日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 028

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九月も末に来て、大分前に約束していた米国へのサンプル供与が、あらためて実行に移される運びとなった。

タイラー補佐官が待ちに待った、例のSS六の第二回目の供与のことだ。

思えば彼自身、矢の催促をしてくる本国と秋津州国王との間に立って、儚くも切ないあがきを続けてきていたのだ。

なにしろ、この約束事は秋津州国との公式なものとは言い難く、元来、秋元京子とタイラーとの私的な約束だったのである。

正面切って秋津州国に催促するわけにもいかない上に、いまや秋津州は強大な軍事力を露わにして、持てる力を隠そうともしていない。

この意味でも、秋津州は以前の秋津州ではないのである。

米国の気ままな要求の前に容易く膝を屈するほど小さな存在でないことが歴然としてしまっており、それどころか、今や米国の前に傲然と聳え立ち、こゆるぎもしない大いなる壁と言って良いほどで、それは途方も無く頑丈で、ぶち破ることはおろか、よじ登ることすら出来ずにただもがくばかりなのだ。

彼が、目の前に聳え立つ壁の前で空しく神経をすり減らしていたところに、ようやく二回目の供与が実現の運びとなり、重い肩の荷をやっと一つだけ降ろすことが出来たことになるのだろうが、言ってみればこれも、全て秋元女史の助力の賜物であり、少なくとも、この美貌の日本人女性はタイラーとの約束を、忠実に果たしてくれたことだけは確かなのだ。

かくしてその日の国王は、打ち合わせた予定時刻きっかりに、そのことを実行した。

ホワイトハウス付近の上空に、あっさりと、そして唐突にそれを出現させて見せたのである。

全くの単機で、エリプス広場の芝生の上方数メートルの空間に、文字通りぽっかりと漆黒の機体を浮かべて見せたのだが、しかも、それがそこに出現するまでは、米国が世界に誇る防空管制システムの一切が捕捉出来なかったと言うのだ。

このことは、秋津州は常に自在にワシントンを攻撃し得ることと同じ意味を持つ。

米国当局が気付いた時には、既に攻撃を受けてしまったあとと言うことになり、全くその防衛が出来ないことになってしまうのだ。

まして、以前のときと違って、米国自身が秋津州の強大な軍事力の存在を知ってしまっている。

あの大兵力が、何の予兆も見せずに突然北米大陸の空を全て覆い尽くしてしまってから気付いても、恐らく哀れな米国は何も出来ないに違いない。

敵の襲来に気付いたときには、軍事衛星は無論のこと防空防衛兵器の全てが壊滅してしまっていることは、今次の対中露戦の推移から見ても明らかだ。

米国の安全保障体制にとって、これほどまでに深刻な事態など滅多にあるものではない。

かってのキューバ危機のケースとは根本的に違うのだ。

キューバ危機の場合には、そこに目に見える事象としての核ミサイルがあった。

その目に見える脅威の撤去を要求することも出来たのだ。

そして、相手が要求を呑まない場合、核攻撃の意思有るを以って脅すことも出来たのである。

しかし、今回の脅威は目にも見えず、レーダーで捕捉することも出来ない。

敵基地の所在すら掴めず、抗議しようにも抗議の対象にさえ困るのである。

本音を言えば、秋津州自体が消滅して欲しいと言うことになってしまう。

まさかに、相手国そのものが消滅することを申し出るわけにもいくまい。

まして、その国は今まで自国に対して、悪意どころか好意さえ見せ続けてくれた相手だ。

そういう相手に、消えてなくなって欲しいなどと言えるはずも無く、仮に言って見たところで素直に消えてなくなってくれる筈も無い。

万一秋津州に開戦の口実を与えてしまえば、たちまち身の毛もよだつ光景が現出するであろうことだけは、容易に想像することが出来るのである。

今回の対中露戦で、一部明らかになったその軍事能力にかかれば、最強の第七艦隊も一瞬で一艦残らず海の藻屑と消え、北極海の深海に配備中の戦略原潜や宙空にある軍事衛星といえども、やはり簡単に鉄屑にされてしまうことは目に見えている。

とにかく、秋津州に開戦の口実を与えると言うことは、米国にとって自殺行為にも等しいことは素人にも分かる。

絶対にその様な愚は犯してはならないことになる。

合衆国の生存にとって必要不可欠の作戦は、唯一先制攻撃による敵の殲滅以外にあり得ず、それは文字通りの「殲滅」であり、少しでも討ち洩らせば、その瞬間に凄まじい報復攻撃を喰らうことを覚悟せねばならない。

優秀な頭脳を持つ筈の大統領のマシーンの全てが、例外なくそう実感したことは確かで、この点で、秋津州国王の戦略の意図するところは、ほぼ達成されたものと言って良い。

また、今回の紛争の収束に到る経緯の中で、少なくとも秋津州と日本との間に強い絆の存在が確かめられて来ており、そのことから言えば、米国にとっての日米安保条約の存在意義が、根底から覆ってしまったと言っても過言ではない。

今までは、その一風変わった軍事同盟は日本国にとっても重要かつ貴重なものであった筈だ。

しかし、日本にとって、今やその必要性が、純軍事的には煙のように消え失せてしまったと言って良いのである。

この条約の破棄を日本側から通告してくる可能性さえ出てきたのだ。

この観点から言っても、米国の対日戦略どころか、世界戦略までが大幅な変更を余儀なくされるに違いない。

少なくとも、もはや日本から見た従属的な対米関係などは、全く存在してないことを米国自身が思い知らされたことは確かであり、それどころか、日米間に存在していた上下関係までが、最悪の場合逆転しかねないことまで想定しなければならない。

詰まりワシントンは、特別な緊迫感の中で貴重な贈り物を受け取ることになったわけで、とりわけその重要性についての認識はほとんどの者が共有していた筈だ。

その上驚いたことに、この小型SS六のサンプルに搭乗していたのは、当初から供与が予定されていた二体のヒューマノイドだけであったのだ。

そのほかには、誰一人見当たらなかったのである。

それほど欲しければくれてやるとばかりに、まるでホワイトハウスの庭先に放り投げるようなやり方だったのだ。

いみじくも、秋津州側からの随伴者がただの一人もいなかったと言うこの事実が、後々まで豊富な話題を提供することになった。

まして、前回の供与の際には国王自身が回送してくれたと言う実績があり、タイラーとしても、それにならって国王自身の訪米をも同時に実現したいと考えたのも無理は無い。

本国からの訓令にも、最優先課題としてそのことが謳われていたのだ。

現在の微妙な情勢から言って、自国にとってままならない独裁者を懐柔することが出来れば、それに越したことは無いであろう。

他の場合と違って、いかにままにならないからと言って、暗殺してしまうわけにはいかないのだ。

そんなことをすれば、たちまちあの大軍団の攻撃を受けてしまうことは、ワシントンが身に沁みて認識している。

秋元女史の言によれば、王が変死したりすればその犯人が誰であろうと、軍団の怒りの矛先は米国に向かうことは必至であり、またその軍団を整斉と制御出来る者も王以外には存在しないと言うのだ。

どうやら、王の軍団とはいわゆる国軍ではなくて、王の私兵と言って良いものであるらしい。

ましてその全てが、王の意思によって建設されたヒューマノイド軍団である以上、一切の情報操作や離反工作も全く通じないと言うことになる。

ヒューマノイド兵士には買収も脅迫も通じない。

裏から言えば、王の発する命令が如何に苛烈なものであっても、全軍が唯々諾々として従うのである。

例えその命令が、自軍の全滅を意味するものであったとしてもだ。

とにかく、どんな難局にあっても、全くその戦意が萎えることの無い軍団であり、この点一つとっても他に類を見ない最強の軍と言えるのである。

いずれにしても、米国にとっての打つ手は非常に限られてきていることは確かだろう。

その国内で王に対する反対勢力を密かに扇動し、資金と武器を与えながら育成し、やがてクーデターを起こさせると言う常套手段があるにはあるが、CIAがどう足掻いて見たところで、現在の秋津州にはそういった反対勢力の芽を見出すことは出来ず、今後のたゆまざる努力によって、秋津州の人民の間に王権に反抗する勢力を少しずつ培って行くほかは無いのである。

しかし、このCIAの得意技も、目下の情勢分析によれば、全く哀しむべき見通ししか見出せず、大統領のマシーンの間でも、その実効性は非常に薄いと言う結論が出てしまっており、タイラーの立場から言えば、益々国王本人の訪米だけは成ってくれることが望ましかった。

そのことによって、米国のプレゼンスをいまだ重しと看做してくれる諸外国の視線があるからだ。

京子を通じて必死に願って見たが、結局その返事は哀しいほどににべも無いものであった。

「多忙である。」と言うその一言は、一切の抵抗を封じるほどの強い響きと冷徹な現実によって裏打ちされていたのである。

少なくとも、米国の意向にその都度配慮する必要など無くなってしまったことだけは、もはや動かしようが無いだろう。

また、その多忙さも事実であった。

若者は、国内のインフラの整備に余念が無いのである。

特に、農耕地の開墾開拓の面では著しく作業を進捗させつつあり、数メートルの深さにまで掘削された広範な開墾地には、荘園から良質な土壌が大量に搬入されたと聞く。

従来の秋津州はごく小規模の農耕地しか持たなかったものが、この面においても明らかに面目を一新しようとしており、タイラー自身も開墾作業をその目で見たが、その規模の壮大さにはただただ目を見張るばかりだ。

聞けば、この作業につぎ込まれた軍団は、一個連隊、二十億を超える大部隊であり、それだけの大兵力をつぎ込む以上ごく短期間のうちに素晴らしい成果が生まれる筈だ。

若き独裁者が立国の基盤を固めるために全力を傾注し、まことに多忙であることは事実なのである。

結局ワシントンは、圧倒的な力を持って誕生した新チャンプの今後の出方が全く掴めず、重要な情報が一切入手出来ないまま、全て手探り状態で重要な国策を決定しなければならないと言う苦境に立たされていることにおり、とにかく、的確な対応策を定めるためにも、一刻も早く秋津州の真意を掴む必要に迫られていた。

しかも秋津州の場合、その真意とは国王個人の真意に他ならず、その胸の内を探るための有効な手段は、最早例の女性部隊の活躍に賭けるほかにない。

無論、本国当局がかき集めた美女たちを総動員して、あらゆる機会を想定して大仰とも思える態勢をとりつつある。

王の最大の好物が酒であることは既に知れているが、最大の好物は又、最大の弱点にもなり得る。

新装のマンションの中には、国王専用の豪華な酒場まで用意済みなのだ。

その酒席には、この美女たちが大挙して侍ることになるだろう。

あとは、トラップに獲物を誘い込むばかりだ。

かの少年に遊興淫楽の味を覚えさせ、凛然たる精神を堕落の淵に突き落とし、更には有効な情報を収集することこそ、その狙いであることは言うを俟たない。

秋元女子にも協力を願ってみたところ、この件に限っては意外なほど積極的な協力を得ることも出来ており、彼女に随伴する形式で既に十数人の戦士が王に接触することに成功している上、最近ではあの最上階にまで出入りを許されているのである。

獲物はと言えば、日本円にして十億を超える賞金首であり、それもタックスフリーだ。

戦士たちの戦意が激しく燃え盛っているのも当然で、その波状的な吶喊攻撃が近い将来の輝ける戦果を予感させるのだ。

何せタイラーの見るところ、いかな情操堅固の男子といえども、その鉄腸をも蕩かしてしまわずにはおかないほどの者もおり、その美しさは古来より言い古された「傾城の美女」もかくやと思わせるほどで、当然他の男性からの誘いも多いことから、当初戦士たちの集中力が削がれてしまうことを恐れたが、ごく一部を除けばそれも杞憂に過ぎないことが判って来た。

ターゲット個人の男性的魅力もさることながら、やはり高額の賞金の魅力が何にもまして勝っていたのだろう。

やがて戦士たちは、その居室付近に重点的に網を張り、飽くことなく獲物を狙うことになる筈だったが、最近の王は作業現地にいることが多く、夜は夜で現地の若衆宿で過ごしているらしく、ほとんどそこには戻らないと言う。

要するに、王が多忙を極めていると言うのも確かな事実であり、そのために今回の訪米を見送らざるを得なかったと見ることも充分可能だったのだ。

ところが、一方にそうは見ない者もいた。

国王自身の重要な政策判断として、自身の訪米を無用としたのだと見る者たちのことだ。

現に一部のメディアなどは、過去、王が天安門広場や金日成広場に敵兵の遺体を一方的に送り付けたケースと対比させながら、国王の対米心象についてあれこれ勝手に忖度してはその論評を飾り立てており、殊にフランスのメディアなどは、その論評をクリスマスのイルミネーションより派手やかなデコレーションで飾り立て、過去の横暴なスーパーパワーの存在そのものを極めて否定的に論断し、ここぞとばかりに溜飲を下げているふしさえあった。

だが、誰に何を言われようと、米国の方からは、このような秋津州のスタンスについて苦情を言えた義理では無いのである。

ありていに言えば、このサンプルをもらえただけでも感謝すべきであり、この贈り物が最後の好機になるかも知れないことを、より重く受け止めるべきなのだ。

一つには、この度の紛争の勃発する前とは、世界のパワーバランスが全く違ってしまっていることを、既に世界が知ってしまっていることが一層重大であった。

全く新たに、圧倒的なチャンピオンが誕生したことを、否応無く世界が知らされてしまったのである。

これからは、今までのように米国の一方的で強圧的な物言いなどは、一切通用しなくなって行くことだけは確かだ。

実質上米国を支配するWASP(White Anglo-Saxon Protestant)でさえ、最近では、秋津州の超絶的な実力を認めざるを得なくなってきており、まして彼らは、その秋津州に対する侵略行為の歴然たる後押しをしてしまっていたのだ。

結果として途方も無い強国に喧嘩を売ってしまったことになる以上、国政を預かる身としては、明らかに、決定的と言って良いほどの政策の過りだっただろうが、既にやってしまったことは元には戻らない。

秋津州に対して背信行為を働いた米国は、ごく普通に言って、秋津州からは敵国と看做されて当然なのだ。

本来なら、米国の全土はとっくに秋津州軍に占領されてしまっていたとしても何の不思議もないことになる。

その攻撃を受けていないだけでも、儲けものである筈だ。

このようなサンプルの供与なぞ、二度と再び望むべくもないと考えるほうが余程自然だろう。

言わば、最後のチャンスを与えられた米国の担当ティームは、当然その研究に没頭することになるが、彼等がその目的を達成するためには、まだまだ困難な問題を数多く抱えていた。

政策担当者は別として、実際にその研究に携わる技術者たちは、問題の多くを解決するためには、秋津州からの技術移転の必要性を思わざるを得ないと言うのだ。

以前にも触れたが、特殊な合金も大きな壁の一つであり続けている上に、近頃ではこの原動機の中心部とでも言うべき動力の発生原理についての壁が、重ねて大きくのしかかってきていると言う。

そのことについては、添付されていた大量のドキュメントによって、大雑把には理解出来ていたつもりだったのものが、一向にその作動と制御を再現出来ないままだ。

しかもこれ等の技術を、秋津州がことさらに隠そうとしているわけでは無く、単にその技術レベルが圧倒的に高過ぎるだけなのだ。

かなり懇切に書かれているドキュメントによれば、極めて強力な磁性体の磁化を自在に制御することによって、シャフトに回転力を与えている筈なのだが、貴重なサンプルを一旦分解したら最後、二度とそれを再現出来なくなってしまうと言うのである。

また、ハウジングだけを自前の合金を用いて製造し、それを用いて組み付けた場合、全てにわたって深刻な強度不足を招いてしまう。

その強度不足も絶望的なほどであり、似せて造った自前のハウジングが、僅か数秒も持ちこたえられないと言う計算値が出てきてしまうのだ。

全ての動力源と思われる原動機一つとってさえこのような状況であり、SS六や兵士の異様とも思える浮力や推力の発生原理についてなど、到底辿りつけるわけが無い。

また、SS六を自在に操るオペレーターは、言わば具え付けのヒューマノイドである筈なのだが、そのオペレーターに与えるべき指示命令の伝達方法が分からない。

このサンプルを主体的に動かすことすら出来ず、ましてや、そのコピーなどどう足掻いても造れそうに無い現実がある以上、その供与を何度受けても、米国当局は貴重なチャンスを生かせそうも無い雲行きなのだ。

ただ、今回のことは、政治的なイベントとしてだけは成功したと言えなくも無い。

秋津州国王の対米心象がさほど悪いものでは無いと言うことを、世界にアピールするためには役立ったかも知れないからだ。

欧州のメディアの論調の中には、合衆国にとっていよいよ厳しいものが増加して来ており、近い将来の秋津州による米本土攻撃の可能性を無しとはしないとするものまで出始めていたのである。

しかし、この一大イベントによって、秋津州を巡るマーケットの不安定材料の一つが、大きく改善されたことだけは確かであったろう。

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  1. 2005/11/03(木) 04:30:51|
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