日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 173

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ことの暁には、秋桜海(こすもすかい)の陸地化に疑義の出る余地など吹っ飛んでしまうだろうし、兄貴(新田)の視界の中では、例の鯛焼き島まで「ローマ領土」とすることに矛盾が無くなってしまうのである。

「間違い無くそうなるでしょうな。」

橋本さんが冷静極まりない口調で反応しているが、実際この人の興奮した姿など見たことがない。

「そうだろう。わっはっはっ・・・。」

我が意を得たりとばかりに哄笑しているが、このブルドックに至っては、国王陛下に願い出ることによって、日本が南半球に広大な領土を造成している未来像まで夢想してしまっており、しかもその大地の面積たるや、少なくともアメリカ合衆国のそれを上回るべしとしているのだから恐れ入る。

「これで、勝ち戦(かちいくさ)は決まりですかな。」

橋本さんが答えている通り、これほどまでの用意がある以上、不利になる材料など目を皿のようにしても見当たらない。

「その前に強敵がいるさ。」

ブルドックは、今度はこっちの顔を見据えながら親指を立てて見せるが、言わずと知れた総理のことなのである。

「は・・・。」

「夢物語として概略だけは申し上げてあるんだ。」

そりゃ、そうだろう。

「それで反応の方は・・・・。」

「笑ってらしたよ。」

「じゃ・・・、(オッケーなのか)。」

立案した作戦はあくまで案であって、当然ながら司令官の承認を得て初めて正式な作戦命令とすることが出来るのである。

「だから、これで夢物語が現実の話になったんだろう。」

「はい。」

現に自分にしても、半信半疑だったことは否めない。

「よし、一緒に来たまえ。」

「承知しました。(いよいよか。)」

わくわくして来た。

一本連絡を入れておいてから、三人揃って隣接の公邸に急いだのだが、その結果、岡部から新田へ緊急連絡が飛び込む羽目になるのである。

「兄貴・・・・。」

窓の月の岡部の声に力が無い。

「ふうむ、やはり不首尾だったか。」

「ほう、これだけで分かっちゃうのか。」

「ばかやろう、その面(つら)を鏡で見て見ろ。」

「そんなにしょぼくれてるか。」

「まるで、剣を捜してて端午の節句に出遅れちゃった鍾馗(しょうき)さまみてえだ。」

何せ若い頃の岡部には、髭(ひげ)を落とした鍾馗さまと言う渾名(あだな)があったくらいなのである。

「ひっでえ・・・。」

「しかし、国井さんらしいな。」

「俺も、改めて見直しちゃったよ。」

総理をである。

「なんて言ってた。」

「うん、肝心のポイントをご説明申し上げたらな・・・・・。」

無論、餌台に手乗り文鳥を引き寄せる手順であり、はたまたロンドンの尻を大いにつつきまわす手順のことをだが、それらの作戦が結果として米英同盟に亀裂を生じさせてしまうことは明らかなのである。

「うん。」

「ご愛用の硯箱(すずりばこ)を引き寄せて、おもむろに墨を磨り始めたんだ。」

「ほほう・・・。」

「こっちは黙って見てるほかは無い。」

「そら、そうだ。」

総理のしかめっ面が目に浮かぶ。

「やがて紙をのべられてだな・・・。」

「うん。」

「なんて書かれたと思う。」

「ばかやろう、勿体つけてんじゃねえ。」

「えへへ、それがな・・・・、墨痕鮮やかに、『士道に悖(もと)る勿(な)かりしか』と来たもんだ。」

「ふむ・・・・・・、『士道に悖る勿かりしか』か・・・・・・・。」

省(かえり)みて武士道に悖るところはないか、と言うほどの意味なのだろうが、少なくとも総理が否定的な立場に立たれたことだけは確かだろう。

「うん・・・。」

「そりゃあ、へこむわな。」

「頑固親父(おやじ)に説教喰らった気分だ。」

「わははは・・・。」

「そんなに大口開けて笑うなよ。兄貴だって同罪なんだからな。」

岡部は口を尖らせながら言い募る。

「田中だったら、縮み上がっちゃうところだな。」

「あいつだったら小便(しょんべん)ちびっちゃってるかも知れねえ。」

「ブルドックはなんて言ってんだ。」

「それっきり、うんともすんとも言わねえ。」

「わははは・・・。」

その表情が目に浮かぶのである。

「くっそおお・・・。」

「俺たちも一歩間違えりゃ、とんだ越境将軍に成り下がるところだったんだぞ。」

何しろ、ロンドンは勿論、例の上院議員にもさまざまに匂いをかがせるべく準備中だったのだ。

「勘弁してくれよう。」

「あぶねえ、あぶねえ。」

「ほんとだよな。」

「しっかし、つくづく国井さんらしいよ。」

「うちの大将はニッポン人なんだよ。」

「たしかにな。」

「ニッポン人ならばって考えると・・・・・・。」

「少なくとも今は、白頭鷲を罠にはめて喜んでるような状況じゃねえってことになるんだろうよ。」

往年の白頭鷲の雄姿は今や見る影も無く、既に腹を空かせた手乗り文鳥になりきってしまっているのである。

「うん、ひとことも仰らねえが、こっちが窮地に陥っちゃってるときならいざ知らず、いまは塩を贈るべきときだと言うことになるらしい。」

「天目山(てんもくざん)の勝頼に援軍でも送るかな。」

「少々の援軍ぐれえじゃ挽回は難しいだろう。」

「総崩れの状況だからなあ。」

無論信玄亡き後の武田家に、現在のワシントンの姿をなぞらえて言っているのである。

「それにインチキして領土を広げたりしたら、(日本の)未来の子供たちの心の傷になっちゃうかもしれねえし、ニッポン人の誇りにもかかわって来る問題だしな。」

「当たらずといえども遠からずと言うところだろう。」

「ワシントンの鼻面を掴んで引きずりまわしてやろうと思ったのになあ。」

「やつらが領有宣言を発してからが見ものだったからな。」

その頃には、男島と女島からの回収作業がこっちのバックアップを受けて脱兎の如く突き進んでいる筈であり、同時に餌台のエサを前に生唾を飲んでる筈なのだが、事前に約束してあるのはあくまで男島と女島の分だけであって、餌台のプレゼントには一言も触れてはいないのだ。

しかも餌台の地下施設は膨大なものであり、その全体像が掴めない以上、迂闊に海上からボーリングを始めてしまうわけにも行かんだろうし、百歩譲って無事に縦坑(たてこう)を掘削出来たにしても、その設備を自力でコントロールすることは不可能であり、黙って眺めていてやれば結局七転八倒した挙句泣きついてくるほかはあるまい。

いざとなれば餌台から巨大な櫓(やぐら)が立ち上がってタンカーの着桟を許し、油送管が自在に接続出来る仕組みが隠されている上、あとはもう、餌台の制御室に詰めてる筈の「誰か」が全てを機械的に操作するばかりだ。

しかも、その「誰か」に具体的な指令を発するのは、戦略管制室に詰めるかの「女帝」に他ならないのである。

「いい子にしてりゃあ、餌台も動かしてやるし・・・。」

「わはははっ。」

「ブツが空(から)んなったら、もういっぺん満タンにしてやるって匂わせときゃあ、もう言いなりになるほかは無かんべえ。」

その後の分も全て無償のプレゼントなのである。

「まあ、大抵のこたあ文句言わなくなるだろうな。」

「ふくれっつら一つ出来ねえだろう。」

手乗り文鳥がである。

「こっちが臍を曲げりゃあ、ぱあだからな。」

「おかげでいい夢見せてもらったよ。」

「自慢じゃねえが、その点は俺も一緒だ。」

秋桜海の件は勿論、現にさまざまな要求事項まで練っていたのである。

「今度は、そっちの大将がなんて仰るかだな。」

そっちの大将とは無論国王陛下のことである。

「ああ、うちの大将はさすが読みが深いぜ。」

「へええ・・・・。」

「今朝の話でも、全部無駄になっちゃっても悔いは無いって仰るんだ。」

「じゃ・・・。」

「うん、国井さんの腹ん中を読んでらっしゃったんだ。」

今にして思えば確かにそうに違いないのである。

「くう・・・・・・、なんとまあ・・・・・・。」

「どうだ、うちの大将だって立派なもんだろう。」

「ほんとだよなあ。」

「しかも、戦(いくさ)の始末に目処(めど)が立った今、この胸の憤懣を何処にぶつけてよいやら途惑う毎日だと仰る。」

「う・・・・。」

「それでな・・・。」

「うん・・・。」

岡部の声がか細い。

「かえって気が紛(まぎ)れて助かったって仰ったぜ。」

例え無駄骨でも大汗かいてる間は気が紛れると言う意味であり、新田にしてみれば、何はともあれ陛下の気晴らしになってくれさえすれば納得なのである。

「・・・・。」

「うちのかみさんなんか、べそかきやがってよう・・・・・。」

「ううう・・・・、もうたまらねえ。」

岡部は、はや涙声である。

「どっちにしても、これで秋桜海の陸地化プランはおじゃんになったと言うことだな。」

「しゃあねえな・・・。」

岡部は一段と元気がない。

「諦めがついたか。」

「ご承認いただけない以上、諦めるしかあるめえ。」

岡部の顔からは、油っ気が抜けてしまったようだ。

「そうか。そうなるってえと、うちの方の大将は新しい仕事に取り掛かれることんなるぜ。」

「んっ・・・・・。」

鍾馗さまがぎょろ目をひん剥いて、きょとんとしている。

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  1. 2009/05/27(水) 11:13:02|
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