日本大好きじいさんの落書き帳

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自立国家の建設 081

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一方、日本にいる国井は、このひそやかなインタビュー情報についても、当然詳細に入手していた。

新田から、すかさず一報が入ったのだ。

しかし、前回の直接会談の折に、国井自身が、その耳で直接聞いていたことと特別に変化したところは見当たらず、若者のこの考え方については改めて聞き直すまでも無く、よく承知していたのである。

しかも、野に下ったとは言え、国井の日常は相変わらず多忙だ。

民自党の重鎮として、或いは次期総裁レースのトップを走る者と評され、更にはあろうことか新党立ち上げの張本人とまで囁かれており、各界のそうそうたる名士を含め多くの人々とも会わなければならない。

政治活動の一環としてなさねばならないことは呆れるほどに多いのだ。

しかも、国井の周辺は取材を求める声で騒然としてしまっている。

メディアにしてみれば、噂の新党人気が一段と沸騰して来ている今、その党首に擬せられているこの男からはいっときたりとも目が離せない。

昨年改憲論を引っさげて臨んだ衆参同時選挙において、党が思わぬ惨敗を喫して以来、敗軍の将の一人としてひたすら沈黙を守って来たが、近頃その支持率ばかりが異常なほどの高まりを見せているのだ。

そして、一方の新政権側は実に対照的であった。

初期の内こそ原発の廃絶方針が多くの支持を受けはしたものの、その後新田の召還騒ぎに臨んで対策室の機能を甚だしく毀損してしまい、霊光の原発危機に際しては無策のまま時を重ね、結果として対馬の島民を見殺しにしようとするなど、大きな政治的失策を重ねたのである。

野に下った民自党内部では、きたるべき総選挙を見据え、総裁ポストを人気絶頂の国井に禅譲させようとする動きが加速して来ており、少なくとも国内的には、いまや国井は、あたかも政界の台風の目のような存在になってしまっている。

新政権側にとって、無論歓迎すべき事態などでは無かったろう。

当然、国井の弱点を突こうとする動きが目立つようになった。

メディアが放って置く筈も無く、やがて勝手気ままな論説がはびこるようになり、ごく一部とは言いながら、国井に対して戦争好きの軍国主義者だと決め付ける論評まで出て来る始末なのだ。

典型的なレッテル貼りである。

このような行為の特徴としては往々にしてひどい騒音を発することがあり、かたくなに沈黙を守って来た国井も、やがて口を開かざるを得なくなる。

事態を重く見た党執行部の勧めもあり、時が時だけに一度だけ取材に応じることにしたのだ。

やがて事務所にカメラが入り、一昔前にリベラルの旗手を以て名を馳せた美人キャスターの流暢な語り口から、特徴的なインタビューは始まった。

「失礼ですが、昨年の衆参同時選挙では、国井さんの積極的改憲論が結果的に国民の支持を得られなかったわけですが・・・。」

「残念ながら、仰る通りの結果でした。」

尤も、その積極的改憲論と言うものにしても無論国井個人のものでは無い。

当時、政権与党の座にあった民自党の公式の政策論だった筈なのだ。

「その辺のところから、現在のご心境をお伺いしたいと思います。」

「若干、説明不足であったかも知れませんね。」

その政策については説明不足であったことは認めるが、別段変えるつもりは無いと言うことなのだろう。

「そう致しますと、今回民自党総裁の椅子につかれた場合、次期総選挙においても、改めて改憲論を前面に押し立てて戦われるお気持ちでらっしゃるのでしょうか。」

迷走する連立政権に対して不信任案を突きつければ、現状では通る可能性は極めて高く、そうなれば現総理はいちかばちかで解散権を行使して来るだろう。

総辞職の道を選べば、ひび割れた連立与党を足場にする以上、二度と復活の目は無いとされているのだ。

「総裁ポスト云々は別としまして、改憲は我が党結党以来の政策綱領でもありますから。」

「昨年の選挙戦の時にも、改憲の向こう岸には徴兵制が見えると言う声が高うございましたが、その辺に付いては如何でしょう。」

現に、『改憲は徴兵制への道に通じる』と言うネガティブキャンペーンを張った左派系政党があったことも確かだ。

「なかなかお分かりいただけないようですが、我々の言う改憲は徴兵制とは別の次元の話なのです。」

「では、徴兵制導入を少なくとも否定されるお考えは無いと仰るのですね?」

女性キャスターは、リベラルの旗手としてのかつての栄光を蘇らせようとしているかのようだ。

「全てはそのときどきの国益に照らして判断されるべきものでしょうが、今のところその必要は無いと考えております。」

「将来においてはあり得ると仰る?」

何としてでも、国井をして徴兵制導入論者だとしておきたいらしい。

「ご承知の通り国益と言うものは日々刻々と変化するものですから、将来と言う前提に立つならば、現時点での全否定は致しかねますな。」

当然のことであったろう。

十年、二十年のスパンで考えれば、それこそ何があっても不思議は無いのである。

「詰まり、将来は徴兵制導入もあり得ると言うふうに理解してよろしゅうございますね?」

女性キャスターの追及の手は緩まない。

「将来の可能性がゼロであるとは、どなたであっても断言は出来ないでしょう。無論私も同様です。」

「判りました。徴兵制導入は否定なさらないと。」

止めを刺したつもりなのであろう。

「ただ、この徴兵制と言うものについては、もう少し掘り下げて考えて見る必要はあろうかと思いますよ。まして今は日露戦争の時代ではありません。時代の変遷に伴い、戦争そのものもひどく変わってしまいました。」

「それは、そうでしょうね。」

「まして、現今では我が国の防衛線は全て海上にあります。」

「そうでしょうか。」

「現実に海上の防衛線を突破されてしまうと言うことは、国土周辺の制空権と制海権を失うことに等しい筈です。詰まり相手はそれほどの攻撃力を具えていることにもなりますから、あとは我が国の領土を一方的に蹂躙されてしまう恐れが高くなります。」

「・・・。」

「この防衛線の攻防にしても、近代戦においては、高度な電子戦とならざるを得ず、ひたすら訓練を重ねた実力者集団の専門技術に頼らねばなりません。」

「その電子戦用の兵器類の高額なことこそが問題なのではありません?」

「いや、話の途中ですから、もう少し続けさせて下さい。」

「失礼しました。どうぞ。」

「先ほども申し上げました通り、現代の戦闘はいわゆる近代戦となります。そしてそれは、膨大な情報を瞬時に収集し、その情報に対する俊敏な処理能力と、それらの情報を統合するシステムを効率良く運用することによって、初めて成り立つものなのです。だからこそ先駆的な電子機能を持った防衛機器を具え、それを自在に操る技術者を鍛え上げているわけですが、これには相当長い期間を要します。」

「はい。」

「ところが、徴兵制においての兵役年限はせいぜい二年止まりでしょう。下手をすれば一年半です。そのような短期間では、比較的単純な戦闘技術しか習得させることはかないませんし、まして彼等の多くは、その後、除隊してしまうのです。」

「それはそうですわね。」

「前の戦争の頃までは、扱いに複雑な専門技術を要する兵器は滅多にありませんでしたから、短期訓練で育成した兵士が主要な戦力となり得たのですが、現代においては、徴兵制を布いて嫌がる国民を大勢引っ張って来て、速成で銃砲の扱い方を教え込んで見たところで、莫大な費用が掛かるばかりで近代戦においては主要な戦力とはなりにくいのです。」

「あ・・・」

「百歩譲って、コスト的にも相当無理をして速成で専門技術を教え込んでみたところで、当人の意に染まぬ場合、兵役年限の到来と同時に除隊してしまうのは確実でしょう。」

「なるほど。」

「その上、昔と違って現在の日本は有数の物価高の国ですから、何よりも兵士の人件費と食糧費が非常な財政負担を強いることになります。限られた防衛予算を効率良く使う意味でも、現時点では徴兵制は導入すべきでは無いと考えています。」

「青年たちを二度と再び戦場に送るな、と言う声も高うございますし。」

「出来ればそうありたいものです。だからこそ、仮想敵国に我が国の主権を侵すことを躊躇させるに足る備えが意味を持って来るのです。」

「専守防衛でございますか。」

「現に我が国の自衛隊は、その装備面においても外征能力を持たされてはおりませんから、仮に徴兵制を布いて百万の兵員を揃えて見たところで、それだけでは外征など不可能と言って良いでしょう。」

「徴兵制による兵員など、近代戦では物の役に立たないと言うことでしょうか?」

「いや、そこまで申し上げるつもりはありませんが、巨額の予算を掛けて、嫌がる国民を無理やり引っ張ってくる割には実利が少ないと言っているのです。何よりも大切なことは国を守る能力なのですから、それだけの予算を掛けるのであれば、防衛能力をもっと確実に高めうることに使うべきでしょう。今や多くの兵器が精密なコンピュータのかたまりのようになってしまっておりますから、当然非常なコストが掛かるのです。」

「それほど高額の兵器を揃えようとするから、防衛費が膨らむのではないでしょうか?」

「いや、我が国はここ数年、概ね軍縮の方向に向かっていると考えているくらいですし、この国を守る能力のことを思えば、高額な電子機器を具える兵器類は欠かせないものだと考えております。」

「何故欠かせないとお考えなのでしょう?」

「防衛に際しては当然相手があります。そしてその相手もそれなりの攻撃力を有しているからです。その上ご承知の通り我が国は、広大な海域にまたがる数多くの離島を抱えており、それを小人数で防衛するためにも絶対に欠かすことは出来ません。離島に暮らす人も東京で暮らす人も、まったく同じ日本人なのですから。」

「でも、いまどき、どこの国が攻めて来ると言うのでしょう?そんなことをする国があるとはとても思えないのですが。」

「それは、我が国がそれなりの防衛能力を持っていることを対外的に示し続けているからです。それなりの能力の中には、当然米軍の戦力と言う要素も含まれますが。」

「では、秋津州の合同訓練に多数の海自隊員が出張していることについては如何でしょう。他国の目には、日本がその分だけ好戦的な意図を持っているように映ってしまうのではありませんか?」

「最先端の機能を持つ潜水艦の技術は大変貴重なものですし、それがほとんど無償で手に入るのですから積極的に取り組むべき課題だと思っております。他国の目にどう映るかと言う問題ですが、日本の防衛能力が向上したと映ることを私は期待します。」

「でも、あの潜水艦は全て日本が設計し、建艦にも積極的に参加しているとお聞きしてますが。」

「それは、全て秋津州の予算を以て行われているもので、我が国の防衛費は支出されていない筈です。」

「一説によりますと、核弾頭を持ったSLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)まで具えていると言われてますが?」

「あれは、秋津州国の兵器であって我が国の兵器ではございません。そのお尋ねは秋津州当局にこそ発せられるべきものでしょう。」

「では、それが我が国の兵器であった場合なら如何でしょうか?」

「核武装に関してですか?」

「そうです。」

「単純に我が国の兵器だと仮定した場合なら核武装は致しません。無論この私が日本の権限者であった場合ですが。」

「では、国井さんは核武装論者では無いと?」

「私自身、現在の国際環境から言って、我が国は核武装は行うべきでは無いと考えております。」

「失礼ですが、国井さんの政治姿勢を長いこと拝見している私どもとしましては、そう仰られてもなかなか信じられないのですが。」

「あははっ、そうですか。尤も、具体的かつ現実的な核武装の是非論は、少なくとも公開の場では行って来ませんでしたから、ご理解願えないのも無理は無いでしょう。」

「わたくしどもでは、タカ派の国井さんはてっきり核武装論者だとばかり思っておりましたもの。」

「なるほど、それではその点での考え方を申し上げましょう。」

「是非、お聞きしたいと思います。」

「先ず、現在の我が国は、米国を初めその他関係諸国との間で核の軍事利用を禁ずる内容の原子力協定を結んでおりますから、それを一方的に破棄した上、NPT体制からも脱するとなれば、即座に原子力燃料の供給がストップすることになります。我が国はその燃料を自給する能力を持ちませんから、当然原子力発電を停止せざるを得ません。その結果、発電能力の三十パーセントが失われることになりますし、その後確実に発生する制裁措置によって石油の輸入も大部分がストップするでしょうから、自然火力発電もストップしてしまうのです。どう甘めに見積もっても、電力の供給量が現在の半分以下になってしまうのです。そうなれば、国民個々の生活にも大いに支障を来すことは当然ですが、あらゆる産業が深刻なダメージを受けることにもなりかねません。工業立国を以て是とする我が国は破綻してしまうことは明らかで、この意味一つとっても我が国の核武装など到底あり得ません。」

「なるほど。」

「とにかく、今申し上げた国際環境である以上、我が国が核武装を強行したときは、間違いなく大規模な制裁措置を受けることになります。我が国が貿易を以て立っているこんにち、結果は明らかだと思いますが。」

「・・・。」

「結局、多大の犠牲を払って核武装を果たして見たところで、そのために肝心の国家そのものが破綻してしまうとなれば、いったい何のための核武装なのか本末転倒も甚だしいでしょう。」

「それでも国井さんのグループでは、核武装肯定論が幅を利かせていると見られているのも不思議なことですわね。」

「世間にはさまざまの人がおいでですから、私を核武装論者だとしておきたいのも判らないではありませんが。」

「では、ご自身は核武装など考えたことも無いと?」

「いえ、考えるだけなら常に考えておりますよ。但し、考えることと実行することとでは天地の開きがありましょう。」

「でも、実行しないのなら考える必要も無いのではありませんか?」

「いや、私は一政治家の責任として、あらゆる可能性を常に検討しながら、ことに備えるべきだと考えているに過ぎません。」

「では、ご自身が常に検討してらっしゃる核武装に絞って伺いたいと思いますが。」

「判りました。先ほど来申し上げて来ました国際環境に関する点は、ひとまずおいておくとして、今度は技術的な面で考えて見ましょう。ご承知の通り核武装を自力で達成するには大前提として核実験を繰り返し行い、百パーセント確実な核爆発の再現性を確保する必要があります。我が国は、未だそれを手にしておりません。」

「はい。」

「そういたしますと、その実験場を何処にしたらいいんでしょう?そうお考えいただけば、一瞬でお判りいただけると思いますが。」

我が国が地下核実験を強行しようにも、その用地にさえ困ることは明らかであろう。

それでなお、経済封鎖を受け破滅的な経済状況の中で凌いでいかなければならないのである。

「では、我が国が唯一の被爆国であることを理由としているわけではないのですね?」

「政治家の一人として、純粋に我が国の国益に照らして判断するのみです。一時の感情や観念論を以て国防を論じるつもりはございません。」

「しかし、政治家でいらっしゃる以上、国民感情に留意する義務がおありになるのでは?」

「いえ、例えどんなに非難を浴びようとも、常に冷徹に国益を見据えて行動することこそが、国民の負託に応える唯一の道だと信じます。」

「その場合、国井さんにとって最優先の国益とは何なのでしょう?」

「我が国国民が決して滅びることなく、継続的かつ安定した繁栄を手にすることかと愚考致しております。」

「あ、滅びると申せば、例の松川先生の発表によるケンタウルスの件につきましては、如何お考えでしょうか?」

「その件は、未だ充分な検討を加えられた上での結論は出ていないものと見ておりますが、かと言って決して軽視しているわけではございません。万が一脅威有りとの結論が下った場合、仮にそれが極く僅かな脅威であったにせよ、確実な対応策を講じる必要があると考えています。」

「それでは、ご自身も未だ確定的な情報はお持ちでは無いと?」

「ですから、公式の政府発表を待っておるところです。」

「政府発表が脅威有りとなった場合は如何でしょう?」

「勿論、わたくし自身も日本の一政治家として、自らの行動指針に則って対応する覚悟でおります。」

「そのお覚悟の内容についてお伺いしたいのですが?」

「いずれに致しましても、政府発表を見てからでなくては具体的なことは申し上げられません。その内容によって、当然対応策も変わらざるを得ないことはお判りいただけますでしょうし、或いは政府がわざわざ発表する必要も無いほど、軽い問題である可能性も否定は出来ません。」

「わたくしどもも、さほどまでに重大な問題だと捉えているわけではございませんが、昨今世上に上っております話柄の中でも一応以上の話題性があるものですから・・・。」

「わたくしどもの党内でも、個々に調査研究を行って来ておるところですが、必要となれば別途専門ティームの立ち上げも視野に入れておるところです。」

「それでは、その専門ティームにしても未だ必要が無い状況だと、判断されていらっしゃるのでしょうか?」

「その通りです。」

国井は、報道画面の中で自信たっぷりの表情で応えていたのである。

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  1. 2007/08/06(月) 12:14:02|
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