が高いのだ。

結局、同じ戦艦の中であっても、魔法瓶以外の場所は擬似重力も無く、気圧や酸素濃度に関しても、普通の人間が宇宙服も無しにのし歩けるような環境ではなかったことになるのだが、その戦艦が丹波の低空にまで降下してきたときには、私自身が宇宙服など一切用いずに魔法瓶以外の領域で闘っていたのであり、そのことを思えば、その時に限ってはそこでも自然呼吸が可能だったことになる。

又、一方のドリフターにしてみても、その俯瞰図を見る限り、同様のエアロックシステムは勿論、極薄の円盤型「調整区」を具えており、こっちの場合の調整区はその直径が百キロにも及ぶと言う巨大さではあるが、ドリフターの居住区のサイズに合わせる必要がある以上、それはそれで当然のことだ。

尤も、このドリフターに限っては、近頃D二やG四などと共に何度も侵入を繰り返して、既にその多くを実地に検分してしまっており、今さら目新しいものは何も無いと言って良い。

しかも、今となってはこちらの関心を惹くのは例の神域ぐらいのものであり、お社(やしろ)と磐座(いわくら)あたりを中心に、その一切を切り取って移設してしまう心積もりでおり、移設先には特に父君に縁の深い胆沢城を選び、その受け入れ態勢にしても既に万全を期すよう命じていることでもあり、その後おふくろさまとの間で多少の質疑を持ったのだが、そのやり取りの最中に思いもよらぬ報告が飛び出して来たのである。

ちなみにドリフターの武装解除に関して言えば、既にタカミムスビの矢ばかりか搭載機までダミーとの入れ替えを完遂してしまっており、その全てが我が手の内にあって精査の対象となっていたのだが、その一部から例の戦艦に関してたった今驚くべき情報を得たと言うのだ。

無論、その根拠となる動画情報は直ちに検分し、その結果、戦艦の物理的消滅の事実を確信するに至り、作戦行動の自由度は最早際限も無いものになったと言って良い。

人類にとっても最大の脅威だったものが消滅していたと言うこの新事実を、急遽京子を通じて新田にも伝えさせ、あとの処理を任せたのだが、その公表に伴うあれこれに付いては、無論慎重に検討されることになるだろう。

また、暗黒の大宇宙に張り巡らせた壮大な索敵網がその役割を終えたことにより、早速その再配備に掛かるべく飛び立ったのだが、このときおふくろさまが「やさえい」に向けて発した密命が、供のものに密かに付託されていたことまでは知らなかったのである。

この事実も大分あとになってから知ることになるのだが、人工知能がこの私に知られたくない「命令」と言えば常に一つしか無いと言って良い。

いずれにせよ、この時点で我が軍が途方も無い余力を持ったことは確かであり、この直後丹後や但馬から若狭へ大量の搬送を行うと共に、一挙に四個兵団を投入してその総仕上げを命じることを得ているほどだ。

既に相当な部分で工事が進捗していたこともあり、その壮大な兵力が若狭の地に新たな秋津州の建設を成し遂げるには、その内容から言っても三月(みつき)を要することは無いと見て良い。


一方、こちらはドリフターの広大な居住区の中である。

皇女セオドラはこの日の朝も手ずから供物を整え、近頃のあれこれに想いを巡らせながら足取りも重くいつもの道を辿っていた。

考えれば考えるほど気が重いのである。

あのヘラクレイオスが又しても懇望の使者を送って来たばかりか、これが最後通告だと言わんばかりの頭(づ)の高い挨拶だったからだ。

何度もお断りしているのに、相も変わらずこの私を妻に迎えたいと言うのだが、懇望と言えば聞こえは良いが、実際には親の威を笠にほとんど強要に近いものを感じざるを得ない。

この話には父親の帝国軍総司令官も大乗り気だって聞いてるけど、そのお相手は最初から大嫌いなのだから仕方が無い。

とにかく、まるで腹を空かせた猛獣のような男で、ホメロス一つ満足に読めないと聞いており、噂では家臣の妻を陵辱したばかりか、制止しようとしたその夫を妻の面前で嬲り殺しにした上、その女性の自由を奪ってその後も側に置いているって言うくらいだし、その日常を聞けば聞くほどもう虫唾(むしず)が走るほど嫌いなのである。

現にこっちの身内同然の者たちに対しても、ひどい仕打ちが目立って来ていて、その理も非も無いやり方は前から有名だったけど、紅燈の巷でも些細なことで直ぐに乱暴狼藉を働くことが多く、一般市民に死人が出る騒ぎまであったと耳にするほどなのだ。

もう二十八だと聞いてるから、いくらなんだってやんちゃが過ぎたでは済ませられない筈なのに、怖いもの無しの身分をかさに毎日肩で風を切ってのし歩いているらしい。

父親を上回るほどの堂々たる体躯を誇り、人並み外れた膂力を指して十人力だなどと阿諛(あゆ)する者が多い上に、実際誰も敵わないほどの剣技まで具えていると言うのだから、確かに国一番の剛の者ではあるのでしょうが、いつも権力と腕力をひけらかして周囲を圧伏し、弱いものを泣かせるようなことばかりなさっておいでなのに、呆れたことに近頃では誰一人諌めようともしないと言う。

誰にしても父親の総司令官は怖いでしょうから、それはそれで仕方の無いことだとは思うけど、それにしたってあの司令官より軍歴の長い方だっていないわけじゃないんだし、そう言う方々まで口を閉ざしちゃってるのを見るのはとても哀しい。

私に対するお話にしたって、何度もお断りしているのにそれでもふてぶてしく使者を寄こすなんて、本来ならあり得ないほど非礼な行為なのだけれど、昨日の使者の口振りでは、この話には国中が賛成していて、今ではあのお義母(かあ)さままでご賛同のおもむきだとお聞きして、その時からこの胸を冷たい風が音を立てて吹き抜けて行く想いだ。

こんなお話に賛成なさるなんて、お義母(かあ)さまは、いやしくもこの国の皇后として恥ずかしいとはお思いにならないのかしら。

本当かどうかは知らないけれど、お義母(かあ)さまがあの乱暴者に自分で「迎え」に行ったら良いと仰ったと言う話まであるのだ。

いきさつから言ってその場合の「迎え」は「力ずく」が前提になるのだろうし、万一、兵まで引き連れて押しかけられたら、もうどうすることも出来ないに違いない。

以前は、ここは一応神域とされてるくらいだから、いくら乱暴者だってまさかここまで押しかけては来れないだろうと思っていたけど、爺(じい)などに言わせると、この分ではそれすらどうなるか判らないと言う。

そのためもあって、ヤニとデニスが剣技を買われてじいの領地から来てくれてるけど、確かヤニが二十三でデニスはその一つ下の筈だし、何かと言えば血気にはやりたがると見てじいが心配することしきりなのだ。

でも、それだけ事態が切迫してきてる証拠なのかも知れないし、現にその二人がとうに覚悟を決めてるみたいで、万一のときは斬り死にを覚悟で防ぐから、その間にお逃げ下さいって言うくらいだ。

だけど、こんなことで人を犠牲にしてまで逃げ回るのは嫌だし、落ち行く先は誰が考えたってじいの領地しか無いんだし、そこは女の足では一日歩いても辿りつけないほど遠いのだから、どうせ直ぐに追いつかれちゃうに決まってるし、相手が相手だから、そのときはじいも私もどうなるか判らないけど、何がどうなっても辱めを受けることだけは絶対に嫌なのだ。

例え全てを失うにしても最期まで皇女としての誇りだけは失いたくないし、そうなったら、せめてその誇りだけを胸に天国へ召されたいと思う。

この前も、伝説にあるように洞穴に蓋をして、その奥で静かに最期のときを迎えられたらいいのにと言って、じいに思い切り叱られてしまったけど、その時もじいの目に涙が光ってるのをはっきりと見てしまい、もう何にも言えなくなってしまったのである。

耐え難いほどの辱めを受けてまで生きていたいとは思わないし、出来たらそうなる前にじいの手で始末をつけてもらいたいのだけれど、一旦それを口にしたりしたら、じいのことだからきっと大泣きに泣いてしまうに違いない。

じいもその昔は国中で十指に数えられるほどの剣士だったらしくて、そのアナクレトス・カラヤニスの名を天下に轟かせていたと言う話だけど、なんと言ってももう六十五になるのだ。

今日もいつものように灯りを抱いてついて来てくれてはいるけど、近頃はすっかり足腰も弱っちゃってるし、重い灯りを持つのは見るからに危なっかしいから、その役目だけはヤニかデニスと代わるようにと言うのだけれど、何しろ頑固だからいっかな耳をかそうとはしないのである。

じい(アナクレトス・カラヤニス)は、家来筋だとは言っても血筋から言えば母方の祖父にあたり、母がお父さまに召されて宮廷に入るときにわざわざ付いて来たくらいだし、殊に私が生まれてからと言うものは、亡き母に代わってずっとそばにいてくれて、怒らせるととても怖い人ではあるけれど、実際は私の行く末を誰よりも思ってくれてる人なのだ。

そばにいてくれる人はもうじいの家臣だけになっちゃったから、こう言うときにお父さまがおいでだったらと思わないこともないけど、その時の戦(いくさ)で大惨敗なさったらしいし、もう十二年もお帰りが無いところを見ると、いくらなんでももう望みは無いのかも知れない。

お父さまは、地上の領土がどうしても必要だと仰って征途に就かれたらしいけど、その時の相手は激しく抵抗したと言うし、仕舞いには手ひどく反撃されて結局撤退の已む無きに至ったと言うお話で、少なくとも直接的な戦闘は十二年も前に終わってる筈だから、ご無事ならとっくにお戻りの筈なのだ。

当時戦場から小型機が二機だけ戻って来て、散々の負け戦だったってことを報告したって聞いてるけど、そのあと二年も掛けて探し回った結果、結局万策尽きちゃったことになってるらしい。

じいなんかは、もっとお探し申すべしって散々言ったらしいけど、その頃はもう帝国軍総司令官のアレクシオス・スフランツェスがすっかり権力を掌握しちゃってたらしくて、搭載してる小型機なんか一切自由にはならなくなっちゃったって聞いた。

アレクシオス・スフランツェスは軍事と行政を両方とも握っちゃってるから、もうやりたい放題で、この分では息子のヘラクレイオスが益々つけ上がる一方だろう。

どうにもならないことばかり一杯あって勉強に身が入らないから、家庭教師代わりのネリッサからついお小言をいただくことになっちゃったけど、私の身代わりになって叱られるトニアとアウラに申し訳ないから、これからはもっと気をつけようとは思う。

何しろトニアとアウラは時勢がすっかり変わってしまった今でも、ずっと側にいてくれる小間使いであり、トニアが二十(はたち)でアウラは未だ十八のことでもあるし、年恰好から言っても貴重な話し相手でもあるのだ。

彼女達二人はヤニとデニスたちともおさな馴染みのせいもあるだろうが、最近それぞれが妙に仲が良いみたいだし、昨日なんかもネリッサが、母親代わりに小言を言ってるのをつい耳にしてしまったくらいだ。

私なんかから見れば、ただもう微笑ましいだけなのだが、ネリッサは若い男女のことだから、何かあってからでは間に合わないと言うのである。

体重が私の倍もありそうなネリッサは確か今年四十二歳になった筈だけど、大分前に夫を亡くして以来ずっと傍にいてくれて、今では実質的な女官長でもあり、昨日の使者の不遜な物言いにも人一倍腹を立てていたけれど、色んないきさつから言ってそれも当然のことなのだ。

嫌な使者を前にして、私が一言も口を利かずに済ませることが出来るのも、全部ネリッサが太った体を揺すらせながら対応してくれてるおかげだし、この意味でもネリッサさまさまなのである。

尤も、そのネリッサが使者の不遜な物言いに「無礼でありましょう。」と大声を上げたときなんかも、相手の方はまったく平然たるもので、この私も腹立たしかったけど、今の力関係から言えばそれも仕方の無いことなのかも知れない。

それが帰ったあとで、カラヤニス家からのお届け物があってようやく明るい気分にさせてくれて、そのお届けものには私もネリッサも感謝の気持ちで一杯だ。

カラヤニス家と言うのは勿論じいの家のことで、亡き母の実家でもあるのだけれど、そこの城地で留守を預かってるアルセニオスは、じいにとっては唯一残された跡取り息子なのだし、私にとっても亡き母の実の弟にあたる上に、今はかけがえの無い後ろ盾なのである。

なんと言っても、数年前から宮廷費からの支出がまったく途絶えてしまってるのだから、ここでの暮らし一切がこの叔父さまからの仕送りに頼らざるを得ない身の上なのだ。

以前は、じいの連れ合いの亡きアルテミシアおばあさまの実家からもしょっちゅう仕送りがあったけど、そのウェルギリウス家は去年罪を得て潰れてしまっていて、今はもう跡形も無いのである。

尤も、反逆の罪ありとして一方的に断罪したのも、あのアレクシオス・スフランツェスだったのだから、全て冤罪だったと言う囁きが国中を覆ったと聞いてるけど、今ではそれを口に出して言う者はいない筈だ。

聞こえれば、あっと言う間に牢獄入りであることが知れ渡ってる証拠だろうし、アルセニオス叔父さまがこっそり匿ってるウェルギリウス家の遺児のことが知れたりしたら、もうとんでもない大騒動になるに違いない。

問題の遺児アンドレアス・ウェルギリウスは未だ十四歳の身で、係累の全てを刑殺されてしまった上に表向きは死んだことになっており、今は叔父さまの領内で数人の遺臣に囲まれながら、ひっそりと世に出るときを待ってる筈だけど、これもこのご時世ではどうなるものか心細い限りなのである。

何せネリッサの話なんかでは、もしそのことが公(おおやけ)になったりすれば、直ぐに司直の手が伸びてアンドレアス当人ばかりか、じいも叔父さまも只では済まないことになると言う。

尤も、司直の手だなんぞと言ってみたところで、全てスフランツェスの私兵に過ぎないと言う者が殆どだし、じいは、今はひたすら隠忍自重(いんにんじちょう)を心掛けるよう叔父さまに命じたらしいけど、叔父さまにして見れば、実母の実家がスフランツェス一派の陰謀で殆ど皆殺しの目にあったのだから、それこそ憤らない方が不思議なくらいなのだ。

この点一つ採っても周囲にきな臭いものが立ち込めて来ていることは確かだし、全体的な構図として見れば、私に近い立場を採る人々とお義母(かあ)さまに肩入れなさる方々との勢力争いだと言う人までいるらしいけれど、あちら側の実質的な旗頭がスフランツェスであることは誰の目にも明らかなのである。

自分としては、そう言う意味の争いなどしているつもりは無いのだけれど、ネリッサなんかは、今まで日和見に徹していた人たちの間からも、スフランツェス親子の腰巾着に成り下がる者が増えてると言うくらいだから、もう勝負は決まったも同然と見る者が圧倒的なのだろう。

現に、昨年まではここへもご機嫌伺いに来てくれる人も少なくなかったのに、ウェルギリウス家が容赦無く潰されてしまったのを見るや、全く足が遠のいてしまってるくらいだ。

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  1. 2008/08/27(水) 10:36:41|
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