日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 004

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しかし、この時点で、これまで沈黙を守っていた東アジア諸国が、あいついで秋津州に関する声明を発することになる。

無論、全て一方的な声明ばかりだ。

先ず、朝鮮半島の南北に分離して存在する二ケ国が、古代文書に秋津州に関する領有の根拠が記載されているとして、秋津州の領有を唐突に宣言したのである。

但し、嗤うべきことに、その古代文書は過去の大日本帝国に持ち去られたとして現存せず、その文書の一部を孫引き参照している書籍が存在すると言い、同時に、秋津州の住民は自分たちの祖先が遠い昔に移民した者達の子孫であると主張している。

これも、例によって例の通りであったろう。


続いて、中国全国人民代表大会が秋津州の領有を決議し、中国政府は「海東島(秋津州のこと)は自国の領土であり、海東省と名づける。」旨宣言した。

こちらの場合はその根拠にさえ触れてはいないが、例によってかの国の常套手段であろうから「根拠」など有ろうが無かろうが大した違いはあるまい。

「人民日報」の論調では、単に「海東島住民は中国人であり、先占の原則により当然に海東島は中国の一部である。」との一本調子だったが、要するに秋津州は「中国領海東省」となったわけで、例えば、沖縄県の「尖閣列島」などと同様に、中国政府が中国の領土であると正式に定めたことになるのである。

これに対し当の秋津州側は米国メディアの取材に応じ、国王自らが「わが国は堂々たる独立国家であり、かかる無礼極まりない宣言は即刻撤回を求める。」として、抗議声明を発するにとどめた。


また、国民議会の議場にカメラが常設され、先の米国メディアによって議会が公開されたことも話題を呼び、そのメディアは事実上独占的な配信権を持ったことになり、自然大いに奮起して報道する。

やがて閉会中の議場が配信されたが、その中心には、十人も座れば満席になりそうな木製の円卓が傍聴席に囲まれるようにして配され、議長席の真後ろ三メートルほどを隔てて、直径三メートル、高さ五十センチほどの円柱形の壇があり、その上に玉座がある。

カメラはこの円柱の周囲を、低い視線でゆっくりと舐めるようにして捉えていく。

その円壇の側面には、古代の埴輪像(はにわぞう)を想わせる武具甲冑を着け、左に盾を置き右手に矛を立てた三十三体の武神像が一際豪壮な筆致で描かれていたが、その表情は埴輪像のそれとは大きく異なり、威厳に満ち満ちて眼光鋭くはるか彼方を見つめているかのようであった。

また、武神像の背後には、見事な鬣(たてがみ)を備えた未知なる獣が八頭、四肢を踏ん張り辺りを睥睨しており、この獣については、いわゆる「唐獅子」を髣髴とさせると言う者も少なく無い。

そしてこれ等を従えるようにして壇上にある玉座は、なんの変哲も無い古ぼけた木の椅子であり、ただその背もたれだけが高々と立ち上がっていたのである。

ナレーションは言う。

この絵は王の軍兵(ぐんぴょう)を象徴的に描いたもので、三十三体の武神像は近衛兵、八頭の獣は八つの兵団を表しており、八頭の獣にはそれぞれ六十四本の髭が描かれ、その一本一本が軍団を意味していると言うが、もし、その伝説に従えば、秋津州は近衛軍のほかに、それぞれ六十四個もの軍団を具える兵団を八個も持っていることになるだろう。

そして、カメラは若干の解説を付けながら議会の中継にまで踏み込んで行く。

この秋津州国では三つの村が、それぞれ二名の正代議員と一名の準議員とを議会に送り出しており、準議員は発言権は持つが票決権は無く、自村の正代議員が議長に選出された場合、その村の準議員は正代議員と同等の資格を持つことになるが、議長は一切の票決権を持たず、常に六人が議決権を行使する仕組みだと言う。

また、この議会の開催にあたっては、全議員と数十人の傍聴者たちが起立する中、軍装の国王は玉座において議会の召集を宣言するや悠然と退場して行ったが、かつて国王の直接統治を決議したとされるこの議会では、極めて活発な論戦が展開され、果たせるかな、国家としての根本問題に入り込んでいるようだ。

国家有用論と無用論、もしくは、大きな政府か小さな政府かの議論である。

極論として、全くの国家無用論までが存在していると言い、曰く、法は自然の「慣習法」で充分とし、犯罪や紛争は自村内の自警団と村役だけで処理が可能であり、警察も裁判所も軍隊も不要、低費用で最小の税負担、国家からの規制を受けず民衆は最も自由であるとする意見で、現在の秋津州はこの形態に最も近いとされる。

又一方に、近代国家として三権(司法、行政、立法)を整備し、国家基本法を始めとするもろもろの成文法を定め、確固たる国防軍を建設すべしとする意見があり、その場合の国民はそれなりの税を負担し、国家からそれなりの規制を受けることもまた已む無しとするものであった。

しかも、諸外国と対等の交わりを結んでいくためには、外交能力は勿論、中央銀行を始めとする近代的な金融システムや、安定的な通貨制度を持つことが必須であると主張する。

彼等は、自国内の貨幣経済が未成熟のまま対外交易を不用意に容認すれば、国内経済はたちまちにして破綻し、多くの貧窮民の発生をも招いてしまうと言い、その結果自立した国家体制を維持していくことすら困難な事態に立ち至ってしまうことは、歴史上の必然であるとまで主張していると言う。

いずれにしても、「国家」とは唯一自国民に福利をもたらすべき仕組みであって、受益者である国民自身がその仕組みを作り、その費用を負担し、なおかつ適切に運用するものであると言う一点だけは合意がなされているようだ。

一日目の論議は基本的な観念論に終始したとは言え、精力的な取材活動によりおぼろげながら見えてきたことがある。

第一に、どうやら国家予算の基礎となるべき税収が僅かでしかないらしいこと。

第二に、税収や食料の不足分は全て国王が補っていること。

第三に、国民議会の全議員、三個村の自警団及び村役たちは全て自弁で全員が兼業であること。

第四に、内務省と称する唯一の行政官庁らしきものが存在するが、そこに勤務する数十名の専従者たちの俸給は国王が負担していること。

第五に、各村々の学校設備も国王が用意したもので、教員も内務省から派遣されていること。

第六に、車両による移動式の医療設備とスタッフも内務省から出動しており、その経費も全て国王の負担であること。

第七に、島の外郭にある望楼に一時的に千人超の自警団を配備していたが、現在は少数の配備体制に戻っていること。

第八に、現在、内務省が管理している国庫には国内通貨、貴金属及び外貨を保有しており、これらも全て国王がもたらしたものであること。

要するに、公共的なコストに関しては、その大部分が国王の負担するところとなっているらしく、その国王の財力の源は国王個人が国外に所有していると囁かれる言わば「荘園」に有りそうだ。

似たような国家形態は一部の石油産出国などに多く見られるとは言うが、それらの場合、国土の地下資源に関わる利権を一握りの王族が独占し、そこから公共的な財源を支出して、国民の納税義務を一部減免するかたちを採る場合が多い。

しかしながら、現時点の秋津州では、その国土自体は地下資源を産出するような気配は無く、それら産油国の場合とは事情が大きく異なっていると言えるだろう。

まして秋津州の場合、王族はおろか専任の侍従たるべきものも見当たらず、豪奢な王宮どころかその居宅と言えば、内務省の一郭にワンルームマンション程度の居室と執務室があるだけで、それらも全てメディアに公開済みなのだ。

兎に角、普段は体の空いている限り村々の民と共に働き、夜間はその地の若衆宿と言うものに寝泊りしていて、その居室にはほとんど戻らないという不思議な王なのである。

いきおい取材陣の興趣を誘うものは山ほどもあり、取材対象に事欠くことは全く無いのだが、この秋津州にはその宿泊を可能とするような施設など全く存在しないため、クルーたちは外洋に遊弋させているチャーター船を基地として活動せざるを得ず、しかもその足はヘリにたよっている状況だ。

彼等のストレスはいやますばかりであったが、ほどなく秋津州側が、国民議会の東側に広大な用地付き宿舎と大容量の電源を提供したため、メディア側はかなりの機材を搬入し、その人員も増員の上、世界に向けてほぼ同時中継を実現、実質上秋津州支局としての機能を備えるようになって行き、近い将来の日米英等の他のメディアの参入も、いよいよ取り沙汰されるようになって来たようだ。


さて、秋津州最南部における外郭堰堤は、その外壁面がほぼ直角に近い角度をなしてそのまま海中に没している。

そのことに着目したNBS側は、外海の船舶が眼下間近に停泊出来るのではないかと考え、その堰堤上に大型クレーンを設置したい旨を申し入れたが、秋津州側の容れるところでは無かった。

その理由として、この場所は、湖と外海を隔てている外郭堰堤の厚みが二千メートル未満と最も薄く、港湾を持たない同国としては、近い将来この部分を開削して湾口と為すべく計画中のところでもあり、また、仮にこの堰堤上に大型クレーンを設置してみたところで、そのブームが届くほどの近さにまで船舶が接近し、かつ船掛かりする事は困難であろうとのことであった。

何せその堰堤の外側は岩礁こそ見当たらないが、波頭逆巻く外洋なのである。

如何なる船舶であれ不用意に接岸しようとすれば、堰堤の岸壁に激突しかねないのだが、この申し入れも、NBS側が特殊車両や重量機財の搬入に苦慮した末のことであり、工事が何時のことになるやら見当もつかない以上、そんな悠長なことは言っていられないと言う。

しかし、このとき秋津州側から出された対案は、NBS側の度肝を抜くに充分なものであった筈だ。

何しろ、希望する機材の搬入作業を、軍が代行してくれると言う提案であり、挙句に、搬入物がおよそ人工の工業製品である限り、その重量は無制限とまで言われたのである。

最初は半信半疑であったNBS側も、ヘリの引上げ作業時に見せ付けられた特異な能力のことも想起し、やがてこの提案に従うことになる。

このような経緯で、早々と搬入作業が開始されることになり、それに先立ってNBS用地の上空に飛来したのは、なんと直径五十メートルもの二機の円盤型航空機であった。

無論、誰しもが仰天した。

当然であったろう。

SF映画の一シーンでは無いのである。

どよめきの中、そのうちの一機が、地上十数メートルにまでゆっくりと降りて来てホバリングして見せているが、これほどの巨体にもかかわらず、ジェット噴射のような噴出音も聞き取れず、プロペラ状のものも見当たらず、音も無く、ふわりと浮かんでいるのである。

ただ、漆黒の機体に浮かび上がる「八咫烏」の国旗と、日本語とローマ字で描かれた「国名」の鮮やかさが、大勢の目撃者の眼前で、ひときわ高らかに秋津州国籍を主張していたと言って良い。

彼等があわててカメラを用意したときには、その側面に開いた出入り口から兵士が次々と飛び降り、それぞれが地上数十センチほどで一瞬停止するような仕草を見せながら着地していく。

その全員が、瞬く間に指揮官の前に整列を完了し、その間、号令も聞けず、一切が不気味なほどに無言だったのだ。

降り立った兵士たちは概ね千名ほどのものか、いわゆる迷彩服と耳まで隠れる薄手のヘルメットを着用し、腰のベルトに小型拳銃と小さな袋状のものを装着しているだけで、ワイヤーどころか麻のロープ一本手にしていないのである。

やがて外海の船舶との連絡調整も完了して、即座に作業が開始されたものらしく、無言の兵士たちは一旦地上数メートルにまで浮上し、外海に向けて一斉に飛行して行く。

微かな風切り音を残し、それは、真っ青な空の中でどんどん小さくなって行きやがて見えなくなった。

そして、待つほども無く、さまざまな重量機材が次々と空中を運ばれてくる。

概ね一トン未満のものは二・三人掛かりで、機材に玉掛け用のフックが具わるものに至っては、数トンにも及びそうなものでさえ三四人で軽々と運んでくるのである。

彼らは、重量物を移送するにあたって一切の道具を使っていないのだ。

使用する必要がないのであろう。

とにかく、この怪力無双の空飛ぶ兵士たちが素手で行う作業は、考えられないほどの効率を実現しており、あまりに素早い進捗ぶりに、かえって船舶側の準備作業の方が追いつかなくなるほどであったと言う。

無論、この搬入作業の模様も全て配信され、それこそ世界中からどよめきが聞こえてくるようだったが、この結果、NBS側がそれまで搬入不能と諦めていた超大型機財までが手配されるまでになり、巨大アンテナや種々の車両ばかりか、燃料用の大型油槽や給油設備までが揃い、この大型油槽も次々と各地に埋設されるに至り、NBS側の勢いに益々拍車をかけて当然だったろう。

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  1. 2005/05/20(金) 00:10:37|
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