日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 165

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「あたしね。」

妻は如何にも意味ありげな目付きである。

「んっ。」

「あの頃、とっても感動したことがあったのよ。」

「ほほう。」

「あたしがね、あんたんところへお茶淹れて持ってったときにね・・・。」

「ふむふむ。」

いきなり、何を言い出すんだこいつは・・・・。

「あんたが陛下と国井さんと三人で話してたときよ。」

現総理の国井さんが、一敗地にまみれて野党の座に甘んじていた頃のことだ。

「おまえがオレのパンツ洗濯してくれたころのことだな。」

「まじめに聞いてくれなくちゃいやだから。」

多少頬を染めてはいるが、その表情は真剣そのものなのである。

「まじめに聞いてるよ。」

思わず座りなおしてしまったくらいだ。

「そんとき、あんた、演説ぶってたのよね。」

「ほう・・・。」

「確かね。ええと・・・、法令で禁じられてないことなら何をしても許されると思うような社会であってはならないって、あんたエラい勢いで熱弁ふるってたわ。」

「うんうん。」

「それでね、国民の行動を隅から隅まで全部法令で規制しようったって、どだい無理な話なんだから、法令で規定し切れない部分は道徳を以て律すべきだとかなんとかって、大威張りでやっつけてたわ。」

「別に威張っちゃいねえよ。」

「あんとき、国井さんも言ってたわよね。」

「おう。」

「法令に書いてあろうが無かろうが、やっちゃいけないことはやっちゃいけないんだって。あたしもそれ聞いてほんとにその通りだと思ったんだけど、あんたそのあとで日本には恥の文化ってえものがあるんだって・・・。」

「そんなこともあったなあ。」

「あたし、あんたのことをあのとき見直したのよね。」

流石に真っ赤になっているが、その表情は清々しい。

実はそれまで手も握ったことの無い女が、こっちの下着を進んで洗濯してくれたのが丁度その頃のことであり、どう言う心境の変化があったのか今の今まで謎だったのだが、なるほどそう言うことだったのか。

「オレだって、おまえが突然やって来て掃除したり、パンツ洗ったりしてくれたときゃあ、なんていったら良いか、ほんとに嬉しかったさ。」

何せ、相手は有名なミス外務省で、しかも一回り以上も歳が違ってしまっていたのである。

「うふふふ・・・。あたしだって、嫌いなヒトの下着になんか触りたくも無いわよ。」

「そりゃあそうだ。」

「まあ、あたしにして見りゃあ、あれがプロポーズの返事だったってわけよ。」

「あれっ、プロポーズなんてしたっけか。」

「あ、そう言うこと言っちゃうんだ。」

「う・・・。」

「だって、あんとき頭ごなしに出張のお供を命じたのは何処のどいつよ。」

妻も秋津州商事の社員として、配下の列に加わっていたのだ。

「あれれえ、自分から秘書役を買って出てたのはおまえの方だろうが。」

妻が官を辞して、いわゆる土竜庵グループに属して以来一貫してそうだった筈だ。

「でも、はるばる仙台までついてったらお墓参りだって言うし、いきなりご両親に紹介されちゃうし、あたし、とっても面食らっちゃったんだから。」

仙台の実家は弟夫婦が継いでくれている。

「うん・・・。」

「あれがプロポーズじゃないって言うの。」

なんと言われようと、こっちに下心があったことは確かなのだ。

「謝った。」

「恥の文化よね。」

「潔(いさぎよ)く兜を脱ぐよ。」

「仙台出張だ、一泊のつもりで用意しろって、それしか言わないんだもの、こっちは黙って従うしか無いじゃない。」

「そりゃそうだ。」

あのときは、国交省地方整備局の人間と現地で会う約束だったのだが、先方の都合で急遽取り止めになっちゃったばかりか、その連絡を受けたのが仙台で降りてからのことでもあり、日本へは当分戻れそうも無い見通しでもあったから、ついでに実家へ顔を出したまでのことなのだが妻はそれを知らない。

「おまけに、現地の一泊ってあんたの実家なんだもの、普通だったらパワハラで訴えてるところだわ。」

実際には仙台の駅近くに待ち合わせ場所も兼ねてホテルを押さえてあり、それもこれも妻が自ら手配したのだから、当然、部屋も別々だった筈だ。

「訴えなかったじゃねえか。」

実家からホテルまでタクシーで十五分も見とけば良かった筈なのだが、次の朝聞いてみると、うちのおふくろがかなり強引だったことは否めない。

おふくろにして見ればいい年した倅が始めて連れて来た女性のことでもあり、いくら部下だと言われても素直に信じる筈も無く、今更ホテルなんて水臭いと言い張ってとうとうタクシーを呼ばせなかったものらしく、結局そのときの妻は、若い頃の自分が使ってた部屋で一夜を明かした筈なのだ。

「それより、あの夜、あんたどこにいたのよ。」

「酔っ払って居間で寝ちゃっただけだ。」

父や弟と飲み明かしも同然だったのだ。

「あんたのお母さんは優しくしてくれたけど・・・、あたし、心細かったんだから・・・。」

「あ、悪かった。ほんと謝る。」

考えてみりゃあ、可哀そうなことをしたもんだ。

「それに、あの晩、あたしお母さんに頼まれちゃったのよね。」

「え・・・・。」

「うちの息子をよろしくって。」

「へええ、初めて聞いた。」

「息子はあの通りカドの多い人間だから辛いこともあるだろうけど、今後何があってもこのうちを実家だと思いなさいって言われちゃったのよ。」

「そうか、おまえが身内を持たない人間だってことは言ってあったからな。」

「いーい、あのときから、あたしはお母さんの娘にしてもらってるんだからね。」

「うう、こええ。」

現実におふくろは、妻の最大の理解者であり続けているのである。

「そう、怖いのよ。判った。」

「判ってるよ。」

「よしっ、お母さんに免じて許してやろう。」

「ありがとうございます、奥さま。」

「とにかく、このことを一生忘れないように。」

「ははあっ。」

掘り炬燵のお膳の上に両手をついて大仰に頭を下げて見せたのである。

「ああ、すっきりした。」

妻は、まるで花が咲いたような顔色だ。

「オレもすっきりしたよ。」

「なんでよ。」

「いや、おまえがなんで面倒見てくれる気になったのか、ずっと謎だったからだよ。」

「おほほほ、お母さんに感謝しなさいよ。」

「ううむ、それも味気ねえ話だなあ。」

「おほほほっ・・・。」

勝ち誇っていやがる。

「まあ、いいか。」

「そうよ。あんたにして見れば結果オーライだったんでしょ。」

「うん、いきさつはどうあれ、今じゃ何処へ出たって立派なお女房さまだ。」

「うふっ・・・。」

「どうせなら、もうちょっと早く一緒んなってれば、もう一人ぐらい頑張れたかも知れないねえ。」

子供のことである。

「ううん、どうだったかしらねえ。若い頃のわたしって、男のヒトに負けないようにって必死に肩肘張っちゃってたから。」

綺麗なだけでまったく可愛げのない女だったと耳にしているのだ。

「じゃ、タイミングぴたりだったっつうことか。」

「少なくとも、あの秋津州戦争の前だったらとてもそんな気にはなれなかったと思うわ。」

実際、あの大戦の幕引きをプロデュースして以来、新田源一と言う男の存在感が一変してしまったと言って良い。

「そりゃ、そうだろう。」

「考えてみると、あんた、あの頃にはもう国井さんとつるんでたのよね。」

妻の言う「あの頃」とは、退官のやむなきに至った問題の「あの頃」のことなのだろう。

「おいおい、いきなり人聞きの悪いこと言い出すなよ。」

「だって、事実そうじゃない。」

「まあ、否定はしねえよ。」

厳密に言えば、国井官房長官がこっちの官舎まで出向いて来て以来と言うべきか、その後頻繁なやり取りが始まったのだ。

「じゃ、総理もあの頃の案に絡んでたんだ。」

「絡むも何も、そもそも国井さんが言いだしっぺなんだからな。」

聞けば、現総理にとっては古くからの持論だったのである。

「へええ・・・、じゃ、元々国井さんの腹案から来てるのね。」

「ま、オレと岡部のも絡んでるけどな。」

最終的には、国井相葉コンビと新田岡部コンビの大同団結だったのだが、現在はそこに、例のブルドックこと安田啓一官房長官が積極的に名を連ねるに至り、相互の意思の疎通も万全と言って良いほどだ。

「でも、あんときの話じゃ、中央省庁なんて大蔵、内務、外務、ええとそれから国防と、精々四つぐらいしか考えて無かったわよね。」

「そうだ、あとは全部地方分権だ。」

「行政区画も全国を八ブロックに分けてたわよね。」

新規に建国する筈だった秋桜国においては、中央四省庁と地方八ブロック制が、押しも押されもせぬマスタープランだったのである。

「うん、ハナっから都道府県は置かねえつもりだった。」

「今度の場合はどうなるの。」

日本の現在進行形の改革プランのことを言っている。

「いま、詰めてるところだが、恐らく八ブロックかそこいらでまとまる感じかな。」

「当然、都道府県はなくなっちゃうのよね。」

「ああ。」

「やるなら早いほうがいいわよね。」

「その通りだ。あとになればなるほど難しくなるからな。」

現在の日本では、そちこちの県に合従連衡の動きがあるため境界線が流動的であるとは言うものの、都道府県制が曲がりなりにも定着しかかっている状況なのである。

「税源と権限は徹底して現地ブロックに委譲しちゃうんでしょ。」

「当然だ。二重行政の弊害を徹底的に排除する気だ。」

「だよね。」

「とにかく総理がその伝で行くと言ってる以上、とんでもねえ行財政改革をやっつけるつもりでいるんだから、税制にしたって秋津州に右へ倣えしちゃうかも知れねえ。」

「二十パーセントの消費税だけかあ。」

「登録税と関税のほかに酒税と煙草税ぐらいは残すかも知れねえが、極端な話、秋津州と併合しちゃっても齟齬を来さねえようなところにまで持って行くハラだ。」

「併合しちゃうの。」

「いや、言葉のあやだ。」

「なんか、怪しい。」

「いやほんと、併合までは考えてねえよ。」

「ほんとかな。」

「都合で秋桜だけ日本領にしちゃうってえ手も考えねえわけじゃあねえが、先の話だ。」

「へええ・・・。」

「とにかく、両国間における最大の問題点は税制のギャップにあるんだ。」

「ほんと、そうよね。」

「秋津州が現状維持で行く以上、こっちから合わせるしかねえだろう。」

「遅かれ早かれ足並みを揃える必要はあるものね。」

日秋両国を一つの経済ブロックとして見た場合、その点のアンバランスがさまざまな悪影響を齎しつつあるのである。

「まあ、前からの懸案だったからな。」

「そうすっと、日本は所得税も固定資産税も無し、贈与税も相続税も無しになっちゃうのかあ。」

「秋津州みてえに、世界中から金持ちが集まってくらあ。」

やりよう次第で前代未聞の景気浮揚を目にすることになるだろう。

「でも、それで、歳入が不足しないのかしら。」

「そのための行財政改革だろ。お役人さまは中央地方併せて従来の三割ぐれえに減らしちまうってんだから、お題目みてえに口先だけで叫んで来たヤツとはレベルが違うぜえ。」

最終的に十年は掛かるだろうが、とにもかくにも大幅な減員を念頭において策定中であり、軍や警察関係においてすら増員せずに済ませる予定でいるが、それもこれも官邸の戦略管制室及び国家警務隊の特殊部隊が治安維持機能を強力に下支えしてくれてることが大きい。

「但し、お役人の中途退官、退職勧奨は無くなるのよね。」

「そうだ。優秀な官僚には末永く働いてもらわにゃならん。また、そうでなきゃあ官庁に人材が集まらなくなっちまわあ。」

「その代わり、各省庁が天下り用にごっちゃり持ってるヘンテコな特殊法人なんて、綺麗サッパリ大掃除しちゃうのよね。」

「ああ、そう言うところへは公金はびた一文入れねえようにするから、消えてなくなるほかはねえだろう。そいつ等が開けちまった大穴のことも否応無く表面化しちまうだろうからこの際全部整理して、とにかく、高コスト体質を徹底的にぶっこわすんだ。」

「びた一文って言ったって、間接的に流れちゃう公金まで止められるかしら。」

公共事業を受注する関連業界から、問題の特殊法人がキックバックを吸い上げると言う巧妙極まりない仕組みが出来上がってしまっていることを指摘しているのである。

一見して公金とは見えないようにしてしまう仕組みなのだが、要は官民連携してのマネーロンダリングと言うべきものなのだ。

「それも政治主導でやるさ。」

現在の国井政権下では大分下火になってはいるようだが、放って置けば役所のくせにあの手この手で公金使って商売みたいなことまでやり始め、殆どの業務を癒着の象徴みたいなファミリー企業に法外な高値で下請けに出しておいて、自分たちは大勢して左団扇でふんぞり返っている例が多いのだ。

当然、大赤字が出るが、それを埋めるのは全部公金だから自分たちの懐は痛まない。

元々彼等は儲ける為に商売をやるんじゃなくて、身内の連中の働き口を確保しようとしてるだけなのだから、それも当然の帰結なのだが、土台、役所に商売をやらせる時点で既に大間違いなのである。

「それが出来なけりゃ、ほとんど絵に描いた餅になっちゃうもんね。」

「公金を公金として扱う政府にしなけりゃ、何を言ったところで絵空事にしかならねえ。」

「公金って言えば、あんたの言う私学助成禁止にはちょっと引っ掛かるものがあったんだけど。」

当時の秋桜案では、私立校への公的助成金が一切禁止になっていたのである。

「おまえらしいな。」

「だって、私立校だって大切な教育機関でしょ。」

「大切だからって、私立に公金を使っていいことにはならねえ。」

「貧乏な家の子が泣く事になるのよ。」

「公立へ行きゃいいだろ。」

「公立高に落ちた子はどうすんのよ。」

「落ちないように猛勉強するよう言ってやれよ。」

「冷たいのね。」

「猛勉強しても落ちるようなアタマじゃあ、無理して私立へ行ったってどうせついて行けねえだろうが。」

「でも、教育を受ける権利が・・・。」

「結局経済面の格差が問題だって言うんだろ。だから、誰かがその子を救うために個人的にカネを払うって言うんなら止めねえよ。但し、役所が関与しちゃならねえ。」

「・・・。」

「それに、そう言う子はゴマンといるわけだが、まさか、そんなかの一部にだけ恵んでやろうってんじゃあるめえな。」

「だから、国や自治体が・・・。」

「勘違いしちゃいけねえ。見た目に可哀そうだからって、いちいち公金使って援助してたらそのうち一般の納税者が怒り出しちゃうぞ。ものは試しに昭和憲法の第八十九条を詠(よ)んでみろよ。未だ覚えてるだろ。」

公務員として散々に暗記したのだから、今でも充分にそらんじることが出来る筈だ。

「ええと、『日本国憲法第八十九条、公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。』だったかしら。」

公の支配に属しない「教育事業」、詰まり私立校に支出してはならないのである。

「憲法に書いてあろうが無かろうがそれが鉄則だ。そこんとこを崩すと際限もねえ話になっちゃうぞ。」

悪いことに現実の日本では、莫大な公金が私立校に注入され続け、ある意味巨大利権の温床になってしまっているのである。

「それを言われると辛いわ。」

「或いは、その私立校が所轄庁の監督に完璧に服し、財産権も経営権も全面的に放棄する覚悟があるかだな。尤もそうなりゃあ私立じゃなくなっちゃうけどな。」

「もう、判ったわよ。理屈じゃ最初っから判ってるんだから。」

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  1. 2009/02/18(水) 10:17:33|
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