日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 049

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国王と秋元京子との通信。

国王の現在位置は秋津州の農耕地を移動中、京子のそれは神宮前のオフィスである。

「陛下。」

「うむ。」

「久我電子についてでございますが。」

「如何した。」

「いよいよ実質的な債務超過がはっきりして参りました。」

「久我親子は何も手を打とうとはせぬのか。」

「何も、と言うわけではございませんが、少々のことでは決定的な効果などとても見込めないと存じます。」

今やあの国は多くの不安定要素を抱え息も絶え絶えのありさまであり、そのような国の企業を主な顧客に持ったままでは、決定的な再建策などあろう筈も無く、その依存度を縮小する努力が実らなければ、いくらカネを注ぎ込んで見たところで、まるで笊で水を汲むようなものだ。

しかも、秋津州から受けた債務を履行しようともせず、官民共に未だに反秋津州的言動を繰り返しており、このままではあの国のカントリーリスクが縮小することは無いだろう。

「ふむ。」

「お指図を願いとう存じますが。」

「例の信用供与を、積み増ししろとでも申すのか。」

「銀行団は、その意向かと存じます。」

そしてそれが十分に可能と見たからこそ、銀行団もことを急いではいないのである。

「・・・。」

「お断りになれば、一瞬で信用不安が表面化してしまいます。」

そうなれば、舞台の幕が開いてシナリオ通りにことが進行してしまう。

そのシナリオにはありふれた経営破綻のストーリーが描かれているだけで、その規模から言っても公的資金などは決して登場して来ないのである。

「娘本人は何と申しておる?」

「事情がよく飲み込めてらっしゃらないようでしたので、噛み砕いてご説明申し上げました。」

「うむ。」

「陛下に一千億ものご損をおかけして申し訳が無い、と。」

「損などは良いが、そのあとどうするつもりなのだ。」

「お嬢さまは、仕方が無い、と仰っておいでですわ。」

「仕方が無いとは?」

「会社が潰れてしまうのは、仕方の無いことだと言う意味かと。」

「親御と倅殿は何と?」

久我京子には、立派に成人した兄が一人いる筈なのだ。

「困った、と仰っておいでですわ。」

「それだけか?」

「あとは、陛下のお指図をお待ちしたいと・・・。」

「わたしからの指図などは無いと伝えてあるだろうな?」

「はい、何度も申し上げてございます。」

「・・・。」

「いかが致しましょう?」

「ふむ、これ以上どうしてやりようもあるまい。」

「それでは、潰れてしまいますが。」

「全財産を投げ出して見せれば、まさか殺されるわけでもあるまい。」

「それはそうでございましょうが・・・。」

「が・・、何だ?」

「いえ、ただ、お嬢さまの行く末が気掛かりなのでございます。」

「男たちは自力で何とかするだろうが、娘はそうも行くまい。」

「はい。」

「娘にまで債務が残るのか?」

「それは、一切ございません。」

「確かか?」

「はい、間違いございません。」

「では、娘には債務保証など一切せぬよう申し伝えよ。」

「それも、もうお伝えしてございます。」

「それで良い。」

「それだけでございますか。お嬢さまは学校どころか住むところにもお困りになってしまわれますが。」

「とりあえず、卒業するまでは何とか致せ。」

「承知いたしました。」

「くれぐれも余計なことは致すな。」

「それは承知しておりますが、お嬢さまご自身がご家族を支援なさる分には差し支えはございませんでしょう?」

「ふむ、その程度のことであれば致し方あるまい。」

結局、経営者本人が確固たる経営方針を打ち立てられないのでは、所詮これ以上の支援は無意味だろう。

経営者の資産は、経営者本人の判断によって運用されるほかは無い。

運用の結果次第で直接本人の資産が増減する以上、他人がどうこうすべきでは無いのである。


そのころのメアリーは、秋元女史と連絡を取るべく必死の思いをしていた。

無論、全て愛するダイアンのためにだ。

あの若者の、特にプライベートに関する情報を得るには、他のルートはほとんど役に立たないのである。

とにかく、国王に関する正確な情報が欲しい。

それも、ごくごくプライベートなことに限る話なのだ。

以前、王がモニカの部屋に一泊したかのような情報が一人歩きし、それがダイアンの耳に入ってしまうことを恐れたことがあったのだが、その次の日にはひょんなことからほとんど霧散してしまった。

肝心のその夜、国王は近衛軍と一人の日本人女性を伴い、荘園に出向いていたことが大きく報道されたことに加え、帰って間も無い若者が、ダイアンの道場で散々に稽古をしていったからだ。

後にその女性の記者会見のシーンもその目で見て、気にしていた気配も無いではなかったが、問題の女性が画面の中であっけらかんと話している内容からは、若者との男女関係を窺わせる気配など少しも感じられなかった。

その女性自身が、記者団の質問に答えてそのことを明言していることに加え、二人の間には親子ほどの年の差がある。

ただ、王の荘園にまで随伴出来るとは、国王にとって余程の意味を持つ女性であることだけは確かだろうし、無論そのことも秋元女史に連絡さえ取れれば明らかになる筈だ。

幸いダイアンの日常にさしたる変化は見られず、メアリーの気苦労も幾分かは軽くなったものの、一難去ったあとの彼女には、又新たな不安材料が芽生えつつある。

それは、肝心の秋元女史が日本に出向いたまま、いまだに連絡が取れないことであり、今ではそのことの方がよほど大きな気掛かりとなっており、胸の中を不安ばかりがよぎるのだ。

なにせ、神宮前のオフィスに何度伝言を頼んでも、一度として反応が無いのである。

折角培ってきた女同士の連帯感が、先方の心の中から失われてしまったのではないか。

そう言う恐れさえ芽生え始めており、万が一にもその推測が的中していたら、大切なダイアンにとって最強の援軍を失ってしまうことになる。

彼女が東京で、ある女性をバックアップするために盛んに動いていることなど、メアリーには想像すら出来なかったのだ。


事実その女性は、ごく近い将来その住居まで失ってしまいそうな境遇にあった。

その女性とは、無論久我京子のことだ。

そのために彼女は、その娘の住居となすべく、自らの所有になる不動産に急遽手を加えつつあったのである。

それは、神宮前からも程近い知る人ぞ知る閑静な住宅地にあり、娘の通学にとってもまことに都合の良い立地だと言う。

渋谷区松涛の一郭に位置するその瀟洒な物件は、およそ三百坪ほどの敷地に建つ白亜の洋館で、部屋数は一・二階を併せてもせいぜい十室ほどのものなのだが、その地階にはかなり贅沢な収納スペースが確保されており、たまたま入手していた物件の一つが、このような形で役に立つことになって、その持ち主自身が誰よりも張り切ってしまっている。

娘本人も何度か引っ張って来て、内装や調度の好みについても細かく聞き取った上で、あらかた工事の目処も立ち、あとはその主の入居を待つばかりにまで漕ぎ付けていた。

彼女はまるで親代わりにでもなったような勢いで立ち働き、国王がまったく関知していないにも拘わらず、娘の乗る車の手配まで終えてしまっているほどで、結局王家の世継ぎを得るためともなれば、マザーの指揮下で独断専行が続くことになってしまうのだ。


一方の若者は、相変わらず自国内で忙しい日々を過ごしながら、幼い一族の全てを失ってしまった哀しみを紛している。

生きる目標の大切な部分を見失い、胸の中に生まれた空洞を必死に埋めようとしていたのだ。

最近では、居室の窓越しに外の景色を眺めながら、ただ呆然としていることが多くなり、いっそ地球を去って丹後に戻り、ひっそりと暮らそうかとまで思ってしまう。

もともと若者の望みは日本の傍らでひっそりと暮らすことに尽きており、そのためにさまざまな犠牲を払い、幾多の艱難辛苦にもひたすら耐え、やっと自らの国家を打ち建てることが出来たばかりなのである。

マザーの人工子宮の中で誕生の日を待つごく僅かの者が、無事に生育してくれさえすれば、きっとこの国を引き継いでくれるだろう。

若者にとっては、そのことだけが切実な願いであり、その子等の未来のためにも、この秋津州の天地を守り抜くことが、一族の長老としての己れの責務だと信じたい。

そうである以上、この秋津州の天地がどのような気候風土に恵まれるかを見定め、適確に対応して行くことが重要な務めになって来るが、その点小さ目の熱帯性低気圧も二度ほど経験し、この大地が相当の降雨量を確保できる見通しも立った。

農耕には自然の降雨が欠かせないのである。

そして、天は今日もこの地に恵みの雨を齎してくれてはいるが、その降雨量が少々多過ぎたために、治水のための諸機能がその限界点を実地に試されるまでになってしまった。

豪雨は降り続き、若者の治水システムが今耐えている。

その治水システムの全ては、たかだかここ一年ほどの間に、若者自身がたった一人で企図し、かつ建設してきたものばかりなのだ。

秋津州誕生の特殊ないきさつから言って、このシステムが適切に機能するかどうかは未知数であり、万一その機能に不備があれば、若者自身が直ちにその対策を工夫しなければならない。

場合によっては、新たに大規模な工事を企図する必要まで生じるかも知れず、若者はそれを直かに己れの目で確かめ、そして即断するために、今も主要なポイントを移動しつつ観察を続けているところだ。

全土に配備してあるD二やG四からも刻々と報告が入って来ており、最悪のケースも想定して、大規模な土木工事の用意も既に命じてはあるが、その場合動員される輜重部隊は、少なくとも一個連隊、二十億を超えるほどのものになるだろう。

やがて、予測どおり雨は止んだが、未だ河川の増水は続いており、なお予断を許さない。

若者にとってその後の数時間が言わば正念場であって、辛い時が流れる中、改めて各地の状況を確認したが、主要河川も危険水域を超えることは無い。

雨がやんで既に数時間の時が経過した今、若者の秋津州が二百ミリを超える豪雨にもびくともしない姿を見せてくれている以上、国土全体の保水と排水の機能が、これほどの豪雨にも余裕を持って対応出来ていることになり、そのことに確かな自信を持つに至ったのだ。

長時間の緊張から解き放たれ、ほっと安堵の胸を撫で下ろした途端、そこは正直なもので若い肉体が俄然激しい空腹を訴え始め、早速内務省で待機中の侍女に夕餉の支度を命じていた。

無論、今も一人、井上甚三郎だけが側を離れない。


若者はその居室に戻り、シャワーを浴びてから食卓に向かい、黙々とその食欲を満たしながら、まるで自分自身が人として生きていることを、改めて再確認しているような気分を味わっていた。

その豪快な咀嚼作業が一段落し、侍女の一人が今しも食後のお茶を運んでくるところだ。

絶世の美女がしずしずと盆を捧げ持ってくる。

豊かな黒髪を艶やかに結い上げ、色白で肌理細やかな肌、鈴を張ったような瞳も黒々と、その上素晴らしいプロポーションまで具えているのである。

これがヒューマノイドだなどと言われても、信じられるものではないだろう。

「甚三(じんざ)。」

「はっ。」

「アメリカ娘どもに声を掛けてやってくれ。」

彼女たちは、いつものエレベータホールのあたりをうろついており、王はそこを通ってはいないにせよ、その付近にいるG四からは、今日はモニカとタエコの二人だけだと伝えてきている。

敵の方も、いよいよ少数精鋭主義に徹して、効率良く戦果を上げようとしているのだろう。

「はっ。」

井上の目配せによって、侍女の一人が迎えに出て、間も無く二人の女性を伴ってきた。

彼女たちは、ここまで招じ入れてもらうのは初めてのことでもあり、さも落ち着かない様子でおずおずと王の前に立った。

二人とも緊張のあまり、棒のように立ち竦んでしまっているのだ。

長めのタイトスカート姿のモニカとは対照的に、タエコの方は思い切り丈の短いスカートを着けていて、それはそれで若くスレンダーな体形に見事にフィットしており、その剥き出しの太ももに視線を奪われてしまったのも、若者の罪とばかりは言えない。

それは、太からず細からず、若々しくもすらりと伸び切ったまったく見事な太ももなのである。

若者の視線をまともに浴びたタエコは、モニカ姉さんの背中に隠れるようにしながら小さく挨拶をした。

「陛下、コンニチハ。」

「いらっしゃい。」

多少気の毒に思い、意識して気軽な声を掛けてやることにしたのだ。

さらに向かいの椅子を勧めてやると、まるで救われたような顔で席に着いた。

最初のうちこそ緊張気味であったが、やがて若者から屈託の無い話題が提供されると、いっぺんに座がくつろぎ、二人とも出されたコーヒーを飲む内に、モニカはいつも通りの濃艶な色香を取り戻し、タエコはタエコで無邪気にはしゃぎ声をあげている。

無論、若者にはそれなりの意図がある。

二人とは約束がある。

今日は、その約束を果たしてやるつもりなのだ。

僅かの団欒のあと、あっさりとタエコの部屋に移動し、改めて二人の酌を受けることにしたのだ。

その部屋はモニカの部屋とも同じ間取りで、およそ八十平米ほどの空間に、いかにも若い娘のものらしい華やかな雰囲気を漂わせている。

当初タイラーは、住人にも知らせずに、各部屋ごとに盗聴器などの情報機器を数多く設置していた。

タイラーからすれば当然の処置だったろうが、京子が、ごく初期のうちにG四を使ってわざと一つ残らず破壊して見せたと言う。

そうすることによって、断固たる意思の存在を見せ付けてからは、諦めて二度と取り付けようとはしていないと聞いており、そこに持って来て用意された肴は鯨のベーコンとするめだ。

その意味でも、居心地は悪く無い。

若者はクッションの効いたソファに陣取り、華やかな雰囲気に包まれて楽しんではいるが、相変わらず姿勢良く背筋を伸ばし、左手は自分の膝の上に置いたままだ。

酒席でのこの行儀の良さは天性のもので、いくら飲んでも全く崩れないのである。

それに比べ両側の女性たちは、それこそ体全体で接遇する意思を濃厚に見せており、何かと言えば直ぐに体に触れてくる。

左側のタエコなどはもともと飲めない体質らしく、乾杯の杯を勢い良く空けただけで、すっかり効いてしまった風情だ。

その体つきにも締りが無くなり、太ももの付け根まで露わにして、しどけなく膝を崩しながら大胆に寄り掛かってくる。

「ねえ、陛下。」

最早、呂律も怪しい。

「なんだい?」

「さっき、あたしの足、じろじろ見てたでしょ?」

「うん、見たよ。」

「じゃ、どうして今は見ないのよ。」

「見てるよ。」

「うそっ、全然見てないでしょっ。」

「さっき見たら、恥ずかしそうにしてただろ。」

恥ずかしそうにモニカの背中に隠れるようにしていた筈だ。

「さっきはさっきよ。今は全然平気なんだから。」

「酔っ払ったら、平気になったのかい。」

「それとも、モニカ姉さんのお尻の方が好きなの?」

右側のモニカも堪らず含み笑いを洩らしている。

「両方好きだよ。」

「ホントね?」

「ああ、ホントだ。」

「わあ、嬉しい。」

思わず、モニカが噴き出している。

「わたしも嬉しいよ。」

「だったら、触んなさいよ。」

タエコの両手が伸びて、こちらの左手を拉致して行き、そのまま強引に剥き出しの太ももの上に持って行かれた。

手の平を通して生々しい肉の感触が伝わってくるところを見ると、どうやら、最初からストッキングを着けていないらしい。

「ありがとう。」

礼を言って、引っ込めようとしたその手を上から押さえ付けられてしまった。

「ありがとうって、なによ?」

酔った勢いからか、まったくぞんざいな口を利くものである。

「いや、触らせてもらったお礼を言ったんだよ。」

「ふうんだ。そんならもっとちゃんと触りなさいよ。」

そのくせ、上から押さえ付けている手に力を込めて、その下の手が逃げられないようにしているのだ。

否応無く伝わってくるその感触は、過去に存分に触れたことのある、あの村上優子の感触を思い出させる。

あの真っ白で芳醇な女体の感触が、イメージの中に鮮やかに蘇ってきて、勃然と男の本能が目覚めてきそうな感覚をはっきりと自覚していた。

そのうち、タエコの手が僅かに動いて、その中の自分の手が微妙に動かされるのだ。

その感触は決して不快なものでは無く、それどころか、ときとして頭をよぎる隠微なイメージさえ連れて来る。

かつて接触した女性工作員のイメージである。

男の全てを貪り尽くそうと貪婪に蠢いていたあのときの淫奔な姿態が、次々と頭の中に浮かんできてしまうのだ。

無理に封じ込めてきた何者かを一気に解き放とうと猛々しい衝動が高まってくる一方、僅かに残った理性がそれを引き止めようとする。

一瞬、マーベラの儚げな面影が脳裏をかすめ、左手を自らの意思で動かして、好きなだけ触れて見たい衝動を辛うじてこらえながら言った。

「うん、たくさん触らせてくれてありがとう。」

情け無いことに、少し声がかすれていたかも知れない。

無理に視線を逸らし、右側を向くと今度は直ぐ目の下にモニカの胸の谷間があった。

その豊満なふくらみが、心なし大きく息づいている。

「じゃあ、許してあげるわ。」

やっと、左手を開放してもらえたのだが、正直に言えば多少物足りない気がしないでも無い。

「うん、ありがとう。」

それでも、見た目だけは悠々とグラスを取りながら、改めてタエコの顔を覗き込むと、既に目付きがとろりとしてしまっている。

「今度は、モニカ姉さんを触って上げなさいよ。」

半分は演技では無いかと疑って見たが、どうやら本当に酔ってしまったらしい。

「そんなことしたら、叱られるだろう。」

「うふっ、叱るわけないでしょっ。」

タエコは、相変わらず勝手なことを言い続けている。

反対側のモニカが、又しても含み笑いを漏らしながら、そっと右手を握ってきた。

「ほう、そうなのか。」

「そうよ、たくさん触ってもらえばたくさんお金がもらえるんだし。」

無言のままモニカの手が活躍して、こちらの手を引き寄せ、タイトスカートの上から太ももに触れさせようとする。

「そうか。」

「でも、あたしもうそんなにお金いらないから・・・、陛下にたくさんいただいちゃったし・・・、ほんとはちゃんとデートしたかったんだけど・・・。」

もう言うことが支離滅裂だ。

一方、モニカの動きが益々大胆になり、捕まえた手の平にその太ももを摩らせ始めた。

手の平から、ぞくぞくするような隠微な感覚が押し寄せてくる。

「ほう、ちゃんとデートしたかったのか。」

辛うじて平静を装いながら答えることが出来たが、モニカの息遣いも心なし荒いように感じる。

「でも、無理みたいだし・・・。」

タエコの声が段々と細くなって、その内にかすかな寝息が洩れて来た。

どうやら、酔いのせいで睡魔に襲われているらしい。

「寝ちゃったよ。」

タエコの寝顔を覗き込みながら小声で言うと、モニカの潤んだ目が見上げて来た。

「寝かしときましょうよ。」

意味ありげに小声で言いながら、ねっとりと視線を絡めて来る。

その視線に途方も無く隠微なものを嗅ぎ取り、今までひっそりと息を潜めていた意馬心猿(いばしんえん)が、若い肉体を駆り立てようと猛然と足掻き始めてしまった。

股間に僅かに漲って来るものを感じた時、直ぐ目の下の顔が薄っすらと目を閉じ明らかにキスを求めていた。

かすかに開いた赤い唇が、ぬらぬらとした光沢を帯びて誘っている。

遂に、若い肉体が耐え切れなかった。

下腹部に充分な漲りを加えてしまい、傍目にも判るほどの脹らみを生じさせてしまったのである。

それは、既に猛り立つと言って良いほどの勢いを示し、軍装の厚手のズボンの中で行き場を失い、その不自由さにもがき苦しむばかりだ。

左肩にはタエコの可愛らしいおでこが当たっている上に、その寝顔が、丁度脹らみ切った股間を向いてることもひどく気になる。

モニカの手の中で彼女の太ももに乗っている右手も、じっとりと汗ばみながらいたずらに逡巡してしまったそのとき、今の今まで眠っているとばかり思っていたタエコが矢庭に動いた。

体をこちら側に捻りながら左手を伸ばし、問題の股間にその手で触れて来たのである。

白く長い指のゆるゆるとした動きに連れ、それまで厚手の生地の下で不自由を託っていたものが、偶然開放されて天を向かせてもらえることになり、まるで喜び勇んでいなないているかのようだ。

勿論、モニカも黙ってはいない。

直ぐに右手を伸ばし、タエコの手を押し退けるように、そろそろと探りを入れながらズボンの上からやんわりと握り込んで来た。

誰もが無言で、かすかなエアコンの音以外に聞こえるのは、荒い息遣いと微かな衣擦れの音だけである。

モニカの手に柔らかに包まれたものが、圧倒的な逞しさを主張しながら、そそり立ちかつ激しく脈打っている。

無論タエコも、積極的にそれに手を添えようとしていた。

「ちょっと待ってくれ。喉が渇いた。」

若者は唐突に声を掛けて、女たちの頭越しに腕を伸ばしてグラスを取った。

確かに喉も渇いてはいたが、実際にはそれが、すんでのところで危うく踏み止まる事が出来た瞬間でもあったのだ。

グラスに残っていた半分ほどの液体を一気に喉に流し込み、小さな氷の塊を音立てて噛み砕くと、女たちはのろのろとその姿勢を直し、モニカが次の一杯を造り始めている。

その顔が、いかにも恨めしそうなものに思えたが致し方も無い。

さも長い時が経ったようにも思えたが、実際はほんの僅かのことでしかなかったのかも知れない。

新しくなったグラスを取ると、今度はタエコが素早く腕を伸ばしてきたところを見ると、先ほど果たせなかった行為を改めて実行しようと言うのだろう。

少々乱暴に扱われたものは未だ充分な力強さを保ち、タエコの手の中で、凶暴なほどに息づいて見せるゆとりさえ具えていたのである。

「きゃっ。」

未だあどけない童顔の少女は、思い掛けない手応えに小さく叫び声を上げてしまっている。

「あんまり乱暴にするなよ。」

「ごめんなさあい。でも、これでおあいこね。」

今度はモニカも堂々と手を伸ばしてくる。

「おいおい。」

余裕を持って声を掛けることが出来たが、彼女は彼女でもう一度じっくりと、その手応えを確かめようとしているのだろう。

しかし、既に少々のことでは動じないだけの心の静けさは、充分取り戻したと言う自信がある。

実は、用意して来た土産があり、それこそがここに来た本来の目的でもある。

秋津州の王として、国家の安全保障の根幹に関わる作業をなさなければならない。

如何なる脅威も常に事前に抑止する措置を講ずる必要があり、その一つは、危険な動きをしそうな相手に対し、そのことが相手にとって決して得策ではないことを、確実に思い知らせてやることだ。

基本的な抑止である。

今日はその第一弾とでも言うべき情報を、自然な形で落として行こうと思っている。

重大情報をリークするわけだ。

公式に発表してしまえば良さそうなものだが、それではさまざまな支障が群がり起きてしまう。

おもむろに胸のポケットからそれを取り出し、タエコの目の前に置いて見せた。

それは、手札判ほどの一枚の写真であった。

高高度から地表を写したもので、眼下の雲間には大海や大陸が鮮やかに捉えられている。

「はい、今日のお礼だよ。」

「なあに、これ?」

可愛い酔っ払いは手に取って見ていたが、そこに写し出されている風景の異常さには気付く気配も無かった。

「ちょっと見せて。」

やにわにモニカの手が伸びて奪い取るように手に取り、食い入るように見てから真剣な目が見上げてくる。

黙って頷いてやると、俄然その目が輝きを増して来た。

さすがにモニカは気付いたようだ。

「それが、噂の荘園だよ。タイラーに見せれば良い値が付くだろう。」

ぎりぎり最低限の説明を加えてやる。

「ほんと、この大陸、見たこと無い形してるわよね。」

モニカが目を輝かせて言う。

タエコも興味を誘われたらしく、改めて手に取って今度はまじまじと見入っている。

「でも、これ地球の写真じゃないの?」

まだ、事情が飲み込めないらしい。

「ほら、この大陸、世界地図のどこにも無い形してるわよ。」

モニカがやや興奮気味に説明してやると、やっと納得したようであった。

「でも、こんなのがお金になるの?」

「ばかねえ、お酒が醒めてから教えてあげるから。」

ほんとに、仕様の無い子だ。

「うん、お願い。」

この子ときたら、世界地図も満足に見たことがないのかも知れない。

秋津州に来る前から、何故か気があって何かと言えば一緒に行動して来たけど、この子は前から難しい局面に出会うたびに、このあたしを頼ってきていた。

二人とも親も兄弟も無くて、勿論お金にも不自由してきたけど、不思議と今までうまくやってこれた。

ハイスクールもまともには行けなかったようだし、その分あたしがしっかりしないといけないと思う。

それに、どうも見ていると、国王陛下の方もこの子のあっけらかんとしたところが、リラックス出来ていいみたいだし、さっきなんかも信じられないくらい乱暴な口を利いてたけど、ちっともご気分を害されたような気配は無かった。

時と場合によっては、あんな乱暴な口を利いたら大変なことになっちゃうぐらいは判ってる筈だけど、念のためあとでもう一度注意しておかないといけないかも知れない。

残念なことに、折角望んだ通りの交流が出来そうになった矢先に、肝心の宴がたった二十分ほどでお開きになってしまった。

国王陛下と言う一人の男性を、やっと身近なものに感じられるようになったばかりだったのに。

ときとして猛々しく世界を圧伏してしまうその男を、もう少しで射程圏内に捉えることが出来た筈なのに、その堂々たる男が、急に子供に返ったようなことを言い出したのだ。

何でも、もう眠くなったのだそうだ。

とても子供っぽい顔で、眠くなったから帰ると言ってさっさと帰って行ってしまった。

帰り際に「タイラーは、もっとはっきり見える写真を欲しがる筈だよ。」と言っておられたから、次回はそれもいただけるかも知れない。

それにしても、あの若さで何もかも心得てらっしゃるようだ。

考えて見れば、タエコと同い年なんだもの、ほんと、驚いちゃう。

ワシントンだってあの方の掌の上で踊らされてるみたいだし、あたしなんかがどう足掻いたって太刀打ち出来る相手じゃ無かったのだ。

この写真にしても、あの秘密の荘園の実写だと言うのもほんとだろうし、ボスにぞんざいに扱われてしまうことは絶対無い筈だ。

タエコには、タイラーに話すときのポイントをじっくり教えておかなくちゃいけないけど、そうすれば、きっとタエコの実績として高い評価を受けるに違いないのである。

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  1. 2005/11/04(金) 09:09:04|
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