日本大好きじいさんの落書き帳

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告|
  3. トラックバック(-)|
  4. コメント(-)

自立国家の建設 151

 ◆ 目次ページに戻る

いずれにせよローマ帝国は戦艦を失ったばかりか、過去に持ち得た不思議な軍事力を全て無力化されてしまったことにより、少なくとも人類にとって軍事上の脅威としてはその位置付けを全く失ったことになる。

そのことは、主の意を受けた秋元姉妹から新田源一に確実に伝えられた筈であり、無論、新田からの連絡によって日本の首脳も直ちにそれを知ったろう。

何と言ってもこれまでの丹波では、異星人による侵略の脅威がひたすら声高に叫ばれ、それに対する防衛の必要に迫られた結果、新田の手から配分を受け続ける巨額の資金の追い風もあって、凄まじいばかりの戦争景気に沸いていたところであり、その脅威自体が消滅してしまったと言うのだからおおごとだ。

何しろ、その脅威は人類にとって頗る巨大なものであり続け、予想される戦争の規模も自然巨大なものにならざるを得なかったのだが、その「巨大な戦争」と言う幻想が消えて無くなる以上、戦争景気と言うバブルも弾け飛んでしまうのである。

対応を誤れば世界経済が一挙に収縮して歴史的な大恐慌すら招く恐れがあり、新田国井間の協議では、脅威の消滅情報を公表する前に為すべきことがあるとして、直ちに意見の一致を見たと言う。

異星人の脅威が去ったあともなお、世界が秋津州資金と言う巨大な背景を維持し得ることを明示した上で、急遽特別の七カ国協議を召集したと言うのだ。

この場合の「特別」の意味は、通常と異なり各国の元首及び担当閣僚が大勢の事務方を引き連れて参加しているところにあり、すなわち全ての方向性をその場で「決定」することが可能となるのだ。

インドやアフリカの先進諸国はもとよりイタリーとカナダにもお座敷が掛かった上に、別に設けられた大会議室では、各中央銀行や欧州理事会の議事までが同時進行しているのだと言う。

その結果、例の秋津州資金に日本円にして四千兆円もの残高があることや、今後も新田の管理下で配分され続けることが改めて確認され、その上で公式な戦争終結宣言が発せられる雲行きだ。

一たびその宣言が発せられれば、一般の軍需物資の多くはその需要が一気に縮小してしまうにしても、一方に失業対策事業の意味合いもあって盛んに増強されて来た兵員の存在がある上、各国政府が締結済みの兵器類の購入契約などは、その性格から言って少なくとも数年間、若しくは十年以上もの連続性を有しており、全てが一気に縮小してしまうわけではない。

従って、それ等の支払いに宛てられる支出もその間発生し続けることになるが、各国政府によるその点での高負担を、秋津州資金が強力にバックアップして行くという筋書きなのだろう。

尤も、実際にはその費用名目にたいした意味があるわけでは無く、結局のところ秋津州円の持つ強力な信頼性にこそ大きな意味があるのである。

この協議の結末はのちに「ヤマト合意」として名を残すことになるのだが、結局その意味するところは、ひとえに過度に加熱した戦争景気のソフトランディングを目指し、実体経済の減速懸念が払拭されると言う観測を主要各国が合唱することによって、市場の活性化を図ろうとするところにあり、各国当局が大幅減税と大胆な利下げ誘導を計ることが謳われ、その財源として秋津州資金が強力に手を貸し続ける構図であることに変わりは無い。

世界銀行や国際通貨基金が資金的にも対応能力を欠いてしまっている今、それはマーケットが最も望んでいる選択肢であり、そのことがあらゆる市場に齎す巨大な影響力を疑う者が無いだけに、大小の投資家たちに与える心理効果も小さくない筈であり、世界経済の停滞に一石を投ずると言う視点に立つならば、その効果を否定的に見る者はいないのだ。

だが、どう足掻いて見たところで、世界的な規模で実需が減少する以上、それなりの経済変動が起きてしまうことまでは避けられまい。

ましてオヤカタサマの統治手法が、大和文化圏と言う経済ブロックの育成に特段の重きを置くものと見られているだけに、バブル崩壊後行き場を失う筈の資金の多くが、雪崩を打ってそこへ向かうことまでは否定し難いのである。

少なくとも、その意味での経済変動だけは確実に起きてしまう。

その結果、富の偏在化に益々拍車が掛かるとする声も決して小さくは無いのだ。

なお、警護警衛の確実性も顧慮された結果ではあるのだろうが、今回の協議は馬酔木の湖(あしびのうみ)に浮かぶあの「大和(やまと)」の船上で開かれていると聞く。

無論大和とは、過去一度も営業したと言う話は聞かないにせよ、洋上の迎賓館と謳われる例の巨大客船のことであり、八雲島の港湾近くにまで自ら飛行して来た上に、直ちに数百台のポッドが縦横に活躍して各国要人及びプレス関係者たちを船上に運び上げ、巨船は即座に飛び去ったと言うが、その行き先こそあの広大な内水、馬酔木の湖(あしびのうみ)に他ならず、そこがれっきとした内水である以上、秋津州当局の許可無くしては如何なる船舶もその侵入を合法的に阻まれてしまう理屈だ。

いずれにしても史上最大の船である。

それが飛び来たった港湾付近には、万余の見物人が押し寄せたと聞くが、それはそうだろう。

秋津州独自の特殊鋼をふんだんに用いて建造されたとされるその船は、全長千二百メートル、総トン数三百万トンにも及ぼうかと言う、それこそ造船技術の限界をはるかに超えたと言われるほどの桁違いの巨船なのである。

自力飛行すら可能とするその巨船は機関もスクリューも持たず、船腹幅が三百メートルもあって、メインデッキの中央をその幅百メートルにも垂んとするプロムナードが走り、エレベーターなどは二百機以上を数える上に、大規模な医療設備は勿論豪華なプールまで複数具わっていると言う。

船体の上部に煙突などの突起物を一切持たないこともあって、海面上の高さは六十メートルにも満たないが、そうでありながら二十層にも及ぶキャビン層を具えている上に、近頃行われた大改装によって吃水下の巨大倉庫などが数多くキャビンに換装された結果、いわゆる定員客数と呼べるものも軽く一万を超えると聞いており、乗務員の員数まで加えればその収容総数は二万を下ることはない筈だ。

主(あるじ)にして見れば、避難民の収容と言う課題を果たすために、ここでも磐石の布石を打っておられるのだろうが、膨大な船内要員は勿論テンダーボート兼用のポッド群まで常時スタンバイしている必要があるだけに、その運用に掛かる莫大なコストは言うも愚かだろう。

ちなみに、既に触れた通り例の胆沢城にはドーナツ状の外輪部があり、その内側の「流れるプール」に囲まれるようにして直径八十キロに及ぶ丸い離島が存在しているのだが、近頃の主はその内側の離島を本丸とお呼びになり、外側のドーナツを指して二の丸と呼称されることが多く、その伝で行けば、この場合の流れるプールこそ差し詰め内堀と言うことになるのだろうが、問題の一つはその「内堀」にもある。

実は主は、巨船の運用にあたって、その最上階においてさえ殆ど揺れを感じずに済ませる為と称して、この「内堀」の本丸沿岸部に重厚な囲いを張り巡らせた碇泊施設までご用意なさっているのだ。

映像で見る限りその施設は画然たる矩形を為しており、長辺が二千メートル、短辺が一千メートルもの巨大プールを思わせるものであり、外海からの波浪を完全に遮断してしまっている上、通常の船舶が海面を航行して出入りすることはなし得ない構造を持つことから、結局飛行し得る船にだけその繋留を許すものと言って良い。

しかも同様のものが多数完成している景色まで見えている以上、それぞれのプールに碇泊する船もまた多数に上ることになるのだろう。

現に、各荘園から移送して来られた捕鯨母船を目下二十艘にもわたって大々的に換装中と伺っており、それが全て完工の暁には、その捕鯨船だけでも二十万もの避難民の収容が可能になると仰るのである。

結局、避難民の一時的な収容スペースを洋上に求めておられるのだろうが、その膨大な負担は果たして秋津州のみが担わなければならないものであろうか。

あらゆる国家が同等の権利を具えるとする以上、果たすべき責務もまた同等であらねばならぬ理屈だろう。

実際、七カ国協議の席上でもその問題が俎上に上り、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論の真っ最中のようだが、仮にその降伏者たちが丹波に居を求める意思決定を行った場合でも、言わば国家ぐるみで居候を決め込もうとしているに過ぎないとして、保護を加えるべき「難民」の定義には当てはまらないとする論調が圧倒的だと聞いている。

少なくとも、彼等を迫害する恐れのある「自国政府」など何処にも存在しないのだから、単なる「経済的困窮者」と捉えるべきだとする見解だけは動かないと聞いており、単なる「経済的困窮者」など、人類社会にはもともと溢れるほどに存在しているとする声で満ちていると言う。

そうである以上、その降伏者たちを身銭を切ってまで救恤(きゅうじゅつ)する義理も余裕も無いと言うあたりが本音ではあるのだろうが、結局のところこの経済的困窮者たちの処理一切を秋津州一国に一任としたいに違いない。

一任と言えば聞こえは良いが要は丸投げであり、主の負担すべきコストはいや増すばかりだが、現実問題ドリフターの居住区が近日中にも機能不全に陥り、放置すればそこにいる「人間」が全て命を落としてしまうことだけは疑いようの無い事実だ。

それを救おうと思えば、少なくとも彼等が暮らすべき「場所」を提供する必要があるが、恒久的な居住地を定めるにあたって、ローマ人個々の意見が完全一致を見るなどあり得ないことであり、彼等が国家若しくは交戦団体としての意思決定を図るべき機能を持たない限り、何れの地に居を求めるべきかも纏まらず、かつまた、そのような不安定な状態がいつまで続いてしまうものやら全て不明と言うほかは無いのである。

しかも、主が積極的な介入をしない限り、彼等が団体としての意思決定を為すべき機能が形成されるどころか、かえって内乱状態が長引いてしまう恐れが強いのだ。

このような状況下で、主は胆沢城の本丸付近にローマ人を移そうと企図しておられるが、恐らく、その本丸一帯の一部を言わばトランジットルームのようなものとしてお考えなのだろう。

主がそのための準備に手を砕いておられることは承知しているが、ことは容易ではないと言って良い。

何せこのようなケースでは、通過のための一時的な「上陸」は許すにしても「入国」まで許してしまえば、受け入れ側にとっては非常な困難が待ち受けていることは自明であり、ごく普通の社会通念から言っても、その間の彼等はトランジットルームで時を過ごすことが許されるだけで、そこから出て気ままに周囲を徘徊するなど論外の行為と言うことになるのだ。

結局胆沢城の本丸あたりが、無期限のトランジットキャンプと化してしまう可能性は否定出来ないのである。

しかも、人類社会においては、少なくとも国土を全く具えぬものを「国家」であると承認する政府は無いと聞く。

まして、限りある「国土」を割譲してやろうとする物好きなどいるわけが無い。

現に、長年「国土」を持てずに来たために辛酸を舐め尽くし、足摺りする想いで「独自の国土」を欲しているのは何も彼等だけに限らないのである。

丹波の八割にも及ぶ大地を惜しみなく分け与えた実績を持つオヤカタサマならいざ知らず、未だにその不足を言い立てて已まないような国々が、万一ローマ人だけにそれを分け与えたりすれば結果は知れているだろう。

従って、例え彼等がどう名乗ろうと人類社会においては国家としては認められないことになり、ローマ人は漂泊する無国籍者に過ぎず、その多くは生産手段を手にすることの無い、喰うにも困る貧窮民と呼ぶほかは無いのである。

尤も、ローマ人にとって悲劇的な未来が刻々と近付いている今、人類社会がその対応の一切をオヤカタサマに一任としたいとしていることは、ローマ人にとっては極めて幸いなことではあるだろう。

この困難な課題を処理するにあたって、オヤカタサマのフリーハンドこそが臨機応変の対応を可能とし、ひいては避難民の救恤に大きく寄与することが確実だからだ。

しかし、そのことが一たび国際的に確定してしまえば、今後ローマ人たちをどう料理しようと、腰の引けた人類社会がとやかく言えた義理では無くなるのである。


二千十二年十一月二日。

八雲島の一の荘では、タイラーの望んだ対談が実に呆気なく実現を見ていた。

非常な繁忙の中にある女神さまが、拍子抜けするほど簡単に応じてくれたのである。

何せ、彼女のデスクには各国代表部の招待状が山積みになっている筈であり、近頃は各国財界の要人たちともしきりに交流していると聞いており、望んだからと言って即座に叶えられるとは思えない状況だったのだ。

ときにあたって、昨日から始まっている洋上の重大協議が大筋では方向付けが定まりつつあるのだが、それに関連してワシントンから齎される訓令は、例によって魔王の胸の扉を叩くべく必死に命じて来ており、異星人たちの扱い方一つとってもその原案が魔王に丸投げにしようとするものである限り、結局全て魔王次第であることから、ことは急を要すると言って良い。

「早速で恐縮ですが、異星人たちの取り扱いについてご意見を賜りたい。」

くどいようだが、今この合衆国大統領特別補佐官が意見を聴取しようとしている人物は、不思議なことに形式上は単なる一民間人に過ぎないのだ。

「あらあら、ずいぶん単刀直入なお話でございますこと。」

「いや、前置きを申し上げている余裕はありませんので。」

女神さまの艶やかな笑顔に比して補佐官の緊張振りばかりが目立つ対談だが、全ての決定権がこうまで一方に偏在してしまっている今、それも当然と言うほかは無いのである。

「承知致しました。」

「全て陛下にご一任とさせて頂いて本当によろしいのでしょうか。」

現に、魔王に丸投げにする案を提示しているにもかかわらず、あの日本政府から苦情一つ出て来ていないのである。

しかも、船上で駆け回っているプロジェクトAティームの面々から受ける感触からも、この案を忌避しようとする気配など微塵も感じられないと聞いており、モリシゲ・タナカなどに至っては船上で我が国務次官補と対談し、それこそがベストの選択であるかのような発言までしてみせているくらいなのだから、土竜庵の意向も間違いなくそれなのだろう。

何せ、土竜庵の意向が魔王の嫌気を呼ぶようなものであったためしがないのだ。

「ほかに、何かお望みの方式でもおありなのでしょうか。」

「いえ、決してそう言う意味ではございません。」

「だったら、正直にそう仰ればよろしいのに。」

どうせ、一銭も出したくないのが本音なのだろうから、正直にそう言えばいいものを、と言っている。

「これは手厳しい。」

「でも、迂遠なお話ばかりなさっていては、いつまで経っても問題の解決には繋がりませんもの。」

「確かに、おっしゃる通りですな。」

「一部に人道的見地云々などと言う声も無いではないと伝え聞いておりますが、その点での不都合は無いのでしょうか。」

やはり女神さまは何でもご承知のようだ。

各国協議のテーブルでは、秋津州一国に任せてしまえば、結果的に避難民の人権が踏みにじられてしまっても口出しを控えねばならなくなるとして、そのことを危惧する声も皆無ではないのだ。

殊に一たび戦争終結宣言が出され、ローマ人たちが魔王の手の内に引き取られて来たとなれば、ローマ人たちはメディアの格好の餌食となる筈であり、況(いわん)や、いざ哀れな漂流者たちが無人の惑星に「遺棄」されてしまうと見れば、重大な人権問題だとして挙って非難の声を上げるに違いない。

一般の国々の場合、その「異星人」から武力攻撃を受けていないこともあり、メディアの論調に同調する大衆が多くを占め、中でも議会制民主主義を採る国々では、ことがことだけに政治家達にしても、大衆の手前立つ位置を変えて見せざるを得なくなる筈だ。

まして、かのローマ人たちが主として白い肌を持つ「人間」であることが知れ渡れば、殊に白人が主導権を握る国々においてはなおさらのことだろう。

タイラーにしてみれば実にばかばかしい話ではあるのだが、その光景が鮮やかに眼に浮かぶのである。

しかし、今はそれを口にする時ではないであろう。

「いや、公式見解でそれを表明する政府筋は絶対にございません。」

「あらあら・・・、絶対に、でございますか。」

「それを主張する以上、貧窮民の保護に積極的にコミットせざるを得なくなってしまいますから。」

コスト負担を恐れて口出しを控えると言う構図に他ならないのだが、異星人からの攻撃の恐怖が覚めやらぬ現状では、見知らぬ異星人の人道問題などより、自国の台所事情の方がよほど優先してしまうのも致し方の無いところではあっただろう。

「おほほほ。」

女神さまが鮮やかにお笑いだ。

「いやいや、お笑いになりますが、お国(日本)を除けばどちらを見ても台所に余裕のある国など一つもございますまい。」

余裕どころか、今後のことを考えれば秋津州資金の恩恵を必死に期待する国ばかりであり、現に、世界銀行や国際通貨基金などもその拠出資金の殆どを担っているのは、今となっては日本一国と言う惨状なのである。

無論、秋津州帝国はそのような国際機関になど一歩も足を踏み入れてはいないのだ。

「でしたら、それでよろしいではございませんか。」

魔王の眷属である女神さまが異論は無いと仰せだ。

過去の豊富な経験から言っても、それが魔王の意思であることに疑う余地は無いのである。

「ありがとうございます。これで全てが固まりました。」

ワシントンがさぞ安堵することだろう。

 ◆ 目次ページに戻る

  1. 2008/10/15(水) 12:12:17|
  2. 妄想小説 主権国家|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:0
前のページ 次のページ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。