日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 007

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ちなみに、秋津州の先王が九十二歳を以て薨じたのは地球暦(西暦)で千九百三十四年のことだったが、彼は不幸にして通常の形では一人の子も持てなかった。

ここで、王家の血筋は絶えてしまうところだったが、その晩年に一族女性の保存卵子と王の精子との間で試みられた人工授精が成り、次いでマザーの人工子宮への着床にも成功し、その結果生まれてきたのが王女秋元勝子だ。

ただこの王女には、王家代々の特質でもある空間移動と通信の能力は具わってはいたものの、女性としての繁殖能力と気嚢が失われてしまっていた。

殊に繁殖能力の衰えは、一族にとって哀しい宿命でもあり、不憫に思う先王の判断もあって、勝子は幼いころから折に触れて日本での生活を体験することになる。

維新後の激動期の日本で「秋元」の戸籍を確保していた先王が、千九百十一年に彼女を秋元家に入れたのだ。

相当な資産を残して先王が薨じたあと、唯一の血筋となった王女は持てる力を駆使して、その後の秋津州を支え続けた。

王は無くても、王の意思は遺ったのである。

マザーはその遺志に従い全てを管理し、全てを続行した。

その間千九百八十年にたまたま一族の望みに適う場所に深海底の隆起が起こり、その後千九百八十五年に至って例の人工子宮から現在の王が誕生したことになる。

それは紛れも無く先王の種であり、母は一族の保存卵子だ。

勝子にとっては、父を同じくする弟と言うことになる。

この弟は長ずるにつれ、王位継承者としての資質をいよいよあらわにして行き、晩年の勝子に見守られながら八歳にして即位することになるのだが、このときには、嗤うべきに残る一族は勝子と幼い王のたった二人きりに成り果ててしまっていた。

幼い頃から「丹後」の秋津州と名付けられた地域で育まれた王は、やがて身のまわりの全てがヒューマノイドであることを知る。

少年は哀しかったであろう。

自らの同族のものは、天にも地にも七十五歳も年長の姉一人であることを痛いほどに思い知らされたのである。

未だ幼かったからこそ、父祖を逐った国に対する微妙な拘りも捨てきれず、その拘り故に幼児期のほとんどを荘園で暮らした。

しかし、周囲は全てヒューマノイドばかりなのだ。

狂わんばかりの寂寥感に襲われることも、一度や二度のことでは無かった筈だ。

幼い少年にとって最初から無いものねだりであったればこそ、はらからと睦みあって暮らして行けることへの憧れは、いやますばかりであったろう。

人間は、所詮一人では生きて行けないのだ。

未だ頑是無いおさなごが一途に一族の復活を誓い、小さな胸に刻み込んだのも無理は無い。

今はマザーの技術も一段と進み、全くの普通人である六人の「はらから」が次々と生まれ、王とヒューマノイドが形成する「村」にくるまれてすくすくと育ちつつある。

しかし、この幼子たちは若者のような超絶的な体力など望むべくも無い。

それどころか、誕生の経緯から言っても、反って虚弱でさえあった。

ここにもまた、年若い統治者の深い悩みがあったのである。


また、悲しむべきことにこの若者は、十四歳から十五歳にかけての夢多かるべき思春期において、あろうことか凄惨極まりない消耗戦を体験してしまっている。

それは見るも無残な血みどろの戦いであった。

当時、最後に発見した天体「丹波」では、さまざまな試みを経て一部農耕地とすることにも成功し、種の保存と言う唯一無二の目的に貢献させるべく、ただただひっそりと農耕や漁労に勤しんでいたのである。

だが、全く突然にその平和が破られることになる。

たまたま通りすがりのようにしてやって来た凶暴な異星人たちの襲撃を受けたのだ。

尤も、異性人たちにしてみれば、単なる食料の補給作業に過ぎなかったのかも知れず、単純に理非曲直の論を以てしては抗すべくも無い。

だが、少年の目に映る風景の中に於いては、そのものたちは「丹波」の自然の恵みに目を付け、圧倒的な武力を以てひたすら劫掠と破壊を繰り返したことには違いは無い。

当時最晩年を迎えていた王女勝子は、既に空間移動の力を著しく衰えさせてしまっていた上、少年自身の能力も、未だ未発達で微弱なものでしかなく、敵の船の持つ巨大な質量には抗し難かったとも言われる。

従って、受けた損害も又甚大なものにならざるを得ず、絶望的な戦況にも鑑み、王女勝子は「丹波」を放棄して撤退すべき旨を進言したが、十四歳の王が頑として肯んじなかったのである。

彼は、既に丹後において僅かながらも幼ない「はらから」を抱えており、思えば、一族の指導者としての凛呼たる矜持がその胸の中に雄々しく育っていたのだろう。

十四歳の君主は言う。

先住者をまったく無視しての、一方的な侵略行為に怯えて逃げるくらいなら、戦って死んだほうがまだましである。

自らの国は自らが守ろうとしなければ、その瞬間に自ら滅んだも同然であり、それではあたかも力強きものだけが正義であると認めることになってしまう。

また、ここで「丹波」を放棄すると言うことは、もし次に「丹後」や「但馬」が襲われれば、これもまた放棄して撤退すると言うことになり、結局最後にはどこにも行くところが無くなってしまうではないか。

少年の意思は固く、弱小の兵団を率いて数次にわたる敵襲をしのぎにしのぎ、最後に捨て身の奇襲を敢行、何と、親衛隊のみを引き連れて敵の母艦に潜入し、その内部からの凄まじい破壊活動を行うことにより、壊滅的な損害を与え遂に撃退することに成功している。

少年の持つ非凡な戦闘能力が、存分に発揮された結果には違いない。

その戦闘で、少年は血しぶきをあげて奮戦し、幾多の肉弾戦の全てを制した。

文字通り殺さなければ殺されてしまうと言う苛烈な状況が続き、まさしく一瞬々々が命のやりとりだったのである。

少年の凄まじい戦闘能力が、実戦を踏むことによって初めて発芽を見たと言って良いだろう。

結果において、「丹波」における占有権は危うく死守することが出来たが、麾下の兵団の多くを失い、国家の防衛力としては著しく衰耗してしまった。

僅かに残った兵員も殆どが傷ついており、その後は、農耕や地下資源採掘等の作業にしか用いることが出来なくなってしまったほどだ。

その時の敵の正体は今もって不明だが、陣営を立て直し復仇を果たすべく再度来襲してこない保障はどこにも無い。

つまり、この少年は今もなお見えざる敵と対峙しているのであって、当然それに備えるための軍事力を必要としている。

そのためにこそ、それ以後の防衛軍の再構築は大規模なものになった。

地下資源の採掘に全力を傾け、それを素材として全く新たな兵団の構築に勤しんだのだ。

王の命により作業に掛かったマザーは、凄まじいほどの能力を発揮して見事に新兵団を建設した。

その結果新しく生まれ変わった兵団は、その規模と個々の戦闘力のいずれにおいても、以前のものとは格段にたち勝っていたのである。

その新兵団は、例の機材搬入の際に姿を見せた一個小隊を最小単位とし、まず、百二十八個小隊で一個中隊、百二十八個中隊で一個大隊、百二十八個大隊で一個連隊、五百十二個連隊で一個師団、五百十二個師団で一個軍団、六十四個軍団で一個兵団を構成する。

少年はひたすらこの兵団の増設に励み、驚くべきことに今やそれを常備八個編成と為し得るまでに成長させていた。

また、その他にも、情報収集部隊や兵站輸送と工兵を兼ねる輜重部隊まで別途に保有し、これ等両部隊はそれぞれ十個連隊で一個師団を編成、それを十個常備するまでに至っている。

しかも、この輜重部隊に至っては、保管庫や加工ラインを兼ねたさまざまな形態の輸送船団まで付属するのである。

羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹くと言う諺言もあろうが、それにしても年端も行かぬこの統治者が味わった「羹」はあまりに熱過ぎた。

現に、その時の少年は滅亡を覚悟したのである。

その所為でこれほどまでの武備を持つに至っており、それは既に万全と言って良いほどのものなのだ。

この秋津州軍団において最も特徴的であったことは、全ての小隊毎に独立した通信機能と兵站機能を持っていることであったろう。

つまり、仮に友軍の全てが壊滅してしまっても、残った一個小隊だけで独自の作戦行動が可能なのである。

この小隊の集合体こそが秋津州軍であり、それも信じ難いほどに膨大なボリュームなのだ。

これほどの常備軍を維持するためには、全世界の国家予算を全て投入しても到底足りない。

だが、ひるがえって秋津州兵団の場合、一度建設してしまえば平時の維持コストは限りなくゼロに近いのだ。

全ての兵士が個々に通信機能を具え、基本的に食料やエネルギーの補給が不要であり、睡眠や休息も要らない。

これは一切の交替要員を必要としないことを意味している。

更に、巨大なファクトリーが粛々と稼動を続け、マザーの技術革新に伴い新型兵団の生産にまで踏み込み、その耐久テストの中間結果もまことに良好だ。

深深度の海底や摂氏±百度などと言う過酷な環境においてさえ一切の機能不全は発生しておらず、計算上とは言いながら、数十年の連続戦闘にも立派に耐え得る筈だと言う。

また、荘園の現地では大規模な治水工事の結果も順調に推移し、農地の相当な部分を定期的に休耕してもなお、有り余るほどの耕地面積を持つに至っており、防衛と農作業、巨大保冷倉庫の管理、或いは地下資源探査採掘及び集荷作業など膨大な任務がある。

この任務には、三つの天体全てにそれぞれ一個兵団を配備しており、この兵力をもってすれば、過去の侵略者が例え前に倍するほどの戦力をもって来襲しても、何とか持ちこたえることが出来るだろう。

残りの五個兵団は、マザーの通信機能がカバーする範囲内で船団を組んでおり、地球へは二日ほどで到達出来るが、三つの天体へは近づくことすら出来ない。

地球を含め四つの天体の間には、それぞれ数億光年もの茫漠たる空間が横たわり、いかなる通信も途絶してしまっており、その壁を越えられるのは王だけなのだ。


さて、苛烈な防衛戦をしのぎ、統治者として格段に成長を遂げた少年は、その直後王女勝子が九十歳で身罷ったことにより、名実ともに全ての判断を委ねられる身となった。

僅か十五歳の長老の望みは明らかだ。

やがて秋津州の地球移転計画を一層具体化し始め、丹波における既存の生活圏を全て包含した円形の地形を策定し、その内側における準備を徹底して行った。

この円形の地形こそが、無論太平洋上にある現在の秋津州そのものなのだ。

同時に関連設備を大幅に増強することによって、圏外の農耕作業も更に充実させることを得た。

さまざまの準備作業を進めながら、最終局面で円形の陸地を切り離して浮上させ、その下部には充分な加工を施した。

無論、着地地点の形状に合わせるためであったが、一挙に一個兵団を投入することによって、徹底した所要時間の短縮を計ったのだ。

結局、全ての準備を整えてから例の海嶺の上空にまで瞬時に移動させ、慎重に緩やかに着水するに至った。

そのため、本格的な据え付け作業は全くなされておらず、言わば浮島に近い状態のまま、王の持つ特殊な力によってその平衡が保たれていることから、恒久的な据え付け作業が急がれるのである。


さて、この辺で、今国王の相手を務めている「お京」についても少しは触れておかねばなるまい。

「彼女」はヒューマノイドでありながら日本国籍を持ち、その名を秋元京子と言う。

そもそも秋元勝子が乳児ボディの京子を、捨て子と言う建前で養女とする手続きをとったことがことの発端であった。

それと言うのも、最早一族の滅亡は動かし難いという先王の判断あってのことであり、日本人秋元勝子の娘として、或いは侍女として、王女勝子の晩年の無聊を慰め、でき得る限り安穏な老後を担保させたいと言う、せめてもの慈父の遺志でもあったであろう。

それこそが先王の死後三十有余年、王女勝子がようやく老境にさしかかる時期に実行されるべき、重き遺命の一部でもあったのである。

児童養護施設「福寿園」が篤志家秋元勝子の私財によって設立され、その施設に預けられた捨て子を養女として引き取ったことになってはいるが、これ等はすべて周到に準備された手順であり、以後この手順が数回繰り返されて今日の日本人としての秋元姉妹がある。

従って、勝子亡き今、この姉妹が仕えるべき主(あるじ)は、天にも地にも少年王ただ一人だけになったのだ。

既に大型のウェアハウス兼輸送船が大量に稼動し、先王の代から地球上で物資の放出を続けて来ており、巨大な保有外貨の原資となって来ている。

その物資は荘園から産出されるものばかりで、それをはるかに遠い地球(厳密に言えばマザーの船団)に搬送して来れるのも王だけなのだ。

この意味一つとっても、太平洋上の秋津州から見た三つの天体は「王だけの荘園」と言って良い。

遠い昔に、不気味な存在として忌み嫌われ恐れられ、石もて逐われた墳墓の地、日本。

その日本の傍らに国家を建設し、数少ない一族を守り育むことこそが王の目的であり、そのためにこそ王の「特殊な能力」と「荘園」が必要なのだ。

この「特殊な能力」は、王家代々の血筋の中にしか生まれて来たことが無く、かと言って、王女勝子の例にもあるように、王家の血筋であっても、全ての能力を具えて生まれて来るとは限らない。


また、「マザー(古くは別の名称が用いられていた)」は優れた人工知能であり、王の完全なる臣下としてのプロセスによってのみ稼動することを許されているものだ。

自己学習能力を持ち順次進化と増殖を重ね、全ての機材の設計と生産を行い、かつ全軍に対して指揮権を有してはいるが、それは王の下す命令に優先することは無い。

唯一王の指揮命令にのみ服し、王の空位の間は前王の遺志に従う。

現に千九百三十四年に先王が薨じたのち、千九百九十四年に若者が即位するまでの間、マザーに対する新たな命令を発行する王は存在せず、マザーは王女勝子の貴重な空間移動能力に補われながら、全ての作業の指揮を執ってきた。

先王の遺志の根幹も又、遠い昔に父祖が逐われた日本の傍に還る事であり、かつ、衰えてしまった一族の種子を残し再び復活する事でもある。

それはまた、若き君主の確固たる意思でもあるのだ。

だが、その計画の障害となり得るものはさまざまに存在し、若者は、北半球の海陸に展開させている膨大な「D二」と「G四」から、日々刻々と届く情報の海の中で今日も生きている。


さて、話を国王専用機の中の会話に戻そう。

若者の精子を採取する女は言う。

「わたくしの感応手順は、ほぼ標準値とお考え頂いてよろしいかと存じます。」

マザーによって組み込まれたプログラムが、そう命じていた。

「・・・。」

「ほかに三人の者の手当てを準備しておりますが、この者たちはそれぞれ微妙に異なるプロセスを組み込まれておりますから、陛下のご体験学修にはより一層の効果があろうかと存ぜられます。」

各村落からの選抜と言う体裁で、三人の村娘を準備中だと言うのか。

「ふうむ。」

「何分にも、最年長の方が未だ八歳でございますので・・・。」

秋津州一族の内最年長者は女性であり、それも未だ八歳に過ぎない。

この女性が成人するには、なお十年の歳月を俟たねばなるまい。

「・・・。」

「それとも、マーベラさまがよろしゅうございますか?」

「・・・。」

「それでしたら、もっと積極的にお出にならなければなりません。」

「それで良いのか?」

「はい、二人きりになられたら一度手を握ってご覧遊ばせ。」

「一族でない彼女に子が出来ては、のちのち何かとまずかろう。」

「なにごとも御心のままに。」

「・・・。」

「ただ、陛下のおん種子だけは、こののちも変わらず頂戴致しとう存じます。」

「まるで種馬だな。」

少年は憮然とした表情だ。

「いまや、嫡々たるおん血筋は陛下ただお一人でございますので、何事もお忍び下さるよう伏してお願い申し上げます。」

「自分の分身が、クーラーボックスに納められるのを見るのはかなり味気ないものだ。」

「申し訳もございません。ここ三年ほどはこのことについてのご教導役も勤めさせていただいて参りましたが、今後はそのお役目に限り、先ほど申し上げました三人のものに引き継がせていただくことになっておりますので、おん種子はこのものたちにより頂戴させていただきとう存じます。」

京子は言わばこの王の乳母あるいは傅役として設定されたヒューマノイドであり、その大役もそろそろ終わりに近づいているようだ。

「・・・。」

「保存種子の中で、特に男子の健全なものが乏しくなって参ったようで、マザーもご苦労なされておいでのようでございます。」

「うむ。」

「とにかくご一族の復活と言うお望みのほか、我欲の少ないお生まれ付きと言うことが、陛下のご即位の最大の理由とも伺っております。」

「・・・。」

「おん嫡流であられることだけが、ご即位の理由では無かったことに想いをいたされまして、こののちもなお一層のご精進のほど願わしゅう存じます。」

この精進も、秋津州一族の繁栄の為であることは確かだろう。

「うむ、今のところ米国の大衆を敵にまわすわけにはいかんし、まったく気骨の折れることだ。」

未だ一族は幼い者ばかりであり、自然、全てを少年が判断せざるを得ない。

「それでしたら、尚のことマーベラさまのことももっと積極的になさらなければ。」

「いや、そのことのために利用するのは心苦しい。」

好きな女性を政略のために利用したくはないと言う。

人間としての若者の本音なのだ。

「いたしかたもございません。」

「空港建設事業の発注なぞも選択肢の一つだな。」

大規模プロジェクトを発注すれば、米国企業が潤う。

「はい、資金的にも充分に準備が出来てございます。」

過去、「荘園」から放出されたさまざまの資源が、今や巨額の外貨となって蓄積されている。

「うむ、ただ全て相手のあることだからな。」

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  1. 2005/07/01(金) 12:42:20|
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