日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 071

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二月も半ばに来て、秋津州内務省にテレビカメラが入り、珍しくも王妃自身が長時間の取材に応じる姿が報じられた。

日本のメディアだけあって、その第一の興味は王位継承者の誕生に関する話題であったが、そう言った目出度い話に出くわすことは無かったと言う。

また、正月早々王妃自身が黙々と麦を踏む姿が報じられ、この件なども格好のネタになっており、一国の王妃たるものが、わざわざ麦踏みをする必要があるとはとても思えないとする論調も多い。

他の麦畑では、一般の農民たちや秋津州軍が揃ってローラーを引いている姿があり、いまさら王妃一人が昔ながらの麦踏みをしたところで、単なる自己満足に過ぎないと言う意見が多かったのだが、その件に対する王妃の答えが又しても話題を呼んだのだ。

「わたくしが嫁いだ相手はお百姓ですもの、当たり前のことでしょう。」と応えたのだ。

百姓の妻が農事をして、何がおかしいと言う。

「それに、昔ながらの農作業を経験しておくことはとても大切なことなのですもの。」

機械に頼らない、昔ながらの農事には祖先の知恵がたくさん詰まっており、素人の王妃にとって、それを体験しておくことが特別に重要な意味を持つのだろう。

「主人は農夫であり、猟師であり、ヘータイでもあるのですから。」

のちに、この「ヘータイ」と言う語彙が大いにもてはやされることになる。

「では、ご誕生の後には、やはりお子さまにも農業を?」

「はい、勿論、子供が授かれば、この地の農村に住んで育てるつもりですわ。」

「ええっ、それでは・・。」

インタビュアーは若い女性アナウンサーであり、この反応には一瞬絶句してしまった。

殊に日本のメディアの間では、王妃は今はやりのセレブの代表格として扱われることが多く、彼女には都会生活が良く似合うと言う先入観が頗る強い。

「男の子だったら勿論若衆宿へも参加させますし、小さいときからほかの子供たちと一緒に、毎日秋津州の天地を見せながら暮らすつもりですわ。」

今では秋津州財団の保護のもと、各途上国の幼童が多数三個村に滞在し、地元の児童たちと全く変わらない生活を送っている。

無論これ等の幼童たちも、王妃の言う「ほかの子供たち」に含まれているのだろう。

「確かに秋津州は空気も綺麗ですし、自然環境にも恵まれておりますものねえ。」

「わたくし自身、学業を終え次第こちらで暮らすつもりでおりますし。」

「いよいよ来年の春でございますものね。」

「おほほほ、順調に行ければですけれど・・・」

「漏れ伺いますところでは、ご成績の方も随分優秀でいらっしゃるとか・・・」

王妃の学業成績が、かなり優秀であることは事実なのだ。

「いえいえ、とんでもございませんわ。」

「先程のお話ですと、国王陛下はご自身で猟もなさるのですか?」

「はい、暮れにも出掛けましたわ。」

「猟に、でございますか?」

「はい、お正月の食材に新鮮なものをと仰って、わたくしも連れて行っていただきましたの、丹後まで。」

「それで、獲物の方はいかがでございました?」

「シロクログマとイルカなどを獲って参りましたわ。」

「シロクログマ、でございますか?」

「こちらではジャイアントパンダとも申しますわね。」

「ええっ、パンダを食べちゃうんですかあ・・・」

うら若き女子アナにとっては、かなりの衝撃であったようだ。

「わたくしも、未だ二度ほどしかいただいたことはございませんけれど、お味の方はあまりおすすめは出来ませんわ。」

「でも、あのパンダでございましょう。」

「あら、でもただの熊ですわよ。それに丹後にも但馬にもたくさんおりますもの。主人の話ですと百万頭はくだらないそうですわ。」

「あの可愛いパンダですよお。」

「それでも、百キロもある猛獣ですわ。」

「でも・・・」

インタビュアーはどうしても納得出来ない様子だ。

「イルカにしても可愛い顔はしてますけど、自然界では相当凶暴な一面も持ってますわ。」

「あのイルカがですかあ?」

「そのイルカが血みどろで殺しあってるところ、この目で見ましたもの。」

「それ、地球のイルカとは違う種類なのではございません?」

「いいえ、全部数百年も前に地球から移したものの子孫ばかりですわ。パンダもほかの生き物たちも・・・。」

広大な森林環境が破壊されるどころか、逆に手厚く保護されて来たため、それほどまでに繁殖したものと見える。

「そのお話は以前から伺ってはおりますが・・・。」

「随分前にDNAの比較調査もしたようですわ。」

「では、・・・」

「はい、やっぱり地球のものの子孫だったそうです。」

「まぁ・・・。」

「ですから、ときどき、あちこちのイルカショーなどで、お子さまがたが気軽にイルカに触れたりしてらっしゃるところを見ると、怖くなることがあるんですの。」

直ちには信じ難いことではあるが、地球上でも凶暴な行動を取るイルカの生態が、報告されていないわけではない。

いつも笑っているように見えるあの愛らしい顔付きからは想像し難いのも確かだが、実際血みどろの争いをしている最中も、変わらずその顔は笑っているのである。

「でもまさか・・・」

「少しは用心なさった方がよろしいのではないでしょうか。」

「あんなに愛くるしい演技を見せてくれるイルカが、人間を襲うなんて・・・。」

「だったらよろしいんですけれど・・・」

「それに、支援物資の中に鯨とかイルカなんかが混じっていることが、大分非難されてるようですが。」

「あら、そうなんですの?」

「聞くところによりますと、世界中から非難を浴びてるようですが。」

日本のマスコミは手軽に「世界中」などと言うが、本当に「世界中」であったためしは無いのである。

「随分喜んでいただいてるように伺っておりますのに。」

ちなみに中型の鯨類一頭だけで、肉牛、数十頭分に匹敵する精肉を得ることが出来るため、飢餓状態にある人々にとっては、当然貴重な動物性蛋白源となっている。

「でも、私どもの耳には非難する声がたくさん聞こえてまいりますが。」

「それは困りましたわねえ。でも、何故非難されるのでしょう。ご存知でしたらお教え願えません?」

「え、でも、あの・・、種の絶滅の危機があるとか、海洋資源の枯渇を憂えるとか、鯨のように利口でフレンドリーな生き物を殺すのは野蛮だとか、そう言うことなのでは・・・」

確かに無軌道な乱獲を放置すれば種の絶滅もあり得るが、それは鯨類に限らず、その他の生物においても皆同様の筈だ。

そうであるにも拘わらず、こと鯨となると何故か熱狂的な反捕鯨運動が展開され、不思議なことに鯨を殺して喰うことが、まるで罪悪ででもあるかのように言い騒ぐ者がいる。

そう言う者たちが、奇妙な団体まで作って活動とやらをやらかし、中には大層な費用を投じて船まで調達し、海の真ん中で日本の調査捕鯨の妨害行動に出る者まであり、この者たちは調査船の捕鯨作業そのものを実力で阻止しようとするのである。

さまざまに準備を重ねメディアを駆使し、一大パフォーマンスを繰り広げて見せるのだが、妨害を受ける側にしてみればたまったものでは無い。

その上、この連中ときたら、人さまにこれだけ迷惑を掛けておきながら、恬として恥じるところがない。

恥じるどころか、反って英雄気取りなのである。

もうここまで来ると、一種の「新興宗教」なのではないかとさえ思えて来る。

まして、この狂信的としか思えない「宗教活動家」たちが、莫大な活動資金を手にしながら、さまざまにデマを宣伝し正統な情報の伝播をしきりに妨害する。

さらには、メディアの多くがこれ等「新興カルト教団」の主張に盲目的に追随して、彼等の捏造によるデマを無責任に吹聴するものだから信徒の数は増えるばかりだ。

「あら、鯨ってそんなに利口でフレンドリーな生き物だったんですの?」

「お言葉ですが、海洋資源を守る必要はあろうかと存じますが。」

実は、商業捕鯨の禁止にしても、そこに至るまでのプロセスを眺めて見れば、そこにも又、米国と言う超大国の身勝手な意図が見え隠れする。

現在でも米国は、数量的に日本よりはるかに多くの捕鯨を行っているのだが、そのこと自体日本人はおろか、米国市民の間でさえほとんど知られてはいないのである。

それにも拘らずこれ等米国の「宗教団体」は、日本の捕鯨活動ばかりを非難すると言う、まことに不思議な構図が定着してしまった。

彼等は、風変わりな倫理観を元にした宗教的思想の宣伝活動に精を出し、それを以て諸国民を洗脳し続け、科学的な根拠の薄い非論理的な「活動」を行っているとしか思えない。

その結果、殊に白人キリスト教文化圏においてなどは、「鯨を守ろうと言うスローガン」が巨大な票に結びつくまでになり、今では日本人の中にまで、この風変わりな「宗教観」がはびこるようになってしまった。

国際捕鯨委員会(IWC)においても、米国が鯨を保護すべしと言い出して、多くの反捕鯨宗教団体を煽り、挙句にダミーとでも言うべき反捕鯨国を数多く加入させて来た経緯がある。

当時の米国政府に対しては、ベトナム戦争の枯れ葉剤散布作戦による環境破壊が、あまりに非人道的であるとして非難の声が高まりつつあったのだ。

ワシントンはその非難の声を他に逸らさんがための道具建てを探しており、絶好の標的として白羽の矢が立ったのが「鯨の保護運動」だったと言われる。

元来の国際捕鯨委員会(IWC)は、現実に捕鯨と言うれっきとした生活活動が存在することを大前提として掲げ、捕鯨を「適正」にリードすべく企図されたものであって、鯨を禁猟にするための機構などでは無かった筈なのだ。

それにもかかわらず、そのもっとも基本的な前提でさえ無視されるに至っては、とても公明正大なものとは言い難く、本来の姿に立ち戻らない限り、世界の三分の一しか参加していないIWCなど有害無益なものでしか無いと言って良い。

しかも、本来政府間機構でありながら、米欧の「宗教活動家」たちが、多くのダミー国の国家代表の仮面をかぶって、反捕鯨の一票を投じるに至っては最早「いんちき」としか言いようがあるまい。

国家代表は出席者個人の国籍を問わないルールであったため、主に米国人「宗教活動家」たちが、IWCへの加入費用を肩代わりして出席していたと言う事実がある。

詰まり、会員資格を持つ小国家群の代表としての票決権を、狂信的オカルト集団がカネで買っていたことになる。

その上で行われるIWCの票決などに、いったいどのような正義が有るものなのか、ちょっと考えてみただけですぐに判りそうなものだ。

純粋に正義や道義の在りかを信じる者にとっては、あまりに露骨な作為に満ちていると言うほかはない。

日本にとって伝統的な食文化と言う観点を抜きにしても、食糧安全保障上の観点から言って極めて重要な争点であるべきなのだが、日本のメディアはこれ等の欺瞞性については不思議なことに触れようともしない。

そこにも無視出来ない作為を感じるのである。

ここで王妃は、すらりと言った。

「じゃあ、わたくしどもの鯨狩りは無関係ですわね。だって地球では一頭も獲ってませんもの。」

「あ、それでは全部荘園の?」

「はい、それに荘園の海は生け簀のようなものでから。全部あわせれば、地球の海の四倍にもなる生け簀ですけれど。」

確かに丹後、但馬、丹波の海を総て合わせれば、地球の海全体の四倍ほどの広さにはなる。

そしてその「生け簀」の所有を主張する者は、自分の夫以外に誰もいないのである。

「よ、四倍も・・・」

「カツオやマグロ、秋刀魚とか鯵とか、それに川魚なんかも沢山飼っておりますわ。」

広大な生け簀は、自然の牧場と言い換えても良い。

「か、飼って・・・・・」

ちなみに、近年地球の海洋資源は急速に減衰し始めている。

広い地球の中でも一部の地域においては昨今その食生活を激変させつつあり、最近まで「その魚種」を食べる習慣を持たなかったものが、今ではそれを大量に消費するケースが見受けられ、圧倒的な大人口を抱えるが故に、殊に中国の食文化の変化が及ぼす影響には、深刻なものがあると言わざるを得ない。

かと言って、彼等に喰うなとは言えないのである。

マグロなどが良い例で、ごく近い将来にも海洋資源の配分をめぐって国際間の軋轢が激化することは目に見えている。

「大昔に地球の生物をどんどん移植しちゃったおかげで、荘園の生態系を、すっかり変えてしまったらしいとは聞いておりますけれど・・・」

「それでは・・・。」

「特に丹後や但馬なんかは、すっかり地球と似たような生態系になってしまってるようですわ。」

「じゃ、トラとかライオンなんかも・・・」

「ええ、バッファローなんかも大量に繁殖してますわ。その上、海も空も地球の産業革命以前の状態らしいですし。」

「それじゃ、相当綺麗な自然が残ってるわけでございますか。」

「はい。今度もそのきれいな生け簀でイルカを獲ってきただけですわ。」

「それはそうなんでしょうが、やはり何か可哀そうな気がして・・・。」

「でも、可哀そうと言えば豚や牛なんかも可哀そうですわよねえ。」

「・・・。」

女子アナは絶句している。

「それに主人はスポーツとしての猟は一切行いませんし、鯨などは増えすぎて困ってしまって、大量に肥料にしてるくらいですわ。もっとも他の肥料分と一緒にして、だいぶ寝かせているようですが。」

王の荘園においては、稲わらやバッファローの糞なども堆肥として大量に利用されており、それに関する作業が現地の兵団にとっては重要な任務の一つになっているほどだ。

「肥料に・・・。」

「鯨だってあまり増え過ぎますと、他の海洋生物を食べ尽くしてしまいますものねえ。」

「それほど増えてしまってお困りのようでしたら、シロナガスなど大分減ってしまってるようですから、いっそお戻しになられてはいかがでしょう。」

「その辺につきましても、秋津州財団の研究課題になってるようですわ。」

「どの程度の頭数なら移行が可能なのでしょうか。」

「地球側の都合が許すようなら、百万頭でも可能だと思いますわ。」

「そんなに・・・。」

「主人の話では、荘園の各海域や系統毎に少しずつ間引くのに多少手間取るようですが、百万頭くらいなら一度に転送が可能のようですわ。どちらにしても、地球側の環境に与える影響を充分調査検討する必要はあるようですけれど。」

「それは問題ないんじゃないでしょうか。」

「いえ、地球の鯨類の調査はとても充分とは申せませんわ。」

「そうなんでしょうか。」

「うかつに大量に移植してしまって、あとで取り返しのつかないことになってしまうことも考えられますし。」

「そんなに大変なことになってしまうなんて・・・」

「現にシロナガスなどは、ずっと以前から保護されて来ていますのに、なかなか回復して来れないのは、ミンククジラが大量に増えたせいだという説もございますわ。これなども、生活の場と食べる餌が競合してるためだとお聞きしてますのよ。」

「じゃあ、少しずつなら大丈夫なんじゃないでしょうか?」

「それも、あまり無責任には申し上げられませんわ。だって判らないことが多過ぎますもの。」

鯨周辺の海洋生態系については、日本の優れた調査能力を以てしても、未だ々々データが不足していることは事実で、その上、日本側が如何に優れた調査結果を提示しようとも、好意的に取り上げるメディアがほとんど無いと言う不思議な現実がある。

それどころか秋津州産の鯨肉などは、ワシントン条約にも抵触するのではないかとして、極めて批判的な論陣を張ったメディアまであったのだ。

詰まり、鯨を秋津州から輸入する側の国々がその規定に触れていると言うのだ。

また輸出国である秋津州に関しては、この条約にも参加していないことから法理上の責めを負うことは無いにしても、倫理上は大いに非難されてしかるべきだと言う声が少なくなかったのである。

この場合のワシントン条約とは、無論絶滅危惧種の保護を目指したものであり、秋津州の出荷する大量の鯨肉などは真っ先に槍玉に挙げられたのももっともなことであった。

ただし、これらの動きにしても、今ではごく一部のメディアや例の狂信的な『宗教』団体に見られるだけであって、少なくとも堂々たる国家から非難を浴びた事例は無い。

そして、女性インタビュアーは、わずかに論点を変えようとしていた。

「それと、鯨は海洋域の食物連鎖の頂点に立つ生き物なのだから、汚染がひどくて食用には向かないと言うようなことを申しますが、その点についてはいかがでしょう?」

殊に中国沿岸の海洋汚染のひどさについては、従来からさまざまに取り沙汰されて来ており、最早絶望的だと言うデータまであると言い、このままでは、それはますます拡大して行く一方であり、当然、食物連鎖によって、やがて全ての海洋生物を汚染して行くに違いない。

「あら、その論法でいきますと、さきほどのシロナガスなんかは、オキアミばかり食べていると聞きましたわ。」

「それ、わたしも聞いたことがあります。」

「もしこれがほんとなら、少なくともシロナガスなんかは食物連鎖の頂点どころか最下位に近いですわよねえ。」

オキアミは食物連鎖の頂点どころか底辺にあり、それを主食としている生物もまた底辺に近いと言えるだろう。

体長僅か数センチのオキアミは無論動物性プランクトンの一種であり、その資源規模はひたすら膨大だとは言うが、体重百五十トンとか二百トンとかのシロナガスクジラが食べる量も、また半端な量ではあり得ないため、シロナガスクジラが大量に増殖すれば、今度はミンクなどの競合する種が、大きなストレスを受けるようになるのだ。

尤も、実際のシロナガスはその環境によっては、オキアミだけでなく小型の魚類をも捕食することが確認されてはいる。

「やはり、クジラをクジラと言うだけで、全部ひと括りにして議論は出来ないってことになりますわね。」

同一種類のクジラ同士でさえ、それぞれの海域や群れによって生活様式も随分異なっていると言われており、より広範かつ実証的な調査が待たれる所以だ。

「クジラの研究では日本が一番進んでいるそうですし、その日本の調査でも、通常の海域ではそれほど心配になるほど汚染された鯨はいないと聞きましたけれど。」

日本が行っている調査捕鯨は、全てIWCの規定した範囲内のものである上、この調査結果自体が非常に貴重なものなのだ。

「じゃ、保護団体が発表している鯨肉汚染の情報などはどうなるんでしょう。」

それら熱狂的な「宗教団体」が発表するデータでは、鯨肉の汚染度は、既に究極的な段階に立ち至っていることにされてしまっていることが多い。

「的確な裏づけの無い、非科学的なお話も有るにはあるようですけれど、牛や豚肉などに比べて、低脂肪、高蛋白、低カロリーでとてもヘルシーなお肉だと言うお話には、確実な科学的裏付けがありますわ。それに何よりおいしゅうございましょう。」

秋津州国王の朝食メニューには、しきりに鯨肉が登場するが牛や豚などは滅多に登場しない。

「あ、そう言えば、低コレステロールで鉄分が豊富だとか聞いたことがございます。」

「血液さらさらで有名なEPAとかもたっぷりですし。」

「私も以前、ある番組で海の幸のレポートをさせていただいた折り、クジラにはDHAがたくさん含まれているってお聞きしましたわ。確か、血液中のコレステロールを下げたり、頭の働きを良くする作用があるそうですわ。」

「イワシとかサバなんかに多いって言われてる、不飽和脂肪酸のことかしら。」

「あ、それです。」

「どちらにしても、もう一度冷静になって考えて見る必要だけはあるでしょうね。」

「でもそうなりますと、シロナガスクジラの回復を促してやる意味では、ミンククジラの増え過ぎた分などは、逆に『駆除』してやる必要があることになりませんか。」

「海域によっては、ミンクだけはその必要があるって伺ってますわ。」

だが、IWCの会員国(?)の投票の結果、商業捕鯨のモラトリアムは今も延々と続いている。

「でも、そうなると、日本政府がこうまで大人しくしてる理由が理解出来ませんが。」

現にノルウェーなどは、IWCの会員資格を保持しながら盛んに商業捕鯨を行っているのだ。

「それは、ノーコメントにさせていただきますわ。」

一つには、この点で日本側があまり強気に出てしまえば、北米沿岸海域の漁獲割当量を大幅に削減されてしまい、当時の日本の漁業が大打撃を蒙る可能性があったのだ。

日本側が大幅に譲歩したにもかかわらず、日本はワシントンのペテンに引っ掛かって現にそうなったのである。

しかも、日本人などがクジラと言う動物性蛋白に大幅に頼るようになってしまえば、その分だけ牛肉の消費量が確実に減るのである。

きっと、困窮する米国産業も出て来ることだろう。

結局、商業捕鯨のモラトリアムが続く理由には、科学的見地によるものより、政治的な思惑によるものの方がはるかに大きいことになる。

おかげで、そこに注がれる資金は一層莫大なものとなり、狂信的なオカルト教団の金庫をも限り無く潤すのである。

その結果、彼等宗教団体は資金集めに最大の効果を発揮するパフォーマンスばかりを、ひたすら重ねることになるのだろう。

「あの、話題を変えてもよろしいでしょうか?」

インタビュアーにしても、話題を変えるほかは無かったのだろう。

「どうぞ。」

「ありがとうございます。早速ですけれど例の竹島の件でございますが、今後についてのお考えをお伺いしたいと存じますが。」

「特別の考えなどございませんわ。」

「お言葉ですが、あの島の払い下げをお受けになった本当の理由がおありかと存じますが。」

「単に、売り手と買い手の意見が一致しただけですのよ。あなたも気に入った場所を手に入れたいとお思いになりません?」

「それはそうですけど、何も竹島でなくても・・・」

「あら、それが竹島であってもちっとも構わないんじゃなくって?」

「お言葉ですが、その結果大勢の方がお亡くなりになりましたが、そのことについてはいかがでしょう?」

今次の騒乱における犠牲者の数は、今やあり得ないような数字まで報じられ始めており、この点では明らかに王妃の行為を非難する語調が感じられた。

まして、動乱の結果、少なくとも北部朝鮮側が受け入れたとされる難民は四千万に達するとする報道まであり、事実なら、北部朝鮮の人口は以前の三倍近くにまで膨張してしまったことになるのだ。

「お亡くなりになった方はお気の毒だとは思いますが、立場上それ以上のコメントは控えさせていただきますわ。」

秋津州王妃と言う立場から、これ以上踏み込んだ発言をすれば、当然政治的な波紋を呼んでしまう。

但し、王妃の行為に法理上も倫理上も別段の瑕疵があるわけでは無い。

彼女にすれば、正式な手続きを踏んで官有地の払い下げを受けただけのことであり、そのことによって不当な利益を上げるような考えも持ってはいない。

却って刺激的な憶測報道を繰り返し、韓国側の反日感情を煽ったのはほかでも無い、マスコミであった筈だ。

「韓国の現状についてのご感想はいかがでしょう。」

その国では、北へ脱出して行く人々が増加の一途を辿り、国軍でさえ満足な補給を受けられなくなって来ており、その国軍が明らかに崩壊への途を辿りつつあると報じられている。

現状では、各地に盤踞する者たちが、それぞれに韓国の統一政権を名乗り始めているが、いずれも他国の政府から承認を受けたと言う情報は無い。

欧州の一部には、匪賊の一部を交戦団体として承認すべしと言う声もあったが、その集団も今ではあえなく消滅してしまっており、結局、いつ消滅するか判らないような団体を、軽々に承認するような国家など無いのである。

「これも、現時点では何かと差し障りがございましょうし、申し上げないことに致しますわ。」

その国は、既に国家の体をなさないまでに荒廃してしまったことだけは確かだろう。

「ぶしつけながら、国王陛下は何と仰せかお伺いしてもよろしゅうございますか?」

「主人は特別なことは申しておりません。」

政治的な話題については王妃の口は堅く、この件もこれ以上無理押しても無駄のようであった。

「それでは、あの・・・、それに関連する軍事力についてでございますが。」

「わたくしで判ることでございましょうか?」

「日本政府が、秋津州軍の一部を指揮下においていると言う説がございますが?」

「はい?」

王妃は怪訝な表情を浮かべている。

「ですから・・・、官邸において、秋津州対策室が膨大な軍事力を握っていると噂されている件についてお伺いしたいのです。」

「官邸でございますか?それなら官邸の方にお尋ねになればよろしいのに。」

「いえ、官邸では国内の秋津州軍の存在そのものを全否定しておりまして・・・。」

「わたくしも、そうだと思いますわ。だって、日本国憲法ではもともと一切の軍事力は持てないことになっておりますもの。」

秋津州王妃は、その口元に微妙な笑みを浮かべた。

日本国憲法第九条第二項には「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と明快に規定している。

普通に読みさえすれば、戦力の保持と交戦権そのものを明らかに否定しており、その日本が軍事力など持っている筈が無いのであり、百歩譲って、国家としての自然権であるべき自衛権を行使しようにも、「陸海空軍その他の戦力」を持たなければ、国を護ろうにもその手段にも窮することになる。

以前国井官房長官が、「憲法を守るために国民が存在するのではなく、国民を守るためにこそ憲法がある。」と発言して物議を醸したことがあるが、憲法を守っている間に国そのものが滅んでしまえばどうにもならない。

「あ、では軍事力を警察力と言い換えればいかがでしょう?」

「ご質問の趣旨が良く判りませんが・・・。」

「ですから、官邸サイドが秋津州軍を警察力として使用しているのではないか、と言うことです。」

「でしたら、それも官邸にお尋ねになればよろしいのに。」

「いえ、先程も申し上げました通り、官邸では秋津州軍の存在そのものを全否定しておりまして・・・。」

「では、その通りなのではございませんこと?そもそも秋津州軍とは、秋津州国の指揮に従う軍隊のことでございましょう?」

ごく基本的な事柄ではある。

「あ・・・、では、日本国の指揮下にある軍隊なら日本軍だと?」

「もし、それが軍隊なら、明らかに日本軍だと存じますわ。」

「じゃ、そう言う意味の日本軍が存在すると言うことでしょうか?」

「さあ?それこそ官邸にでもお尋ねになるべきなんじゃありません?」

質疑は、振り出しに戻ってしまった。

だが、王妃が私的に保有するヒューマノイドと言う「機械設備」を、日本人秋津州京子の意思として日本政府に貸与していることは事実であり、また、そのボリュームにおいても膨大なものであることは言うを俟たない。

「次に、秋津州の教科書についてお伺いしたいと存じますが。」

またしても話題が転じられた。

「どうぞ。」

「秋津州の教科書を拝見致しますと、日本は単一民族などでは無い、と明白に書いてございますが。」

「はい。」

「私どもは、日本は単一民族だと教えられて参りましたのですけれど。」

「いえ、日本は明らかに多民族国家だと思いますわ。それが証拠に、主人自身が古代蝦夷(えみし)やハヤトの血を引いておりますもの。」

「お言葉ですが、国王陛下は嵯峨天皇のお血筋だと言う記述がございますが。」

これも、秋津州の教科書に記述してある事柄だ。

「はい、わたくしの聞き及んでいる限りでは、嵯峨天皇が未だ神野親王でいらした折、蝦夷の女性との間に男子をもうけられ、そのお方が親王宣下を受けられぬままご成人になり、ハヤト系の女性との間にもうけた男子が、秋津州王家の家祖と言うことになっておりますの。」

この国の王家の家祖たる者は嵯峨天皇の孫に当たるが、それは皇族譜からも完全に抹殺された皇子なのである。

「あのう、申し訳ございません。古代蝦夷とは・・・・」

「もともと、本州の東半分を領域として暮らしていた民のことですわ。見ようによっては半分以上だったかもしれませんが。」

「あ、アイヌのことでしょうか?」

「まあ、その呼称が適切かどうかは別と致しまして・・・、少なくとも主人はその呼称を用いることはございません。」

「良く存じませんでしたので、失礼があればお詫び致しますが・・・。そう致しますと、初代の方の祖母に当たる方がその蝦夷の女性だったと?」

「はい、母はハヤトだったそうですわ。それに言い伝えによりますと、その祖母に当たる方は、アテルイの血を引く者となっているようでございますし。」

「アテルイ・・・」

うら若い女子アナは呆然としてしまっている。

アテルイは当時の大和朝廷から見れば反逆者ではあるが、蝦夷の側から言えば、同胞を侵略者から守ろうとして闘った優れた軍事指導者であり英雄なのだ。

そして、この場合の侵略者とは大和朝廷を意味していることは自明であろう。

「ですから、ヤマトと蝦夷とハヤトの血を受け継いでいることになりますが、その後、異形の者としてヤマトの地を逐われ、ほとんどの財産が公収されたと伺っております。」

その結果、全くの別天地に秋津州王朝が成立したことになる。

「異形のものとは?」

「伝承では、よほど恐ろしげな面構えのお方だったように伺っております。」

「そのために追放されてしまったと・・・。」

「はい。」

「では、その当時は都付近にもいろいろな種族の方が暮らしていたと?」

「はい。現在でもさまざまな民族が暮らしてる筈ですわ。」

「でも、それは言わば例外的なことでございましょう。」

インタビュアーの方にも、ある程度の予備知識を仕入れて来る機会はあったのだろうが、日本人が単一民族だと言う、牢固とした先入観は容易に崩れない。

しかし現実の日本には、琉球系・台湾系・朝鮮半島系・アイヌ・ウィルタ・ニヴフ・小笠原諸島の欧米系島民などのように、多様な『民族』が「日本人」として棲み暮らしていることは事実だ。

殊に近代において、台湾や朝鮮半島に生まれた人々は好むと好まざるとに拘わらず、国際法上においても、長期間にわたってれっきとした「日本人」であった。

朝鮮半島の人々は三十五年、台湾の人々に至っては概ね半世紀もの長きに亘る。

その上日本は、第一次大戦の勝者の一員として南方にも広大な版図を獲得していたのである。

だが、昭和二十年の大東亜戦争の『停戦』に当たり、台湾及び朝鮮半島も又日本の領土から分離されたため、その出身者の全てが、日本人としての国籍を離脱する「権利」を持ったのだが、敢えて離脱しない道を選択した人々も大勢いる。

その人々は、「敗戦日本の国民」であり続ける道を自らの意思を以て選択したことになり、当然、これらの人々は紛れも無く立派な「日本人」であり、日本国政府から「日本国民」として扱われることも、また当然のことだ。

結局、日本と言う国が多民族国家であることが明らかであると同時に、「日本人」であることと、人間個体としての「民族性」との間には一切関係が無いことになる。

また一方で、日本人としての国籍を離脱する「権利」を行使し、「非日本人」として生きる道を選択した人々は明らかに外国人なのであり、日本国政府から「日本人」として扱ってもらえる道理は無いのである。

また、このインタビューにはこのほかにもさまざまの事柄が含まれており、中でも王妃自身の撮影になるニホンオオカミや朱鷺の写真などはとりわけ大きな反響を呼び、それらの写真が、荘園の緑豊かな風景の一部として盛んに報じられ、日本の茶の間にも大いに話題を提供した。

殊にニホンオオカミなぞは、もともとのふるさとである日本ではとうに絶滅してしまっており、現在では僅かに標本として残存しているだけなのだ。

また、「Nipponia nippon」と言う大層な学名を与えられた朱鷺(トキ)にしても、日本原産の野生のものは絶滅したとされており、もしこれ等が日本原産のものの子孫であれば飛び抜けて貴重なものである筈だ。

尤も、のちにニホンオオカミは勿論、シロクログマや朱鷺などについても日本側から譲渡の要望が相次ぎ、相当数のニホンオオカミと朱鷺が多数搬送されるに至り、その後の調査によって、いずれもが日本原産のものの子孫であるとされ、そのことが一層日本と秋津州のえにしの深さを物語ったと言う。

殊に朱鷺の羽は、千五百年以上のいにしえより継承されてきた、伊勢神宮の神事においても欠かせないものであり、その伝統が絶えてしまうことが長らく懸念されて来たが、この問題も一挙に解消されたことにはなるだろう。

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  1. 2007/04/29(日) 15:08:59|
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